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村人の避難

 



 研究所西の森



 聖堂院西の村の南西にある村、メイダ村の住民を間一髪助けてる事が出来た俺達は、更に隣の村へ向かっている。


 そして、今はアイン達と共に行動している。

 今度も先行しようとしたのだが、移動と先程の先頭で、魔力をそれなりに使ってしまっているので、許可がおりなかった。

 敵、オークの状況がハッキリしない状態で、魔力の残量ギリギリまで戦うのは危険なので、俺がオシホ様の魔力残量が半分になったら、撤退することが決まっており、次に単独で行動し、先程の同じ程度のオークと戦闘になった場合、撤退基準に達してしまう可能性が有るからだ。


 それでも、更に隣の村に向かうのは、安否だけでも確認しておきたいのだ。



「ステラさん、大丈夫てすか?」


 先程は声を描けなかったが、ステラさんの状態を確認する。



 ステラさんは、先程の村での戦闘が初戦闘であり、村での戦闘だった。

 ステラさんの出身は、先程の村でも、今から向かう村でも無い。

 だが、村は村で似たり寄ったりなのだ。

 何らかの感傷や初戦闘での影響が出ている可能性は十分にある。

 先程は迅速に行動に移る必要があったので、あえて無視して俺達の流れに巻き込んだ。

 デルタと共に護衛として離脱させる事も出来たが、デルタ単独ではステラさんが錯乱した時に押さえられない。

 それに、錯乱するような状態の者を護衛としてだしたら、護衛対象を傷付けてしまいかねない。

 ステラさんは、今、搭乗型ゴーレムに乗っているのだ。

 ちょっとしたミスで倒れるだけで、村人を押し潰して殺してしまいかねないので、多少の無理が効く俺達との行動をしてもらっている。



「大丈夫てす。あんなに恐ろしいオークを簡単に殺せました!やっぱりこのゴーレムはすごいです!」


 ステラさんの声は明るく、多少興奮している様だ。

 負の感情の心配は無さそうだが、やはり初戦闘の影響が出ている。

 変に力に溺れるとは言わないが、過信した行動をとりそうだ。

 一応釘を刺しておこう。


「ステラさん、落ち着いて下さい。俺達の指揮から外れない様に注意してください」


「了解です!」


 返事をしてくれたが、まだ興奮状態だ。

 15歳の少女を落ち着かせる術を俺は持たない。

 どうしたものか……。

 仕方がない。行動の自制は諦めて、専属で誰か付けよう。


 俺はステラさんから離れて、オシホ様に話し掛ける。


「オシホ様、ステラさんが少し心配です。誰か付けてくれませんか?」


「いざとなれば、ゴーレムを支配できるが、それはしたくないか。承知した。ガンマを付けよう」


 戦闘中に強制介入、これをすると、ステラさんを大きく傷付けるかもしれない。

 なので、できるだけ戦闘中は強制介入したくない。

 オシホ様が俺の意を汲んでくれて、護衛を付けてくれる。


「ありがとうございます」




 それからは、何事もなく進み、隣村に到着した。

 村は無人で、荒らされた様子も無い。

 村全体を軽く調べた結果、村人は俺達が来た道とは別の道、西に続く道から逃げたらしく、そちらの道に足跡が多数残っていた。


「去ってからまだそれほど時間は経っておらん。追いかけるか?」


「いえ、その必要は無いでしょう。ですが、ここを基点に、南をできるだけ調査します。オークの気配があれば退避した村人の護衛も考えます」


「了解じゃ。アイン、アルファ、ガンマ、全員を出す。お主とステラはワシが面倒を見よう。それで良いな」


