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エピローグ

前の話に、公爵の使者が来た事を追加しました。

短いので確認の必要はありません。

 



 トールデン王国 モルトルデン子爵領 領都キジムル 領主館



 現在、この街には王国軍が駐留している。

 この軍は、東の魔境を攻略する遠征軍になる。


 そして、領主館の執務室では、本来領主であるモルトルデン子爵が座るべき椅子に別の人物が座っている。

 座っているのは、ハルメジア・フォン・アマルムデン公爵になる。

 他には、公爵の護衛が6名と公爵の腹心が1名、高齢の職人が1名が居る。

 後は、ロムトジル子爵と武官のカバリム、文官のハトルスだけで、公爵が座っている机の前に三人は整列している。


「さて、報告を聞こう。こちらでもある程度は調べてあるし、書類では報告を受けているが、直接聞いた方がハッキリするからな。ロムトジル、私はお前になんと命令していたかな?」


 アマルムデン公爵の声は静かだったが、そこには静かな怒りが僅かだけ漏れていた。


「領土の防衛と進攻の準備です」


「そうだな。私は今年、東の地を得るために、長年準備をしてきた。以前から防衛に使う兵を増やすために、物資や金銭の援助もしていた。去年は更に兵も送った。しかし、東の村が壊滅した。まだこれは良い。全てを守れる訳ではないからな。領都がオークに包囲される。これも敵の戦力が大きければ仕方がないのかも知れない。だが、お前の兵は何処に行っていた?何をしていた?」


「その、ぞ、賊の討伐に出ておりました」


「そうだな。賊の討伐に出て負けてきたらしいな。お前の指揮できるほぼ全ての兵を使って。何故賊の討伐にほぼ全ての兵を連れていった?何故敗北した?」


「兵を最大限連れていったのは、賊が15,000ものオークを撃退したと思われるからてす。聖堂院がオークの撃退をしたと報告がありましたが、聖堂院にその力は無いと思われ、賊がオークを撃退したと判断しました。そして、敗北は、カバリムの提案した作戦を採用した結果です」


 敗戦の責を押し付けられているカバリムには、一切の変化が見られない。


「カバリム、事実か?」


「はっ!賊は強力なゴーレムを持ち、私の作戦を完全に採用した結果、敗北しました」


「夜襲されて食糧を奪われ、撤退せずに強攻、カバリムを始め10,000以上の兵が捕虜になり、聖堂院を勝手に譲渡した。そのせいで私は王都で良い笑い者だったぞ。で、強攻を命じたのは誰だ?」


「……私です」


 ロムトジルが答える。


「そうか。それで、対価に得たのがその魔具か。どうだった?」


 アマルムデン公爵が、控えていた一人の職人に尋ねる。


「本物でございます。私が試しましたが、水と薬草で作られた物は、間違いなく下級ポーションです」


「とんでもない物だな。私も一度見てみたい。今できるか?」


「準備してございます」


 そう言って、職人が魔具に水と薬草をセットし、魔具に魔力を流す。

 すると、水と薬草が光り、薬草が粉々になって液体が抽出され、魔具の中央で水と混じり合う。

 そして、真ん中にはポーションと同じ色をした緑色の液体が出来ていた。


「……本当に出来るのだな。効果を試したい。おい」


「はっ」


 アマルムデン公爵の声に反応して、護衛の一人が進み出て、自らの腕をナイフで浅く切る。

 そして、職人ができたばかりのポーションを切った箇所にかける。

 すると、傷は塞がり血が止まる。

 流れた血を拭き取ると、そこには傷跡も無く、完全に元通りになっていた。


「本物か。これを解析して同じものをつくれるか?」


「軽く調べはしましたが、まず無理ですな。無理に調べようとしたら、この魔具は爆発して木っ端微塵になってしまいます」


「そうか。ポーションの作成の方にはどうだ?」


「現状では分かりかねます。ただ、見た通りの事はしたことがありますが、駄目でしたな。ポーションの作成方法を見出だす事はかなり難しいてしょう」


「だとしたら惜しい。実に惜しい事をした。シュトラウス、やはり難しいか?」


 公爵は、護衛とは別に連れてきていた腹心に尋ねる。


「はっ。相手は故意にトールデン王国と言っていました。関係修復には数ヵ月から数年はかかるかと」


「聖堂院の事を取り消し、武力制圧はどうだ」


「百万用意して、全てを失う覚悟なら聖堂院だけは押さえられると思いますが、他に拠点があると見るべきです。なので、徒労に終わると思います」


「はぁ、残念だ。それで、調査結果はどうだった?」


「証言のみですが、ほぼ確定です」


「分かった。ご苦労」


 アマルムデン公爵は、ロムトジルの方に向き直り、尋ねる。


「ロムトジル、お前が賊と呼ぶものに支援を要請した。だが、断られた。まぁ、王国の者ではないので、仕方がないと言えるが、その者から面白い話を聞いた。お前が女を拐い、飽きたら殺して地下のダンジョンに捨てさせていた、というものだった。この話は事実か?」


