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子爵軍 前哨戦




 聖堂院 要塞 防壁



「さて、どうしましょうか?」


 俺は搭乗型ゴーレム乗って、聖堂院を包囲する軍を、要塞化した聖堂院の防壁から見下ろしながら隣に居るオシホ様に話しかける。


「どうもこうも、なんの通告も無く包囲してきたのじゃ。即座に殲滅しても問題なかろう」


「流石にそれは……」


「ならば、あやつ等の攻撃を待って殲滅するか?」


 選択肢が先制殲滅か攻撃を受けてからの殲滅しかない。


「物騒ですね。それもちょっと……」


「ならば、お主が呼び掛けて交渉の場でも設けさせるのじゃな」


 オシホ様は、試作品や新兵器を使いたいのか、攻撃的になっている。

 しかも、俺が待ったをかけるものだから、投げやり気味に俺に交渉の呼び掛けをしろと言ってきた。

 投げやり気味ではあるが、言っている事は正しいので、呼び掛ける事にした。

 まぁ、交渉の場を設ける事が出来るとは思っていないが。



 俺は、子爵軍に呼び掛けるために、オシホ様に下がってもらって、一人で防壁の上から子爵軍へ呼び掛けた。


「俺の拠点を包囲している軍に告げる!こちらで交渉の場を設ける用意がある!そちらに交渉の意思があるなら、全員で五名までなら入れる用意がある!交渉する気がないならそこに居るだけで迷惑だ!日没までに包囲を解いて帰れ!でなければ実力で排除する」


「まぁまぁかの」


「形式的に交渉の意思は示してので、どうなるかはあちら次第てすかね」


「まぁ、そうじゃな。それにしても、交渉に出てくると思うか?」


「それは分かりません。ただ、賊相手に交渉しようなどと思うとは思えませんが、指揮官が変わり者ならあるいは……。まぁ、交渉を持とうとした事実は残りますからね。今後には役立つと思います」


 オシホ様と話ながら相手の返答を待っていると、「全軍攻撃開始!」という言葉と共に、矢と魔法が飛んできた。


「これが答えじゃな」


「そうなりますね。俺の発言が悪かったですかね?」


「どちらにしても、交渉の意を示したのに攻撃してきたのじゃ。殲滅して問題なかろう」


「場合によってはですね。とりあえず、第一段階開始でお願いします」


「仕方ないの。承知したのじゃ」


 俺の言葉を受けて、オシホ様が動く。

 第一段階は、子爵軍の攻撃に対しての防御なので、門を固く閉じて破壊されないように防御し、防壁にもゴーレムを配置して、登らせない様にする。

 オシホ様は門を守るために、門の真上の防壁上から全体指揮を執りながら反撃をしている。

 反撃は、特製の魔具に限定して、威力を弱めたロックバレットを撃ち、相手を殺さない様に撃退する。

 威力を弱めたと言っても、骨折くらいはするので、当たりどころが悪いと死ぬかも知れないが、防具を着けているし狙いも手足にしているので、そんなには死なないと思う。

 ちなみに、回転式連続発射装置は使っていない。



 カティとマリー、アインは聖堂院内に待機しているが、カティとマリーは同期型ゴーレムにて、聖堂院の三階部分から戦場全体を見渡している。

 聖堂院の三階部分とは言っても、高さが30mほどある場所になる。

 大山脈中腹に作った監視所と同じ発想で、聖堂院の近距離を監視するための場所を新しく作った。

 もし、状況が長期化するようなら、ゴーレムはアインに、指揮はカティに引き継ぐ予定なので、全体の動きを見てもらっている。

 マリーの弓は非常に強力だが、今後の事を考えてできるだけ今は出したくないので、遠距離の戦力とは数えずに、カティの護衛扱いとしてカティと共に行動してもらう事にしている。



 俺はと言うと、両腕に大盾を持ってオシホ様の横に立ち、敵の的になっている。

 交渉を持ちかけた時に大きな身振り手振りでアピールはしたものの、両腕に大盾を持っているゴーレムにどれくらい攻撃が集中してくれるか分からなかったが、思っていたより攻撃が来てくれているので、 門や他への攻撃が薄くなっている。

