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秘密拠点での待機




 聖堂院南方の森 地中秘密拠点


 俺達は夜明け前に起こされた。

 今日は、聖堂院に居る者達が出発するかも知れない日なので、日の出までに護衛の準備をするためだ。

 と言っても、既に準備は終えているので、体をいつでも動けるようにしておく事と早目の朝食を食べておくぐらいしかすることが無い。


 身嗜みを整え、軽く準備運動をして体を目覚めさせてから朝食を食べに向かう。

 朝食は、柱近くに設置されたテーブルで食べる。

 席に着いて待っていると、俺に少し遅れてマリーディアさんと団長さんもそれぞれの簡易シェルターから出てきた。


「おはよう。二人とも調子はどうですか?」


「「おはようございます」」


「体調はバッチリです。いつも通り弓を引けると思います」


「あのゴーレムに乗って少々興奮して寝るのが遅くなったが、体調は大丈夫です」


「それなら良かったです」


 マリーディアさんと団長さんと挨拶を交わしていると、ツヴァイが出来立ての様な朝食を運んできた。

 まだ少し寒い季節なので、温かい食事はありがたい。


 この朝食は、アリスさんが研究所で作った物が先程届けられたそうた。

 夜の間、ずっと馬車が往復しており、必要な物資の運搬と地下空間を作った時に出た土を搬出を繰り返していたみたいだで、先程のが最終便だそうで、最終便は既に排出した土を固めた物を積載して、研究所へ向かったそうだ。


 朝食を食べ終えた俺達は、保温魔具に入った昼食を受け取り、それぞれのゴーレムへ向かい、昼食の積み込みと装備品、ゴーレムのチェックを済ませる。

 この昼食もアリスさんが用意してくれた物で、俺とマリーディアさんは慣れていたのですんなり受け取ったが、団長さんは、温かい食事を持ち運べるという事に、驚きながらも感心していた。


 団長さんのゴーレムのチェックを手伝いはしたが、護衛の準備はすぐに終わったので、拠点の建設の進捗具合を確認すべくオシホ様の元へ向かった。


「オシホ様、おはようございます」


「うむ。おはよう。準備の方はどうじゃ?」


「俺達は勿論、団長さんのも確認したので大丈夫です。こちらの進捗具合はどうですか?」


「表の偽装を優先したからの、内部はほとんど進んでおらぬ」


 秘密拠点である以上、バレない様に偽装を優先するのは当然だな。

 馬車の出入りや作業で地面も荒れているだろうし。


「そうですか。表を見に行っても良いですか?」


「いや、まだ日の出前じゃし、防壁も回収したからの、灯りが使えぬ。日の出を待ってからが良いじゃろう」


「そですね。分かりました」


「広坪様、オシホ様」


 俺とオシホ様が話していると、ツヴァイがやって来た。


「うむ。もう出るのか?」


「はい。早めに監視体制に移ろうと思います」


「うむ。では、行くが良い。抜かるでないぞ」


「はい」


 ツヴァイは、聖堂院の監視をしているドライと交代に行った。

 ツヴァイに役目を引き継いだドライは、周辺の先行偵察に向かう予定だ。

 可能性はかなり低いが、日の出前に出発も有り得たので、かなり早い段階から監視していたのだ。




 ツヴァイを見送った俺達は、オシホ様と共にゴーレムの元まで来た。

 秘密拠点見学しようかと思ったが、あまり意味が無かったので、オシホ様の勧めで訓練をすることにしたのだ。

 団長さんは、既に搭乗型ゴーレムを操作できるが、武器の訓練をしていなかった。


 団長さんのゴーレム用の装備は、団長さんが得意とする盾と剣だ。

 と言っても、俺と同じでは無い。

 俺の盾はタワーシールドタイプで、体全体を覆い隠せるほどあるが、団長さんの盾は丸盾だ。

 盾での受け流しやシールドバッシュみたいな、盾での強打などを得意にしていたので、そのまま採用された形になる。

 剣は普通のロングソードを使っていたので、ゴーレムでも同じ様に使えるような対比の剣を用意してある。

 昨日の動きを見れば、問題なく武器も使えるだろう。


「両者構えよ!」


 俺と団長さんが搭乗型ゴーレムに乗って武器を構える。

 俺達の周囲には、安全対策として、搭乗型ゴーレムに乗ったマリーディアさんとオシホ様、それに戦闘用ゴーレム10体が俺達を囲んで居る。


「始め!」


 オシホ様の言葉と共に、俺と団長さんはお互いに向かって走り出す。


 今回は模擬戦ではあるが、真剣を使っているので、注意が必要だ。

 当然寸止めだし、魔法の使用も禁止だ。


「おおぉ!」


 俺は、右手に持つ大盾を突きだしながら、体当たりを慣行する。

 それに対し、団長さんは俺の右に避けようとしたので、進路を変更して追随しようとしたが、団長さんが左腕に持つ丸盾で俺の大盾を押さえられて、団長さんを捉える事ができなかった。

