食糧売却
研究所
ミリシアさんとレティシアさんを受け入れてから半月が経った。
二人とは良好な関係が築けていると思う。
今日は、商人のガレストさんが久しぶりにやって来た。
まだ大量に残っている食糧を運ぶためだ。
「ガレストさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。広坪様のお陰で食糧を売っていただいたお陰で急場をしのぐことができそうです」
「それは良かったです」
「ただ、広坪様の望んでいた商人達を呼ぶというのは、難しそうです。聖堂院から撤退した一行が広めた噂を信じる者も多く、子爵軍を退けた力にも恐れる者も居るので、ここまでは来たがらない様子です」
「ここまでは?」
「はい。彼らも食糧を早く欲しいらしいのてすが、ここには来たくない。故に、一番近くの村で待機しています」
「なるほど、でしたら、ガレストさんが村との移送をして、そこから他の方々が、という訳ですね。理解しました。まぁ、これは仕方がないと思います。ガレストさんが来てくれただけ有り難いと思います。それで、一つ確認しておきたいのですが……。ガレストさんが来させない様にしている。なんて事はありませんよね?」
「勿論です!必要でしたら、村で待機している者達にご確認下さい」
「いえ、ガレストさんがしてないと言うなら信じます。それに、村まで行って怯えさせるのは悪いですからね。疑う様な真似をしてすみませんでした」
「いえ、広坪様のお気持ちは分かりますので、気にしないで頂きたい」
「そのお言葉、ありがとうございます」
今はガレストさんの言葉を信じておこう。
俺の人を見る目を信じたいと言うのもあるが、商人との繋がりが大切だ。
下手にガレストさんを扱ったら、悪い噂を実体験として流されて人が来なくなる。
殺しでもしたら、それこそ人が来なくなってしまうのて、今はこのままで良い。
商人は商売魂がたくましいので、いずれ別口で来るものが現れるだろう。
なので、その時にガレストさんの事を改めで聞こう。
まぁ、その者の話が、ガレストさんを破滅させるためについた嘘の可能性もあるので、その点は忘れない様にしよう。
「それで、代金なのですが、今回は少女8人と鶏が30羽用意してきました。雄が10、雌が20です。牛と豚ですが、こちらはしばらくは難しそうです。申し訳ありません」
「いえ、鶏だけでも有り難いです。それで、少女達の事でも聞きたいことがあるのですが、少々優秀な者が多いのですが、これはガレストさんが?」
「はい。私は人の目利きには自信がありまして、それでここまで商売を大きくでしました。広坪様には、最大限良い娘達を送ったつもりです。ただ、食料がかなり流れるので、次に少女達を連れてこれるのは、しばらくは先になりそうです」
「いえ、少女達は十分です。代金としては、こちらが保有していた食糧(軍から奪った)の半分程度ですが、大丈夫ですか?」
「はい。これだけあれば、村の方はしばらくは大丈夫です。それに、これ以上買い込むと、徴発の危険があるので、しばらくは様子見です。私より高値で買いに来た者が居たら、お売りいただいて構いません」
「そうですか、了解です」
徴発か……。俺が軍から奪った物なので、軍から見たら奪われたものを取り返す程度の事なのかも知れないが、商人から見れば買ったものを奪われるので、たまったものでは無いな。
「それで、ですね。ポーションを今はどれぐらいお売りしていただく事が可能ですか?」
ポーションなら今は1,000本ぐらいなら軽く出せる。
だが、一気にそんな数を売ってしまっては、買い占めを誘発しかねない。
ガレストさんは良いかも知れないが、将来にそんな輩が来たときに、一度に1,000本売ったなら、私にも売れと言ってくる者が出かねない。
それは避けたいので、ある程度は今の内から制限しておきたい。
「そうですね。ガレストさんの事は信用してますが、将来的に買い占めを回避したいので、一ヶ月に一商隊辺り、50本とかでどうでしょう?村で待機している方々の分もお売りしても良いですよ。ただし、代表者の名前を書いていただく事になりますが」
ガレストさんに、20本売った事があるし、50本程度なら悪くはないだろう。
「そんなに売っていただけるのですか?!有り難い!ただ、代表者の名前を勝手に書くのはできないので、村へ一度戻って確認をしてからでも構いませんか?」
「それは勿論です。代表者の名前を書いてもらうのは、不正防止のためです。先程も言いましたが、買い占めはさけたいので。独立をしてない弟子や臨時で雇って、商隊に見せかける。等は制裁の対象になります。制裁と言っても、不正をしたものに、ポーションの販売ていしなので、それほど気にしないで大丈夫です」
「そ、そうですか。気を付けさせます。ですが、50本まででしたら、先月分は勿体無かったです」
「でしたら、ガレストさんには30本追加しましょう」
「よろしいので?それも買い占めを誘発しませんか?」
「大丈夫です。一本でも買った月の物しか適応しませんし、先月分までとしておきます。後で細かいルールを書いて、明文化しておきます」
「おお、でしたら、是非にお願いします。村には6商隊居ますが、大丈夫ですか?」
「はい。全ての商隊が最大限買っても大丈夫な数が用意してあります。いずれは制限を強くするかも知れませんが、今は在庫が十分にありますので」
「それならば、良かったです」
「それで、ですね。ガレストさんだけに提案にですが、中級を買いませんか?」
「ちゅ、中級ですか?!」
「はい。数はかなり少ないので、今は二本だけでよろしければ」
「是非お売りください!お金を出せば手に入る物ではないので、有り難いです。これも商隊単位ですか?」
