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子爵軍 会談

ここまで読んでくださった方々に感謝しています。

更新のペースを出来るだけ落とさないように続けていきたいと思っていますので、これからも読んでいただけたら幸いです。



 



 聖堂院



「全く、これだけ集まると壮観だな」


「そうですね。それにしても、良くこれだけ集めたものです」


 俺とカティは、要塞の防壁上から要塞を包囲する40,000の軍勢を見ながら語り合う。



 今日は、子爵軍を発見してから三日目の朝になる。

 昨日の内に要塞近くまで来たが、陣地形成と進軍の疲れをとることに専念した様だった。


 無論、昨夜は警戒体制で待機をしたが、夜襲の可能性は少ないと判断して、俺とカティ、マリーは休ませてもらった。

 まぁ、夜襲があったとしても、オシホ様が警戒待機していた以上の奇襲もへったくれも無い。

 それに、夜襲があった場合は好きに反撃する事を許可していたので、敵側に大きな被害が出ただけになっただろう。



 今回の編成は、前回と同じになっており、俺、カティ、マリー、オシホ様、アイン、ドライとなっている。

 そして、ドライは今回も秘密地下拠点で待機してもらっている。

 子爵軍の数を考えると、ドライの重要性はより高まった。


 本来なら、アインではなくツヴァイが来る順番ではあったのだが、子爵軍の多さを見てアインが熱望したのだ。

 アインの要望に対し、最初は拒否を示していたツヴァイだが、少し二人で離れて話したあとは、ツヴァイがすんなり承諾してアインが今回も俺達に同行してきた。

 アインとツヴァイで何らかの取引があったのだろう。



 その他には、現在、聖堂院には、保護していた女性達の七割、210名の非戦闘員が居る。

 内数名は、俺の暗殺計画を立てた者達なので、地下二階に軟禁している。

 彼女達は、戦闘訓練により戦えないことも無いが、俺が拐った人達となっている。

 なので、戦わせる訳には行かないし、戦ってもくれないだろう。

 戦ってくれる者が居たとしても、それらは全員研究所に残った。


 一般の人達は二階部分で生活してもらっている。

 そして、一般の人と軟禁している者達と接触を絶たない様にしているので、行き来が出来るようにしてあるのだが、俺達の安全性を考えると、二階と地下の往来に俺達も通る場所を使われると、万が一があるといけないので、専用の通路を新たに作った。

