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ダンジョンと国

 



 俺が一人異世界に思いを馳せていると、メイドさんに声をかけられた。

 ……何度目だ?メイドさんの話しはロマンにあふれ、思考に没頭してしまうな。


「あの、よろしいですか?ダンジョンの話なのですが……」


「大丈夫、大丈夫です。お願いします」


「ダンジョンは『穢れ』の集中した場所です。自然発生する場所もありますが、基本的にコアエリアを制圧し、その地域の『穢れ』を集中させることで発生します。そうすることで、隣接する地域や地域内へ『穢れ』が流れる事を防ぎます」



 なるほど。そうなると、魔物だけでは無く、魔獣の発生も多少下がるな。

 そうなれば、地域内はかなり安全になり、暮らしやすくなるな。



「そして、ダンジョンの中ですが、洞窟の様な形態が多いと言われています。また、年に一度ダンジョン内が変化します。その際は、周辺環境に大きな影響を受ける様で、建物の多い帝都等の人口密集地では建物の中のような迷宮な場合も多い様です。また、草原の様なフィールドタイプもあれば、森だった、なんて場合もあったそうです。それから、ダンジョンは『穢れ』を集めたものなので、内部に発生するのは魔物のみになります。故に資源になります。倒せば魔石が残り、魔石は様々な利用価値があります。当施設も魔石などを利用した魔方陣を研究するための施設の一つです」



 そうか、ココは魔石の利用を目的とした施設だったのか……。

 それにしても、地域内が安全になり、資源として魔石も利用できる。良いこと尽くしに聞こえるけど、それなりにデメリットもあるのかな?



「ただ、管理が大変で、魔物の処理が間に合わなかったりすると、集団暴走が発生します。集団暴走はダンジョン内に居る魔物のほとんどがダンジョン外にあふれます。そして、その場合の魔物は通常より強力な場合が多く、対処は非常に困難になります。そうなると、その地域は奪還され、再び魔物の住まうエリア、魔境になります。以上がダンジョンの説明になります」



 やはり、デメリットがあったか。

 爆弾を抱え込む様なものだ。

 けど、適切に対応していけば、かなりメリットは大きそうだ。



「ありがとう。良く分かりました。ここでは、どんな魔方陣を研究していたのですか?」


「ゴーレムを中心とした、物質へ干渉する系統の魔方陣を中心に研究していました。あとは魔法道具、魔具などの効率化など、既存の物の低コスト化なども行っていました」


 メイドさんが、胸を張りながら教えてくれた。


「それは凄いですね。効率化は地味で目立たない作業てすが、とても重要な事だと思います」


「ありがとうございます。ご理解いただけて嬉しいです。それで、他に何か質問はありませんか?」


「あー、地域やエリア?について聞きたいです。先程から地域やエリアと言っていましたが、エリアの制圧?とか、奪還とか、魔境になるとか言ってましたが、占有とかそんな意味で良いのでしょうか?」


「いいえ、違います。この世界は地域で区切られています。制圧は、その地域の中央あたりにあるコアエリアと呼ばれる場所の中にある、コアを支配する事を意味します。コアエリアを魔物が支配している場合を魔境と呼びます。魔境の状態ですと、その地域全体に魔物が発生し、魔獣の発生率も上がります。そしてコアエリアに魔物のが存在し、その魔物を地域ボスと呼び、そのボスを倒し、コアに触れると、触れた者か触れた者の主がコアエリアの支配者になります。コアエリアを支配すると、支配者本人とその者が認めた部下、配下に力を供給することが出来るようになります。また、『穢れ』をある程度コントロール出来るようになります。コントロールと言っても、集中か拡散の選択の様な物で、集中させたら、ダンジョンとなり、拡散すれば、地域全体で魔物がそこさかしこに発生します。といっても、魔境の時ほどでは無く、発生率は下がります。そして、ダンジョンの管理の失敗による集団暴走や外部のモンスターの襲撃でコアエリアにモンスターに侵入され、コアに触れられると支配されてしまいます」


