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聖堂院残留組の護送準備

 



 子爵の使者と思われる騎馬が、短い期間に二度も訪れた。

 二度共短い時間の滞在だったのだが、二度目の訪問後に聖堂院内の動きが活発化した。

 オークに破られた防壁の修理が簡単な応急修理で済まされていたものを、急に補強された事を考えると、何らかの危機が迫っている可能性がある。

 二度目の使者が危機を知らせ、それに備えだしたのなら、辻褄が合う。


 可能な限り広範囲を探索していたが、聖堂院を襲撃したオークの一団を殲滅してから、オークの動きを一切確認できていない。

 もし、聖堂院残留組が何らかの情報を得たなら、その情報を知りたいが、砦の警戒レベルが上がっており、情報を得れていない。

 それに、雪がかなり解けてきたので、騎馬で動ける様になった事で、偵察がそれなりの頻度で出ており、監視も難しくなってきた。

 この警戒具合からも、敵に備えていると考えられる。



 副団長に敵対されたが、基本的に聖堂院残留組の事は嫌いでは無い。

 なので、得られた情報を団長さんにも話し、対策を協議した。

 団長さんには、俺達の戦力や条件などを話してはいないが、聖堂院残留組の行動から、状況の推察と行動予想をしてもらった。

 団長さんの予想では、やはり敵襲の警戒をしていると思われるが、退去準備をしている可能性が高いということだった。


 オークに破られた穴の修復は、退去するので最低限で放置されていたと思われるが、退去までに襲撃される可能性が高まったからだと思われるそうだ。

 それに、聖堂院内の活動の活発化具合が、戦闘準備にしては長すぎるそうで、団長さんが去る前の状態なら、残留組だけでも一時間と経たずに完全な戦闘準備が完了できるそうなので、丸一日以上活発に動いているなら、退去を実行するためだと思われるとの事だった。

 本来なら、雪解け後に来るであろう増援や交代要員が来るのを待ってから、去るのか留まるのか判断するハズなのだが、それを待たずに退去を決断した可能性が高く、子爵領内で何かあったと思うのが自然だそうだ。


 この増援は雪が完全に解けてから半月ほどで来るそうだ。

 それに、今回はかなりの数が来るそうで、最低で500、多ければ1000を超える可能性があるそうだ。

 俺が倒したブラックベアーによって、前団長を含め多くの人員が負傷したので、本来本国に戻る予定だった者の多くが任期を延長して残ったので、交代要員も多くなっている。

 それに、ブラックベアー討伐のために、多くの人員が来ることが予想されるので、かなりの増援になることが予想されるそうだ。


 これらの事は副団長も知っているそうなので、それを待たずに、現状の戦力だけで非戦闘員を護衛しての撤退は下策だそうだ。

 たとえ、俺が拐ったことで非戦闘員の割合が減っていたとしてもだ。

 そうなると、待たないではなく、待てないという可能性も十分にあるとの事だった。



 団長さんの予想では、副団長等は危険を犯してでも退去を慣行するそうだ。

 早ければ二日、遅くとも一週間以内に。

 期間にこれだけの差があるのは、持ち出す物資の量で変わるそうだ。

 必要最低限なら二日以内、全てを持ち出そうとしてら、一週間ほどかかるそうだ。


 急いでるなら二日で出発するハズだ。

 だが、団長さんは一週間ほどかかると予想した。

 あの副団長ならば、俺達が渡した物も持っていこうとするだろうから、遅くなる事が予想できるそうだ。




 団長さんから、聖堂院に残留している副団長等の行動予想を聞き、これからの行動を決定する。


 まず、副団長を含めて、聖堂院に残留している者達を可能な限り護衛する。

 これは、ルティを始め、団長さん達の希望だ。

 俺に多少の不満はあったが、団長さんがここに来てすぐの話し合いで、戦力の減った聖堂院の監視と護衛を継続し、必要なら援護すると決まっていた。

 不満があるとは言っても、罪の無い人達がモンスターに殺されるのは気持ちのいいものでは無いので、十分に納得しているし、ルティと団長さんの希望が無くても同じ様にしていただろう。