 もしかしたら、副団長から情報が渡り、俺が乗り込んでいる事を知っており、攻撃が集中しているのかも知れない。



 子爵軍の攻撃が開始されて一時間ほどが経ち、いくつ目か分からない梯子が集中砲火を受けて木っ端微塵になったのを横目に見ていると、門を破る為の破城槌が門に向かってきた。

 破城槌は、屋根と車輪が付いたタイプなので、難なく侵入してきた。

 しかも、なんの警戒も無く、だ。

 なんのために、堀がありながら跳ね橋にしないで土の道を残していたと思っているんだか……。


「オシホ様、お願いします」


「うむ」


 オシホ様は、門前に右側から順に石柱を発生させて、左側の堀へ破城槌を横転させた。

 堀に落ちた破城槌は、転げた衝撃で壊れてしまい、堀から出せても使えるのは丸太ぐらいだ。

 破城槌についていた人員は、横転前に破城槌から逃げ出したので、軽く攻撃して追い返した。


 破城槌は、さらに二度攻めてきた。

 子爵軍も転ばされない様に土魔法で地面を固定しようとしたみたいだが、土の大精霊であるオシホ様の魔法に対抗できようはずも無く、転がされて、全て破壊された。

 正直、改装前の聖堂院を考えればの破城槌を三台も持ってきていた事に驚きだ。




 子爵軍は、俺達の防御が堅固であると見たのか、昼前には下がった。


 こちらの被害は、ゴーレムや防壁、俺の盾に多少の傷ができただけで、ほぼ皆無だ。


 子爵軍の被害は、破城槌が三台大破、防壁を登るための梯子もかなりの数を再利用できないほど完全に破壊した。

 人的には、死者は出てないと思うが、もし出ていたとしても、かなり少いと思う。

 そして、1,000以上の兵を骨折させた自信がある。

 兵は、死んだなら最悪放置しても良いが、単なる負傷兵なら放置する事など出来ない。

 それにら負傷兵には医薬品を始め、食事も必要だ。

 相手側の物資をよく消費してくれる事だろう。



 まぁ、物語の中には良くある手ではあるのだが、非常に有効だ。

 こちらの被害がほとんど出る心配が無いので、できる無茶でもある。


 子爵軍も、今頃俺達の意図に気付いているかも知れない。

 いや、気付いたから引いたのかも知れないな。

 何にしても、あまり攻めてこなくなってくれると嬉しい。




 攻勢を中止して下がった子爵軍を見ていると、オシホ様が話しかけてきた。


「しばらくは攻めて来ぬだろうし、時間も調度良いから広坪も下がって昼食でも食べるが良い。ここはワシが見ておく」


「分かりました。一度下がらせてもらいます」


 俺は、オシホ様の指示に従い、防壁を降りる。

 そのまま聖堂院内に入り、礼拝堂でゴーレムから降りて、一階奥のカティ達が待機している場所まで向かう。


「広坪様、お帰りなさい」


 同期型ゴーレムで俺が戻るのを確認したであろうマリーが出迎えてくれた。


「ただいま。昼食を食べましょうか」


 部屋に入り、全体を見ていた二人と戦闘の感想などの意見を交換しながら食事をした。


「カティの言っていた通り、こちらには被害らしい被害が出ませんでしたよ」


 一般的な軍隊を知っているカティに、この要塞について評価してもらったのたが、要塞的には、高く固い壁を持つ小さな要塞程度だが、戦闘用ゴーレムなどを運用する事で、難攻不落という評価を得た。

 今回来るであろう軍隊程度なら、問題なく撃退できると断言してもらっていたのだ。

 その予想を一つの基準にして準備をした。

 そのお陰で最適な反撃が出来たと思う。



 今回は、相手側が木製の砦を想定して行動を起こしたが、結果として要塞になっていたので、準備不足、戦力不足と判断して、早々に帰ってくれると思っている。

 だが、子爵に良い印象が無いので、このまま特攻してこないとも限らないので、警戒は怠らない。

 特攻してきたら、相手側を殺さない様に対処したのは間違いの可能性があるが、まだ可能性の段階でしか無いし、特攻されてもこの要塞ねらば、5,000程度の戦力ならば十分に対応できるので、それほどの心配は無い。