 俺は急停止し、振り返って団長さんに盾を構えようとしたが、既に至近まで接近され、頭部へ剣先が迫ってきたので、慌てて頭を逸らさせた。

 上手く避けれたと思ったのだが……。


「それまで!」


 オシホ様に止められた。


「今のは、寸止めのために最後の方が遅くなっておった。通常なら頭を貫かれておったな」


 それは俺にも分かった。


「確かに最後の方が遅かったですね。参りました」


 やはり搭乗者の技量がモロに出るな。


「広坪様の突撃も凄かったです。ですが、止まらずに駆け抜けるべきでした」


「そうですね。以後気を付けます」


 現役の騎士の方からの助言だ。

 素直に受け入れよう。


「もう一本お願いします」


 団長さんと模擬戦をしたことは、昨日が初めてだったので、普段と違う相手と戦える機会を無駄にはしたくなかったので、もう一本お願いした。



 その後、さらに三本模擬戦をお願いして、計五本戦ったが全敗だった。

 対人戦の経験が違いすぎた。

 俺は、団長さんの防御を崩せず、逆に防御を崩されて負けた。


 むしろ、俺の後に戦ったマリーディアさんの方が善戦していた。

 マリーディアさんは、弓ではなく団長さんと同じロングソードだけで戦ったのだが、機敏に動き回り、五本の内の最後の一本を取っていた。

 少し疲れたのかも知れない。

 団長さんもゴーレムでの武器の扱いに十分慣れたので、訓練はこの辺りで終了となった。



 訓練後は、十分な休憩をした後に、秘密拠点の表を見学に行った。

 既に太陽が出て、明るくなったので見に行ったのたが、本当にゴーレム達が動き回っていたのか疑いたくなるほど、違和感が無かった。

 少なくとも俺と団長さんには痕跡を見つかられなかった。

 ただ、森の中に詳しいマリーディアさんは、痕跡を隠した跡が分かったみたいだが、説明されても俺達には分からなかった。

 流石の狩人さんだった。


 更に、周辺には偽装だけでは無く、痕跡を隠しやすくするための工作がされていた。

 それは、足場だった。

 湿地なかで見たことがあったが、自然を守るために、杭を打ってその上に足場を作って、人が通っても自然を壊さないようにするための物の様に、足場を作れる様な工作がされていたのだ。

