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村へ防壁と避難所の設置




 研究所



 少女達を研究所に連れてきて5日が経った。

 研究所での生活に大部慣れてきていていたが、途中で大半の者がホームシックになり、泣き声の大合唱になったりもした。


 俺は、これほど泣くなら、と家に帰すことを考えたのだが、カティ達に止められた。

 無償で返せば、彼女達が再び売られる可能性だけでは無く、多くの者が売りに出され、俺達以外の所に売られれば、悲惨な事になりかねないと言われた。

 悲惨な事、これについては明言は避けられたが、ろくなことではないだろう。


 ただ、泣いた後の彼女達の顔付きが変わっており、不安そうな感じが消えて、しっかりした感じに変わっていた。

 カティによると、これで一安心との事だった。

 これは、彼女達が俺達を信用して、ここで頑張る決意をした事の表れだそうだ。

 彼女達を安心させようとしたルティ達や、研究所に残った保護女性達の成果が出たのだと思う。


 何にしても、少女達が安定するなら、そでいい。




 村への防壁建設のための準備も着々と進んでおり、村用の門やその他の必要な物資を、ドワーフ達の手助けを受けて、準備が完了した。

 明日には村へ向かう予定だが、早目に到着を目指すので、今晩の内に聖堂院へ移動しておく。


 聖堂院へ移動して、自室で休む。

 そう言えば、最近アリスさんとの会話が少ない。

 研究所に居るときは顔を会わせるが、個人的に会話をしていない気がする。

 研究所に残った保護女性達の面倒を見てもらっていたし、面倒事を次々に持ち込んでは、色々としてもらっているので、村から帰ったらお礼を言おう。




 翌朝、準備を整えて聖堂院を出発する。

 編成は前回とほぼ同じで、俺、マリー、オシホ様、アイン、新精霊達で村へ向かう。

 今回も遠征用のゴーレムを連れてきている。

 荷馬車は三台あり、二台は防壁建設に必要な門や扉、その他の物資、最後の一台は、約束してあった食糧になる。


 新精霊達は、今回も護衛訓練を兼ねているが、主目的は防壁建設の補助だ。

 つまり、魔力を多量に使うので、魔力供給用魔具の設置も任務に入る。

 行きは、護衛をアインと遠征用ゴーレムに任せて、新精霊達には魔力供給用魔具を設置してもらう。

 村とは友好関係を築けているので、緊急時に備えて魔力供給用魔具を常時設置した状態にするので、地下に埋める本格的な設置作業になる。

 まぁ、土の精霊であるし、設置は楽な作業になるだろう。




 聖堂院西の村



 村へは普段と変わらない時間で到着した。

 移動自体は普通に移動したが、荷馬車を牽いている分、荷物が少ない新精霊達も魔具を設置してからでも簡単に追い付けるので、遅れは出なかった。

 村へ到着すると、村長さんに出迎えられ、約束していた商人に引き渡す食糧を村長さんに預ける。

 まだ朝8時ぐらいで、時間的に余裕があるが、早速村長さんとの打ち合わせに入る。


「防壁の位置はきまりましたか?」


「はい。村の皆と話し合い、場所を決めました。畑のある場所から二回りほど大きくした位置を目安にしようと思うのですが、大丈夫ですか?」


「そちらはそれで大丈夫です。それよりも、門なのですが、あまり大きくても大変そうなので、小さめの物をこちらで用意してきましたが大丈夫ですかね?」


「おお!それは有り難い。こちらもその事を心配する者も居たので、助かります」


「それは良かった。あと二つほどこちらから提案があります。門なのですが、門の上部に櫓、反撃するための建物を作ってはどうかと思っています。もう一つは避難所ですね。万が一、門が破られた時に避難できて、籠城できる建物を村の中に作ってはいかがかと思いまして、こちらの準備もしてきました。これらは、村長さん達の判断で作るかどうかを決めようと思います」


