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研究所での訓練

 



 研究所


 マリーと共に目覚めた俺は、二次改装に向かうべく準備をしようとしたのだが、待機命令が出た。


 よく考えてみると、俺が行くような指示は一切無かった。

 聖堂院に残留していた者達の退去を護衛した時は、状況判断や交渉が必要になった時に、俺の判断が必要になる可能性があった事と、カティ関連の事で都合が良かったから全員の合意の本、出陣させてもらっていたのだ。

 つまり、二次改装には俺の判断が必要無いし、ハーレムの形成は成ったので、俺が遠出をする必要性が今のところ無い。

 あるとすれば、人が来たときぐらいだが、まだしばらくは来そうに無い以上、俺は研究所で待機だそうだ。


 俺としては、行く気満々だったので、肩透かしを食らった様に感じたが、ハーレムを形成してからルティとも少ししか話せていないので、丁度良いかな、とも思う。



 聖堂院へ二次改装に行かないとはいえ、何もしないという訳にはいかないので、荷物の準備などを手伝う。

 持っていく魔具は、灯り系の魔具を中心に、俺達が普段使っている魔具がほとんどだった。

 他には、扉などもあった。

 何故扉を?とも思ったが、オシホ様によると、破壊された扉があるかららしいが、扉その物がオシホ様の規準には満たないものだったそうなので、全交換するそうだ。


 まぁ、オシホ様にお任せする以上、好きにしてもらおう。


 聖堂院に送る物資を集積してある場所には、魔具だけでは無く家具などもあった。

 これ等はら後日輸送する事になっているそうなのだが、結構な量がある。

 聖堂院も1,000人規模で収容可能なのだから当たり前だな。




 そうこうしながらも、オシホ様達を送り出す準備が出来た。

 荷物は、聖堂院内部の生活空間を整える程度のものだけなのだが、馬車で10台分にもなった。


 今回は、オシホ様とアインが聖堂院へと向かう。

 防壁を強化してあるとは言え、それだけなので、攻撃力が高いアインが連れていかれる事になった。

 という建前だ。

 アインのみお留守番だったので、アインが外に出たがったためだ。

 まぁ、建前にした理由も悪くなかったので、そのまま送り出す事になった。


 戦力は、戦闘用ゴーレムを100体、作業用ゴーレムを50体連れていく事になっている。

 今回は聖堂院内部の改装がメインなのて、作業用ゴーレムを多目の配置になった。


「それでは、気を付けて行ってきて下さい」


「まぁ、ワシとアインは死ぬことは無いのじゃし心配無用じゃ。安心して待っておれ。目的に合った改装をしてくるわい」


「はい。オシホ様を信用して待っています」


「うむ。それでは行ってくる」


 アリスさんやルティ達と共にオシホ様とアインを見送る。



 オシホ様とアインは、聖堂院を丸二日で改装する予定なので、明後日の昼までに帰還予定となっている。


 オシホ様とこんなに離れるのも初めてだ。

 短時間や短距離ならばあるが、基本的に俺と同行していたオシホ様と離れるのは不思議な感じだ。


 それから、一応これも俺の安全確認の一つになっているそうだ。

 俺と融合しているオシホ様が、俺からどれだけ離れられるか、どれぐらい離れて居れるか、という試験みたいなものだそうで、オシホ様が戻るまでの間アリスさんの厳重な監視下に置かれる事になっている。

