本当の気持ち
家に着いて僕はベッドに倒れ込んだ。
初めての遊園地ではしゃぎ過ぎてしまって、疲れていた。
倒れ込んでほんの数分だけ寝てしまった。
「私、空のことが好きだよ。拓也が引っ越しをしてからずっと一緒に居て一緒に遊んでいるうちに空のこと凄く好きになったの。だから、私と付き合ってほしいです」
僕は黙り込んでしまった。
冬美を今まで恋愛対象として見たことはなかったが、学校の人気者でモテモテの冬美からの告白は正直嬉しかった。
ふと前を見た時にルカがこっちを向いていた。
目が合った。ルカはどう思うんだろうか。
僕が冬美と付き合い始めたら嫌なのかな。
黙り込んでいる僕に対してルカが優しい声で言ってきた。
「空様、良かったですね!!お付き合いしてみてはどうでしょうか??応援致しますよ」
どこか寂しそうな顔をしていた。
ルカがそんな顔をする理由は、親みたいな感覚なのかなと思った。
子供が大人になっていくにつれて親は少し寂しくなるって聞いたことがあった。
僕はゆっくりと冬美の手を解いて冬美の方を向いた。
冬美は緊張からか少し涙目だった。
「冬美、僕で良かったら宜しくお願いします」
冬美は笑顔になり、泣きながら飛びついてきた。
僕は冬美と付き合うことにした。
目が覚めた。
ついさっきの出来事を思い出した。
「そうか…。僕、冬美と付き合ったのか」
と呟いてルカの方を見た。
けど、ルカはいなかった。
いつもいるはずのルカが部屋にいなかった。
「ルカ!?ルカいるの??ルカー!!」
僕は焦った。ルカの使命が僕に彼女ができるまで守ることで、今それが叶った事で僕に仕える意味がなくなり、いなくなってしまったんじゃないかと思った。
「おい、ルカどこだよ!!…くそ、そんなのあんまりじゃないか……おい、ルカー!!」
「空様…?お呼びでしょうか??
どうかしたんですか、泣いていますよ……??」
目の前にはルカがいた。
良かった…安心して僕はまたベッドに倒れ込んだ。
「空様!?大丈夫ですか!??何かありましたか!??すいません、今日は星が綺麗でしたので外で星を見ていましたら声が聞こえたので…」
「もう大丈夫だよ……ただいつもいるはずのルカがいなくて焦っただけだよ…でも、良かったいなくなったかと思ったよ本当に」
「それは申し訳ありません。気を付けます…」
今までずっと一緒にいたからそれが当たり前だと思っていたけど、ルカはいつかいなくなってしまうかもしれないと思った。気になったから聞こうと思ったが、
僕は聞けなかった。
怖かったからだ。
もし、いなくなると知ってしまったら僕は耐えられない。
だから、聞かないことにしようと思った。
知らない方が幸せなこともあると聞いたことがあるし、多分本当にそうだと思う。
「空様…?やっぱり大丈夫ですか?暗い顔をしていますよ??」
「大丈夫だよ…ただ疲れちゃっただけだよ…今日はもう寝ようかな…心配してくれてありがとうね」
「なら良いのですが。そうですね、早く寝ましょう!!だけど、お風呂は入りましょうね!!」
お母さんみたいなことを言うルカに僕は笑ってしまった。
その後、お風呂に入ってから寝ることにした。
冬美と付き合い始めて半年が経った。
付き合ってから大きく変わったことはなかった。
てか、付き合って何をすればいいのか全然分からなかった。
僕たちが付き合ってしたことは、
手を繋いだことだった。
付き合う前も手を繋いだことはあったけど、恋人繋ぎをしたのはこの前が初めてだった。
僕はそれでも良いが何かすべきではないかと思って、照史に電話をして相談することにした。
「照史…少し質問なんだけどいい??」
「冬美とのことか??」
「なんでわかったの!?!?」
「まあなんとなくな…で、どうした??」
「付き合ったは良いけどさ、何をすればいいか全然分からなくて……照史は彼女いるじゃん?
だから教えてほしくて」
照史には、彼女がいる。
しかも、もう3人目らしい。
照史はインテリクール系でいつも本を読んでいる。
しかも、中々のイケメンだ。
僕でもあの顔は羨ましいなと思うほどにイケメンだ。
「そうだな、初めはキスじゃない??
