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『半脳少女の娘』その一、急患の知らせ

 ※時系列的には、この After の序盤の続き、卒業間近となっております。

 過去の振り返りではありません。












 



「――千穂も――くる?」


 憂のお得意、上目づかいでお伺い。来て欲しいんだね。だったらそう言えばいいのに。


「私、話ある……から、ね?」


 憂の成長促進について。開始したんですよーってお伝えしないといけない。


 私が言うと、にゅーって出てきた唇さん。

 そんな不満そうにされてもさ。余計に恥ずかしがるでしょ。私が一緒すると。


「憂さん? 行きますよー?」


 VIPルーム内からの恵さんの手招きと私のバイバイで歩き出した。またあとでね。



 今日は毎週恒例の定期検診。

 忙しい憂だけど、これだけは外せない。大切な対外アピールだからね。


 ……成長してるかも気になるし。体重も上げ止まっちゃって長いけど。

 私も痩せてるからBMIで同じくらい。太ったら憂と一緒だから目立つし、絶対にキープしないといけない……!


 なぁーんにもしてないけどね。運動も時々、バスケ会で汗を流すくらい。元々、いっぱい食べないから。食が細いってよく言われます。


「千穂ちゃん?」


「はい?」


 問いかけてきたのは、ここにいらっしゃる先生四人衆の1人。渡辺先生。

 振り返ると島井先生、院長先生、蔵迫先生、皆さん、思い思いの位置取りで見てられました。


 ……ちょっと緊張。凄い先生方だって思うと……ね。お1人ずつと話すには問題ないのになんでだろうね?


「今日は千晶ちゃん、来なかったんだねぇ」


「あ、はい。毎回毎回お邪魔しちゃ悪いって……。大学6年間もあるからまたの機会にだそうです」


「そっかー。残念! あの子と話すのも好きなんだけどねー。難しい話をじっくりと飲み込んでいくところとか、もう可愛くって」


「…………えっと……」


 ……なんの話かな? 渡辺先生の場合、『あの子と』じゃなくて『あの子に』のような気もしちゃうけど、そこは言わない。

 けどね。千晶の医学部合格は、基礎勉強に付き合い続けてくれた梢枝さんはもちろんだけど、最新知識をこの病院の先生方が教えてくれたからってのも大きいと思う。


 この蓼園総合病院は、ちょっと前の現代医学を近代に追いやっちゃったって言われてるくらいだし。

 特に島井センセと渡辺センセの2人で。


 蔵迫センセも注目を浴びてる。私と憂のことで。

 女性同士で子どもを授かることができるっていう二母性とか。どんな選択を私たちが選んでも『必ず意に沿う』って公言されたから。


 どうするにしても、憂が成長してくれないとダメなんだけどね。


「……渡辺くん。千穂さんが困ってるじゃないか」


 あ。別に困ってたワケじゃないんですけどね。渡辺センセは女性を見ると、とりあえず褒める。イタリアの人ってこうなのかなって感じ? 単なる偏見?


「えー? 島井先生も可愛いでしょ? 千晶ちゃん。一生懸命、教えを乞うところとかグッときますよぉー」


「……否定はしません」


「してください」


 口元を隠して笑いながら蔵迫先生のツッコミ。わかります。娘くらいの年齢差あるから。


 ……?


 あ、そっか。娘として可愛いって言っておられるのかも。島井先生の場合、そう思えるよね。


「いやぁー、自治区制様々だよね。日本の法からちょっと外れてるから医学部作れたんだよぉー? あーいうのは新規参入とかすっごいハードル高いんだって。獣医学部のほうもそうらしいよぉ。だから人材不足だったりするんだけどね。既得権益出来上がってる分野はこれだからダメだよねぇ。でも、そんな(しがらみ)から外れてる自治区の未来は明るいよぉー? なにせ、利権とかそんなの無視してやりたいことやれるんだからさー。問題は土地かな? こればっかりは早々、増やせないからねぇ。僕の予測では、将来的に北も南も山そのものが無くなっちゃうと思ってるよぉー? もちろん、街中がタワーだらけになってからだけどねぇ」


「「「………………」」」


 ……なんの話だっけ?


