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秘密拠点建設

 



 聖堂院南方の森


 俺達は、聖堂院から3kmほど離れた森の中で居り、オシホ様達が作業中だ。

 日が沈んでから三時間ほどになる。



 俺とマリーディアさんは、団長さんと共に簡易シェルター内に居た。

 団長さんは、この簡易シェルターに大変驚いていた。

 将軍や高級指揮官のテントより快適な物が、こんなに簡単に作れ、安全性も高いとは……。と、しきりな感心していた。


 俺達が簡易シェルターに入っていたのは、まだ搭乗型ゴーレムに乗ることが出来ない団長さんのために、一緒に簡易シェルターで待機するためだ。

 ついでに、搭乗型ゴーレムと同期型ゴーレムについて説明をした。

 搭乗型ゴーレムは、比較的簡単に乗りこなす事ができるが、いきなりでは混乱して暴れてしまうかもしれないので、同期型ゴーレムを体験してもらわなければならない。

 これは、同行しているマリーディアさんも体験した事なので、緊張せずに体験して欲しいと伝えた。



 説明を終え、雑談をしていると、作業がある程度完了するというので、ツヴァイに呼ばれて外に出た。

 辺りは薄暗いが、なんとか周りを認識できる。

 聖堂院から3kmほどしか離れていないので、森の中とは言え、灯りを可能な限り制限してあるのだ。

 さらに、万全を期すために、聖堂院側には壁発生魔具を設置して視線を遮っている。

 視線を物理的に遮っているなら、もう少し明るくしても良いかも知れないが、今日は空が曇っており、月明かりもどころか星明かりも無いのだ。

 少しの灯りが発見に繋がりかねないし、疑念を持たせる訳にもいかないのだ。

 少々遣りすぎぐらいで問題は無い。


 俺達はツヴァイの案内で、緩やかな坂になっている出入り口から中に入り、二重の遮光用の布を抜けると、広い地下空間があった。


「おお、広いな」


 思わずそんな声が出てしまう。

 内部は、天井までの高さは5mほどはあり、非常に高く感じた。

 広さは、出入り口から奥まで30mほどだったが、出入り口の左右にも空間があり、左右にもそれぞれ30mあり、思っていたよりもかなり広い。

 どうやら、この空間は直径60mほどの円になっているおり、俺達が降りてきた出入り口は、この空間の中心にあるようだ。

 柱もいくつか見えるが、これならゴーレム達を格納しても、かなりの空間が余る。


 これほどの空間を一時間かからずに作るとは、流石はオシホ様だ。

 事前の話では、森の地下10mより下にこの空間を作り、天井や壁、床を硬化して水漏れ対策をとるという話だったが、出入り口の高低差からはもっと深そうだったし、天井や壁、床が一枚岩の様にツルツルだ。


「まぁ、とりあえずはこんなものじゃろう」


 そう言いながら、オシホ様がこちらに向かってくる。


「お疲れさまです。流石ですね。これほどの短時間でできるとは思いませんでした。しかも、床もピカピカです」


「このくらいは軽いものじゃ。床は、壁や天井同様に可能な限り圧縮して固めてある。柱も多目に設置しておるから、そう簡単に崩れぬ様にしてあるのじゃ。その方が運び出す土も減らせるのでな。それに、防水対策にもなって丁度良かったのじゃ」


「凄いですね。もう既に完成に近いのではないですか?」


「お主とて分かっておろう。形は出来たが、まだまだ手を入れねばならぬ」


「そうですね。床は早めになんとかしたいです。真っ平らですから、少しの水で滑ってしまいそうです。僅な角度と小さい溝が欲しいです」


「そうじゃな。優先的に処理しておこう。お主にも手伝ってもらうが、今はその者の訓練が先じゃな。早めの内に経験させておいた方が良いじゃろう。お主は先にそちらの準備を急ぐが良い。あちらに同期型ゴーレムを設置用の台を用意してある。ワシも後で合流する」


