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宇宙戦艦三笠  作者: 大橋むつお
16/50

16・ボイジャーが仲間に

宇宙戦艦三笠


16[ボイジャーが仲間に]



 ボイジャーは回収されると、すぐに医務室に運ばれた。


 不思議だった。


 光子レーダーで確認した時は、お猪口にアンテナを付けたような古いタイプの人工衛星だった。


 それがモニターで女の子の姿になっていることは確認していたが、こうやって生で見ると、とても不思議になる。頬はほのかなバラ色で、胸は呼吸に合わせてゆっくり上下している。そして、まるで夢を見ているように瞼の下で目が動いているし。


「可愛い子だな……」


「うん、初めて見るのに、なんだか懐かしい」


 顔かたちに敏感なのは、やはり女子だ。天音と樟葉が最初に反応した。男子は、こういう時は驚きが直ぐには顔に出ない。ただ、目を丸くして見つめるだけだ。


「これ、ヘラクレアの娘さんの姿だよ……」


 みかさんが、しみじみと言った。


「どうして、あのオッサンの娘さんの姿に……ってか、あのオッサンの娘が、こんなに可愛いわけ?」


 引きこもりが長かった分、トシの反応は遠慮がない。


「ヘラクレアさん、娘さんのことは、ほとんど口にしなかったけど、それだけ印象としては強くわたしの心に残ったのね。だから、こんなに似ちゃったんだ。なんとなく懐かしく感じるのは、みんなも無意識にヘラクレアさんの影響を受けていたからかな」


 みかさんは、思いのこもったものに容を与える力があるようだ。


 みかさんは暖かい口調のまま続けた。


「人の心って、こんなに共鳴するものなのよ。ボイジャーも40年あまりの宇宙旅行で、いろんな宇宙人に空間や次元を超えて書き込みをされている。まだ未整理だけど」


「50年前のCPにそんなに記録容量はないんじゃない?」


「それは、あなたたちの概念よ。その気になれば、何もない空間にでも記録は残せるわ。わたしみたいな船霊も、いろんな人の思いの結晶だとも言えるかもしれない……さ、ボイジャーが目を覚ますのには、少し時間がかかるわ。あなたたちのむき出しの好奇心に、いきなりご対面しちゃ混乱する。わたしがいいというまでは面会謝絶です」


 四人のクルーは医務室を出された。


 分からないということは、想像力を刺激する。


 ブリッジで待っている間に、100通りぐらいのボイジャーのイメージが4人の頭に喚起された。美奈穂は中東で死んだ父への反発から母親の少女時代のイメージを。トシは、亡くした妹や、自分をストーカー扱いした美紀のイメージに。俺と樟葉は、ラノベかアニメのそれだろうか……自分でも覚えのない少女たちのイメージが浮かんだ。


 みかさんの言葉が思い出された。


「二人の心には、もっと奥があるわ」


 改めてみかさんの言葉が思い出された。


 ボイジャーは三日目に目覚めた。


「みんな医務室に来て」


 みかさんの声で、四人は心弾ませて医務室に向かった。


「みなさんよろしく。えと……あたしがボイジャーです」


 ボイジャーは、転校生のように硬い笑顔で挨拶した。ワンピースが黒の花柄から淡いグリーンの花柄に変わっていた。


「あ、その方が可愛い!」「黒は魔女っぽかったし」「ツインテールが似合いそう!」


「あ、ども……です(-o-;)」


「まだ、この子の心は整理ができてないの。だからちょっとぎこちないけど、少しずつ慣れていって。ボイジャー、あなたの呼び方、どうしようか?」


「……できたら、クレアって呼んでください。いろんな意味で、これが一番しっくりくるんです」


「じゃあ、ようこそクレア。君が三笠の最初のゲストだ」


「いえ、あたしはクルーです。役割はアナライザーです」


 みんな戸惑った顔になった。アナライズ機能は、すでに三笠には付いている。


「三笠については、補助的なアナライズをやります。本務は、あなたたちの心のアナライズです。修一さん、トシくん、天音さん、樟葉さん、よろしく」


「これからは、クレアさんが、わたしの代わりだと思って。わたしは本来の船霊の役割に戻ります」


 みかさんは、そう言うと、姿が朧になってホールの神棚の方に消えていった。


 ブリッジに戻ると、ネコメイドたちが模様替えを終えたところだ。


 俺の艦長席の横に一回り小さなアナライザーのシートが出来ている。


 シートに着いてポチポチとキーボドを操作するクレア。


 インタフェイスの光が柔らかくクレアを包んで、とてもしっくりいっている。


 見渡すと、他の四人も、それぞれのコンソールやらインタフェイスの光に柔らかく包まれている。


 視線を戻すと、クレアが上目遣いに微笑んでくれる。


 なんとなく、みかさんの筋書通りのような気がした……。


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