 これで、俺達が活動する場所を通らずに地下との往来が可能になり、戦時を理由に一階と二階を繋ぐ全ての階段を封鎖できる。

 というか、現在封鎖中だ。

 なので、彼女達は地下二階と日光浴用に作った場所以外に出入りが出来ない。

 ただ、日光浴場に出て、敵の攻撃で怪我をした場合は自己責任であると伝えてある。

 そして、万が一にも、日光浴場から攻撃があった場合は、そこに誰が居ようと報復攻撃をすると全員に言ってある。


 彼女達に、労働の報酬として武器を渡す約束をしているが、それは引換券という形で彼女達に渡してある。

 武器を渡すと何を仕出かすか分かったものではないからだ。

 問題なのは魔法になる。

 武器は渡さない様に出来るが、魔法を取り上げる事は出来ない。

 なので、日光浴場からの魔法攻撃を警戒する。


 日光浴場を封鎖すれば良いと思うかも知れないが、個人的には攻撃を受けても良いと思っている。

 ハッキリ言って、これ以上反抗的な態度をとられ、問題を起こされると、俺達が保護している意味がない。

 次に攻撃してくる様な事があれば、彼女達の一部を追放するつもりだったりする。

 勿論、可能な限り支援はする。

 彼女達を連れてた責任があるのだから。


 彼女達の安全は、聖堂院内に居る限り確保できているだろう。

 あとは、彼女達次第だ。

 できれば、反抗的な態度だけで済ませてくれる事を祈っておく。




 戦闘準備の諸々はオシホ様とアインによって万端に整っているし、非戦闘員の保護と隔離も済んでいるので、心置きなく戦える。

 子爵軍も展開して今にも攻めてきそうなので、前回同様に交渉を呼び掛ける。


「俺は、聖堂院を不法に占拠している者達のリーダーだ!話し合いの場を用意する準備がこちらにはある!護衛を含め四名までなら受け入れる!」


 前回の五名から四名に変更したのは、いきなり攻撃をしてきた事へのささやかな抗議だ。

 それにしても、話し合いの提案をしてみたが、反応が無いので続ける。


「もし、話し合いを望まないなら、日没までに退去せよ!退去しない場合は敵性勢力として排除する!」


 やはり、反応が無い。


「こちらに攻撃してくるなら、兵士達を出来るだけ殺さない様にはするが、手足の一本は諦めてもらう!もし、トドメが欲しい者が居たらこちらに手を振れ!そうすれば、トドメを刺してやろう!以上だ!」


 一般の兵には多少の動揺が見られたが、やはりそれ以上の反応は無かった。

 まぁ、やることはやったので、相手の出方を待つ事にする。


 今回の指揮官は、無闇に攻撃を仕掛けてくるアホでは無いみたいだ。

 あまり、楽観的に戦わない方が良いかも知れない。




 数分ほど待ってみたが、何の反応も無いので、俺はマリーとオセロを始めた。

 まぁ、暇潰しの定番だな。

 オセロは、勿論ゴーレムでも扱える物になっている。


 隣では、オシホ様とカティが『戦盤』と呼ばれる(そう翻訳された)こちらの世界にあったボードゲームで、チェスと将棋が混じった様なボードゲームを始める。

 配置や駒の動きが動きに将棋的な部分が見られるが、基本的にチェスと同じで、敵の駒を使えたりはしない。

 俺は、昔携帯に将棋のゲームが入っていたので、それの初級には勝てて、中級と5分程度の腕前しか無いので、カティやオシホ様に惨敗している。

 俺程度ではとてもでは無いが、相手を出来ない。

 飛車と角的な大駒二枚落ちで惨敗して俺の心は折れた。

 それからは、興味を示したオシホ様とカティが対戦する様になり、『戦盤』を知らなかったオシホ様はメキメキ腕を上げていき、今ではカティと互角と言えるぐらいにはなっている。

 良く見れば、駒の配置が初期配置では無い、どうやら前に指していた盤から始めるみたいだ。


 良く覚えてられるものだと感心する。

 盤上はオシホ様が押している様に見えるが、勝負の先は分からない。

 以前、オシホ様が圧倒していると思っていたら、オシホ様がトドメにかかる寸前に見事に逆転されて敗北していた。

 二人の戦いは、俺程度では測ることすら難しいほど高度だ。




 オセロの盤面が半分ほど埋まった頃に、オシホ様が俺に話しかけてきた。


「広坪、動いた様じゃ」


 オシホ様に言われ、子爵軍を確認すると、驚いた事に使者を出してきたみたいで、10名ほどがこちらに向かっている。

 少々人数が多いが、退路の確保要員や話し合いが決裂して戻る時の盾要員なのかもしれない。

 それにしても、今回は人数が多いので、攻撃準備に時間が掛かっているだけで、無視して攻撃をしてくると思っていただけに、使者を出してくるとは予想外だ。

 それでも、会談の場は最初から準備してあるので、問題なく受け入れる事が出来る。


「使者か確認して、使者なら受け入れます。あとは、手筈通りにお願いします。マリーはアインに伝令をお願いします」


「分かりました」


 俺の言葉を受けて、皆がそれぞれ動く。

 マリーはアインに使者受け入れの知らせに走り、俺、オシホ様、カティは、門の直上の防壁上で、使者と思われる一団が接近するのを、仁王立ちで待つ。



 使者と思われる一団が門から少し離れた位置で止まったので、こちらから声を掛ける。


「貴殿方は話し合いのために来た使者か?!」


「そうだ!私とこの者と護衛を二名だ!残りの者はこの場で待機させる!」


 一団の中心に居た初老、40代後半ほどの男が俺の問に答え、30代中頃の文官と思われるを示した。

 初老と文官と護衛二名の合計四名が代表という事か。


「承知した!今開門する!少し待たれよ!」


 俺は一歩下がり、オシホ様達へ向く。


「迎え入れます。良いですね?」


「まぁ、使者と言っておるし、問題なかろう」


 俺とオシホ様が使者を迎え入れ様としていると、カティが発言した。


「あの、使者として来た者なのですが、知っている人物です」


 知っている人物?

