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子爵軍 本戦 後2

 



 聖堂院 要塞



「もう一度お願いします」


 俺は、アインからドライの被害と成果について聞いたのだか、もう一度尋ねた。


「ドライの側に被害無し。残した食料は20,000人の二日分のみ、だそうです……」


 アインがドライの元から戻ってきて、気まずそうに先ほど報告された内容だ。

 カティによれば、一日分でも撤退は可能。

 されど、攻撃準備をしているということは、撤退では無く俺達が奪った食料を奪い返し、ついでに俺達も討つつもりか。


「仕方がありませんね。捕虜をとる準備をしましょう。数は5,000以上10,000以下を目標で」


「申し訳ありません!私がミスをしたばかりに!」


 アインが頭を下げてくる。


「大丈夫てす。多少予定とは違いますが、悪くない状況です。かえって良かったかも知れません。上手くすれば、今日明日でなんとかなりそうです。ですから、もう気にしないで下さい。それよりも、準備の方をお願いします」


「ありがとうございます。ただちに準備に入ります!」


 アインが元気に走っていった。


 アインに言った言葉は嘘では無い。

 状況は切迫しているが、それほど悪くは無いからだ。

 敵は攻めるしか無く、退かれる心配が無いので、やりようはあるし、上手く行けば交渉も有利になる。

 ただ、奥の手に使おうかと思っていた手を今すぐ使うことになる。という事だけが問題だが、食糧が無い状態で突撃をさせる馬鹿な指揮官相手には悪くない手だ。


 今回の事はアインばかりを責められない。そもそもは俺の責任もある。

 アインは、好戦的な性格をしているので、多数の敵を相手にする事にテンションが高かった。

 その事によるミスの発生はおかしくなかったのに、俺はそれを知りながらなんの注意もしなかった。

 精霊だからと、『失敗しない』という思い込みがこの事態を招いた。

 それに、多少残す食糧が多くなっても、それぞれに四日分の食糧を残させれば良かったのだ。

 そうすれば、全体での四日分の食糧となり、最大でも二日ほど適当に相手をしてたら撤退させる事もできただろう。

 いや、食糧が奪われ、二日も攻撃を続けて何も成果が出なければ、そちらの方が潔く諦めてくれたかも知れない。



 駄目だな。全て結果論だ。

 反省は後でする事にして、今は事態の対処に集中しよう。



 既に準備は終えている。と言っても、特に何をしたという訳でもない。

 強いて言えば、側面攻撃に備えてゴーレムを増員したぐらいだ。

 今回は、総力戦が予想されるので、側面にも25体ずつ、正面に50体にしてあり、少々正面が心許ないが、これも作戦の内だ。

 カティとマリーは、アインと共に聖堂院内での待機になってはいるが、こちらでも戦闘が予想されるので、準戦闘待機をしてもらっている。




 夜空が白み始め、もうすぐ日が上るだろうという時に、子爵軍が動き始めた。

 日の出とともに動くためだろう。

 オシホ様によれば、破城槌が五台全てが動かされ、動けそうな兵士全てが動員されているそうだ。


 やはり、全面攻勢にでてきたのか。


「全軍突撃!」


 日の出と共に、子爵軍中央の奥に居る騎馬兵の号令で全軍が動く。


 よく見れば、使者として来ていたカバリムさんだ。

 やはり、あの人が実質的な指揮を執っているのか……。

 出来れば捕らえたいな。


 そんな事を思っていると、子爵軍が防壁全面へ取り付こうと迫ってくる。

 夜襲で2,000ほどの兵を負傷者させたが、子爵軍全体からすると5パーセントでしか無いので、それほど減っている様に見えない。

 何より、38,000の兵が一気に迫る様は圧巻だ。

 ゴーレムに乗ってなければ漏らしてしまいそうなほどだ。

 たが、やることは変わらないので、迎撃を始める。


 まだ遠い内に各個に『ロックバレット』を放つが、部分的に障壁に阻まれる。

 阻まれ方から、集団というよりは、エリア区分で障壁を張っている様だ。

 なので、それぞれの側面と、正面の戦力を左右の四分割したチームで一つの障壁を破壊してチーム毎に集中砲火を浴びせて戦力を削る。


 いくらか削れた所で、敵が防壁に到達する。

 そこからは、ただひたすらに梯子の破壊と登ろうとしてくる者のに攻撃を加える事に注力した。

 数が違いすぎて、それが精一杯だった。


 だが、敵の攻撃を防ぐことは出来ており、さらには敵の密集度が高いせいか、梯子から落ちた者に当たり負傷したり、『ロックバレット』を放てば当たる状況なので、数を減らす事はできている。