 尋ねられたロムトジル子爵は、全身から汗を流していた。

 先程の話はロムトジルにも聞こえており、どの様な状況にあるのか理解できる。

 だが、正直に答えれば死しか待っていない。

 なので……。


「いえ、その様な事は一切しておりません。事実無根です」


「それがお前の答えか?」


「……はい」


「やれ」


 公爵が小さく声を発すると、護衛の四人が動き、ロムトジル子爵を剣で串刺しにした。

 ロムトジルの両隣に居たカバリムとハトルスが驚くが、それ以上の行動は見せない。


 肝心のロムトジルは、まだ生きてはいたが、致命傷だ。

 まだ生きているのは、ロムトジルを突き刺した護衛達が意図して行った故だ。


「な、何故」


 ロムトジルが最後の力を振り絞り、疑問を口にする。


「コアエリアを守護させていた者が吐いた。お前に買収され、死体を運び入れるのを見逃したとな。ダンジョンに無意味に死体を捨てるのは、貴族であろうと重罪だ。普通はここまでしないが、時期が悪い。お前は病死だ」


 公爵の言葉を聞き終え、ロムトジルは息を引き取った。



 ダンジョンに死体を捨てると、ダンジョンや隣接する地域に悪影響が出る。

 悪影響は、強力なモンスターの出現という形で現れるので、重罪になる。

 ただ、それは1000人単位の話で、ロムトジルは100人を越えない程度しか遺棄してきない。

 それでも、100人近い女性が遺棄されたので、罪は重いが、子爵家当主ならば、こんな殺され方はしない。


 だが、公爵が言ったように、今は時期が悪い。

 聖堂院の事もだが、東の村の壊滅、軍が離れている隙にオークに領都を包囲される。

 これらの事が重なった事で、公爵の立場がかなり悪くなっている。


 聖堂院の事はまだなんとかなる。

 聖堂院を襲撃した15,000ものオークを撃退したのは、今聖堂院を占領している者達で、その後聖堂院側がオークを撃退した者を攻撃したとの証言を得る事ができたので、聖堂教国側を避難できる。

 それに、取り返そうと動いた事実が、色々な意味で残ったので、これ自体はあまり問題ではないが、まだその事実を公表できていないので、これもまだ問題のままだ。


 特に問題なのは、オークによる被害だ。

 東の村々は仕方がなかったと状況的に思う。

 だが、その後コアがある領都をオークに包囲されたのがかなり悪かった。

 包囲されたのもだが、オークによる街や村々の被害は相当であり、進攻作戦の大きな出遅れの原因になる。


 子爵の死体遺棄、これが外に漏れれば、オークの増大の原因として、槍玉に上げられる事だろう。

 影響がほとんどないだろうという程度でもだ。

 それに、南の国にも被害が出ている以上、漏らさせる訳にはいかない。

 もし、今の時勢でこの事が漏れたら、子爵だけではなく公爵にも尋常ではない被害が出かねない。

 最悪は降爵され、進攻軍の大将から外されかねない。

 少なくとも、王国での立場が相当に悪くなる事は間違いない。


 どれか一つでも無かったなら、子爵をこんな形で死なせる事は無かっただろう。

 それでも、引退は間違いなかっただろうが。



 こうして、ロムトジル子爵は50年の生涯を終える事になった。




「二人はどうなさいますか?」


 公爵の腹心、シュトラウスが公爵に尋ね、カバリムとハトルスは身を固くする。


「二人の能力は高い。だが、今回の事は事前はお前達にも落ち度はある。故に、カバリムは子爵の娘と結婚し、男爵としてこの地を任せる。ハトルスは書類仕事を存分にしてもらう。これから山ほど仕事がやって来るだろうからな。二人には、オーク隣の地域を制圧して安定するまでの仕事を任せる。死ぬ気でやれ」


「「はっ!承知しました!寛大な処置に感謝致します!」」



 公爵としては、お目付け役としての役目を果たせなかった二人だが、お目付け役として派遣するぐらいには優秀だと思っている二人なので、この忙しい時期に遊ばせている余裕は無い。


 これで、少しでも出遅れを少なくしたい思いだ。




 そして、三日後には公爵率いる進攻軍は領都を出た。


 東の村々だけではなく、街まで破壊されているので、隣の地域へ攻め込むための橋頭堡を確保するために。




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