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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パニック関連

逃げる事が出来ないならひと思いに暴れて思い通りに生きていく

作者: よぎそーと

(どうしよう)

 うんざりした日々が続いている。

 親がなぜか入信した宗教。

 その修行施設に強引に連れ込まれてしまった。

 おかげで地獄のような苦痛を味わうことになった。



 意味の分からないお祈りの言葉。

 宗教が崇めてるという神様の拝み方。

 宗教の経典にあるというありがたいという教え。

 これらを延々と聞かされ、やらされ続ける。

 たまったものではなかった。



 大変ということはなかった。

 お祈りも拝み方もやり方は簡単。

 教えとやらも、それほど難しくは無い。

 単純で分かりやすい。

 だから簡単におぼえることが出来る。

 だからこそ危険だった。

 簡単におぼえて身につけてしまうから。



 これを何度も繰り返して心身に染み渡らせる。

 そうして下地を作っていくのだろう。

 宗教というものに。



 ネットで調べた洗脳とか拷問とかのやり方にそっくりだった。

 その時はたまたま興味があったから調べていたが。

 まさか自分がやらされる羽目になるとは思わなかった。



「しっかりやれ」

「頑張るのよ」

 両親からは何度もそう告げられる。

 御免被りたいところだ。

 すぐにでも帰りたい。

 だが、そうもいかなくなっていた。



「家はもう宗教団体に捧げたから」

「今日からここで生活することになるの」

 ふざけるなと言いたかった。

「学校も退学届を出してあるからな」

「それよりも、この宗教の教えをしっかり学びなさい」

 最悪だった。



 逃げ場がなくなったことが明らかになり、絶望感が強くなった。

 それでも、どうにかしてここから逃げだしたかった。

 宗教になんぞ興味はないし、教えがありがたいとも思わない。

 そもそも、家や財産を寄進させる宗教なんぞがまともとは思えない。



(どうにかならないかな)

 外出は宗教の洗脳が進んだと判断されないと出来ない。

 そうだと思わせるまで何年かかるやら。



 また、教育が進んでないと判断されると、より厳しい修行が始まるという。

 どんな拷問がなされるのか、怖くて考えたくもない。

(となれば…………)

 八方塞がりに見える状況。

 何をやれば良いのか、どうすれば効果的なのか。

 それを考えていく。



 正直に言えば、やれる事はない。

 少なくとも、教団の中で一人で頑張っても高がしれている。

 脱出は絶望的と言えた。

 かといってこのまま洗脳を続けられたら、いずれ人間として終わる。

(じゃあ、しょうがない)

 何をしても駄目というなら、最後の手段しか残ってない。

 それを実行するために、覚悟を決める。

 必要なものを出来るだけ手に入れていく。



 そうして一年後。

 万全とはいえない準備ではあったが、行動を開始する。

 手にした武器になりそうなもの。

 それを使って暴れていく。



 周りにいる者達を傷つけていく。

 それが出来るなら殺していく。



 どうせ助からない。

 外に出られない。

 だったら、暴れて暴れて暴れつくす。

 おそらく宗教団体はこういった事も想定して対処してくるだろう。

 ならばそれはそれでかまわない。

 せめて少しでも道連れを作って地獄に行こうと思った。



 殴る、蹴る。

 手にした道具で傷つけていく。

 武器や防具などほとんどないが、それでも手にしたもので周りの者達を痛め付けていく。

 どうせこの宗教団体の信者だ。

 どうなろうと知った事ではない。

 むしろ、少しでも信者を減らすために頑張ろうと思った。



 信者がいるから宗教団体は成立する。

 存続する。

 活動を続ける。

 別に宗教団体に限った事ではない。

 ありとあらゆる団体がそうなのだ。

 だったら、所属してる構成員を少しでも減らす。

 減った分だけ、活動範囲が狭まる。



 団体に少しでも傷を付ける。

 活動を停滞させる。

 そうするには、こうするしかなかった。

 どのみち助からない、外に出る事は出来ない。

 なら、開き直って中で暴れるしかない。



 そうして暴れていると、体格の良い信者がやってきた。

 警備員なのだろう、強面の荒事担当なのが伝わってくる。

 やはり、こういった事態に備えて色々と用意してるようだった。



 取り押さえられないよう気をつけながら体を動かしていく。

 手にしているスタンガンに当たらないように攻撃を避けていく。

 それでいて、こちらの攻撃が当たるようにしていく。

 その甲斐あってか、スタンガンを奪って相手に攻撃する事も出来た。

 更に、事前に用意していた狂気で相手を傷つけていく。

 傷はそう深いものではないが、それでもかまわなかった。

 それでも、運良く急所に当てる事も出来た。



 そうして暴れ続けて移動をし続ける。

 様々なところで出来るだけ暴れる。



 集会場では机を振り回した。

 周りの者達に怪我を負わせた。



 厨房で包丁を手に入れた。

 切りつけ、突き刺し、致命傷を負わせた。



 庭に出て、門も見えた。

 そこから外に出られる。

 だが、あえて無視して建物の中へと向かう。

 無理して逃げても、追いつかれる。

 暴れ回って力も出ない。

 こんな状態で逃げても、ろくな結果にはならない。



 それよりも、もっと多くの者達に痛手と傷を負わせる事にした。

 こんな教団を構成してる連中である。

 自分をこんな所に幽閉してる手助けをしてるようなものだ。

 そんな連中に少しでもやり返したかった。



 その後、出来る限り暴れに暴れ。

 何人もの死傷者を生み出し。

 その果てに殺されていった。



「ざまあみろ……」

 薄れゆく意識の中で、それでも笑っていく。

 暴れる中で遭遇した二人。

 父親と母親にトドメをさす事が出来た。

 こんな所につれてきた張本人だ。

 そいつらに復讐が出来た事で充分に満足出来た。

 ここで死ぬのは不本意ではあるが。

 それでも仕方ないと納得する事は出来た。



 数人の死者と、多数の重軽傷者を出した事件。

 しかしそれは、教団施設の中でのこと。

 外に漏れる事無く隠される事となった。

 怪我人は施設内の治療部署で手当がされる。

 死亡者も専属の医師による死亡診断書をつけられて、当たり障りのない理由で処理される。

 場合によっては、死亡届を数年、あるいは十年以上も遅らせて届ける事にする。

 可能な限り自然死であるように見せかけるために。



 そうして何事もなかったかのように宗教団体は存続していく。

 外に漏れなければ、どんな事件も無かった事になる。



 だが、事件の影響は確かにあった。

 大惨事になった事件は、巻き込まれた者やそれを知るもの達に影響を与えた。

 それで目が覚めるものはいなかったが、薄々おかしいと感じていた者には効果があった。

 そういった者達に何をどうすれば良いのかを教える事になった。



 それから宗教団体は内部で問題を多発させていく。

 不定期に発声する騒動により、多くの信者が傷つき死んでいく。

 これにより宗教団体は次第に疲弊していく事になった。

 信者が減っていく事で、活動が停滞していく。

 時間はかかるが、少しずつ少しずつ宗教団体は縮小していった。

 やがて消滅するその時まで、この傾向は続いた。

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