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退去護衛




 聖堂院南方の森 地下秘密拠点


 昨日の予想通り、聖堂院に動きがあった。



 俺達は、いつも通り日の出前に起きて、護衛のための出撃準備を整えて待機していた。

 ツヴァイが聖堂院監視のために出ていってから少しして、ドライが報告に戻ってきたのだ。

 その報告は、日の出前だったが、『聖堂院に出発の動きアリ』というものだった。

 その報告を聞いた俺達は、すぐさまゴーレムに乗り込んだ。

 ドライは、先行部隊として先に行く必要があったので、既に率いていた作業用ゴーレム10体とは別に、新たに戦闘用ゴーレム40体を率いて出撃した。




 先行部隊のドライは既に出撃しているので、残っているのは戦闘用ゴーレム110体と作業用ゴーレム20体、遠征用のゴーレムと俺達だけになる。



「これより、聖堂院に残っていた者達の護衛に出発する。準備は良いな!」


「「「はい!」」」


 オシホ様の確認に、俺、カティ、マリーディアさんが答える。


「まずは、ツヴァイと合流する。出発!」


 オシホ様の号令で秘密拠点を出発した。

 秘密拠点は、可能な限り隠蔽をして、出入り口を完全に塞いでおく。



 ツヴァイまでの距離は3kmなので、それほど離れていない。

 ゴーレムの足なのですぐに近付けるが、この図体では森の際に近寄りすぎるのと聖堂院側に発見の恐れがあるので、最大でも300mまでしか行かない決まりになっている。

 それでは、ツヴァイと合流出来ないと思うかも知れないが、俺やオシホ様の事は、1km以上離れていても関知できるので、近寄ればあちらから合流してくれるだろう。

 案の定、俺達が森の際まで500程の場所でツヴァイが合流してきた。


「聖堂院の様子はどうじゃ?」


 オシホ様がツヴァイに訊ねる。


「完全に出発の準備をしています。動きからして、恐らく日の出と共に出発する可能性が高いです」


「分かったのじゃ。多少想定外の事が起きたが、予定通りの手順で行く。ツヴァイには、戦闘用ゴーレム70体と作業用ゴーレム10体を預け、マリーディアもツヴァイと行動を共にせよ」


「「はい」」


 オシホ様は、ツヴァイの言葉で最終確認をしたあとに、作戦手順に従い指示を出し、ツヴァイとマリーディアさんがそれを了承する。

 ツヴァイに戦闘用ゴーレムを70体も預けたのは、最後尾になるというのもあるが、予想に反して聖堂院に残留する者が出た場合に、退去組ではなく残留組の護衛をするためだ。


 今のところは、全員が退去すると判断しているが、聖堂院内部の全てを正確に知り得ている訳ではないのだ。

 内部を探っている方法は、地面の振動を感じ動きを察知しているのだ。

 精霊トリオや大精霊のオシホ様ともなれば、座った状態などの静止状態なら2kmほど先まで詳細に分かると言うから驚きだ。



 この性能を発揮できるようになったのは、15,000のオークを撃滅して以降に使える様になったものだ。

 15,000ものオークを撃滅した後に、全体的なゴーレムの性能向上が図られ、その結果、この性能を精霊の方々が発揮できるようになった。

 俺も訓練させられたが、精々が100m先に居る単独の標的を感じるのが精一杯だった。

 それでも、森の中でなどの視界が悪い場所ではかなり便利なスキルだ。

 ただ、これはゴーレム乗っていないとほぼ発動出来ない。

 生身でも訓練はしたが、自分の鼓動などでほとんど分からなくなってしまい、関知範囲は精々が5mだ。

 これでは偵察などには使い物にならないが、接近戦ではそれなり役立ってくれていて、精霊トリオとの戦闘訓練での持久時間が一気に倍近くまで伸びた時は非常に嬉しかった。

 その後、戦闘レベルが二つ三つ上がってボコボコにされたのは良い思い出だ。

 調子に乗ってはいけない、という戒めを思い出す良い切っ掛けになった。



 ツヴァイが、最後尾の部隊になるのは良いが、マリーディアさんがツヴァイと共に行動するは、砦の防衛にも、最後尾からの援護にも大きく力を発揮すると評価されてだ。

 護衛対象である、俺とマリーディアさん、カティをバラけさせるのに多少の懸念はあったが、それでもマリーディアさんのゴーレムでの弓は非常に強力なので、有効に使いたかったのだ。

 こうして、マリーディアさんが最後尾のツヴァイの部隊に編入された。


 そして、護衛として、聖堂院の退去組の一番近くに居ることになるオシホ様の部隊には、俺とカティが配属され、戦闘用ゴーレム40体と作業用ゴーレム10体に、遠征用のゴーレム達が加わっている。

