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宇宙戦艦三笠  作者: 大橋むつお
20/50

20・空母遼寧の船霊ウレシコワ・2

宇宙戦艦三笠


20[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]   





 Расцветали яблони и груши……Поплыли туманы над рекой;……Выходила на берег Катюша……



 彼女は小さく「カチューシャ」を口ずさみながら、やってきた。


「なんだかメーテルみたい……」


 天音呟いたとおり、黒のコートに黒の毛皮帽にブーツといういでたちで、艦首の甲板に佇んでいる。


 艦首のそこだけが黄昏色に染まって横殴りに雪さえ降っている。俺は、広瀬中佐の戦死を知って、はるばるペテルブルグからシベリア鉄道に揺られ、大連駅のプラットホームに降り立ったアリアヅナのように思えた。


「遼寧のウレシコワさんです……」


 クレアが冷静に、しかし語尾は濁して呟いた。


「なんだか、ワケありだな」


「あんなとこ寒いよ!」


「ちょっと!」


 トシは、天音が止めるのも聞かずにブリッジを降り、艦首のウレシコワの元に駆けた。遼寧として発見した時は「放っておこうよ」と言っていたのに、訳の分からん奴だ。


「なんだか、トシ君、鉄郎みたいね」


 船霊のみかさんといっしょにミケメたちネコメイドも現れて、あっという間にウレシコワ歓迎の形ができてしまった。


「やれやれ」


 これ以上抱え込んで大丈夫かという気持ちもあったけど、この雰囲気を無下にすることもできない。


 テキサスジェーンといい、ボイジャーのクレアといい、宇宙戦艦三笠は宇宙的規模で頼られるように出来ているのかもしれない。




「遼寧では、つっけんどんでごめんなさい」




 ブリッジに着くと、以前のウレシコワと、打って変わった穏やかさで頭を下げた。


「ブリッジじゃ狭いわ、長官室でお話しましよう」


 みかさんの提案で艦尾の長官室に向かった。ウレシコワが艦内に入ってから、心なし……いや、はっきり寒い。


「ウレシコワ、どうしてこんなに寒いの?」


「ごめんなさい。たぶん、あたしの心が寒いから……」


 メーテル風の暖かそうなコートは見せかけだけではなかったようだ。




 長官室はスチームが効いて、そんなウレシコワをさえ包み込むような温かさになっていた。




「なにか、暖かいものを頂きながら、お話しましようか?」


「じゃ、わたしに作らせて」


 ミカさんの提案に、ウレシコワは全員分のボルシチ風鍋を作った。甲斐甲斐しく給仕をするウレシコワだが、どこか屈託がある。


「いつまでも、三笠にいてくれていいのよ」


 ミカさんの言葉は、クルーたちにもウレシコワにも意外だった。


「なにもかも、お見通しのようね……」


 ウレシコワは、安堵したようにオタマを置いた。


「いっしょにピレウスに行きましょう。ピレウスへの旅は、どこが勝ってもいい。どこかの国の船が、寒冷化防止装置を受け取れればいいの。これは全人類と、全ての船霊の戦いなんだから」


「わたしは、三笠に勝ってほしい。わたしもクルーとして働くわ。三笠こそ勝つべき船なのよ」


「どこが勝っても、誰が船霊でも、それは地球の勝利よ」


 そう言うと、ミカさんは、オタマを置いて所在無げなウレシコワの手を取った。


 ネコメイドたちが食後のお茶を給仕してくれる。


 そのティーカップの紅茶が微かに揺れて、三笠は増速した。



 


☆ 主な登場人物


 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長

 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長

 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長

 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長

 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊

 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊

 クレア         ボイジャーが擬人化したもの 

 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊

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