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少女達の移住

 



 研究所



 少女達を連れ帰った翌日、彼女達の受け入れと、移送の準備をする。

 聖堂院と研究所の往来は、俺、ルティ、カティ、マリー以外の人間には眠ってもらっている。

 三姉妹にも眠ってもらっているのだが、これは三姉妹がうっかり情報を漏らしたりしないようにするためだ。


 少女達にも眠ってもらうが、場所的に地下にあるので、その点の注意事項と眠らされる事への不安の払拭が必要だった。

 売られた先で、強制的に眠らされるのだ、不安に思わない訳が無い。

 彼女達に通告なく眠らす事も出来るので、通告しない方が不安にさせなくて良いかも知れないが、勝手に身体に影響を与える行動はしたくなかった。

 単に俺の気持ちの問題だ。




 聖堂院



「皆さん、おはようございます」


「「「おはようございます」」」


 午前9時ぐらいの時間だ。

 研究所から聖堂院まで二時間ほどかかるので、どうしてもこのぐらいの時間になる。


「さて、皆さんの処遇の方針がある程度決まりました。ですが、今ならまだ貴女方の意見を聞くことができます。何か要望はありますか?時間が必要ならお昼過ぎまでなら待てますが、どうしますか?」


「時間は大丈夫です。みんなと話し合いましたから」


「それでは、要望があったら聞かせて下さい」


「ここに居るみんなと一緒に居させて下さい!」


「「「お願いします!」」」


 俺からの問に、ステラさんが答え、少女達が頭を下げる。


「そんな事でしたら、大丈夫です。皆さんには一緒に行動してもらいます。他に何かありますか?」


「ありません。コウヘイ様に従います」


「……。そうですか。承知しました。では、皆さんには、俺が暮らしている場所に移ってもらい、そこで暮らしてもらいます」


 俺が彼女達の処遇につて話し出したので、少女達全員が俺の話を真剣に聞いている。


「ただ、俺が暮らしている場所は秘密の場所なので、皆さんには移動の時は全員に眠ってもらいます。怖いかも知れませんが、我慢してもらいます」


 眠らさせると聞いて、不安そうになる者も居たが、こればかりは我慢してもらうしかない。


「移動した後ですが、皆さんにはそこで勉強と戦闘訓練を中心にしてもらいます。遊ぶ時間ぐらいはあるので、安心して下さい。それに、俺の暮らしている場所なら、たまにお菓子を出してあげれるので、楽しみにしておいてください。それから、俺が場所には、貴女達と同じくらいの女の子が3人居ますが、俺の娘なので、仲良くしてくれると嬉しいです。以上ですが、何か質問はありますか?」


