槍の継承者
槍を持って男は僕の顔を見て嬉しそうな顔をした。
そして、こっちに寄ってきた。
「まさか!!!!盾の継承者??」
俺は呆気に取られながら頷いた。
「おー!!やっぱり!!てか、本当に他にも継承者いたんだな!!俺の前に剣と杖は居たって聞いてたけどさ、会ってないから不安だったんだよね!!」
「そうだったんですね…
僕は、新里空って言います。
宜しくお願いします」
「そうなんだよ!!いやー嬉しい!!
俺は結城大地!!大地って呼んでくれ!!
それと、同じ歳なんだからそんなに堅くなるなよ、もっとフランクで良いよ!!宜しくな!!」
そう言って笑顔で手を出してきた。
「分かったよ…宜しく!!」
僕と大地は握手をした。
「ところで、空はいつから神殿に来たんだ??
今まで会ったことなかったから最近だと思うんだけどさ??」
「今日初めて来たんだよ」
「今日だったのか…それは辛かったな……」
「まあね…まだ信じられないかな……」
少しルカのことを思い出してしまった。
「なんかごめんな…」
大地が謝ってきた。多分暗い顔をしていたんだろうな。
「いや、僕こそごめん」
「俺もあの時は辛かったから気持ちは分かる。でも、そのうち分かる時が来るんだ。
セナは俺とずっと一緒にいてくれてるし、今も俺を守ってくれているって!!それに、これ槍を出すとセナと同じだから何か嬉しいんだよね!!あー、ごめん、セナは天使の名前な」
大地は何もない所から槍を手に出した。
ルカも盾の出し方に似ていた。
「ありがとう、大地。
僕も早くルカの盾とかが使えるようになれば変われるかな…」
「変われるさ、大丈夫だよ!!」
大地は優しく僕の肩に手を置いた。
大地はとても優しい奴だなと思った。
「あのー、そろそろ良いですか??
私のこと忘れてますか??」
レーナの事をすっかり忘れていた。
「ごめん、レーナ……本当に忘れてた…」
レーナは頬を膨らませて睨んできた。
「あはは、レーナ落ち着けよ!!
今回は俺が話しかけちゃったのが原因だからごめんな!!」
「ふん!!弟子に免じて許してあげる!!」
「ありがとうございます……」
「良かったな、空!!
じゃあ、俺はあっちの川辺で訓練しているから何かあったら来いよ!!じゃあな!!」
「うん、ありがとう!!大地も頑張って!!」
そう言って大地は翼を使って飛んで行った。
それを見て思い出した。
僕も飛べる様になるために練習場に来たことを。
「じゃあ、先生、宜しくお願いします!!」
「さっきはレーナって呼んでくれたのに先生に戻っちゃった…まあ別に先生でも良いんだけどね!!」
そういえばさっきは流れでレーナと呼んでしまった。
「じゃあ、レーナ先生って呼ぶわ」
「なんでもいいよ!!じゃあ、こっち来て!!
教えます〜!!!!」
少し楽しそうにレーナは言ってきた。
芝が多い場所に移動した。
ここで飛ぶ練習をするみたいだ。
「じゃあ、始めようか!!
まず、翼に意識を集中させて。
そうすると翼が少し動くと思うの、
そしたら、手を広げるみたいに翼を広げるイメージをするの!!」
レーナの言う通りにやってみた。
意識させて動かすまでは、朝洗面台でやったからスムーズにできた。
そして、広げるイメージをしてみた瞬間、
僕の翼が広がった。
「そうそう、良い感じ!!
じゃあ、次は背中にある翼の付け根に意識を集中させて、翼を大きく動かすイメージで動かしてみて!!そうするともう飛べる様になると思うよ!!」
これが少し難しかった。
人間にはない感覚を使うため、上手く動かなかった。でも、コツを掴んだら簡単だった。
イメージ的には胸筋を動かすイメージに近かった。一時期胸筋を動かしたくて練習してた時があった。それが役に立つとは思わなかったけど。
僕は翼を動かして飛べるようになった。
「レーナ先生、凄いよ!!僕飛んでるよ!!」
「知ってるよ!!でも、かなり早い方だよ!!
細かい動きなどは指を1つ1つ動かす感覚で翼全体や羽の1枚1枚に意識を集中して動かす感じだよ!!空はセンスがあるからすぐものにしそうだね!!」
飛べるようになってから1時間ぐらい練習をした。
結構使えるようになった。
移動までできるようになったが、スピードがまだまだだった。
でも、これで帰れはする。
「レーナ先生、ありがとうね!!」
「うーん、お礼を言われる程のことをしてないよ??空、センス良いんだもん!!
私はなにもしてないもん!!」
「そんなことないよ!!レーナのおかげだよ。
教え方が上手いからこんな早くできたと思う!!ありがとうね!!」
レーナは少し照れていた。
「じゃあ、今日はもう終わり!!
疲れたでしょ??明日から訓練を始めるから、今日はゆっくり休んでね!!あっ、気付かなかったけど、今レーナって呼んだね!!やっぱり先生は付けなくていいよ!!」
僕は頷いた。レーナもうんうんと頷いた。
僕は帰る前に大地の所に飛んで行った。
大地は、川辺で槍の素振りをしていた。
とても綺麗な動きだった。
そして、どこか圧があった。
大地の集中が一瞬途切れるのを待って話しかけた。
「おー、空!!もうそんな感じで飛べるようになったのか!!早いな!!今日は帰るのか??」
「うん、今日は帰ろうかなと思ってる。
飛べるようにもなったからさ!!」
「そうか!!じゃあ、明日から訓練が開始か!!レーナは強いからな、空も強くなれると思うぞ!!そのうち俺とも模擬戦するかもな!!その時は全力でやるから宜しくな!!」
「うん、明日から開始みたいだね。少し不安だよ。
それに、レーナがそんな強い感じはしないけどね…
なるべくやりたくはないけど、そうなったら僕も全力で頑張るよ!!」
そう言って大地と別れた。
その後、レーナが待っている神殿の入り口近くに向かった。
「お別れは言えた??」
「その言い方はもう会えないみたいだよ?」
「あはは、ごめんごめん!!」
「じゃあ、ありがとう、明日から宜しく、レーナ」
「はーい、気をつけてね!!」
僕は教わった通りに翼を広げて動かし、
家の方に向かって飛んで帰った。
意外と飛んでいても家の方向は分かるもんだった。
レーナ曰く、飛んでいる時などは普通の人には見えないらしい。
天使の翼にはそんな能力があるみたいだ。
僕的にも都合が良いから良いんだけど。
夕方だったからか赤い色に染められた空がとても綺麗でどこか寂しい雰囲気だった。
家に着いて、自分の部屋に直行した。
ベッドに倒れ込んだ。
色々とあった誕生日だった。
まさか飛べるようになるとは思いもしなかった。
こんな時近くにルカが居てくれたらなと思ってしまう。
僕もいつかはルカのこと割り切れるのだろうか。
そんなことを考えながら僕は瞼を閉じた。
異変に気が付いたのは真夜中だった。