EPISODE0 〜黒い扉〜
酷い気分で目を覚ます。
口が渇き、少し喉も痛い。
うつ伏せに転がると、頭を起こすように時計を見る。
「・・・っつ」
頭も少し痛む。風邪を引いたんだろうか。ぼんやりとそんな事を考えながら、枕元に置かれた、目覚まし時計と“黒いG−SHOCK”を目にする。
どくん。
動悸がした。
・・・落ち着け。
あれは、夢じゃないのか・・・?
・・・・・・夢って、何だよ?
その時。
子供のすすり泣く声が、響く。
ひっく、ひっく。ぐすっ、ぐすっ。
「何・・・だ」
『・・・ひぃっくっ』
背中の上に・・・子供が居る?
「うわぁ!」
身体を横に向けると、強引に立ち上がる。『きゃっ』と小さな声がし、どん、がたん、鈍い音を立て、体重は消失した。
ベッドから降りながら、腕を振り回す。じりじりと後退る。
「くっ、来るな!」
『お兄ちゃん・・・?』
『僕達だよ。覚えてないの?』
両腕に何かがしがみつく感覚はあるが姿はなく、がむしゃらに腕を振り回す。
「・・・何やってるの、元紀?」
青ざめた母親が部屋の入り口で立ちすくんでいる。父親が母親の横を抜け駆け寄り、俺を抑えつけるのを見た気がした。
そこで。
完全に意識が途切れた。
「・・・えぇ、私が見た時はもう暴れていて。うわ言のように謝っていて。私にはもう何がなんだか。今までこんな事は一度もなくて。一体、あの子に何があったの?」
眠る我が子を見つめ、震え声の母親に対して、父親はごく涼しい声で言った。
「寝惚けただけだろ。直に落ち着くさ」