 俺達は、退去する者達の南側500~1000m程南に位置しながら、こっそり護衛する予定だ。

 北側は大山脈があるので、ある程度偵察して驚異が存在しなければ無視しても大丈夫だ。

 問題なのは、進路を塞がれる事と側面からの奇襲だ。

 進路は、ドライが先行しているので確保できるだろうし、側面も俺達がカバーしているので、大丈夫なハズだ。

 後ろは、聖堂院の全員が退去してくれればツヴァイが入って楽なのだが、駄目なら俺が遠征用ゴーレムを何体か率いての護衛予定だ。

 是非ともそうならない事を祈りたい。



 何にしても、作戦に従い配置に着く。

 俺達は南の森に居るので、西の森に移動するには街道を横断しなければならないので、日の出前に西の森に移動しておいた方が良いので、さっさと移動する。


「マリーディアさん、十分に気をつけて下さいね。俺達は、いざとなれば単独でも帰還はできますので、ご自身の身を最優先にしてください」


 マリーディアさんに釘を刺しておく。

 正直、マリーディアさんと聖堂院に居る全員ではマリーディアさんの命の方が圧倒的に重要だ。

 カティの要請で護衛をしているが、マリーディアさんやカティを失う訳には行かないのだから。


「分かっています。足を引っ張る様な真似はしません。広坪様とカティも気をつけて下さいね」


「了解です」


「ルティに感謝の手紙は書いたが、直接お礼を言わないといけないからね。必ず戻ります」


「良し。ては、移動する」


 オシホ様が、俺達とマリーディアさんとの別れの挨拶を待って指示を出した。





 聖堂院西方の森


「全員が一緒に動いてくれますかね?」


 俺は、楽な方な事態になる可能性をオシホ様に訊いてみる。


「恐らくな。ワシもツヴァイと合流した時に探ってみたが、全員が動いておったし、ツヴァイとドライの経過報告を見ても全員動く可能性が高い。食料や武器を始めとした物資のほとんどが持ち出される様じゃからな」


「そんなにですか?半分程の人員を拐ったのだから、かなり余分にあると思うのですが?」


「じゃから、とも言えるのじゃ。人員を運ぶ必要が無い分の馬車が余る部分もあったのじゃろう」


「確かにあり得ます。運ぶ人員が減ったこと、西側は徒歩でも村に辿り着ける程度の距離な事を考えると、馬車や荷馬車を全てを物資用にしたのかも知れません」


 俺達が人員を拐った事で馬車に余裕が出来て、運びたい物資を全部載せれると思っちゃたので、実行したのか。

 聖堂院から西側の最初の村まで徒歩で半日というのも大きいな。


「なるほど。となると、西側の村は聖堂教国の出資があったりしたのでしょうか?」


「よくお分かりになりましたね」


「南側は馬車が必要な距離でしたが、西は徒歩で半日です。少し近いですが、聖堂院のためならかなり良い立地です。それに、西は聖堂教国へ通じる道ですからね。介入があっても不自然ではありません」


