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花火大会・前編

 


 ―――前年度8月某日。つまり、憂たちが2年生、千穂誘拐騒動からおよそ3ヶ月後。


 千穂の日記の中。

 何気に夏休み中の記述の容量は大きい。それはイベントが盛りだくさんだったことを示していると云える。

 千穂にとって印象の薄いものから濃いものまで。80年後も思い出せるよう、なかなか細かく書き綴られている。


 その中でなかなかのインパクトを残したイベント。

 花火大会の様子を大守 佳穂の主観にて紐解いてみよう―――







【夜空を彩る日本最多5万発の打ち上げ花火が蓼の花自治区に咲き誇る。】


 5万発? いまいちピンとこんぞ?


「多いのけ?」

「……どれのこと? 主語、どこに置いてきたの?」


『あうんのこきゅう』はどこ行った? 読み取れよー。千晶にだから大丈夫と思ったんだけどなー。

 仕方ないから、煽り文句だらけのビラ。読んだ部分を指差してあげた。ひと手間かけさせやがってー。


「5万発は多いよ。本当に日本最大」

「へー。そうなんか」

「ってか、調べなさい。あんたの右手の平べったいのは何?」

「これ? これはスマホっていうんだぞ? 知らんのか?」

「知ってるわ! それで調べ……もういい……」


 なんだ? つれないなー。もっと遊べよー。


「日本最大って言っていいんけ?」


 規模じゃなくて、地理的な方向で。


「……いいんじゃない? テレビも47都道府県プラス1自治区とか言い出したし。困ってるみたいだけどね。色々と」


 おー。さすが、言葉足りんでも読み取ってくれたぞー。


「その言い方だと、自治区ヤケに目立つよなー。今まであたしら、43県の1つで埋もれてた印象だったのになー。都道府が羨ましかった時期あったぞー?」

「それはわたしもあった気がする。小学生の頃だけどね」


 小学生の頃かー。JS千晶はポニーじゃなかったぞ? 普通に下ろしてた。髪もそこまで長くなかったぞ?

 あれだ。千穂くらいの長さでキャラ被り。んで、千穂は可愛い顔してるからイメチェンしたんだぞ。一緒だとなんか嫌だったんだろーなー。比べられるし。なんとなく気持ちわかるぞ。


「日本最大級の三尺玉……。言葉のマジックもいいとこだね」


 ん? どこ見てるんだ? これか?

【大輪の花弁を開く、日本最大級の三尺玉に酔え。】


「日本最大の打ち上げ花火は四尺玉。打ち上げずに爆発させたものだと四尺六寸玉だね。この四尺玉はほとんどの花火大会で見れない。難しいんだよ。だから四尺を例外として除外すると三尺玉でも日本最大級になるわけ」


「……そう?」


 なんか語りやがった。予習しやがったな。千晶先生。

 あたしも事前に勉強したぞ? 千穂に聞いた。なんで花火大会とか? 今までなかったのにって。チャットで。



 千穂【……実はね。総帥さんが蓼園宣言した日にVIPルームに来てね。その時に宣言したんだよ。見たばかりのDVDよりも大きな花火大会をプレゼントする! とか】


 千穂【ブルーレイだったんだけどね(笑】


 千穂【でも11月だったよね? よりによって、これから冬。だからこの夏まで待ってる間に準備進めてたんだと思うよ?】


 千穂【実は憂のためなんだよね。この花火大会って。私も思ったんだよ。あ! 総帥さん、忘れてなかったんだ!(笑】


 千晶【花火大会って冬でもやってる自治体、結構あるんだけどね】


 千穂【そうなの!? 知らなかった】


【あたしも知らんかった!】佳穂



 知ってる千晶さん、花火好きなんけ? 知ってること知らん問題。

 やっぱり調べただけなんだろーけど。ってか半端ない。総帥さんマジすげー。どれくらいかかるんだ?