 オシホ様が、団長さんの方を向きながら言った。


「了解です」


 俺達は、団長さんに同期型ゴーレムを体験してもらうための準備にとりかかる。

 同期型ゴーレムと魔具を運び入れ、用意されていた台に設置する。

 同期型ゴーレムは小さめの台に座らせ、同期用の魔具は大きめの台に置く。

 異常が無いかチェックしていると、戦闘用ゴーレムの待機場所や物資の置場所の指示を出し終えたオシホ様が合流した。

 この同期型ゴーレムを作動させるには、アリスさんかオシホ様の同席が必要だ。

 同期型ゴーレム起動させるためにも必要だし、暴走した時に強制停止させるためにも必要なのだ。


 俺が初めて同期型ゴーレムと同期した時に気絶した事を問題視しているのだ。

 問題事態は改善されているので、同期型ゴーレム自体は安全なのだが、初めてだと混乱して暴走しかねないので、起動の制限と強制停止の機能を追加してあるのだ。


 オシホ様も来たので、まずは俺が手本を見せる事にする。

 手本と言っても、大丈夫だお言うことをアピールするためのものだ。

 台に寝て、ヘッドギアタイプの魔具を装着して、同期する。


「では、始めます。同期開始」


 久しぶりな同期型ゴーレムの感覚を馴染ませながら、団長さんに同期型ゴーレムで手を振る。


「どうですか?こんな風に動かせますし、喋ることも出来ます」


「凄いですね。人みたいです。指が何本か見えますか?」


 団長さんが俺の肉体から見えない様に指を三本立てて、同期型ゴーレムに見せてくる。


「三本ですね」


 俺は、本数を答えながら、同期型ゴーレムで同じ様に指を立てる。

 親指と人差し指、中指の三本だ。


「本当に見えているのですね」


 その後、同期型ゴーレムを立たせて、軽い準備運動の様な動きを見せてから、同期を解除する。



 同期型ゴーレムがどんなものか見せたので、団長さんに代わる。

 団長さんは、俺と同じ様に台の上で魔具を装着して、同期を始める。


「同期開始」


 少しすると、同期型ゴーレムの首が動く、左右を確認している様だ。


「私が寝ているのが見えます。不思議な感じです」


 ちょっとゆっくりとした喋りではあったが、混乱した様子が無いので、ひと安心だ。


「苦しいとか、どこか痛いとかありますか?」


「いえ、特にありません」


「でしたか、手足を動かせますか?」


「動かしてみます」


 台に座った同期型ゴーレムが、掌を確かめる様に、グーパーを繰り返し、足をバタつかせる様に左右交互に動かす。


「大丈夫みたいです」


「良かったです。それでは、立ってみて下さい」


「わかりました」


 団長さんは、ゆっくりとした動きで同期型ゴーレムを立たせる。


「立てました」


「素晴らしいです。軽く動いてみて下さい」


「分かりました」


 俺の言葉に従い、俺がしたような動きをした後、少しずつ動きを早めていった。


「どうですか?何か違和感を感じますか?」


「いえ、大丈夫です。自分の体の様に動かせます」


「それなら良かった。もう少し動かしてみますか?」


「いえ、出来れば広坪様と同じゴーレムに乗りたいです」


「分かりました。でしたら、早速搭乗型ゴーレムの方にも乗ってもらいましょう」


 同期型ゴーレムのテストが良好だったので、早々に同期テストを終らせ、搭乗型ゴーレムの方に移る。

 同期型ゴーレムとの同期に問題が無かったので、搭乗型も大丈夫だろう。

 感覚の違いを確認する事が主な目的なので、これぐらいで大丈夫だ。



 こんなに簡単に終わるなら、何故わざわざここに同期型ゴーレム一式を持ってきたかと言うと、団長さんがどらぐらいで同期型ゴーレムに慣れるか分からなかったのもあるが、同期型ゴーレムの実戦テストのためにも運んできたのだ。