 まぁ、研究所内に居る以上、普段から監視されているし、今更な気もするが、『厳重な』という辺りが気になるところだ。




 二次改装の準備で少し時間を食ったので、午前中は妻達と三姉妹と共に過ごす事にした。


 俺達の関係の変化で多少ギクシャクした部分はあったが、概ね問題なかった。

 三姉妹達と遊んでいると、マリーを中心に妻達がキャーキャー言いながら騒いでいたが、あえて会話は聞かない様にした。

 まだ未成年な少女達と一緒だったのて、余計に距離をとってしまったから聞こえなかったという訳ではない。



 午後からは、訓練をした。


 俺には戦闘技術が足りないので、カティに相手をしてもらった。

 今までも訓練をしてもらっていたが、やはり技術はそう簡単に身に付かない事を実感した。


 カティに訓練の相手をしてもらいながら、そこでふと思う。

 今のところ騎士経験のある人間で、俺の相手をしてくれるのはカティだけだ。

 そのカティとは子作りをしているので、いずれルティの様に妊娠するだろう。

 そうなっては、訓練の相手をしてもらう訳にはいかない。


 どうしたものか、そんな事を思っていると、キツい一撃をもらい弾き飛ばされ、注意される。


「訓練中に他の事を考えるのは良くありません。集中してください」


 訓練用の木剣を打ち込まれた部分を摩りながら立ち上がる。

 一応手加減をしてくれたみたいなので、怪我は無い。


「すみません。ですが、カティが妊娠したら、訓練相手が居なくなるなと思いまして……」


「なっ、なな!何を言っているのてす!」


 カティが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「実際に子作りを――」


「分かりました!訓練相手は私が探しておきますから、訓練に集中してください!」


 その後、カティが冷静になってから訓練を再開した。

 再開後の訓練は、少し厳しいものになった。





 剣の訓練を終えた俺は、魔法の訓練に来た。


 訓練場にはカティ達も来ており、魔法の訓練をしている。

 と言っても、カティは指導するだけで、ほとんど魔法を使っていない。

 妊娠中は、魔力が乱れるし、魔法の使い過ぎは胎児に悪影響があると言われてるからだそうだ。


 三姉妹も、魔法にかなり慣れてきておるので、訓練自体はそれほど手間がかかっていない。

 今はどちらかと言うと、訓練の精度向上より、油断や慢心からの怪我を警戒しているとルティは言っていた。



 正直、慢心はヒヤッとするような事が起きないと実感しにくい。

 俺は、最初にオシホ様による暴走を経験し、魔力の大量消費に心理的ブレーキがあるので、大規模な失敗はしにくくなっている。

 聖堂院前で15,000匹のオーク戦の時に、大規模魔法を使ったが、あれはかなり神経を使う。

 本来ならもう少し楽に撃てるのだが、上級以上の魔法を使おうとすると、一気に心理的負荷が増すだけではなく、精度も危なくなるので、滅多に使わないようにしている。

 中級程度までなら、息をするようにとまではいかなくても、かなりの精度と連続使用が可能だ。



 ルティ達に近付き声をかける。


「調子はどおですか?」


「「「広坪様!」」」


 三姉妹が元気良く反応する。


「三人共魔法の精度はそれなりのものになっています。ご覧になりますか?」


「是非お願いします」


「だそうですよ。レイから見せたい魔法を二つ放ちなさい」


「「「はい!」」」


 ルティの言葉を受けて、レイシアが的に向かって手を向ける。


「アクアボール!」


 レイシアが的に向かって長径30cm程の水球を放った。

 水球は、的の中心付近にぶつかり、的にまとわりついた。

 本来なら、水球は的にぶつかり四散するはずなのだが、的にまとわりついているという事は、顔なら窒息を狙える。

 水球自体の精度やスピードもあったので、ぶつかった時の衝撃もそれなりありそうだ。


 それにしても、アムリスとクリスティアは魔具を作ったので、精度はそれなりだと分かっていたが、レイシアまでもが、四散するはずの水球を的に留める程の精度を発揮するとは驚きだ。