キスもしてないんだろお前ら??」
「きすぅ!?!?!?無理だよ!!(笑)
冬美としてるの想像できないし、笑っちゃうよ!!!!(笑)」
照史のため息が聞こえてきた。
「あまり言いたくなかったけど、冬美のためでもあるし、空のためでもあるから言うな、怒るな??」
真面目な声で照史は言ってきた。
僕も真面目に答えた。
「うん、なに??」
「空さ、冬美のこと好きじゃないだろ??」
「えっ??」
想像していたことと違って驚いた。
冬美のことは好きだ。
一緒にいると楽しいし、まあルカの次ぐらいに可愛いと思う。
「何言ってんだよ、好きだよ!!」
「いや、好きじゃないね。空の好きは友達として好きなんだろ??」
「ちが……」
違うよと言えなかった。
確かに僕は冬美をずっと友達として好きだった。
恋人となったけど、僕の中では友達のままだった。
「違わないだろ??だから、キスのことを言った時に無理だとか笑っちゃうとか言ったんだろう??本当に好きなら恥ずかしいとかしたいなと思うのが強いはずだろ??」
俺は何も言えなかった。ただ黙るしかなかった。
「空は、今、誰とそういうことしたいんだよ??目を閉じて真っ先に浮かぶ人は誰だ??目閉じてみろよ!!」
そう言われて目を閉じてみた。
真っ先に浮かんだのは、ルカだった。
そして、ルカとキスをするのを想像したら、
恥ずかしくなって目を開けた。
それに少し心がむずむずした。
「照史、ごめん…」
「謝るのは俺にじゃなくて、冬美だろ。
謝ったってことは、冬美じゃなかったんだな…」
「うん、違う人だった…」
「そうか…まあ仕方ないよ。
みんながみんな両想いになれる訳じゃないし、ちゃんと冬美に言えよ!!
そして、ちゃんと別れてあげろよ!!」
「照史、本当にありがとう……」
「いいよ、友達だろ??
それに、俺たちは大丈夫だよ!!
また3人…いや、4人で遊ぼうな!!」
「照史って本当に同じ歳??(笑)」
「うるせえ!!じゃあ、またな!!」
「うん、またね!!」
僕は少しスッキリとしていた。
そして、冬美に会ってちゃんと伝えようと思った。
冬美には今から公園に来て欲しいとメールをした。
返信はすぐに来た。
「ルカ、今から冬美に会いに行ってくる」
「分かりました、いつもみたいに空様を確認できる範囲で遠くにいますね!!」
「いや、今日はずっと隣にいて」
ルカは驚いた顔をした。
けど、すぐにいつもの優しい顔になり、
にこっと笑い頷いた。
公園に着いた時には冬美がベンチに座っていた。
冬美は僕のことを見つけると小走りで駆け寄ってきた。
「いきなり呼び出すなんて何!?!?」
「ごめんね、急に…」
そういうと僕は少し黙ってしまった。
今から言うことで冬美とはもう友達には戻れないかもしれない。
それが少し怖かった。
友達がいなくなってしまうのは本当に悲しいから。
まだ間に合うかもしれない。
今からでも冬美を全力で好きになれば失わないかもしれない。
「空様、大丈夫です、私がいますよ」
ルカの優しい声が聞こえてきた。
僕は覚悟を決めた。
「冬美、話があるんだ」
「待って!!私も話があるの!!
私からでもいい??」
「いや、冬美」
「お願い。最後のお願いだから…」
僕は何となく察してしまった。
そして、ゆっくりと頷いた。
僕から言わなきゃいけなかったけど、冬美の真剣な表情と最後のお願いと言われたから断れなかった。
「ありがとう…えっとね、空には悪いんだけど別れて欲しいなって!!」
「…」
「ごめんね、私から告白したのに…
私、好きな人できちゃった!!」
「冬美…ごめん……」
「なんで空が謝ってるの!!
私が悪いんだよ!!!!
でね、わがままかもしれないけど、
それでも友達でいてくれる??
また、いつもみたいに遊んでくれる…??
って何で泣いてんのよ!!」
僕は情けなくて、そして、冬美の優しいに涙が止まらなくなっていた。
「もうー!!で、答えは??」
「もちろん、ずっと友達だよ!!
冬美、本当にごめんね…」
「もう……」
俺が言おうとしたことを全部冬美が言ってくれた。
「で!??空の話は??」
冬美は意地悪な顔をして言ってきた。
「いきなり、意地悪するんだね…悪魔かな??」
「なにそれー酷い!!空のが悪魔だもん!!」
そんな会話をしながら僕たちは別れた。
帰り道ルカが聞いてきた。
「空様、良かったのですか??
振られてしまいましたよ……」
「ルカは分かってないね(笑)
冬美は僕のためにわざとあんなことを言ってくれたんだよ。本当に優しい子だよ。
もし、今後何かあったら守ってあげなきゃね!!」
ルカは不思議そうな顔をしていた。
「ルカ、帰ったら話があるんだけどいいかな??」
「はい、空様!!いつでも大丈夫ですよ!!」
「ありがとうね」
ちゃんと言おうと思った。
家に着いたら僕はルカに告白する。
どうなるか分からない。
けど、僕はルカのことが好きだ。
覚悟はできている。