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旅は道連れ世は無情  作者: 御厨みか
2/8

プロローグ2

真顔でサラリと酷い事言われた。


「いーやーだー。死ねって言われてハイそうですかって言うわけないでしょー⁈」


「実験に犠牲はつきものです。世界でも類を見ない画期的な実験の礎になるんですよ。素晴らしいことではありませんか」


いや、そんな真面目くさった顔で言われてもね。大体、どんな素晴らしい実験だろうが、自分が犠牲になるなんてまっぴら御免だ。そんなやり取りをしている間に、新たな悪魔が三体現れていた。


そして、小さい立方体が四つ、宙に浮き、大きな一つの立方体を形作っていた。あれは……何かの魔巧具かな?


「ではお願いします」


ムルムスの合図で立方体の中に放り込まれた。いったー、腰打った、腰!あれ?四隅の魔巧具が怪しく光りだしたんだけど。

身体に力が入らない……。

鎖の拘束を振り解こうともがいたけど、ビクともしなかった。何でできてるのよコレ。壁に体当たりしてもダメだった。無駄に痣が増えただけだ。

どんどん力が抜けていく。ひょっとして死ぬのか、私。随分あっけないものだ。よりにもよってムルムスに殺される?冗談じゃないよ。何かないか、と周囲に視線を走らせる。と、私の視線はある一点で止まった。

頭上に、ぽっかりと穴が開いていた。初めは小さかった穴は周りを侵食するように広がっていき人一人分くらいになった。


「助けに来たよ、キルフィア」


突然、穴からリックが降ってきた。私を閉じ込めていた壁を、魔法で壊す。この部屋は魔法を阻害する作りになっているのに、涼しい顔だ。まあ、リックは空間魔法のスペシャリストだし、この程度の阻害は何ら妨げにならないって事だろう。……リックなら、私がさらわれかけた時も、十分助けられたはずなんだけどなー。


「遅い。今更何しに来たの」


「だからさっき言ったじゃないか、助けに来たって」


リックは私を抱えると身軽な動きでジャンプし、転移門(さっきの穴)に飛び込み、白い空間から脱出した。


転移先はリックが作った亜空間で、私たちの家がある場所だった。リックがいろんな魔法をかけて隠蔽工作しているからここにいれば安全なのだ。お陰で私は四六時中ここに引きこもっている。

1日三食に安全かつ快適な寝床がつくここはまさに楽園。気が付けば軽く二千年くらいはずっとぐうたらしている。振り返ってみると、よくこんなにだらけられたよね。ずっと自分は平凡だと思っていたけど、もしかしたら怠けの天才かもしれない。

閑話休題。無事とは言い難いが、とにかく帰ってこれて良かった。


「助けてくれてありがとう。悪いんだけど、鎖も解いてくれないかな」


「やってみる。そこを動くなよ。切断せよ(スラッシュ)


鎖は呆気なく切れた。ちょっとヒヤッとした。私も切られるんじゃないかってあー服に傷が……。


「ちょっとー、服まで切らないでよ。これ一張羅なのに」

胸の辺りをスパッと切られた。


「つい力み過ぎた、悪い。キルフィアを拘束していただけあって、意外と頑丈だったんだ。直しておこうか?」


「自分で何とかするから」

気にしないで、と手を振る。切れた所を押さえつつ、マイルームにもどる。替えの服に着替えると、私は暫し動きを止め考え込む。そして、ある事を閃いた。


「決めた。迷宮都市アルスサニアに向かうわ」

ばん、とドアを開き、リビングにいるリックに叫んだ。


「いきなりだな。目的は抵抗力の回復か。でも、その見た目じゃ人族領に行けないだろ?」


青い肌に頭の二本の角。口には鋭い牙。どっからどう見ても鬼である。だがそんなのは問題にはならない。

青い肌を肌色に、角と牙をなくす。仕上げに顔を変えて身長を伸ばすと完成。


「どう?なかなかいけてるでしょー」

くるっと一回転して見せる。


「んー、ボクは前の方がいいと思うけどな。でも、変身魔法が使えるなんて珍しいね。全然知らなかったよ」


「まーね。ほら、私って小細工とか得意だから」


「いくら見た目を変えられるからって、わざわざ敵地の只中に行くのはな……。もっと他に方法を探したほうがいいんじゃないか」

リックは整った顔をしかめ、長く尖った耳を揺らしている。


「そう心配することはないさ。大体、危険を避けて通ってたらどこにも行けやしないよ。……ところでアルスサニアまで送ってほしいんだけど」


リックはやれやれとばかりに肩をすくめた

「相変わらずだね、キルフィアは。良いよ、送る。但し、絶対無事に帰って来てくれよ」


「もちろん」






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