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子爵軍 後始末2

 後始末2



 聖堂院 要塞



 オシホ様が使者達を見送ってから戻ってきた。


「さて、カバリムさん、貴方には色々と訊きたい事もあるのですが、俺としては貴方の意見が欲しいのです」


 俺は椅子に座ったまま、カバリムさんに話しかける。

 カバリムさんは拘束され、声の出せないように魔具を装着されて、床に跪かせられた状態で、だ。


「ここを、聖堂院を俺のものにするにです。現状で、子爵は俺に聖堂院を法的に占有する事を認めると思いますか?」


 カバリムさんは横に首を振って否定の意思を示す。


「でしょうね。捕虜を公開処刑にしていったら認めてくれる。なんて事にはなりませんかね?」


 カバリムさんは、俺の目を見ながら慎重に、首を横に振る。


「まぁ、カバリムさんの立場では肯定できませんよね。ただですね、俺としては、戦争なんかの争い事で十万もの人間を殺すことになるよりは、捕虜の一万人を虐殺して目的を達を達成する方が人道的だと思うのです」


 俺の言葉を聞いてカバリムさんは俺を睨んでくる。


「どうせなら死ぬ人間が少ない方が良いじゃありませんか。それにですよ?兵士の方々は、民間人を守るために居るのですから、村や街で虐殺が行われるよりは、兵士の方が代わりに死ぬ方が本望というものではありませんか?」


 カバリムさんは目を瞑り、歯を食いしばっている。


「まぁ、俺としてもこれ以上の人死には望みません。なので、カバリムさんの意見が欲しいのです。聖堂院を法的に手に入れるために。意見を出さなくても結構ですが、場合によっては、捕虜にしている皆さんを皆殺しにして聖堂院を手に入れる事がてきるというなら、俺は躊躇なく皆殺しにします」


 カバリムさんの目を見ながら言う。


 脅しの部分もあるが、かなり本気で言っているつもりだ。

 これほど非道な行いをしてでもここが欲しいのだ。


「そうですね。処刑方法としては、防壁の上で捕虜同士を戦わせても良いかもしらませんね。勝った方だけ生き残る。負けた方は首を跳ねて外の堀に捨てましょうか。どうです?今すぐに実行しましょうか?」


 カバリムさんか静かに俺を見返して来る。

 俺としては、このぐらいで良いだろうと、声を出させない様にする首の魔具をアインに取るように手で指示を出す。


「よくその様な非道な事を思い付くものだ。人の命を何だと思っている!」


「俺としては、貴方方よりは人の命を大切に思っているつもりですよ?」


「何処がだ!」


「そうですね。貴方方とは違って聖堂院がオークに襲われたのを救い、人の命を守りました。常に戦闘前には交渉を呼び掛け、戦闘の全てで、我々は攻撃を受けてから反撃をしました。それに、どんな利益か知らないが、大軍で襲ってきた者達をできる限り生かそうとしていましたが?」


「……だが、お前は聖堂院の団長を殺して300名もの女性を拐っただろう!あの人は女性でありながら、強く公平な素晴らしい人物だった!その様な人物を殺しておきかながら何かを言う!」


 副団長さん経由で情報を得ているだろうから、カティが死んだことになっていて、一安心だ。


「300名の女性を拐ったのは事実ですが、聖堂教国から救うためでした。聖堂院は、オークに襲われ、現状の維持は困難と判断し、聖堂院の放棄を決めていました。当然、保護されていた女性達を連れて本国への待避を準備していました。ですが、聖堂教国は亜人種に激しい差別がされている国です。聖堂院であれば、差別はそれほど無かったそうですが、聖堂教国本国となれば別でしょう。なので、俺の独断で拐いました」


 ここで一度間を空けてから続ける。


「団長さんは……、優秀そうだったので、邪魔になる前に死んで頂きました。そのお陰で、聖堂院側は素直に300名も差し出してくれましたよ?たった一人の犠牲で目的を達成できたのです。安いものでしょう?」