 今回は、時間が無い可能性があったので、地下空間の作成、戦闘用ゴーレムの移動、とりあえず数日生活するための物資のみに力を入れて準備した。

 ここから研究所までは、ゴーレムのみで片道2時間ほど、ゴーレム馬車ならば3時間かからないぐらいなので、今後も物資の輸送が可能な場所なのだ。

 なので、足りないものは後から持ってこれる。

 先に、訓練用として同期型ゴーレムの一式を運び入れ、準備に時間のかかる実戦用の同期型ゴーレムは、明日運び入れる手はずになっている。

 日の出までに運搬も可能だそうだが、急な出発になったので、最終調整をしてから出したいそうなので、明日の日没後となった。


 ちなみに、俺達の生活は、しばらくは簡易シェルターを利用するが、いずれはきちんとした生活空間を作るそうだ。

 そのための物資も明日以降になる。


 今は、とりあえずの物資の運搬と、この空間を作った時に搬出された、オシホ様によって固められた土のブロックの運搬を優先している。

 この土の塊は、かなり圧縮されているので、岩の様になっている。

 さらに、圧縮してある事で、容量はそれほどでもなくても、重さは変わらないので、非常に密度の濃い重さの塊になっている。

 運搬用の馬車は、かなり丈夫に作ってあると聞いたが、軋む音を聞いて少し不安になるほどだった。

 もし、今夜の内に運びきれなければ、この空間に保管する予定だ。



 団長さんの同期型ゴーレムの同期テストが良好だったので、団長さんの希望もあり同期型ゴーレムに乗ってもらう事になった。

 団長さんが乗る同期型ゴーレムは、ルティの流用機体なので、ゴーレムのスペック自体は俺の物とそう変わらない。

 なので、暴走すると少々危ないので、俺とマリーディアさんもゴーレムに乗り込んで、押さえ込めるように準備する。

 研究所ならアリスさんがどうとでもできるので問題は無いのだが、ここでは実力で押さえるしかない。


 全ての準備を終え、オシホ様も戦闘用ゴーレムを待機させる。


「では、乗り込んで起動させて下さい」


 俺の言葉を受けて団長さんが搭乗型ゴーレムに乗り込み、搭乗口を閉じる。

 少ししてから、起動を確認した。


「俺の声が聞こえますか?返事は出来ますか?」


「聞こえています。少し感覚が違いますね。動いてみても良いですか?」


「こちらは準備できているので、大丈夫です。いつても動いて下さい」


 床に座った状態だったゴーレムが、手を床に着き立ち上がる。

 団長さんは、同期型ゴーレムの時と同じ様にゴーレムを動かして、感覚を確かめている様子だ。


「どうですか?」


「凄いですね。先程のゴーレムとは多少違いますが、違和感無く動かせます。むしろこちらの方が、動いている時の振動を感じられるので、しっくり来ます」


 ルティ達の時も思ったが、肉体的に動きなれていると慣れやすいのだろうか?

 いや、アリスさんとオシホ様の研究の成果だろう。

 最初の頃に比べたら、かなり動きやすくなったと思うし、振動もかなり軽減された、他にも色々改良してくれていると思う。

 戻ったら改めてお礼を言おこう。


「そらなら良かった。もう少し自由に動いてみて下さい」


「分かりました」


 団長さんは、俺達に見守られながら、歩いたり走ったりした後、格闘技の様な動きを見せる。

 殴りや蹴りなどもしており、なかなかカッコいい。


「大分慣れましたか?」


「はい。すぐにでも実戦ができそうです」


「なら、軽く模擬戦をしてみますか?俺で良ければ相手をしますよ?」


「……良いのでしょうか?」


 団長さんは、オシホ様の方に向かって訊いたようだ。


「まぁ、大丈夫じゃろう。何かあればすくに止める。やってみるが良い」


「承知しました。是非お願いします」


 今回は武器を持たずに、戦う。

 団長さんのゴーレム用の武具も用意はしてあるが、まだ搭乗したばかりなので、今回は無しだ。

 それに、今回は搭乗型ゴーレムての戦う感覚を感じてもらうための模擬戦なので、かなり軽めの模擬戦だと告げてある。

 俺と団長さんがゴーレムで向き合い、構える。


「いつでもどうぞ」


 団長さんに先手を譲る。


「行きます!」


 団長さんが走りより、左足を踏み出しながら右拳を突き出してくる。

 俺は、左腕で防御したが、団長さんは流れる様な動きで、右足の蹴りを俺の左脇腹に繰り出してきた。

 先程搭乗型ゴーレムに乗ったばかりなのに、これほど動ける事に驚きなら、慌てて下がり蹴りを避ける。

 やはり、搭乗者の元々の技量が違いすぎるな。


 団長さんは、下がった俺に追撃をかけるべく肉薄してくる。

 俺は、あえて前に出て、団長さんのゴーレムに抱きつく。

 まぁ、クリンチだ。

 団長さんはなんとか引き離そうとして暴れるが、ゴーレムなので問題は無い。

 暴れていた団長さんのゴーレムが、足元か疎かになったので、抱きついた状態で回転する。

 当然団長さんは振り回され、一周目で体勢を崩したので、二周目は回転を緩めながら手を離す。

 すると、団長さんはよろけながら離れたので、すぐに近寄り軽くゴーレムの胸を殴る。

 これでダウンだ。


「それまで!」


 オシホ様が、模擬戦の終わりを告げる。

 俺達は、ゴーレムを座らせてから降りた。


「参りました。流石広坪様です」


「いやいや、技量では団長さんの方が圧倒的でしたので、あの様な手に出たのです。普通に戦えば手も足も出なかったかも知れません」


「いえ、実戦なら確実に私がやられていました。今回は完敗です」


「次は負けそうだ。それで、搭乗型ゴーレムはどうでしたか?」


「非常に素晴らしかったです。このゴーレムがあれば私達など皆殺しも出来たと思うと、改めて広坪様達が良い人たちで良かったと心の底から思います」


「まぁ、良い人というのが、どういった定義なのかは置いておくにしても、このゴーレムだけでも外に出すわけにはいかないので、秘密は遵守していただけると有り難いです」


「承知しました」


「それじゃあ、搭乗型ゴーレムのテストも終わりましたし、寝床の準備をしましょうか」


「そうじゃな。簡易シェルターを設置するだけじゃからすぐじゃが、明日には出撃かも知れぬ。今日はもう休むが良いのじゃ。後の作業はこちらで進めておく」


「了解です」


 団長さんにも簡易シェルターの使い方を説明し、設置させてから、俺も自分用の簡易シェルターを設置して、早々に休むことにした。




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