「その通りです。聖堂院支援や往来のための道や宿泊のための場所目的で作られました」


「やはり。でしたら、全ての物資を運び出したならば、聖堂院には……」


「残るに残れない、という可能性は十分にあり得ます」


「そうなってくれると楽なのですが……」


「む。どうやらお主の希望通りになったようじゃぞ?」


 俺とカティが話していると、オシホ様が事態が動いた事を知らせてくれた。


「希望通り、ということは全員が?」


「そうじゃ。こちらではまだ確認できぬがツヴァイのゴーレムからの合図があった」


 この合図は、オシホ様達の振動を探知するスキルを情報伝達に応用したものだ。

 ゴーレムの動きである程度の事を伝えられる。

 今ごろは、オシホ様も先行させたゴーレムに合図をさせて、ドライに知らせているだろう。


「なら、移動しますか?」


「そうじゃな。もう少し前進する」


「「了解です」」


 後ろはツヴァイ達に任せる事ができるので、もう少し前進して安全を確保する。




 移動して少ししてから、オシホ様が退去する聖堂院の者達の先頭を関知した。


「来たな。奴等の先頭が我々の真北に来たら移動を開始する」


「「了解です」」



 聖堂院の退去組の先頭が俺達の真北に来る頃には、オシホ様によって、聖堂院側の退去する者達の編成が分かった。

 聖堂院にある馬車や荷馬車が全て移動をしているのは勿論、騎馬が150、歩兵が100ほど居た。

 配置としては、聖堂院の歩兵100と騎兵隊50が中央に配置されていた。

 非戦闘員が乗った馬車が中央に集中配置されているのを考えると当然の配置だ。

 残りの、昨日来た騎馬100は、半分に別れて前方に50、後方に50の配置になっている。

 突破と殿用だろう。

 どうやら、騎馬100を率いて来た指揮官は聖堂院の者達を守る事を最優先にしているみたいだ。

 思っていたよりも、良い指揮官が居たものだ。


 それよりも、昨日来た馬車に人が乗っているのも確認できてので、あの馬車が無ければ、歩いている非戦闘員が居た可能性があったかも知れない。

 いや、運ぶ物資を減らして、人を乗せていたかも知れないな。

 少なくともそうであっただろう、と思うことにする。

 精神衛生上のために。



 それからは、退去する聖堂院の者達の南側を平行するように移動をしながら護衛を続けた。

 護衛中の問題は、ツヴァイが護衛の陣形に入るのが少し遅くなった事以外では、イノシシタイプの魔獣が全体で三匹駆除しただけだった。

 それ以外は何事もなく、聖堂院の者達は、昼前には最初の村に到着した。


 なんというか、準備の期間や苦労を考えると、呆気なく護衛が終わった。



 彼女達は、動きからして、ここで昼休憩をしてから、次の村に行くつもりみたいだ。

 カティも、次の村まで徒歩で半日なので、十分に到着は可能だろうと言っていたので、間違いないだろう。

 俺達の予定では、ここまで来れば彼女達は安全だろう。ということで、ここまでの護衛の予定だったので、周辺の偵察をして引き上げる事にした。

 魔力供給範囲を広げる魔具にも限りがあるので仕方がない。

 性能の向上で設置数を減らせたので、ここまでの来る分を確保するのは楽だったが、次の村までとなると少々数が足りない。

 なので、ここが精一杯でもある。

 カティもこの事は納得しているので、問題は無い。




 本来なら、ドライの帰還を待って、そのまま姿を見せずに撤退の予定だったのだが、ここで我が儘を言ってみる。


「あの、彼女達に言いたい事があるので、姿を見せても良いでしょうか?」


「……理由次第、じゃな」


「聖堂院の占領宣言をしておきたいのです」


「何故じゃ?」


「それは、俺達が聖堂院を占拠するのは、外部との交流を持てる拠点を得るためです。ですが、このままでは俺達が占拠した事を知られるのがかなり遅くなります。そうなると、交流までの時間が伸びます。一方的な占拠になるので、敵対されるとは思いますが、それはこっそり占拠しても同じです。なので、今宣言することで、時期が早まり、聖堂教国と王国の両方に知らせる良い機会だと思ったのです」


「ふむ。確かに、悪くは無いな。じゃが早すぎれば防衛ができぬかも知れぬぞ?」


「まさか、間に合いませんか?それとも負けてしまいそうですか?」


「どちらも無いな。今から戻れば今日中に外側の砦の強化はできる。それにじゃ、砦が無くとも敗けはせぬな」


「でしたら……」


「よかろう。宣言するが良い。じゃが、ドライが戻ってからじゃ」


「承知しました」



 それから、少ししてドライが戻ってきた。


 偵察結果は、問題なし。


 なので、聖堂院の占拠宣言をしに行く。



 俺は、ツヴァイの指揮する戦闘用ゴーレムを50体引き連れて村の東側、聖堂院のある方から、故意に足音を大きく響かせながら姿を現した。


 村人と思われる人々は慌てていたが、聖堂院の者達だけでは無く、援軍で来た騎馬の者達もそれほど慌てている様には見えなかった。

 少し予想と違ったが、村まで50mほどまで近寄り、戦闘用ゴーレムを停止してもらい、俺だけ10mほど前に出て声を掛ける。


「我々は、聖堂院から女性を300人ほど拐った者だ!」


「見れば分かる!何用だ!」


 副団長が出てきて答える。


「貴女方が砦を捨てて行くのが見えたので、ご挨拶にと思いまして」


「そんなものは必要無い!立ち去れ!」


「あぁ、もう一つ用件が有ったのでした。貴女方が捨てた砦ですが、我々の拠点が少々手狭になったので、我々が有効利用しようと思うので、それをお知らせに来たのでした」


「ふざけるな!聖堂院は、我々の聖地だ!貴様等の様な賊になどくれてやるものか!」


「捨てたのはそちらでしょうに?まぁ、取り返したいのなら、実力で来ることです。我々に勝てると思うなら、ですが」


「ぐっ……」


 副団長も戦力差が分かっているので、答えられないのだろう。

 それにしても、騎馬隊の指揮官らしき者が見えないな。

 まぁ、良いか。


「それから、女性の保護は我々が継続して差し上げますので、ご安心を、それでは失礼します」


 言うだけ言って、さっさと引き上げる。


 できるだけ悪そうな感じで言ってみたけど、どうだっただろうか……。




 村から見えないな距離まで離れて、濃さ追っ手が居ない事も確認してから、オシホ様達が合流してきたが、カティは満足気で、マリーディアさんは笑いを堪えていた。


 馴れない事をするものでは無いな。

 予定も大分変更になったし、早く秘密拠点に戻ることにする。


「全任務完了!戻ります!」


「了解したのじゃ」


「了解です」


「はーい」




 こうして、副団長等の退去護衛は呆気なく終わった。




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