 いくらか敵兵を相手に迎撃していたら、俺に集中していた魔法攻撃が、周囲にも拡散し始めた。

 その結果、正面の防壁に居た右側のゴーレムが倒れた。

 俺は、門の上の位置からゴーレムが倒れた位置へ移動して、ゴーレムが倒れてできた穴をカバーする。


 俺が門の上から離れるのを待ってましたとばかりに、破城槌が前に出てきて門を叩く。

 俺は、しばらくして、今気付いたと言わんばかりの慌てぶりを見せて、魔法を使った風に見せる。

 オシホ様が俺の動作に合わせて石柱を発生させて、破城槌を破壊する。

 すると、周囲に拡散していた魔法攻撃が俺に集中してきたので、大盾二枚で防ぐ。

 先程よりも一段と魔法攻撃が激しく、恐らくだが防御に回っていた魔法使いも攻撃に参加してい様だ。

 そのせいで、盾を構えるのが精一杯で、他に対処できない。


 その隙を見計らう様にして二台目の破城槌が門を叩き始める。


 俺は、それを見ている事しか出来ず、とうとう門が破られた。

 敵兵は破城槌ごと一気に門内に侵入し、周囲の兵もそれに続く。

 さらには、奥で待機していた騎馬の一団も一気に門内に向かい、共に侵入した。



 これは嬉しい誤算だ。



 迷路の様になっている要塞内に、敵兵が10,000以上入ったのを確認したであろうオシホ様が、門の外側の道に土壁を魔法で発生させて封鎖し、敵兵が門から居なくなってから上から落とし格子(こうし)を落として門を閉じる。