「はい。お願いします」


 アイン、アルファ、ガンマがゴーレムを連れて南方に散開していく。


 今の時間は14時半頃だ。

 魔力補給が可能な聖堂院西の村に戻るのに2時間ほど、日没の時間を考えると、1、2時間程の探索が限界か……。

 夜道でも俺達だけなら大丈夫だが、今回はステラさんも居るあまり無理はしないでおこう。

 それでもゴーレム達ならそれなりの広さを探査できる。


 それまで時間もあるし、ゴーレムから降りてお茶でも飲んで、ステラさんを落ち着かせよう。

 俺はゴーレムから降りてステラさんに呼び掛ける。


「ステラさん、周辺に敵は居ません。今の内に休憩をしましょう」


「え?私は大丈夫ですよ?」


「休憩も役目の内です。オシホ様」


「了解じゃ」


 オシホ様の強制介入により、ステラさんのゴーレムが待機状態になり、搭乗口が開く。


「わわっ」


「さっ、ステラさん、降りて簡易シェルターの設置をお願いします」


「あ、はい。了解しました」


「ワシがお茶の用意をしよう」


 ステラさんがゴーレムから降りて、簡易シェルターを設置してもらう。


 搭乗型ゴーレムに乗る以上、簡易シェルターの使用は必ずできるようになってもらっている。

 搭乗型ゴーレム乗るのは、前線に出ることを意味するからだ。


 オシホ様がお茶の用意をするが、今回は作業用ゴーレムも連れてきているので、物資をそれなりに持ってきている。

 お茶セットもその中にある。

 オシホ様達がメイドの格好をしているのは、伊達ではないので、精霊の皆さんはお茶をちゃんといれる事ができる。

 昼食を携帯食料で早めに取ったので、お茶には丁度良い時間だろう。



 ステラさんが設置した簡易シェルターで、オシホ様がいれてくれた紅茶と甘さ控えめのクッキーを楽しむ。


「改めて聞きますが、搭乗型ゴーレムに乗っての初戦闘はどうでしたか?」


「オークが小さくて、戦いやすかったです。ゴーレムの力も強かったので、簡単にオークを斬り倒せました」


「怖くはありませんでしたか?」


「広坪様やオシホ様達との戦闘訓練の方が怖かったです。だけど、そのお陰で普通に戦えました。あれだけ激しく戦闘訓練をした意味が分かりました」


「それなら良かった。できる限り実戦に近付けましたが、訓練は所詮訓練でしかありませんからね。実戦に出て始めて効果が分かります。ただ、これはゴーレムの力なので、あまり過信はしないように、改めて注意しておきます」


 訓練は訓練、実戦ではないので、どれだけ実戦に近付けても、実戦で腰が引けてしまう事は想定していた。

 だが、ステラさんは大丈夫だったので、ホッとした。

 そして、ゴーレムの力を自分の力だと過信して、油断しない様に以前から言っていたが、今改めて注意をする。


「実戦を経験して、実感しました。私の力じゃなくて、ゴーレムの力だと。ゴーレム無しでの戦闘訓練もしてもらっていたので、普通に戦ったら、オーク一匹でも苦戦は間違いないと分かりました」


 ステラさんは、搭乗型ゴーレムに乗っての実線で、オークの力を知れた様だ。

 そして、自身との力の差も。

 生身での戦闘訓練では、ゴーレムの操作を上手くさせる意味もあったが、自分の力も確認してもらうためのものだったが、ステラさんは、正しく受け取っていてくれたみたいで、一安心だ。


「それだけ分かれば十分ですね。連れてきた甲斐がありました。それから、今のステラさんなら、搭乗型ゴーレム乗っていればオークリーダーぐらいまでなら余裕でしょう。ただ、オークジェネラルになると、油断するとやられかねません。それだけは覚えて置いてください」


