となりとくせっけ
きっかけはほんの些細なことから始まる話。今回はちょっと長めに書いてみた。
「おはようございまーす」
「また、遅刻か。ほら、ねぐせもついてるぞ」
「だって、目覚まし時計止めて二度寝しちゃうんだもん」
高校に入学して以来ずっと続いてるやりとりだ。
僕はこの女子、由愛とずっと同じクラスだ。
「おはよー、実くん。今日もねぐせ一つないさらさらの髪だね!」
「おはよう」
そう言うと彼女は僕の隣の席に着く。
彼女は今日も髪がはねている。
実はねぐせではなくくせっけだ。
朝いつも遅刻するのは髪のセットに時間がかかるからだ。
そう彼女がこっそりと教えてくれた。
僕の家は美容院で髪はいつもお母さんがセットしている。
顔は平凡だが、髪型だけは整っているので雰囲気イケメンという枠にいる。
しかし、口数の少なさから決してモテない。
僕は最近彼女のことが気になる。
なぜだろう?
僕にないくせっけが気になるのだろうか?
今日も彼女は遅刻してきた。
髪はいつも通りはねている。
「そんなに気になるなら、『おはよう』以外も言ってみたらどうだ?」
「夕、そんな意味じゃない。僕が気になるのは彼女のくせっけだ」
「なんでもいいだろ? 思ってること言ってみろよ!」
ぽんっと肩を叩かれ、俺は彼女と向き合う。
彼女がまたいつものように挨拶する。
「おはよー、実くん。どうしたの?」
僕は言いたいことが頭の中でぐるぐるとまわり始める。
何を言ったらいいんだ?
ええと、ええと。
「いつもきみのことが気になって、気になってしかたないんだ!」
ずっと思っていたことを言えた。
クラスが一瞬しーんとなり、次に歓声が沸き起こる。
「あいつやっと告白した!」
「前から二人の関係気になってたんだよね!」
「じれったかったよね」
え、え?
どういうことだ。
彼女の顔が真っ赤だ。
僕もやっと自分の言った言葉の意味にきづく。
でも、嘘じゃない。
どうやら僕は本当に彼女が好きかも知れない。
毎朝髪のセットに時間がかかる。
あたしは実くんのことが好きだ。
さらさらの髪。
初めて会った時から気になっていた。
「おはよー」っていつもけっこうがんばって言ってる。
彼きづいてるかな?
少しでも彼に気にかけて欲しくて。
毎朝このくせっけと奮闘してるの。
彼は知らないだろうな。
「はあ、いってきま~す」
今日も遅刻しちゃった。
先生にまた叱られる。
でも、彼を見ると元気になる。
友達にはわかりやすいねとか。
彼以外はみんなきづいているよとか。
言われてるけど、そんなにわかりやすいかな?
「おはよー、実くん」
実くん、好きだよ。
どうだったでしょうか?
恥かしくなるほど青春ってかんじの甘酸っぱさを書いてみました。
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