「「「……」」」


 少し待ってみたが、沈黙したままなので、無いと判断する。


「無いようでしたら、早速移動したいと思います。何か準備は必要ですか?」


「大丈夫です。必要ありません」


「そうですか。では、ベットに横になってください。次に目が覚めたら俺の拠点です」



 オシホ様達に全員を眠らさせてもらって、研究所へ移送する。




 研究所



 少女達の移送が終わり、それぞれ割り振られた部屋に寝かせた。

 まだお昼前なので、昼食の時にでも起こせば良いだろう。


 移送時に、ルティ達がやって来て、寝たまま運ばれる少女達を確認していた。

 そして、「本当に美人ばかりね」「可愛い」「耳触っても大丈夫かしら?」など、それぞれ感想を言っていた。

 獣人の女の子の耳は守った。



 昼食の時間になり、少女達を起こして、ルティ達と昼食次いでに紹介した。

 やはり、女性が多い方が安心するのか、少女達もいくらか雰囲気が柔らかくなった。

 紹介自体はスムーズに終わり、昼食を一緒に食べた。

 そして、最後に必殺のプリンを出した。

 プリンを食べた少女達の反応は劇的だった。

 目を見開く者も居れば、惚ける者、プリンを凝視する者、反応は様々だ。

 そして、三姉妹が少女達にプリンを作ったのが俺だと教えると、11対の目が俺を射抜く。

 見つめてくる目が輝いており、なんとも居心地が悪い。

 プリンを発明したのは俺では無いし、今は、アリスさんやルティの方が美味しく作れるからだ。

 だが、ルティに、昨日の夜にプリンを作らされた理由が良く分かった。

 これで、かなり好感度が上がったと思うので、効果はバツグンだった様だ。




 昼食後は、早速戦闘訓練について話をした。

 魔法と武器による訓練だが、武器については後回しにして、まずは魔法適性を検査した。

 魔具を持ち出し、それぞれが検査をした。

 特化型が居らず、皆標準的なものだった。

 魔力の方は、魔法使いクラスが二人も居た。

 一般的に、魔法使いクラス以上の魔力を持っているのが全体の一割程度なので、11人中2人が魔法使いクラスの魔力があるのは、多い方だ。

 一人はステラさんで、もう一人は12歳の大人しそうな少女だった。

 検査後は、魔力量が少ない者も、ある程度は魔法を使えるので、少しでも使える様になれば、生活に便利なので、全員が魔力を感じる訓練をした。


 そして、一人面白い少女が居た。

 ステラさんの次に年長者の14歳の女の子で、魔力量が魔法使いにすら遠く及ばないが、魔力を感じ、すぐに魔法を使える様になった天才が居た。

 俺みたいな特殊な条件下に居るわけでもないのに、魔力を認識させると、すぐに自力で魔法を使ったのだ。

 説明だけで魔法を使える天才ではあるが、魔力量に絶対的な差があり、非常に勿体ない存在だ。


 だが、俺達なら……。

 いや、駄目だな。魔力の無限供給、これだけは知られる訳には行かない。

 しかし、魔力を供給するだけの魔具、これを何らかの制限を付けて貸し出すことはできるか。

 少女達の訓練の様子を見ながら、思案する。

 すると、オシホ様が寄ってきた。

 オシホ様も件の天才少女の事を話に来たみたいだ。


「あの娘はなかなかじゃな」


「見れば天才と分かりますが、どの程度ですかね?」


「魔力の扱い方なら、今のお主よりは上手くなるな。下手をしたら、アルファ達よりも上手くなるかも知れぬ。魔力があれば、の話じゃがな」


 俺より上手くなるのは簡単に予想が出来たが、精霊であるアルファ達以上になるかも知れないのか。

 化け物クラスだな。

 確かに魔力さえあれば、そうなれるかも知れない。

 現に、生活魔法程度の魔法を、何度か使用しただけで魔力切れになり、気分が悪そうにしている。


「専用の魔具でも作ってやるか?遠征用のゴーレムに使っている魔力タンク用のコア一つであれは化けるぞ」


「まだ判断しかねます。それに、あの娘が戦闘を望むか分かりませんから」


「ま、そうじゃな。ただ、あのまま埋もれさせるのは少々惜しいな」


「そう、ですね」


 確かに、彼女の才能は惜しい。

 俺達の技術があれば、かなりの魔法使いに育てる事ができるだろう。

 だが、それが彼女の幸せになるかは分からないのだ。

 今はまだ静観するしかない。



 魔法の訓練を終えて、武器の訓練を始めようとしたが、彼女達の体力検査をしてみた。

 村娘だっただけあって、それなりの体力をしていた。

 これなら、三姉妹達との訓練に合流できそうだ。



 武器訓練は、一通り触ってみる程度で終わった。

 彼女達は俺に引き渡されてまだ二日目で、研究所に来たばかりなので、この程度で終わりにして、生活空間を整えてもらうことにした。


「それでは、皆さんには服や生活に必要な私物を配付します。一応は全てあると思いますが、何か足りなかったら言ってください」


