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宇宙戦艦三笠  作者: 大橋むつお
13/50

13・小惑星ヘラクレア

宇宙戦艦三笠


13[小惑星ヘラクレア]   





 テキサスの修理は大変、いや不可能だった。


 なんせ艦体の1/4を失っている。修理というレベルではなくて、艦尾を新造して接合するという大工事になる。とても備蓄の修理用資材では足りない。



 それに、一口で艦尾を新造すると言っても簡単なことじゃない。


 戦前、扶桑級戦艦の速度を上げようとして艦尾を七メートル延長する工事をやった。改装後に公試をやると、速力は上がったものの急制動を掛けると、左に旋回して、停止した時には180度艦体が回ってしまうという事態になって、修正に苦労するということがあった……って、なんで、こんなマニアックな知識が頭にあるんだ? やっぱ、ミカさんにインストールされたんだろうな。ま、いいけどな。


 困うじ果てていると、ヘラクレアという未確認の小惑星から連絡があった。


 ―― よかったら、うちで直せよ ――という内容だった。



 ズゥイーーーン



 警戒してアナライズしようとしたら、なんとヘラクレア自身がワープして三笠の前に現れた。



 ガチャガチャ キュイン トントン コンコン ガガガ グガガガ パチパチ


 長径30キロ短径10キロほど、様々な宇宙船のパーツがめり込むように一体化した変な星だ。なにか工事か建造しているような音をまき散らし、あちこちで溶接やリベット打ちの火花が散って、絶えず星のどこかが姿を変えている。

 

「やあ、ようこそ。わたしが星のオーナーのヘラクレアだ。趣味が高じて気に入った宇宙船のスクラップの引取りやら、修理をやっとる。ああ、みなまで言わんでもいいよ。目的地はピレウスだろ。あれは宇宙でも数少ない希望の星だからね。ここにあるスクラップのほとんども、ピレウスを目指して目的を果たせなかった船たちだ。中にはグリンヘルドやシュトルハーヘンの船もある」


「おじさん、どっちの味方なの!?」


 アメリカ人らしく白黒を付けたそうに、ジェーンが指を立てる。


 俺たちは、ただ、星のグロテスクさに圧倒され、みかさん一人ニコニコしている。


「自分の星を守ろうとするやつの味方……と言えば聞こえはいいが、その気持ちや修理できた時の喜びを糧にして宇宙を漂っている、ケッタイな惑星さ」


「あの、惑星とおっしゃる割には、恒星はないんですね?」


 天音が、素朴な質問をした。


「君らが思うような恒星は無い。だが、ちゃんと恒星の周りを不規則だが周回している。みかさんは分かるようだね?」


「フフ、なんとなくですけど」


「それは全て知っているのと同じことだね」


「なんのことだか、分かんねえよ!」


 トシが子供のようなことを言うが、樟葉も天音も、船霊であるジェーンも聞きたそうな顔をしている。



「ここに、点があるとしよう。仮に座標はX=1 Y=1 Z=1としよう……」



 ヘラクレアのオッサンが耳に挟んだ鉛筆で、虚空をさすと、座標軸とともに、座標が示す点が現れた。


「これが、なにを……」


「この光る点は暗示にすぎない。そうだろ……点というのは面積も体積も無いものだ。目に見えるわけがない。君らは、この暗示を通して、頭の中で点の存在位置を想像しているのに過ぎない。だろう……世の中には、概念でしか分からないものがある。それが答えだ……ひどくやられたねぇテキサスは」


「直る、おじいちゃん?」


 ジェーンが、心配げに答えた。


「直すのは、この三笠の乗組員たちだ。材料は山ほどある。好きなものを使えばいいさ」


「遠慮なく」


「うん……トシと天音くんは、自分のことを分かっているようだが、修一と樟葉は半分も分かっていないようだなあ」


 俺も天音も驚いた。


 こないだ、みんなで自分のことを思い出したとき、二人は肝心なことを思い出していないような気がしていたからだ。


「ヒントだけ見せてあげよう」


 ヘラクレアのオッサンが、鉛筆を一振りすると、0・5秒ほど激しく爆発する振動と閃光が見えた。ハッと閃くものがあったが、それは小さな夢の断片のように、直ぐに意識の底に沈んでしまった。


 気づくとすぐ近くを、定遠と遼寧が先を越して行ってしまった……。




☆ 主な登場人物


 修一          横須賀国際高校二年 艦長

 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長

 天音          横須賀国際高校二年 砲術長

 トシ          横須賀国際高校一年 機関長

 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊

 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊

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