異世界転生させる人はきちんと選びましょう
開いて頂きありがとうございました。
全てを慈しむ慈愛の目をして。
柔らかい微笑みを浮かべて。
美しい巨乳な女神様は、俺に微笑みかけた。
女神様はどうやら俺に転生して欲しい、という事らしい。
「なぜ私が選ばれたのですか?」
そう俺が尋ねると女神様は優しく頷いた。
「まず貴方は平和で安全な星、地球で育ちました。科学が発展した様々な知識を持った現代人です」
そこまではほとんどの人が当てはまるだろう。別に俺じゃなくていいのでは?という疑問が浮かぶ。
「誰でもいいという訳ではありませんよ?純潔を通したまま死亡した人に限られます」
……そうだな、俺はモテなかったしな。
「そして、芸術を愛し、学問を愛する人であること。絵画や音楽、書籍等をたくさん読んだ人に限られます。かつ金銭などの欲を持たず、活動できる人」
萌え絵を掲示板に投稿したり、DTMで同人ゲームのフリー素材を作ったり、ラノベを読み漁った事だろうか。
「次の転生先の世界で、私の御使いとして人々に慈愛と優しさ、道徳を伝えて貰えないでしょうか?」
そう言って女神は俺の手をギュッと包むように握った。
「お任せください」
即答した。童貞に美女のスキンシップは強力すぎる。
「これから転生する世界は剣と魔法の世界です」
そして女神様がホログラムのような物で俺に説明を始める。
「モラルなどない暴力と力が支配する世界」
モヒカンが剣を持って女性や子供をいたぶっているシーンが出てくる。
「ちょ、ちょっと待ってください、俺は何も取り柄がないオタクですよ?こんな世界で生きるなんて無理ですよ」
「大丈夫です、転生する貴方に強力なスキルを三つあげましょう」
三つ……。ケチ臭いような、すごいような。
「どんなスキルでも良いのですか?」
「あまりひどい物でなければ可能ですよ」
「そのスキルを100個に増やすスキルとかできますか?」
「……あまりひどい物でなければ可能ですが」
どうやら無理らしい。
「経験値10000倍とか、現世とゲートで繋げたりとか、転移できたりとか」
「……あまりひどい物でなければ可能ですが」
これもダメか。
「イケメンになれるスキルとか?」
「……あまりひどい物でなければ可能ですが」
おい……。
「美少女になれるスキルとか」
「…………」
「いえ、冗談です」
優しそうな女神様の軽蔑の目は精神的に無理だ。
「……透視能力とか?」
そう言うと女神は首を傾げた。
「透視能力ですか?」
「はい、透ける度合いはコントロールできるようにお願いします」
「……構いませんが、何のために?もっと凄いスキルでもいいですよ?」
「いえ、透視でお願いします。ほら、暗殺者とかに狙われた時に使えたら便利ですよね?」
「そうですね、解りました。どうぞ」
俺はすぐさま女神様の衣服を透視してみる。
「くっ……!?」
「ど、どうしました?大丈夫ですか?」
「ま、待ってください。落ち着きますから」
巨乳美人、いや美女神の裸……すごい威力だ。
「あとの二つはどうしますか?剣術才能とか魔法才能とかオススメですよ」
「そうですね……時間停止能力をください」
「……時間停止?」
「ええ、戦闘で使えますよね?」
そう言って俺は時間停止ができる某有名漫画を思い浮かべる。
「制約つけますよ?1日3回、5分まで、でどうですか?」
「十分です!!」
そして俺は時をとめて女神様に近づく。
ヒャッハー、お触り自由だぜ!
「……最後のスキルは何にしますか?」
「うぉ!?」
やはり女神様……。女神様を時間停止させる事はできないようだった。
揉まなくてよかった。
「催眠でお願いします、あ、戦闘で使うんですよ?本当ですよ?」
「……」
そして俺は何もスキルを持たされないまま現代日本へと再度転生した。
お尻の青痣は『返品』という文字に見えるらしく、テレビでも紹介された。
まあ、これはこれで……。
読んでいただきありがとうございました。
りはびりちゅう