EPISODE0 〜赤い扉〜
赤い扉を開けると、そこは部屋の中だった。
振り返ると赤い扉はなく、ごくありふれた茶色のドアがそこにある。
先程見た部屋に見えるが、置いてあるものが違う。
小さなゴミ箱を挟み勉強机が並び、椅子には黒いランドセル、赤いランドセルがそれぞれ掛かっていた。机の向かいには、大きな二段ベッド。
先程の部屋になかったものだ。
小学生の部屋らしく、棚には漫画やおもちゃ、ぬいぐるみ等々。微笑ましい光景だった。
窓から見える風景は、夕日が見え、二階だと分かった。
『俺にどうしろっていうんだよ!』
机の一つを叩いたつもりがすり抜け、机のある位置に転ぶように倒れる。
が、一階に落ちる訳でもなく。この世界の不文律を失念していた。
ここは、俺の事が誰にも見えないし、触れない。声も届かない。
一方的に、見るだけ。
繰り返すうちに分かった。
わざわざこんな事をしなくても、黒い部屋のように見せれば良いのに。何度も思った。
『それにしても、どこ行ったんだ?』
ドアを抜けて、家の中をしばらく探し続けたが誰も居ない。仕方なく、帰宅を待つ事にした。
その時、玄関でがちゃりと音がした。
「「ただいまぁ〜」」
探していた少年と少女が競うように中へ入って来た。
よく見ると、顔立ちが幼い。小学生の時に来たようだった。
「公園に寄ったんだから、ちゃんと手を洗って来てね」
母親らしい女性が声を掛けた。
「「分かった〜」」
二人の声が同じタイミングで聞こえた。
部屋の中に入る3人を見送る。
『もう良い』
俺が呟くと、すぐ近くに音もなく青い扉が現れた。