「こちらでは地域やエリアに区切られているのですか……。人は、モンスターの一時的でも完全排除な支配条件だが、モンスターは侵入してコアに触れるだけで良いのですね。管理もなかなか大変そうだ。それじゃあもう少しエリアや地域について詳しくお願いいたします。それと複数を制圧した場合はどうなりますか?」



 この世界は地域で区切られている。

 そして、それを陣取り合戦してるとなると、国のあり方が根本的に違ってくる。もう少し詳しく知らないと、大きな問題が起こりかねない。



「コアエリアは地域の中心にあり、直径が100m以下で、地中にあります。そして、支配している者によって中が大きく変わります。極端な例だと、リザードマンが支配主の場合に池だったという事があったそうです。地域はそれぞれで大きさが違い、場合によっては倍以上違うそうです。国はコアエリアを含む地域を一つでも支配下に置いていれば建国できます」



 地域を一つ支配しているだけで建国は可能なのか。



「そして、国の支配体制ですが、地域の支配者を頂点とした組織となり、支配者に忠誠を誓った者などを配下にし、力の供給を行い、組織の強化をはかります。配下になり、力の供給を受けた者は貴族や騎士と呼ばれます。そして、配下達によって、モンスターが狩られ、安全な土地で民が暮らし、対価に税を納めます」



 それが、王道ってものですね。



「次に、複数の地域を支配した場合ですが、大きなメリットとデメリットがあります。まずデメリットですが、土地の管理等も大変になりますが、ハッキリ言って『穢れ』です。地域の『穢れ』を集中させていた場合、支配下にある全ての地域の『穢れ』が集中し、ダンジョンが深く、広く、強大化します。出現する魔物も全体的に強くなり、深層ではより強力な魔物が出る様にもなります。なので、個人で支配出来る地域は4、5で、どんなに多くても10が限界だろうと言われています」



 これなら、1、2ヶ所を小さく支配した方が良さそうだ。



「次にメリットですが、支配する地域が増えれば、土地が増えるだけではなく、供給出来る力の量が増えます。量が増えると、一人に割り振る量を増やせたり、多くの者に力の供給を行える様になり、戦力を増やせます。そして強大化したダンジョンでは、魔法鉱物が採掘できる様になります。鉱山でも採掘できますが、非常に少なく、魔法鉱物は魔法道具、杖や武具などを強力にしてくれるので、貴重な戦略物資となります。他にもあるかも知れませんが、これぐらいだと思います」



 魔法鉱物!ミスリル、アダマンタイト、オリハルコン!夢が広がるね!けど、魔法鉱物は後だな。

 それにしても本当に陣取りゲームみたいだなぁ……。

 説明を聞くと君主制しか出来ないなだろうか?



「魔法鉱物、非常に興味があります。ですが、それはまた後で!それより、国の体制が気になります。説明を聞く限りだと、君主制みたいなのしか出来ないみたいに聞こえるのですが、他には無いのですか?」


「あります。帝政や共和制、ギルド制などがあります」



 魔法鉱物で興奮したが、エルフの件で慣れたのかな?メイドさんの反応が無かった。

 それにしても、ギルド!冒険者か?!

 あと共和制もあったのか……。



「簡単でいいから、説明をお願いします」


「はい。まず、先ほど話したのは君主制です。支配者の国王を頂点にした体制です。国王や貴族を中心にしており、政治体制は国王独裁が多く、議会の合議制などがあります。『穢れ』は集中が多いです。そのため、中規模程度の事が多く、大国に対抗するために王国同士で連合を組む連合王国になったり、支配者なのに王ではなく、貴族として王に遣える国家体制をとる場合もあります」



 やはり、そういった体制になるのか。



「そして、帝制ですが、支配者の皇帝を頂点にした体制で、将軍や兵士を中心になっています。力の供給は将軍や上位の士官にされます。政治体制は皇帝の独裁です。『穢れ』は拡散です。拡散なので、領土を数多く持つ場合が多く、強力な軍を持ちます。そして、君主制のあまり大きくない国を属国として持つ場合も多いです」