「この病院もそろそろ拡張工事完了だよねぇ。大喜びすると思うよぉ。海外からの患者さん。もうホテル待機しなくて良くなるんだからねぇ。ん? その人たちは大金持ちだから関係ないかな? どう思う? 千穂ちゃん?」


 えっ!? 私!?

 よく話すなーくらいに思ってたから半分くらいしか聞いてないっ! ……っていうか、理解しようとしてなかった!!


「ところで渡辺くん?」


 割って入られたのは院長先生。


「はい! なんでしょうか!」


 ……院長先生に助けられたのかな?


「大事な話があったはずでは?」


 …………?


「あー! そうだった! もちろん覚えてますよぉ?」


 なんだか、一瞬で物凄い矛盾を聞かされたような気がする……。

『そうだった』って言っておいて、もちろんとか。


 あれ? なんか渡辺センセの雰囲気変わった。普段は糸目なんだけど、ちょっとだけ見開いておられる……?


「千穂ちゃん。まずいかもしれない」


 えっと……。まずいって。


「何がですか……?」


「憂ちゃん」


 ……え?


 …………え!?


「何かまずいことがあるんですか!?」


 体に異常!? また誰かに狙われたりとか!?

 今度はなに!?


「……渡辺くん」


「君はどうしてそう不安を煽るような言い方を……」


 渡辺センセの両側から島井センセと院長センセの指摘。

 もう安心。


 ……渡辺先生って意地悪だよね。そこまでの話じゃないのは、お2人の様子を見ればわかります。蔵迫センセはご存知ない事柄かな? 興味しんしんって感じ。


「いえいえ。本当にまずいですよ。ある意味で」


「……ふむ」


「確かに考えようによれば、良くないことなのは間違いないですが……」


 ……気になってきちゃった。


「もしかすると恨みまで買っちゃうかもしれませんよぉ?」


 …………。


 それでさ。


「あー! もう! 渡辺先生! 早く何かを教えてあげて下さい!」


 あはは。さすがの蔵迫先生。私もいい加減にしてとか、ちょっぴり思っちゃってました。


「そうですね」


「え? 島井センセ!?」


 そうですね! 出た! 説明の役目を取られそうな渡辺先生が慌ててるけど、もう遅いです。お医者さんモードに切り替わっちゃいました!


「憂さんのSNSのことです」


 SNS? 憂もアカウント作ったけど、もう1年以上、放置してなかったかな?

 ちなみに私は作ってるだけ。気が向いたときにトレンドをチラ見する程度。


「最近になって、憂さんの呟きが活発でして」


 そうなんだ……。


「……知らない情報です」


 憂ってば、私に隠れてそんなこと……。


「何がきっかけなのかさっぱりなんですけど、ここのところ続け様に資産運用について語られてます」


 資産運用? なにそれ?


 資産? お金のこと? お金をどう使うか……?


「何がなにやらさっぱりな千穂ちゃんの様子に、僕はすっごく感激してる」


「そう言われても……」


「気にすることありませんよ? 千穂さんはまだ18歳なんですから」


 ですよね?


「ですが、憂さんは一大財産を築かれております。その伴侶になるべき漆原さんは知っておいて然るべきでは?」


 せっかく蔵迫センセがフォローして下さったのに、院長センセのダメ出し。

 資産かぁ……。憂の……。


「いっぱいあるんだよね……くらいにしか思ってなかったです……」


「あー! 院長先生! 千穂ちゃん凹ませると憂ちゃんが怒りますよぉ!」


「それで本題です」


 強引な進行ありがとうございます……。なんにも考えてなかったって責められてる気分でした……。


 考えてなかったけどっ!