「なー。あれか? あそこで過ごすん? 憂ちゃんは」


「だと思う。ガラスか? さっきあそこ撮ったら反射したわ」


「マジで? 見せて?」


 なんとなく、まじまじと確認。

 なんか白い一角なんだ。あそこ。


「ま、それくらいしてくれなきゃ困るわな。もうすぐ、蓼園市のシンボルになるんだからな。なんかあったらどうにもならん」


「それな」


 …………。

 今、あたしたちが時間潰してる場所のご近所さん。

 この人たち、なして男2人で来てるのに甚平さん着用なんだ? 2人分にしちゃ大きいレジャーシートで広々と場所取り。

 かれこれ20分くらい2人のままだから間違いない。誰かを待ってるー……みたいな会話もなかったし。


 ナンパか! ナンパの予定か!? いい場所取ってるから一緒に見ない? か!?


 あたしはナンパ超嫌い。しつこいナンパ男さえ出てきてなかったら、優くんの事故はなかったわけだし。


 来るなよ? 絶対に来るなよ?

 最初は優しくお断りするけど、しつこかったら知らんぞ?


 あそこ。

 来賓席の周りの黒服さん呼ぶぞ?


「……佳穂さん?」

「なんですか? 千晶さん?」


 千晶って浴衣似合うよなー。ポニーテールのままなんだけどさ。カタカナ表記の髪型の癖に民族衣装合うとかどーなってんだ?


 ……民族衣装け? 浴衣って。その前にポニーテールってカタカナ名なんが変なのか?


「行かないの? 30分前なったし、そろそろ姿を見せてもいい時間だよ?」


 …………。


「あそこ行くのか? ホントに行くのか!?」


 実はこれが行けない理由だ!


 いちめーとるほど高く作られた来賓席なんだけどさ。その中に椅子……け? なんか、角度の付いた……。あれだ。プールサイドに置いてあるような寝そべるくらいに傾いたやつ。あれがいっぱい。たぶん、花火との距離が近いいい場所だからあれが楽なんだろーなー……。普通に見てたら首が痛くなりそうだしーって感じだけど……。


 ライトアップされてるんだぞ!? こうこうと照らされてるぞ!? しかも、なんか透明な壁だぞ!? アクリルかなんかに囲まれた空間。

 あそこ行ったらちょー見られるぞ!?


「じゃあ佳穂は総帥さんと区長の招待を無視する……と。憂ちゃん、さみしがるよ?」

「ちょ……! そうじゃない! そうじゃないけど厳しー!」

「そんなことはわかってます。でも憂ちゃんも千穂も何度も経験していること。2人は見られてなんぼだって梢枝さんも言ってます」


 すごいよなー。そう考えると。

 もう憂ちゃんはもちろん、千穂も全国区だぞ? 知名度も人気も。下手なアイドルより熱狂的なファン抱えてるってさ。


 あたしらみたいな凡人は……。

 

「動物園の動物じゃないかー!」って思う!

「あんたの場合、ケモノっぽいからちょうどいいんじゃない?」


 傷付いた。こんな繊細な子捕まえて言うセリフじゃない。


「それはさすがに酷い。千穂も引くレベルだぞ?」


 なんか今日は言い負けるなー。ちょっと調子悪いぞ。こんな時、千穂がバランス取りにくるんだけどなー。『わかる』とか言って。


 んー? わかるとか言ったら追い打ちだよなー。ちょ、それ酷くないみたいなことになるからそこで攻撃終了する流れによくなる。

 狙ってない。千穂の場合は天然だ。


「暑くないんかな? あそこ」

「さぁ? 憂ちゃんも千穂ちゃんも暑さとか平気そうだしいいんじゃね?」


 そんなことない。憂ちゃんも千穂も人並みに汗くらい掻くぞ? 甚平のお兄さん。


「……それ」


 千晶のひと言。嫌そうな顔だなー。


「うん。わかるぞ」


 日はほとんど落ちたけど8月だぞ? ここに立ってるだけで暑いんだ。

 そんなのなのになんかケースみたいなの。しかもライトアップ。絶対暑いって。

 暑いだろうし、恥ずかしいし……。


 だからここでまごまごしてんだー。実は。到着したん早かったんだぞ?


