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旅は道連れ世は無情  作者: 御厨みか
3/8

奮闘

深い森の中、下層へと続く階段を、私達は取り囲んでいた。


「最終確認だ。今から氷鬼を倒す。俺とダリウスで氷鬼の動きを止める。で、ルチアの弱体魔法とフィーの毒矢で弱らせて止めを指す。皆、準備はいいか?」


ブライスが鋭い目付きで全員を見回した。張り詰めた空気の中、静かに頷く。アルスサニアに来て、探求者になって。幼馴染のルチアとブライスのパーティーに私が加わり、最後にダリウスが入った。そうそう、ダリウスと初めて会った時はちょっと驚いた。縦に割れた瞳孔に、二メートルもある大きな身体。竜族との混血、半竜人なんて人族領じゃ滅多に見ないからね。あれから五年。途中、金欠で苦しんだり、死にかけたり……色々あったけど、とうとうここまで来た。今からの戦いはその集大成だ。


「これで私達も氷鬼殺しの仲間入りだねー」

ぺし、と軽く頭を叩かれた。


「もう、フィーったら気が早いわよ」

蜂蜜色の髪を一つくくりにした少女は呆れ顔で言った。


「ルチア殿の言うとおりだ。油断は禁物。気を引き締めて参らねば」


「いつも通りやれば、勝てる。行くぞ」


ブライスが階段から下層に降りていった。私達もその後を追う。うー、気持ち悪い。迷宮の階段って何度通っても慣れないんだよね。平衡感覚がおかしくなるんだ。階段を降りきると、一面に銀世界が広がっていた。猛吹雪が吹いてるけど、そんなに寒くない。装備している防具のお陰だ。魔法防具さまさまだなー。


「寒······くないけれど、視界が悪いわね」


お互いの姿もよく見えない。ここはコロコロと天気が変わる。晴れていたかと思えば、いつのまにか天気が荒れだしたり。


「フィー、補助魔法をかけてくれ」


「分かってるって、ブライス」


呪文を唱え、ブライスとダリウスに筋力上昇の魔法をかける。相手は氷鬼だから、一番強力なのをかけておいた。


これで準備は万全。後は氷鬼が匂いにつられて私たちの前に出てくるのを待つだけ。


私達は、暫く黙々と歩き続けた。静かな時間が続く。幸い、迷宮生物とはまだ遭遇していない。


「きゃっ!」

突然、静寂が破られた。重い音。何かが落ちてきたみたい。


「誰よ、スノーベアー投げ飛ばしたの」

見ると、ルチアの隣に、泡を吹いたスノーベアーが落ちていた。スノーベアーは熊に似た迷宮生物だ。大の男以上もあるスノーベアーを、投げ飛ばせるなんて一体……?


「前から何かこっちに来るぞ!……あれは……氷鬼だ!」

ホントだ。地響きみたいな足音が聞こえる。前方に、人影が見える。すっごい勢いで近づいてくる。


あれ?人影を見失った。直後、地面が揺れた。

ペッペッ。雪が大量に飛んできたんだけど、どゆこと?


「全員、伏せろ!」

何が何だかわかんないけど、とにかくブライスの指示に従う。伏せた瞬間、頭上を何かが通り過ぎて行った。


顔を上げてちらりと周りを窺うと、氷鬼が拳をダリウスに向かって振り下ろしていた。間一髪、ダリウスは転がって攻撃をかわす。大振りの攻撃で隙が出来た氷鬼に、背後からブライスが剣を浅く突き立てた。


雷撃(ドンナー)


剣が雷を纏い、氷鬼を体内から焼き尽くす。


「グワアアアアッ」


氷鬼の悲鳴が響き渡る。腕を振り回し、周りのすべてを薙ぎ払う。だが、ブライスは既に距離を取っていた。怒りに駆られた氷鬼の一撃を、ダリウスが受け流す。

「いざ、勝負!」

そのまま、鬼と撃ち合い始めた。

戦斧(ハルバート)で重い一撃を受け流している。自分の倍以上の大きさの相手と対峙し続けている緊張感は、どれほどのものだろうか。


ダリウスが氷鬼を引き付けているものの、ブライスは氷鬼にダメージを与えられずにいた。最初のような隙がないんだよね。後ろにも目がついてるのかって感じ。


戦況は膠着状態だなー。前衛の体力が尽きる前に、次の手を打たないと。そこで、私たちの出番ってわけだ。


「ルチア、いい?」


目配せすると、力強い瞳で見返された。


「もちろんよ」








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