力を合わせて
大地には家族がいなかった。
小さい頃に両親に捨てられ、親戚の家で育てられた。
両親は大地を家に置いて、急にいなくなったらしい。
大地はそれでも両親を憎んでいなかった。
いつかまた会いたいなと笑顔で話していた。
その時、僕は大地って本当に優しい奴なんだなと思ったし、幸せになって欲しいなと思った。
でも、そんな大地はもういない。
殺されてしまった。守れなかった。
僕は大地から離れないで泣いていた。
レーナとアンが僕の近くに寄ってきた。
「空…ごめんね……私たちが居たのに…」
「大地さんを守ることができませんでした」
僕は黙っていた。
レーナとアンが謝ることじゃない。
それは分かっていた。
でも、何も言えなかった。
どこかでレーナとアンが助けてくれると思っていた。
助けることが出来ないなら何のためにいるんだよと思ってしまった。
僕は、そんなことを思いながら彼女たちの方を見た。
その瞬間、自分が許せなくなった。
レーナとアンは、本当にボロボロだった。
必死で大地を守りながら戦ってくれていたはずだった。
レーナは慶次に支えられながら立っていた。
アンもギリギリ立っていられる状態だった。
そして、2人とも泣いていた。
悲しい、悔しい、情けないと感情が色々と混ざり合った顔をしながら涙を流していた。
僕はこの2人に怒りをぶつけようとしていたと思うと情けなくなった。
僕は、レーナとアンの所に駆け寄って抱きしめた。そして、声を出して泣いた。
大地を抱えて神殿に戻った。
神殿にある丘に墓を作ることにした。
今日は神様がいなかったが、
天使たちがみんな手伝ってくれた。
みんな泣いていた。
花を置いて僕たちは家に帰ることにした。
危ないからとレーナとアンが付いてきてくれた。
「2人ともありがとう。気を付けて帰ってね…」
「うん。空…本当にごめんね……」
「ううん、謝らないで。また明日ね…」
2人は頷き帰って行った。
僕はベッドに横になった。
そして、自分の無力さを実感していた。
「何も出来なかった……もっと強くならなきゃ……」
そう呟きながら枕に顔を押し当て叫んだ。
目が覚めた時にメールが来ていた。
照史からだった。
『空、久しぶり。
いきなりだけどさ、
昨日、隣町で拓也らしい奴を見たよ。
一瞬だったから人違いかもしれないけど。
一応報告しておくな。
また分かり次第、連絡するな』
大地が殺された地域だった。
継承者じゃないから拓也は大丈夫だと思うが心配になった。けど、それと同時に少し嬉しかった。
拓也が見つかったかもしれない。
今度隣町に行ってみようって返信をしておいた。
朝家を出た瞬間、びっくりした。
「おはようございます、空さん」
「アン……!?どうしたの??」
「昨日のことがありますので、少しの間送り迎えをすることになりました」
「…そっか……じゃあ…行こうか」
「はい、私の存在は気にしないで下さい」
そう言われても無理だと思った。
「昨日、居た悪魔はどんな奴だか分かってるの??」
「はい、分かっています。今日の座学でお伝えします。それと、今日から座学と訓練は慶次さんと2人同時に行うことになります」
「分かった。2人同時は、今後の為?」
「はい、大地さんのことがありましたので、
なるべく1人で悪魔の相手にするのではなく2人で行うようになりました。
その為、日頃の訓練も2人で行う方針になりました」
「そっか、分かった。今日は学校終わったらそのまま神殿に向かうね」
「分かりました。では、終わったら呼んでください。お迎えに向かいます」
そう言ってアンは飛んで行った。
学校では授業に集中することが出来なかった。
どうしてもあの時の悪魔を考えてしまう。
あいつは倒さなきゃいけないそう思った。
早く授業が終わって欲しかった。
周りの人には見えない為、授業中に天具で盾を作ったり鎧を作ったりして訓練をしていた。
授業が終わり、すぐにアンを呼んだ。
アンも準備していたのか、すぐに僕の傍に来た。
