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一息と会心の一撃

 



 状況がある程度分かり、お腹が鳴った。

 メイドさんに食べ物をお願いしたのだが、ココは千年近く封鎖され、人の出入りはなかったと言っていた事に一抹の不安を覚える。

 それに、異世界の食事になる。文化の違いでヤヴァイのが出てくるかも知れない……。

 ドキドキしながら、食事を待つ。



 ベッドに横になりながら、食事を待つ間に、メイドさんに聞いた話しを整理する。


 ココは異世界で、千年近く封鎖されていた魔方陣研究所で、俺は最後の最低ランクな条件で管理者として召喚された。

 その召喚の際に事故があり、精霊と融合状態にある。

 そして、死にそうな俺にポーションや地脈の力を供給して助けてくれた。

 救命の際に強制的に契約をせざるを得ず、契約したものの、精霊との融合状態を鑑みるに、解除は危険である。

 この召喚の目的はこの施設の継続で、強制ではあるが、契約した時点で達成状態で、これからは、管理者である俺次第。


 外は地域に区切られ、地域の中心にはコアエリアと呼ばれる場所がある。

 コアエリア内にあるコアを管理下に置いている者が、その地域の支配者になる。

 地域を1つでも支配していれば、建国が可能。


 モンスターと呼ばれる魔獣や魔物が存在し、人類の驚異である。

 ダンジョンもあり、魔法もある。魔法鉱物もある。

 この世界には人間以外にエルフ、ドワーフ、獣人、魚人なども居る。

 獣人の人間度が気になるところ。


 ココはコアエリアが単独であるような例外的な場所で、人工ダンジョンとも呼べると言っていた。

 そして、ココのコアは元人間で、仮面のメイドさんはコアが操る遠隔操作型ゴーレムである。


 あぁ、ココはゴーレムを中心に、物質干渉系の魔方陣を中心に研究していた施設……だったかな?

 メイドさんには重要そうな感じだったな……。


 以上かな?

 まぁ、メイドさんのに話しを全て信じたらだが……。

 しかし、俺の体か左目を除き、完全に治っているのは事実だ。おまけに超再生みたいに傷の治りが早かったし……全くの嘘ではないか……。



 グーーッキューーッ

 再びお腹が鳴る。



 さっきは恥ずかしかったなぁ。でも良いタイミングだったかな?

 にしても、食事は久しぶりな気がする。

 考えてみれば、向こうの事故で一週間と三日、こちらに来て三日か、合計で13日ぶりの食事になるのか。

 まぁ、体感的には三日ぶりぐらいかな?

 ほとんど意識が無かったし、幽体離脱してた時は空腹を感じなかったから、そんなに食べたい!って感じは無いが、腹が鳴っては仕方がないよね。

 それに鳴るとなんだか腹が減ってる気になる。



 コンコン

 そんな事を考えてると、メイドさんが、戻って来たみたいた。

 まだ10分ぐらいしか時間が経ってないが、もう食事が出来たのだろうか?

 俺はベッドに置いてあった翻訳魔法道具を持ち、返事をする。


「はい、どうぞ」


 ガチャ

 返事をするとメイドさんが、ドアを開けて入って来た。


「お食事の用意が出来ました。こちらへ。それとこれをどうぞ」

「ありがとう。それで、これは?」


 メイドさんに紐を渡された。


「それは『通訳魔具3号改型』を首に下げるための紐です。ただの紐ではなく、魔法鉱石のミスリルを織り込んである紐で、それで魔具を首から下げていれば、魔具が直接肌に触れてなくても機能します。食事の際に不便にならないように用意しました」

「あぁ、そうだね。ありがとう助かります」


 通訳の魔具?が無いと会話出来ないから助かる。


『通訳魔具3号改型』を首から下げ、寝室を出る。出てすぐのダイニングの様になっている部屋のテーブルに食事が用意されていた。

 どんな料理か不安だったが、見た限りだとホワイトシチューみたいに見える。

 あとは大きな丸パンをスライスした様なパンとコップに入った水と水差し、追加のシチュー?が入ったと思わしき鍋敷きに乗った鍋とスプーンが用意されてた。

 器とコップにスプーン、鍋敷きが木製で、鍋は鉄製に見える。


 テーブルは石製で、Tが壁から生えた様な形状になっていて、寝室から見ると向こう側面が壁にくっついている。

 椅子は木製で、背もたれの無い丸椅子になっていた。それが四脚ある。


 責任感着こうとして、手を見る。三日寝たきりだったのか。


「あー、手を洗いたいのですが……」

「でしたら、テーブルに両手をつき、『クリーン』と言って下さい。そうすれば、手だけですが、キレイになります」

「分かりました」


 おお、流石異世界!