 それもそうか、使者を任される人物なら、聖堂院の責任者だったカティと面識があってもおかしくないのか。


「それで、どんな人物なんですか?」


「あのがカバリムです、子爵領で武を任されている人物で、公爵からの出向してきている方です。この軍の総大将の可能性が高いです」


 これは少々困った人物だ。

 あの人がカバリムさんですか。

 お噂はカティから聞いております。

 将軍とかでもおかしくない人物だと聞き及んでおります。


 カティは、総大将の可能性が高いと言ったが、恐らく総大将なのだと思う。

 もしかしたら、公爵からもっと上の人が派遣されて、カバリムさんが使者として派遣されてきたのかも知れないが、時間的に難しいと思う。

 最速で情報を伝達し、軍を準備してあったなら、間に合うかも知れないが、そんな都合の良いことか起こるとは思えない。

 と言うことは、総大将さんが自ら出向いて来たという事になる。


 大胆な人だなぁ。

 いや、もしかしたら、頭である俺を殺しに来たのかもしれない。

 使者として来ておいて、剣を抜くのは、信用を大きく落とすが、賊相手なら問題ないだろう。

 必殺の用意があるのかも知れない。


「どうしましょうか?」


 予想外の事態に動揺する。


「ワシが代理で出るか?」


 正直、かなり助かる提案ではあるが、俺が出る必要がある。

 俺が代表者、リーダーであると知らしておく必要もあるので、俺が出なければならない。


「駄目です。俺が出ます。オシホ様には俺の護衛をお願いします」


「承知したのじゃ」


「カティは、マリーと共にここで待機をお願いします。敵が動くようでしたら、一度だけマリーの弓で警告をしてください。それでも、来るよなら、全力反撃をお願いします。あの場に残るであろう六人にも注意をお願いします」


 俺とオシホ様、アインが話し合いに出向くので、この場をカティとマリーに任せる事にする。


「承知しました」



 少しすると、伝令に出ていたマリーが戻ってくるのが見えたので、オシホ様に開門をお願いして、使者の一団に声を掛ける。


「開門します!」


 ここの門は、オシホ様によって、遠隔操作で開門出来るようになっているので、開門を確認した四人が門へ向かった。

 四人が前に出たのを確認して、俺とオシホ様は会談場へ向かう。

 今頃は、門の手前で待機していたアインが使者の四人を出迎えているだろう。



 俺は、会談場の手前でゴーレムから降りて、一度深呼吸をしてから会談場の中に入る。


 会談場は、防壁と聖堂院の中間辺りにあり、第二防壁の門があった場所に臨時で作られた建物になる。

 会談場のためだけにつくられたので、中は少し大きめな会議室程度しか無い。

 そして、会談場と門までの道の左右は、高い壁に遮られている。

 偵察を兼ねているかもしれないので、それを防ぐためだ。

 ただ、道は圧迫感を出さないように、幅が10m、遮っている壁も高さ5m程だ。

 トンネル状にする案もあったが、罠を警戒されるといけないので、道の上部は塞がれていない。


「お待たせして申し訳ない」


 そう言って会談場に入ると、既に四人が中に居り、俺が来るのを立って待っていた。


「初めまして、私が聖堂院を不法に占拠している者達のリーダーの広坪 土倉です。話し合いに応じていただき感謝します。カバリムさんのお噂は、拐った者から聞いております」