神殿に着くと慶次がもう座学の部屋で待っていた。
「おはよっ慶次、早いね」
「おはよう。うん、居ても立っても居られなくてね…」
「うん、分かる…僕もそうなんだよね…」
アンが部屋に入って来た。
「それでは、今座学を始めますね。
本日は、悪魔の中でも上級に当てはまる重要な5体を教えますね」
「アン…その中に昨日の奴がいるってこと??」
「はい、そうです。空さん。
昨日いた奴は、《力を欲する悪魔 タナスタス》です。タナスタスは、自分よりも強い奴を殺すことで力を得ます。どんな手を使ってでもターゲットを殺します。それに今回のタナスタスが、厄介なのは、人と契約をしています。それにより力は倍以上になっていると思っても良いです。これは推測ですが、レーナさんが5体ぐらいの力だと……。もし、見かけても戦わず逃げて下さい…絶対に……お願い致します…もう…」
「アン、僕も慶次も分かってるよ…」
そう言うと慶次も頷いた。
アンは暗い顔をしていたが、軽く頷き続きを話そうとしていた。
多分アンは、あの時すぐに大地を逃していたらと後悔をしているんだと思った。
「では、残りの悪魔をお伝えしますね。
《記憶を欲する悪魔 タイドリ》です。
タイドリは、人から記憶を奪い自分の力に変えます。大事な記憶ほど強力な力に変わります。
記憶を奪われた者は何を奪われたのか忘れてしまいます。奪われてしまった記憶はタイドリを倒さなくては戻ってきません。そう言われていますが、全てが戻って来るかは分かりません。
次に、《心を欲する悪魔 メンスタル》です。
人の心を奪う悪魔です。奪う心が悪な程、力が増加します。善の心であれば怒り、廃人に変化させます。その後に下級悪魔と契約をさせます。それと、奪うと言いましたが食べるに近い感覚ですので、消化されて悪魔の体内に吸収されてしまった場合は、2度と心を戻すことができません…
次は、《炎を支配する悪魔 ファントリア》です。
ファントリアはその名の通り炎を支配して操ります。炎を取り入れる程、力が増加していきます。先程お伝えした、タナスタスと力は五分ぐらいです。最悪の場合は太陽並みまで熱を発することがあります。
こいつと出会った場合は、周りに何もない場所や海に近いところに誘い出した方が良いです。1番は結界を張る事です。
そして最後に、《人を支配する悪魔 メモタリス》です。
メモタリスは人に乗り移り支配します。
今までで、乗り移られた人を助けることは出来ませんでした。
倒し方は心臓を狙うことなのですが……乗り移られた人も亡くなってしまいます……
1番厄介です。メモタリス自体は弱いので乗り移る前に倒すことが勝つ条件です」
その後もアンから倒し方や特徴、弱点などを教わった。
僕も慶次も真剣に聞いていた。
気付けば2時間近く行っていた。
レーナが部屋に飛び込んで来た。
「アンいつまでやってるの!??
今日はもう帰ってもらって続きは明日にしな!!そして、明日は戦闘の訓練の時間もあるからね!!」
「あっ、レーナさん申し訳ありません。
空さんも慶次さんも…つい時間を気にせず、申し訳ございませんでした…」
こんなアンを見るのは初めてだった。
少しレーナがアンと話があるから待っててと言ったので慶次と部屋で待つことにした。
「もしさ、メモタリスが僕に乗り移ったら慶次がやってくれよな…」
慶次は驚いた顔で僕を見てきた。
冗談で言っているのかと思われたのかもしれない。
でも、僕は覚悟を決めていた。
もし、本当にそんなことがあった場合は慶次に殺して欲しいと思ったから。
真剣な僕の顔を見て慶次も察したのか。
「分かったよ。じゃあ、僕がそうなった時は、空が宜しくね」
「うん、分かった…約束するよ」
僕と慶次はお互いに乗り移られたの約束をした。
レーナとアンが戻ってきた。
「慶次、絶対に強くなろうな…」
「うん、明日から頑張ろうね」
そう言って今日は別れた。
そこから2ヶ月間僕たちは、
訓練と座学に真剣に打ち込んで来た。