「分かりました」


「では、堅苦しいのはこれで終わりにして、お茶を楽しみましょう」


「はい」



 お茶を楽しんだ後は、軽く体を動かしたり、オセロをしたりと、息抜きついでに時間を潰して、オシホ様がアイン達の帰還を察知してからゴーレムに再搭乗した。


 その後は、アイン達の報告を聞き、異常が無いことを確認してから聖堂院西の村へ向かった。


 報告の中には、南西へ向かったアインが、西寄りに偵察を行っており、西へ逃走する村人を確認していた。

 アインが探知した範囲では、無事だったらしい。

 無事で何よりだ。




 二時間ほど街道を進むと、聖堂院西の村へ到着した。


 途中で村人再び遭遇するかと思ったが、西の村からツヴァイが馬車を使って迎えに出ており、子供や老人、女性の体力が無い者を優先的に運んでおり、無事に到着していた。


 俺達が村に到着して、ツヴァイから報告を受けていると、助けた村人を代表して、メイダ村の村長と囮として残った男達がお礼を言いに来たので、そこそこの対応をした。



 その後、この村の村長さん宅でそれぞれの村の主だった者達と、俺達で話し合いの場を設けた。


「――我々が確認したのは以上です」


 俺達が確認してきた情報を伝えた。

 オークの数、メイダ村の被害状況、更に隣の村の事。

 黒煙の事は、伝えたかったが、こちらの監視範囲を知られるのは避けたく、仕方なく話さなかった。


「それで、貴殿方はどうするおつもりですか?」


 ツヴァイの報告によると、この村にも避難勧告を告げに兵士がやって来ていた。

 この村の村人達が逃げなかっなのは、ツヴァイが居たのもそうだが、俺のアインへの合図がこの村でも確認されたからだ。

 これで、村人がこちらに逃げてるのを知り、受け入れ体制を整えてくれていた。


「避難指示が出ている以上、街に避難するしかありません。広坪様、お力をお貸し願いないでしょうか?」


「私もお願いします」


 この村、ヤハナリ村の村長とメイダ村の村長にお願いされた。


 この村の名前は、先程訊いた。

 この村と交流するつもりが無かったので、聞いてなかった。

 村人達が避難する街も、カティなら知っているだろうし、後で確認しておこう。


「力添えは多少はしますが、我々はこの地に残りますので、あまり何がてきるかは分かりませんよ?」


「残られるのですか?」


「はい。オーク程度なら数万が来ても大丈夫な自信がありますから」


「で、てしたら、我々を避難させてくださいませんか?」


「……受け入れる事はできますが、あまり良い環境を整える事は出来ないし、避難命令が出ているのでしょう?街に行かなくて良いのですか?」


「街には、近隣の村から人が押し寄せてるハズです。場合によっては受け入れられない可能性もあります。それに、街に避難せよとは言われておりませぬ。広坪様、娘を何人か差し出す覚悟はあります。受け入れていただけませんか?」


 ヤハナリ村の村長さんが思い切った提案をしてきた。

 俺はこの地域の前支配者と敵対した過去があるのに、避難受け入れを要請してきた。

 しかも村娘を差し出してまでだ。

 それほど街への避難が難しいのだろうか?

 メイダ村の村長が驚いている所を見ると、あまり常識的な提案では無いらしい。


「モザレフ村長には色々面倒をお掛けしましたし、今回は無償で受け入れましょう」


「ありがとうございます。お主はどうする?」


 ヤハナリ村の村長がメイダ村の村長に尋ねる。


「正直、迷う。だが、街での受け入れは確かにかなり難しいだろう。広坪様、我々も受け入れていただけないだろうか。無論対価はお支払します!」


「分かりました。今回はヤハナリ村のついで、という事で受け入れましょう。対価は何か後で考えますが、娘は結構です。もう十分に居ますので。ただ、本当にあまり良い状況では暮らせませんよ?それでも良いですか?」


「はい、是非お願い致します」


「了解しました。こちらにも受け入れの準備がありますので、しばらくこの村に留まってください。無論護衛を残します。こちらの受け入れ準備ができ次第お呼びします。二日はかからないと思うので、そのつもりでお願いします」


「「ありがとうございます」」


 二人の村長さんにお礼を言われ、俺はやるべき事をするために退室した。




「――という訳で、村人を受け入れます。なので、至急戻ります。ここには、ツヴァイとガンマ、デルタを残します。後で聖堂院に残っている者を送ります。それでは、撤収する!」


「「「了解」」」




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