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旅は道連れ世は無情  作者: 御厨みか
6/8

金策

衝撃のパーティー脱退宣言の次の日ブライスとルチアは北にある故郷へ立っていった。


五年も一緒にいたパーティーメンバーが去るのだ。なかなかに感慨深いものがある。


けど、正直言って感傷に浸ってる場合じゃない。金が、ないのだ。氷鬼の魔核は高く売れた。だが、とどめを刺すのに使った魔法の矢も、高かった。


探求者ってのは、危険だが稼げる職業だ。けれど、出費もかさむ。上層から下層に向かって、出現する迷宮生物は強くなる。そして、それらから得られる魔核も高価になる。でも、強い迷宮生物を倒すにはそれに見合った武器やら防具やらがいるんだな、これが。


というわけで。


「ダリウス、この依頼を引き受けない?」

掲示板に貼られた依頼書の一つを指し示す。


「救援依頼か。死亡場所は中層であるな」


「今の私達にちょうどいいと思うの。腕試しも兼ねて、さ」


あと報酬もいいしね。


「某に異論はない。それにしても、いつもより多くはないか?」

ダリウスが唸る。


「中層の救援依頼?言われてみれば、確かにそうだね」

中堅探求者の質でも落ちたかな?ま、いっか。


受付に依頼書を持って行き、依頼を受けると案内役と引き合わされた。案内役っていっても、死亡したパーティーの生き残りなんだけどね。迷宮内で死んだ場合、決まった呪文を唱えれば生き返らせることができる。ただそれには多くの魔力が必要になる。


だからこうして依頼が出され、誰かがそれを受けるというわけ。


「エリナといいます。よろしくお願いします」

ぺこり、と頭を下げられた。サラサラの髪を肩まで伸ばし、パッチリとした目が愛らしい少女だった。


「こっちこそよろしく」


「道中よろしく頼む」


軽く挨拶を済ませ、管理署の隣の建物に入る。中は何もなく、中央に地下への階段があるだけ。あれが迷宮への入り口だ。


鉱石が薄暗い洞窟を照らす下層を抜け、さらに下に降り中層にたどり着く。中層は深い森となっている。草木に擬態したり、状態異常攻撃を仕掛けてくる迷宮生物がいる。でも、下層の迷宮生物に比べたら余裕だ。うん、中層までなら二人でも十分いけるなー。


「じゃ、ここから案内よろしくね」


「はい」


先頭をダリウス、真ん中にエリナ、後ろに私の順で、エリナさんの指示に従い仲間の死亡場所を目指す。


「エリナ殿。仲間たちを殺した迷宮生物はどのようだったのか、教えてくれないか」


ダリウスがエリナさんに尋ねた。


中層の迷宮生物なんて、私達からしたら大した脅威じゃないけど、一応は聞いといたほうがいいからね。


「えっと、二足歩行でボロボロの鎧を着てて、剣で切りつけてきました。それに、闇魔法とか水魔法とか、色んな属性の魔法も使ってきて……。あ、回復魔法も使ってました」


突拍子も無い内容に思わず二人とも黙り込む。何そのオールラウンダー迷宮生物。下層にだって、そんな奴いないよ。そもそも、二足歩行の迷宮生物って言ったら……中層だとオークくらいだな。でも、オークは魔法なんて使えないし、新種の迷宮生物だったのか?だとしたら、前代未聞だ。


「確か、ここの近くだったはずです。えっと、一部、木がなぎ倒されてるところがあって……そこで……」


エリナさんの話から、それらしい場所がないか探す。付近をぐるぐる回っていると、見つけた。指で指し示す。


「ダリウス、エリナさん。あそこじゃないかな」


「はい、たぶんあそこです」

エリナさんの足が止まった。

「もう少しでエリナさんの仲間と会えるよ。だから、さっさと終わらせて帰ろ」


「はい……ありがとうございます」

エリナの背中を押して慎重に歩を進める。なんだか寒気がしてきた。おっかしいな。

やがて視界が開け、四つの死体を見つけた。二つは斬殺され、もう二つは氷漬けにされていた。氷からは未だに冷気が漂ってきている。寒気の原因はこれか。


「うっ」

エリナが口元を押さえて、顔をそむけた。


「では某は氷を溶かしてくる」


「エリナさんは任しといて」


調子の悪そうなエリナさんの背中をこすりつつ、周囲を警戒する。

ダリウスは火魔法をうまく調節して難なく氷を溶かすと、リュックから魔力回復ポーションを取り出した。


蘇生術(リザレクション)

蘇生呪文を唱え、手早く生き返らせていく。魔力が足りなくなればポーションをのみ、とにかく手早く。蘇生中に迷宮生物に襲われでもしたら面倒だからね。最後の一人にも呪文をかけ終わり、後は覚醒するのを待つだけとなった。もう少し、と思った所でおぞましい気配を感じた。地面を踏みしめる足音が段々近づいてくる。


クソッ、面倒なときに。エリナさんを仲間の側に連れていき、じっとしているように伝える。

ダリウスとアイコンタクトをとり、各々の武器を構える。


どっからでもかかって来い。

依頼は絶対やり遂げてやるんだから。






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