付き合い始めてはや5年。そろそろ結婚しようと思っていたんだけど……
※この作品はなろうラジオ大賞5参加作品です
「え? いつの間に……?」
予約が半年先まで埋まっている事で有名な夜景の綺麗に見える某レストランにて、目の前にいる女性、河野泉の発した一言に驚きを隠せないでいた。
社会人になって5年が経ち、打診が有りようやく部署内で一つのポジションを与えてもらえるようになった。
肩書が増えるとお給料も少しばかりだが増える。生活も安定して、会社にも慣れ今度は自分が上司という立場になるので、「ここだ!!」というタイミングだと判断し、出来る限りのコネを使ってここを予約した。
普段着では入りにくいレストランにて、いつもは着慣れないドレスとファミレスの唐揚げを頬張るのが大好きな泉だからか、ちょっと雰囲気が窮屈そうに食事をしていた。
――良し!! 泉がちょっと気になるけど、ここまでは予定通りだ!!
俺はワイングラスを片手にチラッとウエイターさんの方へ視線を向ける。俺の視線に気が付いた彼はこくりと一つ頷いた。
「泉!! いや泉さん!!」
「ほえぇ?」
突然声を掛けられた泉が驚き、勢いよくフォークを肉にぶっ刺して大きめの音が鳴る。
「ど、どうしたの? 泉さん? え?」
俺の雰囲気が変わった事に泉が急にきょどりだした。
俺たち二人の雰囲気を察したのか、先ほどの彼がもう一人を伴ってスッと俺の後ろへと並び立つ。そしてそのまま泉に見えないようにとある物を手渡してきた。
ガタ!!
「い、泉さん!! け、けけけけ、お、おおぉ!!」
「ちょっと大輔大丈夫?」
勢いよく立ちあがった俺を見て怪訝な顔をする泉。
――き、緊張でど、どどうしよう!! えぇ~い!!
「お、俺と結婚して……くだしゃい!!」
手にした花束を泉の前へと突き出した。
「あ、かんだ」「あいつ噛みやがった!!」「きゃー!! プロポーズよ!!」
周囲がざわつく
「はぁえ? 結婚?」
――あれ? 泉の様子が……。もしかして……。
俺の一世一代の決心だったが、泉には伝わっていないようだ。
「だ、だめなのか……な?」
「何言ってるの? 今更結婚なんてできるわけないでしょ?」
「そ、そうか……付き合って五年だもんな……待たせ過ぎたか……」
キョトンとする泉。俺はがっくりと肩を落とす。
「え? なに言ってるの? 私達もう結婚して5年経つのよ?」
「…………はぁ?」
笑う泉は涙を拭きつつ俺に微笑む。
「私達、大学を卒業してすぐ、両親公認で婚姻届出したわよ? だから既に私たちは夫婦なの。今更結婚はできないわよ」
そして俺からこぼれた言葉は冒頭に戻る。
お読み頂いた皆様に感謝を!!
実は大学卒業後すぐに出会ってお付き合いをしていた二人。しかしそれまで女性に面識の無かった大輔はお付き合いすることが初めて。
つまりはかなりテンションが高く、色々な失敗をしています。お酒を飲み過ぎて記憶を失くしたり、泉の実家へ行ったけど緊張してしゃべれなかったり。
自分の実家へ連れて行った時も、彼女が出来た事を家族にいじられるのが嫌で拗ねちゃったっり。
そんななか、実家へ何度か足を運んでいる時に酔っ払った大輔が婚姻届けに自筆サインをするという、大輔家族の陰謀(?)が発動。その婚姻届けに両家の家族も署名して泉はそのまま提出しに行ったのでした。