 昼食を終えた俺は、カティとマリーと別れ、防壁の上に戻ってオシホ様に状況を尋ねる。


「子爵軍の様子はどうですか?」


「昼食を食べる様子はあったが、静かなものじゃ。再攻勢も撤退の兆候も見られぬ。いったい何をしているのか分からぬ。さっさと攻めてきてくれぬものか……」


 午前の戦闘程度では、オシホ様を満足させられなかったか。





 俺達はまだこの時知らなかったが、俺達を包囲してきた子爵軍を率いていたのは、ルティの元旦那の弟であるグレント・イグリードだった。




 ☆☆☆




 子爵軍本営




「被害状況はどうだ」


「破城槌の回収は不可能、梯子もほとんどが完全破壊されしたが、幸いに死者はほとんどがでませんでした」


「でばもう一度攻めるぞ!攻撃準備をさせろ!」


「無理です。攻め手がありません」


 この軍の大将であるグレントが指示を飛ばし、それを否定したのは、グレントが無理を言って借りた、領都から派遣されてきた武官のカバリムの部下のハングだった。


「何を言う!まだほとんど兵は死んではいないではないか!」


「だからです。骨折などの重傷者が多く、ポーションの数がかなり減りました。次に戦闘をしたら、確実に数が足りません。それに、破城槌は全台破壊され、壁を登るための梯子もほとんどが破壊されてしまいました。あの要塞を落とすには、兵力も物資も足りません」


「では、どうしろと言うのだ!」


 ハングは、このグレントが置かれた状況もある程度理解していた。

 将来的に、物流を担う重要な街の一つを任され、兵力まで渡されておきかながら、オークの襲撃に何も出来なかったのだ。

 状況的に仕方がないと思うが、領主に大言壮語していたらしく、立場が危ないのだ。

 ここで何かしらの成果を挙げなければ、物理的に首が飛びかねないのだ。

 なので、これほど必死なのだ。


「このまま撤退すべきです」


「奴等は包囲されるのを嫌がっていた!包囲を続けるぺきた」


「奴等は迷惑とは言っていましたが、どれほど効果があるか分かりません。私達を退かせないための方便かもしれません」


「だが……」


「分かっています。聖堂院は木製の砦から要塞へと変貌していました。そして、その要塞に攻撃を仕掛け、ほとんど兵の死者を出さずに敵の動きを見れました。つまり、死者をほとんど出さずに威力偵察ができたのです。これを成果に一度撤退し、報告してこら増援を得て再び攻めれば良いのです」


「……。てきるだろうか」


「現状ではあの要塞を落とせません。ならば、威力偵察の成果を持って戻り、準備をし直せば良いのです。それに、私も報告をしまし、これ程の賊を放置はできません」


「そう、だな。そうしよう」


「では、撤退の準備をさせます。よろしいですね?」


「任せる」


「承知しました」


 ハングは、撤退準備を指示するために、本営のテントから出た。


 それにしても、最初の呼び掛けの交渉には乗りたかった。

 危険ではあったが、相手を見れるチャンスだったし、あれほどのゴーレムの一部でも間近で見たかった。

 あの者がもう少し冷静であったなら、攻撃指示を止められたものを……。




 ☆☆☆




 聖堂院 要塞 防壁


「ん?どうやら撤退する様じゃ」


「そうなのですか?」


「荷物やテントを纏めておる」


「そうですか」


 それから、子爵軍が撤退する様子を見守り、完全撤退したのを確認してから、俺達も臨戦態勢を解除した。



 今回は何事も無く撃退できて良かった。



 今回は出番が無かったが、ドライは秘密拠点で待機していた。

 場合によっては、重要な役目になるので、次回以降も同じ様に待機してもらう事になるだろう。





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