「門の上の櫓と避難所ですか……」


「村長、櫓は不味いのでは?反逆を疑われます」


 村長の隣に座る男が問題点を上げてきた。

 そうか、ここも領主の支配下には違いないので、下手に武装しては、反逆を疑われるか。

 俺達の聖堂院にも一番近いし、あまり過ぎた行動はとらない方がいいな。

 まぁ、防壁ぐらいが限界か。


「そうだな。有り難い申し出ではありますが、櫓は遠慮いてしたく思います。ですが、避難所は有り難いです。是非お願いいたします」


「承知しました。避難所はどこに建てるか考えておいて下さい。まずは、門を作り、それを見てもらって問題が無ければ防壁を作りたいと思います。よろしいですか?」


「はい。それでお願いします」


 話しは決まったので、まずは東門を創りに向かった。

 今ある門から、畑二枚分ほどの離れた位置に、オシホ様が幅7m、高さ5m、厚さ5mの門周りを作った。

 村長達は、魔法によって瞬く間に出来上がったそれを見上げていた。


「門の幅も高さも3mにしてあります。馬車一台ぐらいなら通れますし、どうでしょう?」


「十分です。これなら問題なく出入りできます。それにしても、凄い魔法ですね」


「うちでも随一の腕前です。それでは、門を取り付けてみますね。それで問題が無ければ、西門も作って防壁を作ります。よろしいですか?」


「お願いします」


 そこからは、持ってきてあった枠組みを設置して、門を取り付けた。

 組み立てるだけの物だったので、取り付けは楽だった。

 それに、設置する側を魔法で調整てきたので、枠を埋め込む事ができたので、そう簡単には壊せない。

 門を取り付けた後に、土だった門周りを、オシホ様の魔法で石にしていく。

 これで非常に頑丈になったが、デメリットとしては、普通の人には修理が大変た。


 門の完成後に、門の開閉をしてもらったが、男一人でもなんとか動かせて、二人なら素早く開閉することができた。

 これを見て、村長さんも満足そうだったので、西門も作り、村を囲む防壁作りに取り掛かった。

 防壁は、畑二枚分と半分ほど柵から離れた場所を目安に、厚さは3m、高さは5mの防壁を、アルファ達を総動員して一気に作り上げた。

 防壁も、門周りと同じ様に、オシホ様が石にしていく。

 これで、防壁は完成した。

 一枚岩の様な防壁なので、蟻の入れる隙間も無い。

 しかも、防壁は岩にしただけでは無く、魔法的にある程度強化してあるので、魔具で簡易的に作った防壁とは比べ物にならないぐらい頑丈だ。

 要塞ほどでは無いが、オークぐらいには壊せない仕様になっている。


 魔力供給用魔具は、防壁を作るときに、防壁の下へ埋めた。

 魔具は基本的に人気が無いところに埋めてきたので、人里でもしかしたら掘り返される危険があったので、防壁の地下に埋めた。



 一時間掛からずに防壁ができたので、村長さん達は言葉を失っていた。

 そして、恐る恐る防壁を触り、軽く叩いて強度を確かめていた。

 当然ながら、軽く叩いた程度では壊れはしない。


「こんなもので、良いですかね?」


「だ、大丈夫です。むしろ、これほどのものを作っていただき、感謝の言葉もありません」


「それなら、良かったです。次は避難所を作りたいのですが、大丈夫ですか?」


「はい。ご案内します」




 案内されたのは、村の中心付近、村長さん宅だった。


「私の家を壊してでも避難所を作っていただきたい。あれほどのものを作っていただけるなら、惜しくはありません!」


 立地的に最高だろう。

 だが、流石に村長さんの家を壊すのは気が引ける。



 という訳で、村長さんの家の前で臨時会議を行った。


「村長宅を壊さずに、避難所を作る。これは、地下に作るしかあるまい」


「ですが、そうなると救援要請を出してもらうためのアレを設置できないのでは?」


「別で取り付けても良いのでは?」


「ふーむ」


 皆で悩んでいると、村全体に危険を知らせるための物だろう鐘が見えた。

 鐘は、高さ4m程の木の櫓に取り付けてあった。