 配るのは、ルティ達監修による移住パックだ。

 これさえあれば、なんとかなる。というものが入っているらしい。


 そこそこの重さがあるので、それぞれの部屋に作業用ゴーレム達が運んで行く。


「あの、プリン、もらえますか?」


 一番年下の女の子が訊いてきた。

 ステラの顔がとんでもない事になっているが、丁寧さを心掛けて女の子に答える。


「申し訳ありませんが、食事の時だけなので、今は出せません。ですが、今夜の夕食にもプリンを出しますから、それまで待ててもらえますか?」


「はい!ありがとうございます!」


 訊いてきた女の子が元気に返事をしてくれた。

 プリンでここまで変わるのか。

 最初は怯えを必死に押し殺している感じだったのが、今ではこれだ。

 俺としては、今の方が最初の頃よりは遥かにマシだが、年長組の胃が心配になる。




 そして、最後になったが、研究所に住む以上、保護している女性達にも紹介は必要だろう。

 ただ、一つ心配事がある。

 少女達は、近隣の村から売られた少女達で、研究所で保護している女性達と知り合いの可能性がある。

 エルフやドワーフはこの辺りには住んでいないので、知り合いの可能性は低いが、獣人や人種は、少なからず知り合いの可能性がある。

 まぁ、下手な事にはならないと思うので、あまり心配は無いだろう。


 アリスさんにお願いして、研究所に残留した人達を呼んで貰った。


「皆さんに集まって貰ったのは、新たな同居人を紹介する為です」


 事が事だけに少々ざわつく。


「俺が、聖堂院で商売を始めようとしていることは知っていると思います。その宣伝をかねて、西の村の村長にいくつか商品を預けて行商人に売って貰ったのですが、代金の先払いとして少女達を預かって居ました。この少女達は、食糧不足解消のために売られたみたいなのですが、俺への代金にされた様です。突き返しても彼女達に良い未来が待っているとは思えなかったので、こちらで引き取りました。そして、聖堂院に移住したもの達に預けるのは時期尚早と判断して、研究所でしばらく面倒を見ます。皆さんにも何かと面倒をかけるとは思いますが、宜しくお願いします。では紹介します」


 俺が合図をすると、オシホ様が少女達を連れて入ってくる。


「この娘達が、件の少女達だ。仲良くして下さい」


 少女達が残留組の女性達にもちくちゃにされる。


「アリスさん、後は任せます」


 まぁ雰囲気は悪くないので、後はアリスさんに任せた退散する。


 村の防壁を建てる計画を話し合う必要があるのだ。




 村の防壁建設について話し合いをしたが、それほど難しい話では無かった。

 村は、東西へ続く道しかないので、東西に門を設置した防壁を築けば良いのだ。

 村を囲む防壁は、魔法で作るので、かなり融通が効くので、心配は無いだろう。


 後は門だが、予備は要塞の門しか無い。

 要塞用の門は頑丈だが非常に重く、村の門として採用したら開閉が大変だ。

 強度を落として軽くする事も出来るが、それではモンスター対策にならない。

 なので、小さい物を新たに作る。

 要塞の門は、馬車が二台は通れる幅があり、高さもゴーレムが通れるだけの4mはある。

 だが、村の門は馬車が一台通れれば良いし、高さも3mもあれば十分そうだ。

 これなら、かなり軽くできると思う。


 更に、門に関して俺から提案した。

 門の上部に建物を作り、そこから門に取り付くモンスターに攻撃を加える事を提案した。

 これは、日本の櫓門の事を思い出したからだ。

 俺達の主力はゴーレムだし、人もゴーレムに乗っているので、矢をあまり気にしなくて良かったが、村人が戦うのとなれば話しは別で、安全に攻撃する手段が必要だったのだ。

 この安は即事採用されたが、村の意向を確認して設置することになった。


 そして、話し合いの途中で、避難所を作ることが提案された。

 理由は、なんちゃって空城の計で、防壁が檻にもなることが分かったからだ。

 だが、それだけでは死を待つだけなので、防壁内に頑丈な避難を作り、籠城すると同時に、救援を要請できるようにしよう、という提案がされた。

 避難所の一番上に狼煙台の設置が提案されたが、俺はそれでは不十分として、赤色の灯りを点滅させる魔具を設置する事を追加で提案した。

 もちろんそんな魔具は無いので、アリスさんの開発ができるか次第だか。

 アリスさんは、即座に作れると言ってくれたので、問題は解消され、赤く点滅する魔具の提供も決まった。

 ただ、この避難所も、村へ提案して、承諾されたら、となった。



 こうして、村の防壁建設は色々と派生してしまったが、大体の計画はできた。

 当初よりは必要な物が多くなったので、準備が大変だ。

 一週間と言っておいて良かった。




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