 夢の『クリーン』が使えるとは!


 俺は早速テーブルに両手をつける。


「クリーン」


 すると、手首辺りまでが白い光に包まれた。

 両手を見るが、あまり汚れてなかったせいか、キレイになったのか分からない。

 ま、まぁキレイになったんだろう!


 とりあえず俺は食事が用意された席に着く。

 見れば、シチューは出来立ての様に湯気が立っている。


「そういえば、随分早かったけど、もう作ってあったんですか?」

「はい、貴方の状態が安定し、ベッドに寝かせてから、消化の良さそうな物を作りました。調理後すぐに、料理専用状態保管庫にて保存してあったので、作りたての状態です」

「料理専用状態保管庫ですか?それも魔具だったりするんですか?」

「はい、設置型の魔具で、ドアを閉めたら中を擬似的に時間停止状態にして、料理を保管する専用の倉庫の様な物です」

「ま、魔法の袋的なのが!いやいや、今は食事が先ですね。またあとで、魔具の説明をお願いします」

「はい、冷めない内にどうぞ。具を小さめにしたキノコクリームシチューになっています。お口に合えば良いのですが……」

「とても美味しそうに見えますから大丈夫だと思います」


 俺は両手を合わせ。


「いただきます」


 スプーンで一口食べてみる。

 普通に、いや、非常に美味しい!


「とても美味しいです!」

「お口に合って良かったです。十分に用意してあるので、ご存分にお食べください」


 不安そうに(雰囲気が……多分)俺の横に立っていたメイドさんは安心し、頭を下げてから俺の邪魔にならないように後ろに控えた。


 それから俺はシチューと少し硬いパンを存分に楽しんだ。


 久しぶりな食事になるので、胃が拒絶するんじゃないかと思ったが、大丈夫だった。

 一応食べ過ぎには注意したつもりだが、少し食べ過ぎたかも知れない。

 だが、胃が縮んだのか、以前食べていた量の半分ほどで満足した。


 食事に満足した俺は再び両手を合わせ。


「こちそうさまでした」


 俺はメイドさんに振り返り感謝を伝える。


「とても美味しかったです。ありがとう」

「あの、食べる量が少なく感じるのですが、無理をしてお食べになったのでは?味見が出来ないので、何か失敗をしてしまったのでは……」


 俺の食べる量が少なかったのを不審に思ったのか、聞いてきたので、慌てて否定する。


「いやいや!とても美味しかったです!今まで食べたシチューで一番でした!食べる量が少なかったのは、胃が縮んだせいだと思います。食事をするのが13日ぶりぐらいですから!俺はとても満足しました。また食べたいです」


 コミュ障の俺だか頑張って笑う……ニ、ニコッ。

 ぐぁーっ普通に会話するので、精一杯なのに笑いかけるとか……グフゥ……。


「あの、笑顔が引きつってますよ?ご無理は……」


「あぁ!笑顔は久しぶりなのでちょっと失敗しただけです!本当に美味しかったです。本当です。不味かったら不味いと言います」


「はぁ、一応納得しておきます。一つ気になったのですが、食事の前後に両手を合わせていましたが、神に感謝していたのですか?」


 あぁ、異世界定番の……。


「あれは、私の居た国で行われる、食材や食材を育てた人、運んだ人や料理人などの料理に関わった人全てに感謝の意味がある動作なんです。だから神様への感謝もあるかも……」


 神様?……宗教!完全に忘れてた!危ない宗教があったらどうしよう……。メイドさんは?元人間なんだし、信仰してる宗教があるだろうし、もう既になにかやらかしてる?

 メイドさんを見るも顔色は分からない。これも聞いてみるしか無いのか……。


「素晴らしい習慣だと思います。あの、どうかしましたか?」


「いや、あの、宗教的な意味はあまり無かったつもりなんですが、こちらの宗教を知らないので、何か既にやらかしてるのではないかと急に不安になりまして……。何か変な事をしてないでしょうか?」


「ああ、なるほど、宗教ですか。貴方は特に変な事をしてませんよ。強いて上げれば、言葉が少し安定しないと言いますか、無理に丁寧に喋ろうとしている風に感じます。管理者になられましたし、ココには私と貴方しか居ないので、もっと好きに話して頂いてかまいません。いえ、好きにお話し下さい」



 ガハァ!思っていたものと全く違うものが来た!