「貴様は……」


 聖堂院で保護している者達にはカティの生存を知らせてあるので、いずれ交易を始めたり、彼女達を解放した場合には、カティの生存を外部に知られる事になるが、今はまだ知られたくないので、嘘をつく。

 カバリムさんの心証は悪くなるが、彼には選択の余地は無いだろう。


「それで、貴方は犠牲を最小限にできる様に協力してくれますか?嫌なら嫌で構いませんよ?捕虜なんでまた捕まえれば良いですからね。俺の策を実行してみるだけです」


 カバリムさんは、しばらく俺を目を瞑りながら奥歯を噛みしめてから、口を開いた。


「わかりました。協力させて下さい」


 やっとカバリムさんの協力を得ることができる。

 何らかの非協力的な事をするかも知れないが、脅しはしてあるので、最悪でも何人か殺せば従ってくれるだろう。

 これで聖堂院を正式に手に入れる事ができる、とは言わないが、無駄な行動を減らす事ができるだろう。


「ご協力に感謝します。それで、現在の状態で、子爵は俺達に法的な占有の許可を出すと思いますか?」


 早速カバリムさんに質問する。

 先程の使者との交渉も含めて、現状で子爵が俺達に妥協するか尋ねた。


「……難しいかと思います」


「そうですか。なら、もう少し殺すなり、捕虜にするなりしないといけませんかね?」


「全滅させればあるいは……という程度です。なので、子爵様の拉致を提案します」


「大胆な提案ですが、子爵本人が来ていたのですか?」


 提案の内容にも驚いたが、領域支配をしている子爵本人が来ている事に驚く。


「はい。聖堂院から撤退した者達からの情報を得て、子爵様ご本人が動かれ、動員して問題ない数の最大兵力を持ってきていました。子爵の目的は、女性とゴーレム、ポーションの製造法です」


 まぁ、利益があるから襲ってきているのは分かるが、よくも子爵本人が来たものだ。



 女性を拐っている形なので、俺から子爵が女性達を奪ったとしても、救出した形になるが、きっと何名かは行方不明になるのだろうな。


 ゴーレムは戦力としてなのだろうが、渡せないな。

 大体魔力供給可能範囲でしか動かせない、という事がバレるのはよろしくない。

 少なくとも、今バレるのは避けたい。

 それに、子爵のために戦力強化を手助けなんてしたくない。

 なので、渡さない。


 ポーションは、商人を呼ぶ目玉商品として販売を考えていた。

 なので、生産量を考えて、こちらに問題が無い程度、月に1,000本ほどを売ろうと考えて居たので、半分ほどの500本を子爵相手に売っても良い。

 それに、いずれは()()()()を売ることも考えていたので、先行して子爵相手に売っても良いのだが、こちらはあまり気が進まない。


 製造法ではなく製造手段と言ったのには理由がある。

 通常のポーションだと、水に魔力を馴染ませた魔力水と、薬草を魔具によって加工してポーションにする。

 なので、製造法を渡すなら、魔力水の作り方と加工のための魔具の作り方を売らなければならない。

 だが、製造手段となると、ポーションさえ作れれば良いので、材料を用意すれば、全自動でポーションを作る魔具を売るだけになる。

 これなら、材料が薬草と水だけで作れるのだが、ポーションの製造自体を魔具が代行しているので、ポーションの作り方そのものが流出することは無く、様々なリスクを軽減できる。

 ただ、この全自動ポーション製造魔具では、下級ポーションしか造ることができないのだが、ルティやカティによれば、それでも破格の魔具なのだそうだ。

 無論、全自動ポーション製造魔具には、隠蔽用の加工を行うし、無理に調べようとしたら自壊する様に出来ているので、全自動ポーション製造魔具が複製される可能性は当分は無いだろう。



「子爵に女性は渡せません。これは絶対です。ゴーレムも渡すことは難しいですね。ですが、ポーションを造ることができる魔具を一つだけなら売ることができます。これでなんとかなりませんかね?」