 今は土魔法でこの足場を作っているが、これなら石壁を発生させる魔具を応用すれば、同じような物が作れるので、それがあれば楽になるだろう、という事だった。

 しかも、既にアリスさんに発注してそうで、今日の日没後には届くだろうと言っていた。



 見学を終えた俺達は、まだツヴァイからの報告が無いので、秘密拠点内部の作業を手伝った。

 ただ、護衛に出る事を考慮して、かなり休憩を多めに、作業を手伝った。

 マリーディアさんと団長さんは、運び込まれた物資の整理を任された。


 俺は、オシホ様の手伝いとして、床の加工を手伝った。

 床は、水平にしてあるが、その床を1m四方ほどに区切り、その中央をほんの少しだけ高くした。

 その1m四方の間に溝を掘った。

 それは、網の目の様に広がっていたが、溝は外周部へ行くほど深くなっており、水は外側へ流れる様にした。

 溝の断面図は三角形になっており、上部が狭くなっていて、物が落ちたりしないような工夫がされている。

 外周部には周囲を一周する溝があるが、それぞれの四方に水を貯めることができる穴を設置してある。

 その穴には、水が多くなったら、排出する機能をつける予定だ。



 休憩を多めにとりなからだったので、床の加工が終わる頃には、お昼になっていた。

 昼食を取り出し、食べ終わる頃に、ツヴァイが戻ってきた。


 ツヴァイの報告によると、聖堂院ではまだ退去の準備作業中で、今日の移動は無さそうという事だった。

 聖堂院から一番近くの村まで馬車で半日はかかるそうなので、もう出ないと日没に間に合わないそうなので、移動の可能性は無いと判断された。

 それでも、一応の監視としてドライが残っているそうだ。



 退去が無いと判断された以上、待機する必要が無くなったので、本格的に内部の作業に専念することにした。

 まずは、物資を保管する場所を作り、整理された物資を一気に運び入れた。


 後は、個室を10室作った。

 10室も必要なかったが、今後を考えて、一応の数だ。

 ただ、俺達が使う以外の個室は、区切っただけの様な部屋のままだ。

 トイレと風呂も作りはしたが、ここは研究所では無いので、風呂はそこそこの風呂を一つだけだ作った。



 作業をしていると、もう日没で、夕食が届けられたので、本日の作業は終了となった。

 夕食を食べた後は、マリーディアさんと団長そんと雑談をしてまったりと過ごした。

 今までは、作戦や作業の事などの、仕事な話ばかりだったので、問題は無かったが、仕事以外となると、途端に駄目だったが、マリーディアさんのお陰でなんとか話せた。

 最後の方は、ぎこちなさも大分無くなった。

 団長さんと多少打ち解ける事ができたのはよかったが、マリーディアさんともこれほど話したことは無かったので、今回は色々と新鮮だった。


 雑談の後は、風呂に入ったりして、早々に休むことにした。

 明日も護衛のための待機があるのだ。




 ☆☆☆




 ここに来て三日目の今日も、昨日に引き続き待機で終わり、作業を手伝って、日が沈んだ。


 夕食前の話では、聖堂院の様子から、明日も明後日も動かない可能性が高い。

 早めに動くなら今日までの可能性が高かったが、動かなかったとなると、全ての物資を運び出していると思われ、動くのは三日後か四日後になるだろうとの事だった。

 それでも、明日か明後日に動く可能性を否定できないし、作業もあるので、待機を命じられた。



 夕食を食べた後は、昨日と同じ様に雑談をしたのだが、団長さんの少々様子がおかしい。

 先程のマリーディアさんとこっそり話してから、何かに動揺した様子だった。

 話を聞いてみたが、動揺については答えてもらえなかった。


 風呂に入って、さぁ寝ようとしていると、団長さんが俺の部屋を訪ねて来た。


「あの、お話があるので、少々お時間をよろしいでしょうか」


 雑談の時の事も少し気になったが、団長さんの真剣な表情を見て、部屋に招き入れる。


 俺の部屋は、持ち込まれた物資のお陰で、ベッドが置かれているし、クローゼットに机もあり、最初の寝室ぐらいには物がある。

 俺はベッドに、団長さんは椅子に座る。


「……」


「あの、お話はなんでしょうか?マリーディアさんの事ですか?」


 団長さんが黙ったままだったので、こちらから切り出してみた。


「いえ、違います。あの、話しにくいのですが、私は33歳です」


「それは知っています」


「はい。それで、ですね。私は今までずっと騎士団に居て、任務や訓練、自己鍛練ばかりでした。なので、女らしい事は今まで無かったのです」


「……」


 話の行方は分からないが、真剣に話す団長を見て、黙って話を聞く。

 団長さんは、何度か深呼吸をしたあと、話を続ける。


「身の程知らずとは思いますが、広坪様の子を私に授けてください!」


 ……。


 一瞬何を言っているのか分からなかったが、言葉の意味を理解して慌てた。

 何故?どうして?そんな疑問ばかりが頭に浮かぶ。

 ただ、それでも、答えは決まっている。

 ルティを失う様な事をするつもりは無い。


「申し訳ありませんが――」


「お待ちください!この手紙を読んで下さい」


 団長さんが差し出したのは手紙だった。

 手紙を見ると、差出人はルティだ。

 何故このタイミングでルティの手紙を団長さんが出すのか理解できず、団長さんを見る。


「その手紙を読んでいただけると分かると思います」


 そう言われては仕方がないので、とりあえず手紙を読む。


『この手紙を読んでいるということは、広坪様がカティの申し出を断ったということなのでしょう。

 それは嬉しいのてすが、私は妊娠中で貴方の相手をできませんし、カティは子を望んで――』


 手紙を読んでみると、この事態はルティも承知の事で、むしろ積極的に計画に参加している様子だ。

 しかも、手紙の最後には……。


『――という訳で、カティの事をよろしくお願いします。

 カティなら、広坪様の好みにも合っていると思いますので、容姿が気に入らないという理由は聞きません。

 カティを拒否したら許しません。もう口を利いてあげませんし、子供にも会わせませんので、そのつもりでお願いします。


 彼女を助けてあげて下さい』



 ルティの手紙には、団長さんの苦悩や羨望等が書かれていた。

 子を諦めていたのに、目の前でルティの懐妊を見て、私ももしかしたら、と思ったそうだ。

 20歳のマリーディアさんでさえ行き遅れとか言われるのに、団長さんでは相当だっただろう。

 それに、『33歳での結婚出産は普通にある』という俺の言葉も原因だったみたいだ。


 ルティに、拒絶されたくないという思いもあるが、手紙にある通り、団長さんは、好みの女性だ。

 二股になるが本当に良いのだろうか?

 男が俺しかいないから、俺にという事なのでは?

 そんな事を思い、つい言葉に出てしまった。



「俺みたいなので良いのですか?他の男を――」



 俺は、言葉を最後まで言えなかった。

 団長さんが、抱きついて来たからだ。


「広坪様が良いです!」




 こうして、俺は団長さんに食べられました。


 俺、食べられてばかりな気がする。




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