EPISODE3 陸:side 〜明日への扉〜
「結局はお前次第なんだから、辛気臭せー顔すんなって」
パパは僕の肩に腕を置いて、そう言った。
「・・・僕が僕である限り、結末は変わらないんだ」
僕は手をぎゅっと握り、下唇を噛む。
「まあ、お前さんがそう言うならそうなんだろうよ。だが、切り札が目の前にある。違うか?」
そこで、ハッとした。パパは唆しているのだ、と。
ママが泣いていた。パパが帰らない事で。
もしかして、この事に関係があったのかもしれない。
「後悔してもしりませんよ」
止めても無駄なのかもしれない事を、薄々感じていた。
「可愛い息子の為、なんて言ったら嘘になるな。俺の命に関わるみたいだし?」
僕は、右腕にある腕時計を外してパパに声を掛けた。
「・・・お願いします」
そう言って、パパに腕時計を渡した。
後先考えずまず行動ってところは、理子ちゃんそっくりだ。いや、パパの遺伝かもしれない。
「お願いされた。じゃあな、陸」
ひらひらと振られた右腕には、さっきまで僕の腕にあった物がしっかりと収まっていた。
僕は頭を深く下げ、光を放ち続けていた白い扉を抜けた。
******
「ただいま〜」
独り事のように呟くと、三和土で靴を脱ごうと少し前屈みになる。
「おーかーえーりぃー」
すぐ近くで、妹の声がした。
顔だけ上げると、黒いノースリーブのワンピースが見えた。腰に手を置き、これぞ仁王立ちと言った感じだ。
パチン。
乾いた音と共に、俺は軽く右を向かされた。
「り、理子? 兄ちゃん、なんか悪い事したか?」
訳が分からない。
理子は肩を小さく上下して、口を少しすぼめて、膨れっ面。
「陸、約束覚えてるわよね?」
そう言って、俺を見つめた。
約束、とは何だろう。お菓子を買うとか、漫画を買うとかの類いだと思うけど。今月はそれでなくともピンチだ。
「兄ちゃん・・・約束したっけ?」
呆れたと言うように、大きく溜め息を吐かれた。
「アタシの勝ちだからって、トボケないでよね!」
益々、分からない。
「まさか・・・本当に分からないの?」
俺はその通りなので、とりあえず頷いた。
ピロリロリローン。
メールの着信音がした。
鞄から携帯を出すと、画面に新着メール1件と表示されていた。メインフォルダを見ると彼女の名前。
「理子。彼女からメール来たから、また後でゆっくり聞くよ」
携帯を持ったまま両手を合わせ、形だけ御免という動作をした。
俺は三和土から上がると、そのまま自室へ向かった。
〜EPISODE3 陸:side END〜