「そんな貴重な魔具を売っても良いのですか?」


「一つだけなら大丈夫です。それで、可能性はありますか?」


「あるとは思います。ですが、先程の様な交渉方法では難しいかも知れません」


 やはり、交渉の仕方に問題があったか。

 俺としては、精一杯頑張ったつもりだが、これだけ有利な状態に居るのに、交渉を纏められるか分からないのだ。


「そうですか。なら、カバリムさんが俺に交渉の指導をしてくれて、聖堂院を正式に手に入れる事ができたなら、貴方を含めた捕虜全員を無傷で解放しても良いですよ?」


「……それは、本気ですか?」


「捕虜を長々と囲っても仕方がないので、この条件で貴方の協力を得れるなら、なんの問題もありません」


「だが、確実に実現させられる保証は無い」


「でしたら、貴方が協力をしてくれる限り、捕虜には危害を加えません。そして、聖堂院を正式に手に入れる事が出来たなら、捕虜の皆さんを解放する。ただ、元々不可能という可能性もあるので、貴方のやる気を鑑みて、ある程度の時期で捕虜の解放も検討します。これでどうですか?」


「私としては問題ないが、ある程度の時期とは?」


「最大で半年を考えています。ですが、貴方が故意に時間を稼いでいたり、積極性が足りなかったら、全員の解放は無いかも知れません。俺としては、数日以内に交渉をまとめる事ができたら最高ですね」


 カバリムさんは考え込み、しばらくしてから答えた。


「その条件でお願いします」


「ご協力に感謝します」




 それからは、カバリムさんの助言を受けながら、交渉の手順を考えた。


 使者が夕方前に来たので、交渉を行った。

 そこでは、交渉がほぼ進まなかったが、食糧を金貨100枚では無く、半額の50枚で売った。


 翌日の朝にも使者が来て、交渉を重ねた。

 そこでは、使者の思考誘導に注力した。

 多少こちらが強気に出つつ、全自動ポーション製造魔具を匂わせ、帰っていただいた。


 使者は、昼前に再度訪れた。

 全自動ポーション製造魔具について、子爵から何かを言われたのか、かなりの食い付きをみせた。

 そこで、全自動ポーション製造魔具を売ることを考えるふりをすると、聖堂院の譲渡を初めて条件に出してきたので、検討の時間が欲しいと言って、夕方前での再訪を要請して帰ってもらった。


 夕方には、全自動ポーション製造魔具の説明と実演をしてみせて、これで良いのなら、捕虜の解放、物資半分の返還を付けて、聖堂院の法的な占有の許可と、罪に問わない事を飲んでもらった。

 正式な書類は翌朝という事になったので、子爵軍一日分の食糧を無償提供して帰ってもらった。


 捕虜の解放が条件に入ったが、カバリムさんの意見を受けて条件に入れた。

 使者の顔を立てる事で、交渉を有利に進めるために必要な事なので、カバリムさんの目的にも通じていた。



 翌朝、使者が正式な書類を持ってやって来たので、全自動ポーション製造魔具の確認を、使者がつれてきた魔法使いが行った。

 水も薬草も使者側が持参していたので、使者が連れてきた魔法使いに手順書を渡し、魔法使いがそれを見ながら慎重に操作して、ポーションを作った。

 使者がポーションの確認をしたあとに、正式な書類にサインをして、聖堂院が俺のものになった。


 その後、捕虜と物資の引き渡しをして、カバリムさんとも別れる事になった。

 カバリムさんと握手を交わしたかったが、呼び出す時は尋問として呼んでいたので、仲良く握手は出来なかったので、捕虜から奪っていた武具を返還して、カバリムさんを見送った。


 カバリムさんは、責任をとらされて、領都に戻り次第処刑される事になる。

 この事を知った時に、思わずここに留まる様に言ってしまった。

 だが、カバリムさんは、部下が責任をとらされるだけになるからと、そのまま戻って行った。


 子爵軍の再攻勢も警戒したが、何事も無く引き上げて行った。




 これで、聖堂院を正式に手に入れる事ができた。

 ただ、カバリムさんの事は残念だった。




これで聖堂院を正式に手に入れたので、二章はもうすぐ終わりです。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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