「そもそものきっかけは不明ですが、市場が憂さんの呟きに振り回されていまして……」


「……はい?」


 ……なんのことですか……?


「見て頂くほうが早いですね」


 そう仰った島井先生は白衣のポケットからスマホを……。

 すっごく意外。この先生の印象はガラケー……って思ったりしたら失礼ですね! ごめんなさい!


 あ。意外と手早い操作……って! 失礼ですね!


「これです」


 差し出されたスマホ。


【資産運用ってなに?】


 うわ……! すっごいいいねの数……! リプライの数もすっごい……!


「ちょっといいですか……?」


 自分のスマホ出してもいいけど、借りちゃう。


 リプライを覗き見。


 うわー。いっぱい平仮名で読みにくーい。ひらがなばっかりのせいで、文字数きつそう……。みなさん、頑張って教えてあげてくれてる……。


【ちょきん(貯金)だけではなく、かぶ(株)・かわせ(為替)・こくさい(国債)・かそうつうか(仮想通貨)。こういった「とうし(投資)」「とうき(投機)」にしさん(資産)をりゅうよう(流用)することです。ほかにも、ふどうさん(不動産)などありますが、もじすうにかかりますのでとりあえずw】


 ……なるほど。勉強になりました。


「問題はそのあとです。憂さんは色々と調べたり、聞いたりなさったのでしょう。次に『仮想通貨よさそう。』と呟かれました」


「そしたら、仮想通貨が爆上げしちゃってね。そりゃそうだよねぇ。憂さんの資産総額は半端ないだろうし、ちょっとした謎に包まれてるからねぇ。でも、憂ちゃんが参戦したところで本当に与える影響はそこまで大きくはないと思うんだけどさー。みんな、実際の資産よりかなり上方修正しちゃってるんだと思うよぉ。それこそ億の次の単位くらいを想像してたり?」


 さすがにそこまでは持ってません。

 驚くような金額だし、順調に増えていってるケド。頑張り屋さんだから。


 そっかぁ……。それでもっと増やしておこうって、資産運用? しようと思ってるんだ。


 私より、よく考えてるね……。


「でも、それの何が問題なんですか? 勝手に想像して勝手にその仮想通貨……? を買っただけですよね?」


「そぉだよぉー? でもね。考えてみて? 憂さんが参入したら上がると思って買っちゃったんだよ。それで参入しなかったり、思ったよりも上がらなかったり……どころか、下がっちゃったら?」


 もしかして……。


「憂のせいで……って思う人が……?」


「理不尽だよねぇ。勝手にチャンスだとか思って、先行して爆上げさせておいて、美味しいところとれなかったら恨むかもしれないんだよぉ……?」


「……そうですね。なので、憂さんにSNSを自粛して頂くべきかと我々は考えます。影響力は計り知れませんので」


「はい……。伝えておきます……!」


 イライラしてきちゃった。憂にじゃなくて、勝手に色々言ってる人たちに。いっぱい書いてあるんだよ!? 掲示板とかブログとかに!


「……何かありますか? 聞くくらいならば可能ですよ?」


 院長先生の許可出た! 言っちゃうよ!


「掲示板とかで言いたい放題なんです! 『億万長者はいいよなぁw』とか『実質、自分じゃなにもしてないのにいくら稼いでんの?』とか『代償じゃないよな。可愛い女の子になって、可愛い彼女いて、その上、超稼げるって最高だよな』とか『その彼女は進学して保育士目指すんだって。いい人アピールうぜぇ』とか!!」


「それは酷いですね」


「よくもまぁ、何も知らないでそんなこと……」


「ですよね! まだまだありますよ! 千晶のこと、『どうせ不正だろ』とか! 島井先生の悪口もありました!」


「どんなことかなぁ? たしかに優くん(・・)のときのことは罪に問われてもおかしくないけどねぇ」


「渡辺くん! 煽るタイミン「そうです! そのことをいつまでもねちねちねちねち……!」






「………………!!」







「…………!!」








「……!!」












 こんこん。






 ノックの音で我に帰りました……。私、どれくらい愚痴っちゃったんだろ……。


「失礼します。終わりましたよー」


「お疲れさまです」


 このナースステーションから出るときと同じく、顔を覗かせた恵さんに島井先生も院長先生もホッとした表情……。


 あの……ホントにごめんなさい。すっごく恥ずかしい。顔、赤くなってないかな?