 周囲には少しはスペースがあるので、あれなら入口ぐらいは設置できるし、櫓土魔法で作れば頑丈にもなる。

 高さもあるので、点滅する魔具を設置も問題ないだろう。


「オシホ様、アレの下ならどうですか?」


「ふむ、そうじゃな。悪くない。むしろあれならば丁度良いな。ワシは良いと思うぞ」


「私も良いと思います」


「賛成です」


 オシホ様に続き、マリーとアインも賛成してくれたので村長さんに相談する。


「村長さん、あの警鐘台の地下に避難所を作ろうかと思います。がいかがでしょう?」


「地下、ですか?水漏れや湿気などは……」


「十分に対処可能だと思います。それに、警鐘台も頑丈にできますし、どうでしょう?」


「大丈夫ならお願いします」


「承知しました。オシホ様お願いします」


「了解じゃ」


 この村は400人ほどの村なので、そこそこの広さが必要だ。

 まずは鐘を取り外した警鐘台を破壊して、その地下に避難できる空間を作る。

 地下の土は、周囲を固めるのいくらか圧縮したが、大半を排出し、村人が避難できるだけの空間を確保した。

 そして、警鐘台があった場所に出入り口を作った。

 出入り口は地下へ続く階段の入口なので、それほど場所を必要としなかった。


 そして、その入口の上に警鐘台用に、土魔法で櫓を作った。

 この櫓は、鐘を設置するためだけでは無く、煙突の役目もしている。

 元々避難所は、窓の無い閉鎖された空間を作るつもりだったのて、空調用の魔具をこっそり設置するつもりだった。

 なので、櫓は丁度いいいい目眩ましになる。

 鐘を設置すれば警鐘台になり、救援要請をしてもらう魔具も見える位置に設置できるので、一石三鳥ぐらいにはなる。

 最後に、出入り口に2m四方の出入り口に扉を設置すれば完成だ。

 避難所用にも扉を作って持ってきてあったのが、そのまま使えたのは良かった。


 ただ、地下に避難所を作ったので、避難所に保管しようと思っていた、防壁の門の予備を置くところが無い。

 村長さんに相談すると、村の倉庫に置かせてくれるそうなので、置かせてもらった。


 避難所の完成後に、村長さんに中を見てもらい、要望など聞いた。

 水や食糧をいくらか保存する方法と、トイレについて相談された。

 水は思いきって井戸を掘り、食糧保存用の棚を新たに作り、トイレは壺にできるように個室をいくつか作った。

 できるだけ魔法や魔力を使わない仕様にしたので、多少不便だが、なかなかの物がてきた。


 他にも、門には反撃用の櫓は必要無いと言われたが、見張り用の場所を欲しがったので、門の上に続く階段と、門の上に雨風をしのげそうな建物を作った。



 最後に、救援要請をしてもらう魔具について説明をした。

 地下の避難所からも操作できるようにしたので、作動させてくれれば、できるだけ急いで救援に向かうと伝えた。


 これを伝えると、村長さんは深く感謝してくれ、これからも、できる限り協力してくれると約束してくれた。



 俺達にしてみれば、大したこと事では無いが、これでこの村の協力が得れるなら安いものだ。

 それに、次に行商人がこの村を訪れた時には驚いてくれるだろう。

 そうなれば、聖堂院にも来てくれるかも知れない。



 昼も近いので、そろそろ帰ろうとしたが、村長さんに引き留められ、昼食をご馳走になった。

 食糧不足の中で精一杯の持て成しをしてもらい。

 村長さんに感謝を伝えて、帰路に着いた。



 帰還後に村での事を報告した。

 魔具の設置、門と避難所の仕様変更などを伝えて、問題点の改善案などを出しあった。

 村の強化は、どこでもしたがるかも知れないので、防壁と避難所の設置については、ある程度パッケージ化して、いつでも素早く対応できるようにしておきたい。

 今回の様に無償では無く有償になるかも知れないが。



 そして、三週間と少しして、聖堂院に商人がやって来た。




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