 ここも、元々は帝国の所属だったんだし、当然あるよな。



「次に共和制ですが、小国の連合とも言え、支配者を議員にした合議制の体制です。政治体制は投票によって選ばれた議員によって運営されます。『穢れ』は集中が多い傾向にあります」



 できるのか?出来たとしても、船頭多くして山登る。なんてことになりそうだ。



「最後にギルド制ですが、帝制や共和制に似ています。ギルドマスターを頂点にした体制で、ギルドと呼ばれる組織を中心にしたものです。ギルドの職員とランク付けされた冒険者と呼ばれる者達で構成され、実力主義で、冒険者には誰でもなれます。力の供給はギルド職員と冒険者の上位に居る者にされます。複数の地域を持つ場合はギルドマスターがギルド総長、他の地域の管理者をギルド長と呼ばれます。政治体制はギルド総長やギルド長、上位のギルド職員とクランなどの冒険者の集団の長での合議制で成り立っています。ですが、基本的に緩い政治体制の場合が多いです。『穢れ』は拡散させている事が多いです。以上が国家体制の説明になります」



 ギルドは、イメージ通りに近い、かな?



「ありがとう。俺が居た世界と大して変わらないみたいだけど、ギルド制には驚いた。国家の中にギルドがあるんじゃなくて、国家としてあるんだから……。そうだ、こんな世界だけど国家同士の戦争とかありますか?」


「あります。領土拡大を狙って侵攻して奪ったり、相手の戦力を削り管理を失敗させ、魔境にしてから奪うなど、色々あります。そして、ココが所属してたノイリス帝国も人間同士の戦争がきっかけで苦境に立たされ、滅んだと思われます」


「あの、すみません、また思い出させてしまいましたね」


「いえ、事実を申し上げただけですから、お気になさらないで下さい」


「分かりました。でもやっぱりあるんだなぁ。人間どこでも一緒。人類の最大の敵はやはり人類ですね。それで、ずっと説明に出てましたが、力の供給はどんな力を供給でするんですか?俺みたいに、魔力だったりするのですか?」


「いえ、また違ったものになります。魔力も供給はされますが、生命力といったものも供給され、身体能力や自然治癒力などの向上が起こります」


「もし、俺が支配したら、その地域でも活動が可能になったりしますかね?」


「それは……。可能性はあります。ですが、前例が無い事なので、何とも言えません。申し訳ありません」


「そうですか。……分かりました。そういえば、ココはどうなのですか?ココも地域の所属なのでしょう?支配者とかはどうなってるんですか?」


「ココは例外です。ココは、特殊なコアを持つ独立した地域となり、人工ダンジョンとも呼べる場所です。そして支配者に該当するのは、管理者である貴方です」



 え?ココがダンジョン?俺が支配者?

 ま、魔王(笑)なの?



「あー、ダンジョンの管理者で、支配者だったりする俺は、魔物を統べる王的な、魔王(笑)だったりするのでしようか?」


「いえ?違いますよ?魔王(笑)は分かりませんが、ダンジョンの管理者ではなく、元魔方陣研究所の管理者であり、ココはコアエリアのみの例外的な場所で、主エリアも子エリアも無いので、王とは言えません。ダンジョンとは言っても、ダンジョンの特性を一部持ってるだけで、魔物もいません」


「そ、そうですか、良かった」



 変な汗をかいてしまった。

 それにしても本当に良かった。魔王(笑)とかじゃなくて、全て俺次第とか言われてたから、ちょっとドキドキしたよ。



 グーーーッ


 ほっとしていると俺のお腹が鳴った。

 突然鳴るお腹に恥ずかしくなって頭を掻きながら笑うしかない。



「は、ははっ、何か食べるもの有りますか?」


「はい、急ぎご用意いたします」



 ある程度状況は理解出来たと思うし、食事に……千年近く封鎖されてたんだよね?食べ物大丈夫だろうか……。




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