「憂さんもお待ちですよ? こちらへどうぞ」


「はい!」


 すぐに立って移動開始! 逃げないと……!


「あはは」


 …………!


 蔵迫先生の笑い声を聞きながら、VIPルームに飛び込みました……!




 ◇




「千穂――? かお、あかいよ――?」


「き、きのせい……だよ?」


 VIPルームの向かい合わせのソファー。横に座った憂が私の顔をじっと見てる。ちょっと見すぎ……。


「そうですね……。自治区内では憂さんと千穂さんのことを悪く言う者など皆無に等しいですが、ネットの世界……。しかも匿名となるとそんな心無い言葉にも当たってしまうでしょう」


 そうですね。梢枝さんにも『エゴサーチなどしないほうがええですえ?』って言われてます。でも、気になるよね……?


 って言うか、まだその話題続けるんですね……。せっかく途切れたのに。


「有名税ってヤツだよぉー。どんな聖人君子だって、文句1つ言われない人なんていないってこと。気にしても仕方ないよぉ? それでも、気になって見ちゃってまたストレス溜まったらいくらでも聞いてあげるよ? 怒った千穂ちゃんも可愛いし」


 ………………。


 また顔が熱くなってきちゃった……。落ち着いてきてたのに。

 憂の顔が私の膝の上のほうに移動。わざわざ覗き込まないの。


「――あかく――なった」


 …………。


「――また」


「また……! くくっ……」


 院長先生。小声でも聞こえてます。


「おっ……と、失礼……」


 ……あ。内線? 島井先生が小さな電話をポケットから取り出して離席。


「………………」


「………………」


「………………」


 なんとなく無言。人が電話してるときって、静かになるよね。それを感じ取ったのか、島井先生の背中がどんどんと遠ざかって。


「しろくなった――」


「くくっ!」


 憂は私の顔色で遊んでるのかな!?

 ちょっと怒った。覗き込んでる小さい顔を両手でグイと遠ざけてみる。


「――うぅ」


 あ。抵抗中。全身のちから使って押し返してきた。


「うぅ――!」「


 ……意外と頑張るね。それじゃあ……。


「わぁ――!」


 急に手を離してみたら、体が私の膝の上に。


「急患です! 院長! 渡辺先生!」


「はい!」


「お送りできず、申し訳ない!」


 院長先生と渡辺先生が私たちに会釈しながら大慌てで廊下へのドアへ。切り替え早い先生がたの背中に「頑張って下さい!」。


 あ。憂の顔。


「赤いよ?」


 いっぱい、ちから入れてたからね。


「憂さんに助力頂く可能性があります!」


「わかりました……!」


 遠めの先生に返事すると「失礼します」って、島井先生たちはVIPルームから直接、廊下に消えてしまいました。


「あ、私も!!」


 ……追いかけていかれたのは、裕香さん。恵さんと専門外の蔵迫先生は待機みたいだね。


 憂の助力。酷い怪我なのかな……? 憂の血が必要ってこと。説明したらすぐにOK出してくれるだろうけど。


「……千穂さんはすごいですね。あの先生方と普通に話すとか。顔に似合わず大物なんだから」


 ……蔵迫センセ? それって、どういう意味なんでしょうか?





 『その一』になっておりますが、続くかどうかはわかりません。

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― 新着の感想 ―
[一言] にゅーて出て来た唇さん。押してあげないの?
[一言] るん♡
[一言] 続けて下さい♡
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