 これで敵は要塞内に閉じ込めた。


 防壁は、高さが10mあり、門は高さが4mしかないので、門の上には6mの余裕があったので、そこに今まで格子を隠していた。

 そして、格子は鉄製になっており、容易には破壊できない。

 格子により門を封鎖してから、要塞内に乱立していた壁を消す。

 すると、今まで必死に防壁を登る階段や聖堂院の門を探していた兵士達が一斉に動きを止める。

 そして、断崖絶壁と防壁に囲まれただけの何も無い空間に、敵兵だけが立つだけの場所ができる。


 要塞内を迷路の様にしていた壁達は、周囲を見渡せない様にするための単なる目隠しでしかなかったので、土壁を発生させていた魔具を解除しただけだ。



 つまり、なんちゃって空城の計だ。



 要塞内は、交易の場にしようと思っていたので、要塞内にあった建物や第二防壁などの全てを破壊して、更地にした。

 更地になった要塞内を見て、ふと孔明先生の空城の計を思いだし、提案してみると簡単に受け入れられた。


 交易を始めるには、法的な占有の許可が必要で、許可が出されない限り戦闘が続くので、利用できるならそうしようとなった。

 最初に交渉の場にしたのも、魔法で作った建物になる。

 そして、彼らが探していた防壁へ登る為の階段は無い。

 防壁への登り降りも魔法で作った階段を使用していたので、防壁に上げれる戦力全てを上げている以上、今は必要無いので、消してしまっていたのだ。


 さらに、破城槌を接近させるために、俺が門の上から離れるために、ゴーレムをこちらの意思で倒れさせ、門の上から俺が移動するのを誤魔化した。

 破城槌も、一度破壊して、敵に疑われないように工夫もした。

 防御に回っていた魔法使い達も俺を狙ってくれたので、その間に多くの敵兵を負傷させる事に成功したのは、運が良かった。

 それに、要塞内に騎馬と共にカバリムが突入し、カバリムの包囲と軍馬を入手出来そうなのは、嬉しい誤算だ。



 しかし、こうなると敵兵は聖堂院を目指す事しか出来ない。

 だが、聖堂院のある断崖絶壁には、聖堂院の入り口の鉄門と、小さい窓が50ほどあり、それぞれの窓からは、作業用ゴーレムが魔具を構えて敵兵を狙っている。

 聖堂院へ来る敵は、最優先攻撃目標になる。

 しかも、窓が小さく、外からは見えないだろうと、魔具は回転式連続発射装置が配置されている。

 今はまだ『ロックバレット』だが、場合によっては『ロックジャベリン』に切り換える事ができるようになっており、もし使用されたら、要塞内は血の海になる。



 動きを止めた彼らが再び動く前に呼び掛ける事にする。


「告げる!お前達は我々の罠にハマリ、要塞内に閉じ込められた!死にたくない者は武器を捨て、地面に伏せろ!繰り返す!死にたくない者は、武器を捨て地面に伏せろ!」


 俺の言葉の終わりと共に、聖堂院側の壁から『ロックバレット』が10秒間連続発射され、聖堂院側に立っていた男達が倒れる。


「繰り返す!お前達は要塞内に閉じ込められた!死にたくない者は武器を捨てて地面に伏せよ!死にたくない者は武器を捨てて地面に伏せよ!」


 再び俺の言葉の終わりと共に『ロックバレット』が10秒間連続発射される。

 そして、聖堂院側の兵士が倒れる。


「これで最後だ!お前達は要塞内に閉じ込められた!死にたくない者は武器を捨て地面に伏せよ!死にたくない者は武器を捨て地面に伏せよ!」


 そして、再び『ロックバレット』が連続発射され、兵士が倒れる。

 俺は、騎馬と共に突入してきたカバリムを見つけたので呼び掛ける。


「カバリムに告げる!兵士達を助けたくは我が軍門に降れ!これは最後通告である。受け入れない場合は『ロックバレット』では無く、『ロックジャベリン』による攻撃を開始する!」


 兵士を降伏させるためにカバリムに呼び掛け、カバリムを降伏させるために兵士の命を盾にする。

 外道な行いだが、カバリムが素直に受け入れれば、失われる命は少なくなる。


「お前が死ねば兵士は助けるつもりは無い!自分の名誉のために兵士を皆殺しにするか、兵士のために屈辱を選ぶか、どちらか選べ!」


 カバリムの自害もあり得るので、釘を刺しておき、最後の脅しをかける。


「お前が選ぶまで『ロックバレット』による攻撃を続ける!撃ち方用意!」


「降伏する!総員武器を捨て、地面に伏せろ!」


 先程の三度の連続発射が効いたらしく、降伏を受け入れてくれた。

 要塞内に閉じ込められた兵士達もカバリムの言葉に従い武器を捨て、地面に伏せる。

 騎馬兵も従うが、馬が暴れるといけないので、オシホ様にお願いする。

 オシホ様は土壁を巧みに使い、馬を次々に固定していく。

 馬の拘束を見て、カバリムを始め、兵士達が驚いていた。

 これで要塞内の対処は一応済んだので、要塞の外の敵に対処する。



 要塞内の瓶子達を盾に、退くように言っても良いのだが、カバリムを降伏させるのに使ったので、兵士を盾にするカードは使わない。


 なので、外側の敵には、これまで通り迎撃を続けた。

 そして、昼前には敵が撤退していった。



 結果としては、38,000ほどの内、11,265名がこちらの捕虜になり、撤退した者達も四割程が死傷し、こちらの大勝利に終わった。

 周辺に死体が残されているが、要塞内に居る降伏した者達を拘束する作業があるので、そちらを優先する。

 まずはカバリムさんを確保する。



 カバリムさんを呼び出し、武装解除と拘束をしたあと、負傷者への治療と武装解除をして、元気な者達の武装解除もした。

 先にカバリムを、押さえていたので、ほとんど抵抗はなかったが、一部抵抗しようとした者は、戦闘用ゴーレムによって強めに殴られて気絶した。

 その様子を見ていた兵士達は、より大人しくなったので、武装解除は楽だった。


 兵士達を1,000名ほどずつに小分けにして、土壁で隔離した後、防壁の外で辛うじて生きてはいるものの、撤退時に放置された312名を回収し、治療と武装解除をした。




 その後、捕虜となった兵士達に食糧とトイレを提供したりと世話をしていると、子爵軍から使者が来た。


 戦力の四分の一を捕虜にされ、残った戦力の半数が死傷しているのだ。

 もう子爵軍は戦えない。


 これで一応は、子爵軍に勝利したことになるだろう。




ここまで読んでくださりありがとうございます


なんとか収めることができたと思います。


前回の更新の後に気づきましたが、評価を頂いていました。

これまで記念と思われる5と5の評価を頂いていましたが、今回は文章2とストーリー3という評価をを頂きました。

評価点を頂けるとは思っていなかったので嬉しかったのですが、点数が低く残念だと一瞬思ってしまいました。

ですが、考えてみると妥当な点数だな、と思い直しました。

個人の主観にもよるとはおもいますが……


5点、文句なしの最高!

4点、結構良い!

3点、まあまあじゃないかな?

2点、問題あり。

1点、糞だ!


だと思っているので、この小説の出来的には十分な評価だと思っています。

むしろ、ストーリーに3点の評価を得れた事に喜びを覚え、続きを書き上げてしまいました。

最近ブックマークも増えてきて、目標にしているブックマーク100件も射程に入ってきてテンションが高かったのも影響したと思います。


完結目指して頑張るので、これからも読んでいただけら幸いです。

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