「良くもぬけぬけと言えたものだ!」


 護衛の者が、腰の剣に手を掛ながら言ってきた。


「待て、話し合いに来たのだ。待機せよ」


「……ハッ。承知致しました」


 護衛は大人しく下がった


「部下の者が失礼をした。私はカバリム、ただのカバリムだ。それで、貴殿は何を話し合いたいのだ?」


「まずは、お座りください。アイン、お茶をお願いします」


 使者の方に席を勧め、俺も席に座る。


 座ったのは、カバリムさんと文官だけで、護衛の二人は立ったままだ。

 オシホ様もメイド姿だが、俺の後ろで護衛として立つ。



「さて、話し合いの目的ですが、聖堂院を不法占拠を、合法な占拠にして欲しいのです」


 文官の人が少し反応したが、カバリムさんは特に反応しなかった。


「それは、正式に聖堂院を明け渡せと?」


「そうなりますね。捨てられた場所を、私が再利用しようかと思っています」


「こちらに何の利益も無く、ですか?流石に虫が良すぎるのでは?」


「そうですか?ここが空白地帯になれば、少なくないモンスターが子爵領に流れかねません。それを、私達が防ごうと言うのですから、それほど悪くないのでは?」


「冗談は良くありませんね。ここは、我が王国が聖堂教国に割譲している地です。それを勝手に何処の馬の骨とも知れない者に渡せるハズもありません。それに、我々が占拠すれば、モンスターへの対処は問題ない。お前達に勝ち目は無い。今すぐ降伏するなら、恩情ある処遇を約束しよう」


 俺とカバリムさんが話していると、文官の男が会話に入ってきた。

 降伏を勧められてしまった。

 まぁ、40,000も居るんだ、強気になって当たり前か……。


「降伏はありません。負けない勝負を降りる訳がありませんからね。こちらとしては、このまま実効支配を続けても良いのですが、法的に許可が欲しいですね。もし、許可が頂けるなら、この地でポーションの販売をしても良いのですが、どうしますか?」


「ポーションだと?!貴様はポーションの製造方法を知っているのか!」


 文官さんが目を見開き訊いてくる。


「知っていますし、製造に必要な魔具もあります」


「ならは、その魔具とポーションの製造法を渡せば、法的に聖堂院を占拠する事を許可するか検討をしよう」


「それこそ虫が良すぎるのでは?渡す訳がありません。ポーションが欲しければ、売って差し上げても良いですよ。法的許可と軍の撤退を確認したら、ですが」


「ふざけるなよ。軍を使って無理矢理奪っても良いのだぞ!」


「できもしないことを言わない方がよろしいのでは?」


「貴様……」


「待て。使者は私だ。少し黙っていたまえ」


 文官が話に入ってきてから、黙って目を瞑っていたカバリムさんが発言をした。

 文官は、不承不承の様子だが、黙った。


「貴方は聖堂院で何がしたいのですかな?」


「まずは、女性の保護は継続します。それから、ポーションの販売ですかね。あとは、周囲のモンスター退治くらいはしますよ」


「そうですか。では、拐った女性達の解放はしていたはだけますかな?」


「彼女達が望めばそうしますが、望まないと思いますよ?だって、聖堂院で保護されていた女性は、子爵領から逃げてきた者達ばかりなのですよ?中には子爵に献上されそうになって逃げてきた者が複数居るのです。しかも、子爵は女性に飽きたら殺してダンジョンに捨てるという噂がある以上、その手下に彼女達を渡すわけには行きませんね」


 俺の言葉に、カバリムさんは、一瞬表情を曇らせる。


「それは……。では、聖堂教国にならば、渡せますか?」


「それも、無理ですね。彼女達は、ほとんどが亜人種です。聖堂教国に渡せば子爵に渡した場合と似たことが起こりかねませんからね」


「そうですか。では、最後に、我々に勝てると考えていますか?」


「勿論だ。俺が負けることは無い」


「そうですか。我々は、貴方の希望を叶えられない。よって、交渉は決裂です」


「そうですか。それは残念です。私達は、逃げる者を追うつもりはありません。それだけは覚えておいてください」


「そうか。では、我々はこれで失礼する」


「話し合いに応じて下さった事には感謝します。ありがとうございました。それではお気をつけて」


 カバリム一行が帰っていく。

 さて、これから戦闘だ……。




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