EPISODE0 〜黒い部屋〜
子供達の声が聞こえる。
悪かった。
悪かったよ。
俺が悪かったんだ。
だから、もう来ないでくれ。
仕方ないじゃないか、たまたまそこに居たんだから。
俺は限界だったんだ。
だから、もう許してくれよ。
いつからだろう。こんなところに来たのは。
右手にはデジタル?の黒い腕時計がぴったりと付いている。外したくて色々試したが、何をやっても無駄だった。
これは、呪われた証に違いない。
これを渡された時に、奴は何て言ったのか。もう、思い出せない。
忘れてしまう程、長い時間は流れたはずだ。
にも変わらず、俺は、俺の体は変わらない。飲まず食わずで、死なない。
死ねない。
死んだ事に気が付かず、さ迷っているのかと思いたかったが、それも違う。
ある時は、触れるのだ。他の人間に。
そのまま、その時に留まろうとしたが、24時間経つと同じ1日に戻される事に気が付いた。
気付いてからは、する事もなく暇を潰し、同じ1日を繰り返す事は苦痛以外のものではなかった。
何で俺がこんな目に遭うんだろう。
まるで、悪夢だ。
そんな時だった。
いつもの黒い部屋で、少年と少女が、画面に映し出されたのは。
橙色系で統一された室内には、本棚には少女漫画がきちんと並び、間にはくまやトリのぬいぐるみが置かれている。部屋の中で少年と少女は向かい合って話をしているようだった。音は聞こえないから、動く口元を見てそうなのだと思う。
少女は、勝ち気な瞳をしているが、整った顔立ちで凛とした表情がキツイ印象を与えるように見えた。少年は少女の面影と重なる。二人は良く似ている。少女を柔らかくして、男の子にしたらこうなるのかと思える。それは不思議な程、類似していた。
先に動いたのは、少女だった。
少女は唖然とした表情が浮かべ、淡い黄色のカーテンの方へ後退りした。手前にはベッドが置かれていて、少女の歩みを止めた。
少年は少女に歩み寄り、仄かな笑みが浮かべた。
少年は後ろ手にしていた手を動かし、前へ右手を差し出した。手元が鈍く光る。
一瞬の事、だった。
刃物だと気付くのに時間は掛からなかった。
赤い雫が、ほとばしる。何度も、何度も。
「もう……うんざりだ。止めてくれよ!」
俺の願いは届くはずもなく、画面は淡々と二人を映している。
少年は少女を抱きしめるようにして、少女は力なく項垂れた。
二人は抱き合ったまま、血溜まりへ沈む。
折り重なるように倒れる二人。
少女が少年を狂気へ導いたのか。それとも、逆恨みか。俺に分かるはずもなく。
ましてや、少年の凶行を俺に止められはずもなく。
今は画面を見る事しか出来ない。
なんで、なんだ。
いつも、いつも。
身勝手な奴らの為に、俺が手を貸さなきゃならない。
言って分かるなら、いくらだって言ってやる。なのに、奴らは耳を貸さない愚か者達だ。
どうなろうと本人の責任で、他人がとやかくいう問題ではないはずだ。
睨み付けるような俺の視線の先で画面はすぅっと消失し、画面があったはずの場所に禍々しい赤い扉が現れた。




