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宇宙戦艦三笠  作者: 大橋むつお
29/50

29・グリンヘルドの遭難船・2

宇宙戦艦三笠


29[グリンヘルドの遭難船・2]





 遭難船の女性クルーは衰弱死寸前だった。


 と言って、見たは目は健康な女性がうたた寝をしているようで、とてもそうは見えない。


―― 残った生命エネルギーを、外形の維持にだけ使っていたようです ――


 スキャンした彼女のデータを送るとクレアから答えがトシといっしょに返ってきた。


「なんで、トシが来てるんだよ?」


「クレアさんの意見で、三笠から携帯エネルギーコアを持ってきました。これを船の生命維持装置に取り付けて、この女の人を助けたらってことで。オレ、一応三笠のメカニックだから」


「でも、グリンヘルドの船の中なんて、初めてでしょ。トシにできるの?」


「フィフスの力で……うん、なんとかなりそう」


 トシは目をつぶって、調査船のメインCPとコンタクトをとり、船体の構造概念を知った。


「トシ、ツールも何にも無しで、CPとコンタクトできたのかよ!?」


 俺も樟葉も驚いた。


「ナンノ・ヨーダの訓練はダテじゃないみたいだよ。それぞれが持っていた能力を何十倍にもインフレーションにしてくれたみたい。とりあえず作業に入るよ」


 トシは、自分のバイクを修理するような手馴れた様子でエネルギーコアを船の生命維持装置に取り付け、グリンヘルド人に適合するように変換した。


 やがて、ただ一人の女性クルーは昼寝から目覚めたように、小さなあくび一つして覚醒した。


「おお、大したもんだな!」


「それもそうだけど、この人のリジェネ能力がすごいんだよ」


「まずは挨拶よ。えと、こんにちは、救難信号を受けてやってきました……」


「三笠のみなさんですね。助けていただいてありがとうございました。わたし、グリンヘルド調査船隊の司令のエルマ少佐です。もっとも、この船隊の人間は、わたし一人ですけど。あとの二隻はロボット船。あの二隻が救難信号を……あの二隻は、もう回復しないところまで、エネルギーを使い果たしたようです」


「ボクが直しましょうか?」


「もう無理です。アナライズしてもらえば分かりますけど、あの二隻は、もうガランドーです。すべての装置と機能をエネルギーに変換して、わたしの船を助けてくれたようです……ほら」


 片方のロボット艦は、最後の力を振り絞るようにブルっと震えると、陽に晒された氷細工のように霧消してしまった。もう一隻も昼間の月のように頼りなくなってきた。


「なんで、ここから外が見えてるんだ?」


「シールドが組成を維持できなくなって……質量比……1/100……負担の軽いアクリルみたいなのに変換したんだ」


 アナライズしながらトシが感動する。


 三笠から照射されるサーチビームが照明に変換され、船内は懐かし色に染まっていく。


 コチ コチ コチ……


「なんの音?」


「この船も崩壊が始まってるんです、せめてもの雰囲気……あなたがたのイメージに合わせて変換……合っているかしら……」


 ああ……!


 いっぺんにイメージが湧き上がった。


 これは、小学校の音楽で聴いた『おじいさんの時計』のイメージだ。


 悲しくって、でも暖かくって―― でも いまは もう 動かない おじいさんの時計 ――のところでは、樟葉は目に一杯涙を浮かべていたっけ。


「グリンヘルドは救援にこられなかったの?」


 指の背中で目を拭って、樟葉が聞く。


「わたしは、数億個の細胞の一つみたいなものだから、救難する労力を惜しんだみたいです……」


「つまり、切り捨てられた?」


「全体の機能維持のためにはね……それがグリンヘルド。さっそくだけど、お伝えしたいことがあります」


「もう少し、休んでからでも」


 トシがパラメーターを見ながら言った。


「見かけほど、わたしの機能は万全じゃないのです。いつ停止してもおかしくない。地球人の感覚で言えば、わたしは120歳くらいの生命力しかありません。時間を無駄にしたくないのです」


 三笠の三人は、エルマの意志を尊重した。


「……地球の人類は、あと百年ほどしか持ちません。地球の寒冷化は進んでいるのに、温暖化への対策しかしていません」


「ああ、温暖化は今や世界のエコ利権になっているからな」


「だから、あたしたちが、ピレウスに寒冷化防止装置を取りにいくところ」


「グリンヘルドもシュトルハーヘンも、寒冷化で人類の力が衰えて、抵抗力が無くなったところに植民するつもりなんです」


「だいたい、そんなところだろうと、オレたちも思ってる」


「グリンヘルドの実態を、三笠のみなさんに知っていただきたいのです」



 そう言うと、エルマの姿がバグったように、若い姿と老婆の姿にカットバックした。



「すみません、エネルギーコアを、もう少しだけ充填していただけないかしら。わたしの命は間もなく切れます。今の姿のまま逝きたいんです」


「なんなら、三笠の動力から直接エネルギーが充填できるようにしようか? 接舷すれば直接送れる」


「艦長、エルマさんの体は、もうそんな大量のエネルギーを受け付けられないところまで来てるよ」


「トシさんの言う通りです。あと少しお話しが出来ればいいんです」


「それなら、三笠のCPに情報を送ってもらった方が。少しでもエルマさんが助かる努力がしたいわ!」


 樟葉らしい前向きな意見だ。


「いいえ、情報はただの記号です。直に話すこと……人の言葉で伝えることが重要なんです……」


「トシ、急いで携帯のエネルギーコアを!」



「大丈夫、あたしが持ってきました」



 クレアが、携帯エネルギーコアを持って、調査船のブリッジに現れた。



☆ 主な登場人物


 修一          横須賀国際高校二年 艦長

 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長

 天音          横須賀国際高校二年 砲術長

 トシ          横須賀国際高校一年 機関長

 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊

 クレア         ボイジャーのスピリット

 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊

 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

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