「凄いですね。初級魔法ですが、かなり使えそうですね」


「まだまだ精度が甘いです。あれでは的に水をなんとか留めているだけで、少し振り払えば水から脱出できてしまいます」


 レイシアと同じ様に水への適正が高いルティがダメ出しをする。


「それでも、前回見たときよりかなり精度が高くなっていますね」


「まだまだですが、レイもアムとクリスに負けないように一生懸命でしたから」


 ルティもレイシアの事はそれなりに認めているみたいだ。

 長子だけあって、少し厳しめに指導しているのかもしれない。


 ルティと話していると、レイシアが二つ目の魔法を放つ。


「アイスボール」


 レイシアは氷魔法を使った。

 氷魔法は中級になる。

 レイシアの放った魔法は、『アクアボール』と同じ程度の大きさの氷で、的の端に当たり、的を欠けさせ、アイスボールも砕けた。


 中級魔法だけあって、少々精度が甘い。

 的の端に当たったのもそうだが、的に当たって簡単に砕ける強度なのも問題だ。

 撃ち出した速度が速いなら仕方ないが、レイシアが撃ち出した速度は、それほどでは無かった。


 レイシアも、精度が甘かった事を自覚しているらしく、少々落ち込んで居る。



 レイシアが下がり、次にアムリスが前に出る。

 アムリスも、レイシア同様に的に手を向けて魔法を放つ。


「ロックバレット」


 アムリスが放ったのは、『ロックバレット』土の初級魔法で、俺が好んで使う魔法だ。

 的の中心に命中し、的を凹ませるほどの威力があったみたいだ。


「ロックジャベリン」


 次にアムリスが放ったのは、岩の槍だった。

 長さが1mほどあり、一番太いところで長径30cmほどだ。

 魔法は、的の中心から少し外れたものの、見事に的を粉砕した。


 アムリスは、土の派生も使えるだろうが、闇に高い適性を見せので、植物魔法を使えるのだろうが、攻撃には向かないので、土魔法を中級規模で使ったのだろう。



 アムリスが下がり、クリスティアが前に出る。

 アムリスも的に手を向けて、魔法を放つ。


「ファイアボール」


 クリスティアが放ったのは、長径は30cm程の魔具にしてくれた魔法だった。

 魔具にできるほどの精度を実現しただけあって、的の中心に当たり、的を爆散させた。


「ファイアストーム」


 クリスティアが次に放ったのは、火だけでは無く、風も併用した中級魔法だ。

 クリスティアが放った火の竜巻は、的を中心に発生し、的を黒焦げにした。




 三人が魔法を放ち終わったので、ルティと共に俺の前に並ぶ。


「コウ様、三人の魔法はいかがでしたか?できれば、順番をつけて評価していただきたいと思うのですが」


 順番をつけろ、か。


「了解です。そうですね……。一番はレイシア、二番はアムリス、三番がクリスティアですね」


 俺のつけた順番に、レイシアは驚き、アムリスとクリスティアは不満気、ルティは納得の表情だ。

 この順番にしたのは、年齢順という訳では無く、きちんとした理由はある。


「どうして私がビリなの?」


 クリスティアが淡々とした感じて理由を尋ねてきた。

 魔法の威力としては、一番だっただけに、ビリなのが不満らしい。


「今の魔法だけを見れば、私もコウ様と同じ順番にしましたよ」


 ルティが不満気なクリスティアを見ながら言う。


「今から理由を説明します。クリスティアは、必要な魔力の二倍近くを使っていましたね。威力が上がってましたが、使用した魔力の量を考えると、非効率なので、三番です」


 魔法を放った本人が一番自覚しているのか、まだ少し不満気ではあるが、納得したみたいだ。


「アムリスも魔力の量が少し多かったです。二割ほど多かった様に見えました。あとは、魔法の密度が甘いですね。少し簡単に砕けてました」


 アムリスも一応は納得してくれたみたいだ。


「最後に、レイシアですが、使用魔力量は適量てした。アイスボールは、密度と精度が今一つでしたが、アクアボールは応用していたので、高評価にしました。それに、魔法の発動が一番早かったです」


 レイシアを一番にしたが、本人は氷魔法の精度が今一つなのが気になるのか、あまり納得していないみたいだ。


「コウ様、アドバイスがあればしていただきたいのですが」


「了解です」


 少々鞭的なダメ出しが目立ったので、評価とアドバイスをしてアメにする。



「まずは、まだ初級魔法しか使えないと思っていましたが、中級魔法を皆が使ったので驚きました。素晴らしかったです」


 三人共が嬉しそうだ。


「レイシアは、アクアボールをまとわりつかせる応用が特に素晴らしかったです。顔にまとわりつかせる事ができれば、非常に協力な魔法になります。氷魔法は、使える様になったばかりみたいなので、これからに期待です。ただ、より冷たい方が固くなるので、意識してみて下さい」


「はい!」


「アムリスは、魔力の量が調整できれば、大丈夫ですが、ロックバレットは、的にぶつけるつもりでは無く、貫通させるつもりて撃つと、威力が上がるので、試してみてください」


「はい!」


「クリスティアは、俺が使えない火魔法なので、アドバイスしにくいですが、火魔法の威力はとても高いです。なので、魔力量を適量にして、魔法の発動速度を上げれれば、とても強力な魔法になります。それに、威力が高いので、魔力量を更に減らして、魔法も小さくしても、十分に役目を果たせそうなので、試してみるのも良いですよ」


 魔法を小さく、という点はおれがしたくても出来そうに無い事なので、頑張って欲しい。

 俺は土魔法がメインなので、どうしても威力を上げたいなら大きくする必要がある。

 だが、火魔法ならば、小さくても大丈夫なので、試してみて欲しい。


「皆にアドバイスです。魔法の発動速度も大切ですが、魔法を撃ち出す速度を上げれる様に頑張ってみて下さい。速度が早ければ、避けたり防ぐ事が難しくなるので、とても有効です」


 そう言ってから、俺は的に手を向けて、ロックバレットを放つ。


 三姉妹の魔法は、矢よりも少し速いくらいだが、俺のはまさに拳銃の弾丸をイメージしているので、とても速い。

 これを見れば、イメージもしやすいだろう。


「あと、物理的な魔法を使うなら、強度にも注意だが、回転させると、威力があがり、命中精度も上がるのでオススメです。だけど、回転させる物の形が悪いとぶれるので、その点だけ注意して下さい」


 レイシアとアムリスが頷いていた。


「クリスティアの火は、圧縮して小さくすると、威力がとても高くなります。だけど、圧縮しすぎると危ないので、少しずつにして下さい」


 圧縮は、別で説明してなんとかイメージが伝わった。


 アドバイスは、基本的に無難なものにしたが、最後に注意換気しておこう。



「最後に、皆に危ない魔法を見せます」



 そう言って、俺が放った魔法は、魔力を過供給したロックバレットだ。


 三姉妹は、俺が放った魔力過供給の魔法を見て、見るからに危険な感じは分かってもらえたと思うので、少しは気を引き締めてくれたみたいだ。



 こうして魔法訓練は終わったが、後で魔力過供給のロックバレットについて、ルティから危ないと叱られた。

 一応、オシホ様と融合して土には非常に高い適性があるので、あれくらいなら大丈夫だと釈明はしたが、それでもやめて欲しいと言われたので、妊婦であるルティに従った。




 夕食を食べた俺は、久しぶりにルティを部屋に誘い、ゆっくりと色々な話をして、ただ一緒に眠った。


 やはり、ルティと一緒に寝るのが一番安らいだ。




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