 構えてる所に、後ろから側頭部をバットで殴られた気分だ!

 コミュ障頑張って普通に話してるつもりだったけど、普通に話すことすら無理だったか……。いや、普通に話すのが無理だからコミュ障なのか。

 真理だな!


 いや、違うか。落ち着こう。深呼吸だ。深呼吸。

 スー、ハー、スー、ハー、スー、ハー。

 落ち着いて、行こう。これからは楽に話して行けば良いのだ。そうなんだ。

 今後の関係性のために、感謝を伝えなけらば!

 まず深呼吸だ。

 スー、ハー、スー、ハー、スー、ハー。

 よし!行くぞ!



「分かりました。いえ、分かった。これからは楽に話します。言ってくれてありがとう」


 な、なんとか普通に言えたかな?


「あの、不躾な物言いでした。申し訳ありません!」


「いやいや!俺に対人コミュニケーションに多少難があって、少し無理して喋ってましたから、言ってくれて助かりました」


「いえ、しかし、その、凄い汗ですよ?」


「え?」



 俺は自分の顔に触れる。確かに汗が……。着ているシルク様なガウン的な物を見るが、汗で色が変わっていた。

 い、いかんな。何か言い訳を……そうだ!風呂だ風呂に入ろう!

 汗は食事のせいにでもして、風呂に入れば良い。ついでにもう少し普通の服装になろう。



「食事をして、体が活性化したのかな?丁度いいからお風呂に入りたいんだけど、入れる?シャワーだけでも良いんだけど……」


「そう、ですか?お風呂ですが、申し訳ありませんが、大浴場はまだ封印中でして、使用できません。この部屋の隣ですが、小さいですが、シャワーと個人用の浴槽があります」


「それで十分です。あと普通の服を用意できますか?」


「脱衣所方にご用意しておきます。直ぐに入られますか?お湯は貯め始めたばかりですが、直ぐにたまりますので、もう入れます」


「え?君はずっと一緒に居たのにいつの間にお湯を……」


「私は管理のサポートが仕事なので、コアからある程度直接操作できますので、隣を使うと仰った時点でお湯を貯め始めました」

「あぁ、そういえばそうだったね。分かった。直ぐに入るよ。お風呂の用意ありがとう。服もお願いします」


「かしこまりました。お風呂場の説明をしますので、ご案内します」


 案内といっても、すぐ隣なのだが……。

 寝室から見ると左側、最初に覗いたときは見えなかった側にある扉を開ける。

 そこは脱衣場になっていた。そして奥から水の出る音がする。浴槽にお湯を貯めているのだろう。

 脱衣場も個人用なだけあって、あまり広くは無いが、一人で使うなら十分な広さがあった。

 左手側には、洗面台と人が入れる程のサークルと縦に取り付けられた手すりがおる。あとは右手側に台とカゴ、タオルが入った棚に台の下の部分は扉が付いてるな。台下収納か?

 壁なんかは相変わらず岩壁内だ。その他の物は木製で、部分的に金属だ。

 メイドさんの説明が始まる。

 右手は見たままで、台の下の収納はお風呂で使う消耗品が入ってた。なんと、ボディソープやシャンプーにリンスがあった。名前はついておらずそのまま、液体石鹸、頭髪用液体石鹸、頭髪保護液らしい。


「左側のこれは、クリーンの魔具です。その円に入り手すりを両手で持って『クリーン』ととなえれば、全身キレイになります。急いでいる場合やお風呂に入るのが面倒な場合はお使いください。それと、全身の水気も取れるので、手早く乾かしたい場合もお使いください」


「ありがとう。クリーンの魔具は便利だな」


「続いてお風呂の説明です」


 お風呂場の説明をされたが、ほとんど現代と変わりは無かった。

 ただ、シャワーは立って使うことのみを想定した作りになっていた。

 シャワーの温度はつまみをひねって調整。液体類は容器に入っていて、容器下部のつまみをひねれば液体が出てきた。固形石鹸も置かれてた。

 垢擦りが、なんと言うか、ヘチマ?を輪切りにしたと言えば良いのか、そんな感じのスポンジ的な物とタオル的なのが用意されてた。


 メイドさんは説明が終わると退室した。

 まぁ、手早く洗って湯船に浸かろう。





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