「そうですが、これはここに来て、信頼を得た方のみを対象にした物です。なので、今のところガレストさんだけですね。ただ、ガレストさんの場合は例外になりますので、他の方々では、最低でも一年間通われて、信用できると思ったら、こちらからお話を持ちかけます。なので、この件は内密に願います」
「承知しました。それで、毎月売っていただけるのですか?」
「いえ、中級はかなり生産が大変なので、年間で十本程しか作れません。今は在庫があるので、あと三本程ならお売りできます」
「それで、お値段は……」
「一本、金貨で300枚」
初級ポーションが一本で銀貨10枚なので、3,000倍になる。
少女一人が安くて金貨2、3枚、容姿が良いものでも10枚ほどなので、どれだけ高いか分かるが……。
「安い!ですが今は手持ちがありません!来月でもよろしいでしょうか?!」
「大丈夫ですよ。ガレストさんには、今年中なら、5本お売りします」
「ありがとうございます!広坪様には驚かされてばかりです。村もそうですが、中級まで出されるとは」
「あれ?前回の時に村の事を何も仰られなかったので、あれは少し珍しいぐらいなのかと思っていました」
「いやいや、あれほどの防壁を持つ村はありませんよ。ただ、広坪様達には、優れた土の魔法の使い手が居ると聞いていましたし、村長殿からもお話を伺いましたから、納得もしたのです」
子爵軍との戦闘について調べてい風な事を言っていたし、だからこそ、それほど驚かなかったのか。
「そういえば、軍の動きは分かりますか?何か噂でも良いのですが」
「そうですね。オーク撃退後は、領都に籠っているそうです。初夏の辺りには、軍の進攻があるのではとの噂なので、もう少ししたら、物資を集める動きが始まりそうです」
「そうですか。分かりました」
「お、物資の積込が終わったみたいです。私はこれで失礼します。また明日に来ます。では、また」
「はい。では、また」
ガレストさんが帰っていく。
ガレストさんは、今日を含めて合計で四日間聖堂院から村へ食糧を運ぶ予定だ。
ガレストさんに、魔具を売りたいが、今は時期が悪いと遠慮されている。
状況改善には、来年になってから、だそうだ。
ガレストさんが帰るのを見送った俺は、新たに加わった少女8人と鶏の世話をしなければならない。
少女達は、ステラさん率いる少女達には任せておけば良いので、さっさと任せる。
それにしても、少女達がこれで47人になった。
アイドルグループにでもしようか……。
容姿は皆並み以上だし、いけない事は無い気がする。
いや、色々と駄目だな。忘れよう。
鶏は、小屋が既に作られているので、そこへ運ぶ。
小屋は第二防壁内の西にあり、岩壁沿いに建てた。
鶏の糞が非常に臭いので、専用の空調を設置して、臭いを防壁の外へ逃がすように設計してある。
さらに『クリーン』の魔具を各所に設置してあり、掃除も楽チン仕様だ。
後は、聖堂院に居る保護女性達にお任せだ。
しばらくは繁殖優先になるので、卵は収穫出来ないが、将来が楽しみだ。
今日は聖堂院に泊まり、明日は少女達と帰還する。
明後日と明明後日は、ガレストさんの来る時間のみ聖堂院に居る予定になる。
四日が経ち、ガレストさんへの食糧引き渡しが終わった。
勿論ポーションも引き渡した。
そして、この間にオシホ様を村に派遣して、研究所の管理者としての適性があるか調べてもらった。
村の人にも、商隊の人達にも適正者が居なかった。
今のところ、商人を呼ぶ事には成功しているが、大勢を呼べていない。
やはり、南の地域が人の支配下にならないと、この様な辺境では、人を呼ぶことが難しい。
アリスさんの話では、研究所の南の地域さえ人が支配できれば、東側への道が開かれ、人通りがかなり増えて、聖堂院もそれなりの賑わいをみせる。との事だったので、それを待つしかない。
人通りが増えれば、適正者の発見、南への伝を得る事の両方の可能性が高まる事になる。
ガレストさんの話では、オークによって南の冒険者の国との連絡がかなり遠回りじゃないと届かないそうなので、今は様子見を維持している。
今は焦っても仕方がないので、出来ることに専念する。
少女達と研究所に残った保護女性達の育成。
ゴーレムと魔具の性能向上。
魔核とポーションの増産。
今はこの辺りだろう。
翌月、ガレストさんが中級ポーションとポーションを買いに来た。
これで金貨1,500枚を手に入れた。
これだけでもルティ達の生活はなんとかなる。
そして、ガレストさんが、子爵軍を始めとした王国軍が東への進攻を始めるとの知らせを持ってきてくれた。
予定では二週間後になるらしい。
ガレストさんが去ってから数日後、大山脈中腹の監視所が、聖堂院に接近する一団を発見した。
俺は聖堂院でその一団を出迎えた。
その一団は、東の地域へ進攻する王国軍の総大将であるアマルムデン公爵の部下で、シュトラウスという人が率いた一団だった。
あのロムトジル子爵の叔父さんの部下だったので、最大限の警戒で対応した。
用件は、食糧の返還か聖堂院の所有権の取り消しか、ろくな事では無い気がしたが、杞憂だった。
聖堂院を占有した経緯と、保護している女性への聞き取りが主だった。
そして、進攻への支援を要請されたが、断った。
「女を拐い、ダンジョンへ捨てるトールデン王国には力を貸すことは出来ない。お引き取りを」
言葉が多少荒くなったが、使者の男は気にした風も無く帰っていった。
協力はしないが、進攻の成功ぐらいは祈っておこう。
中途半端な気がしますが、次がエピローグです。
地中から表に出て、子爵軍を撃退し、表での拠点をゲット。
外への伝と管理者としての適正者の探索開始。
こんな感じでした。




