予想外
「二人とも、下がって!」
戦いの音にかき消されまいと、声を張り上げる。
「分かった」
「了解だ」
ブライスが、雷撃で氷鬼の視界を奪い、その隙にダリウスともども距離を取る。
「いくわよっ!能力低下」
ルチアが呪文を唱えると同時に、私もつがえた弓を放った。
どっちもほぼ同時に、氷鬼に当たった。
どうだ?効いたかな?巨体が、ぐらっと傾いた。このまま倒れてくれたら、有難いんだけどな。
「もう一発いくわよ、猛毒弾」
杖を掲げ、とどめとばかりにルチアが魔法を放った。
全員が固唾を飲んで様子を見守る。さっきの魔法を受けた迷宮生物は例外なく死んだ。強力だけど効くまで少し時間がかかる。けど、もうまともには動けないはずだ。
って動いてるー。あ、起き上がって、走り出した。……なんでこっち来るかな⁈
みんな、予想外の事態に初動が遅れた。視界の端に、こっちにカバーに向かってくるダリウスとブライスが見える。でも、遠い。そして、氷鬼は速かった。最期の悪足掻きってわけ?
私は意を決して、弓をつがえた。この矢は特別製で、魔法が込められている。
今度こそ終わりだ。氷鬼のリーチの外ギリギリで、引き絞った矢を放つ。放つや否や、私は全力で横に飛んだ。
直後、大きな爆発音が轟いた。振り返って目に入ったのは、倒れた氷鬼。おー、首が吹き飛んでる。
「これはこれは、とんでもない威力ですな」
ダリウスは、氷鬼の首を感心したように眺めている。
「まあね。かなり値が張ったし」
ホント大出費だわ。ともかく、無事倒せたようで何より。
「よし、角と魔核をとってさっさと引き上げるぞ」
ブライスはさっそく死体を切り開きにかかっていた。ダリウスもそれに習って角を切り取っていた。
解体は二人に任せて、私は周辺の警戒でもしよっと。
「大きな目標が達成できてよかったよね、ルチア」
「そうね」
「後三回は倒さないとね、氷鬼」
「……?」
ルチアは不思議そうに首を傾げた。
「にっぶいなー、ルチア。ほら、今回は私がとどめを刺したから、私しか経験値稼げなかったじゃん。だから、後三回」
「……あ、そっか、そう……よね」
やけに元気がないな。乗り気じゃないのかな。確かにギリギリで、厳しい戦いだったけど、氷鬼からは多くの経験値が得られる。
彼女は修行のために探求者になったって言ってたし、丁度いいと思うけど。
「おーい、終わったぞー」
ブライス達が手を振っている。
「そうだ。帰ったら、打ち上げをしましょ。今後の事も話し合いたいし」
「あ、それいいねー」
ふふーん。何を飲もっかな。
今夜は勝利の美酒に酔いしれるとしよう。