「ん? 30分前だぞ。そろそろ出陣しちゃう?」


「いや、始まってからにする。もっと近くで見たいーって感じの子に声掛けてくぞ。花火でも憂ちゃんでも見たいに対応出来る位置取り……我ながら完璧」


 ……やっぱりナンパしに来てるんか。


「千晶? 場所変えるぞ」

「そうだね」


 お前もだよなー。ナンパ嫌いなの。





 それから15分後に憂ちゃんたちが登場した。


「………………」


 ツッコミなしかいっ! ツッコミどころだろ!?

 赤色灯回したパトカーだぞ? ツッコミどころそのいちだぞ? 先導されてきた。車列が。

 この河川敷に突入だぞ?


「…………行きますか」

「……とりあえず近くまで」

「このヘタレ」


 くっそぅ。めっちゃバカにした目で見やがった。

 歩き始めた。なんか知らんけど一気に増え始めた人の隙間をどんどんと。


「ちょ! ちょっと待てよー!」


 ……とか言いながら、人混みかき分けて愛さんの車の近くに。

 お前もヘタレじゃないか! 来賓席行くんかと思ったぞ!


 車から降りてきたのは康ちゃんを先頭に梢枝さん、千穂、憂ちゃんの順番。運転席の愛さんは話が別。

 千穂、あの夏祭りの時の浴衣だー。紺の地に白い模様の地味なやつ。合わせた憂ちゃんも白地に紺の地味なの。

 あたしらのは、お互い両親が頑張った派手なの。フツーによく見掛けるやつ。あたしは青地の黄色い帯で、千晶が白地に赤い模様のピンク帯だ。相変わらず、意外と乙女チックなチョイス。


 んで、停止。

 来賓席を見て停止。周りに集まる警護の人とか、エライ人。鈴木さんたちも苦笑い。そりゃ腰も引けちゃうって。


「――あれ?」


「……あれ……ですか……?」


「あれみたいだね……」


 よく聞こえる距離。薄暗いから気付かれてないー。

 気付かれたら出なきゃならんけ、入っていきやすいのになー。


「そうですねぇ……。やむを得ませんわぁ……」


「せやな。憂さん見たい人、仰山おるしなぁ」


 やっぱりワザとこーしたんかー。見られてなんぼのお付き合い? 仕方ないんかなぁ。


「うむ。堂々とするがいい。何も気にせず楽しめば良いのだ」


 おっと。総帥さん登場だ。遥さん、生徒会長ももちろん一緒。今はもう違うけど、なんとなくそう呼んじゃうんだー。

 3人とは最近、ちょくちょくあたしらも会うぞ? 大ボスが強制ダイエット中で大変って、この前、言ってたぞ? 中学生時代にはそんなん想像も出来んかったなー。


 その総帥さんを先頭に例のケース……じゃなくて、来賓席に突入……。自治区長さんも。

 続いて梢枝さん、千穂……。千穂に手を引かれた憂ちゃん、愛さん、康ちゃん。


「……あれ?」


「どした?」


 あの人たちの存在感すっごいよなー。千晶のこと、半分忘れてた。なんだかんだ言っても千穂の存在感もすげー。結構、元々だったりするけどさ。本人は消そうとしてても目立つんだ。


「なんか、暑くなさそうだね」

「あー……。たしかに」

「それどころか涼しそう」

「なにかしてあるんじゃね?」

「だろうね」


 四方は……やっぱ、あれアクリルかー。たぶん、分厚いぞ? あれ。

 上は……? なんか、ちょっとずらしてある感じ? ちょうど箱のフタをずらしたみたいに。


「……まずいね」


 ……ん?


「何が?」


「出るタイミングを逃した」


「…………そうだなー」


 仕方ないなー。

 もうちょいこの辺ですごすかー……。




 お久しぶりですー。

 生きてました。

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