 なので、この冬の間偵察を継続し、聖堂院を護衛していたのだ。

 ただ、活動範囲に限界があるので、退去時はできるだけ護衛する、ということに決まった。


 問題は時間だ。

 偵察は続けており、聖堂院周辺にオークを始め、中型以上のモンスターを確認できていない。

 安全だとは思うが、退去を急ぐ何らかの理由がある以上、万全を期したい。

 手落ちがあり、被害が出ようものなら、ルティや団長さん達との信頼にヒビが入るかも知れないのだ。

 全力で護衛するが、研究所からでは急いでも、聖堂院まで二時間はかかってしまい、対応が遅れてしまうかも知れない。

 聖堂院近くに陣地を作り、そこで戦力を待機させておけば、即座に対応てきる。

 だが、聖堂院側の偵察が出ており、以前の様な陣地では、こっそりはできないだろう。

 そうなると、要らぬ警戒をさせ、準備時間が長くなってしまうかも知れないし、副団長等を相手にしては、話し合いも難しいだろうから、問題を発生させるだけだ。



 対策を色々と検討したのたが、どれも悪くは無いのだが、これだ!というものが無い。

 なので、頭を切り換えて、別の事について話し合った。

 団長さんが、副団長等が退去した後に、無人になる聖堂院の事を気にしていたので、その事について話し合う。



 聖堂院は、女性を保護する駆け込み寺の様な役割を果たしている。

 団長さんは、それが無くなる事での影響も心配していた。

 聖堂院を実行支配すれば、問題は解決するのだが、聖堂院は隣の地域になり、子爵領内にある割譲地である。

 聖堂教国の領地でもあるが、王国の子爵領内の割譲地である以上、聖堂教国だけではなく王国とも敵対する事になってしまうだろう。


 デメリットは大きいが、メリットもある。

 団長さんの懸念は解消される。

 俺達で駆け込み寺を継続が可能になる。

 なにより、聖堂院を拠点として得る事ができたら、外部との交渉拠点にできるのが非常に大きい。

 まだ、外部の人達には研究所の事を知られていないので、俺達と交渉したい勢力があっても、交渉のしようが無い。

 それに、もしかしたら買い物が出来るようになるも知れないのだ。

 是非とも外に晒してもいい拠点が欲しい。




 聖堂院を押さえるか押さえないで、メリットとデメリットを話し合ったが、意見が纏まらない。

 と、言っても、俺一人が躊躇してしまっているだけなのだが……。


 俺は、人との戦闘について懸念を持つ。

 モンスターより遥かに恐ろしい敵は人だ。

 というのは、常識の部類だと思っている。

 なので、最大限の警戒をしたい。


 俺も聖堂院を実行支配する事のメリットは十分に理解している。

 だが、それでも……。

 と思ってしまうのだ。

 それに、団長さんを始め、アリスさんにオシホ様、ルティも実行支配に積極的だったので、反対しておきたかった。

 俺が反対した事で、安全対策をいくつも提案され、安全性はより高まったと思う。


 最終的には、俺も聖堂院の実行支配に賛成した。

 このままでは得れないだろうモノを得るために、俺も決断したのだ。

 聖堂院を訪れる者の中に、俺の後継者が現れる可能性を信じて。



 方針は、聖堂院を事項支配を視野に入れて、聖堂院残留組の退去の護衛をする事に決まった。


 戦力の派遣にかかる時間は、聖堂院近くの森の中に秘密拠点を作り、そこに戦力を待機させる事で、即応出来るようにした。

 聖堂院を実行支配した場合を考え、今後も使える様にそれなりのモノを作ることにしたのだが、聖堂院残留組は、早ければ明日か明後日には聖堂院を出発しかねない。

 なので、今夜の内に仮拠点を作ることになった。


 秘密拠点の場所は、発見されにくい様に森の中に作ることにしたが、森の中でも砦を作れば目立ってしまうので、地下に拠点を作る。

 仮設の拠点を作るにしても、地下に作るとなると、一晩で準備できるものではない。

 何しろ、派遣戦力は、戦闘用ゴーレム150体と遠征用ゴーレムを予定しており、それなりのスペースを確保しなければならないからだ。

 だが、俺達には土の大精霊様がついていてくださるのだ。

 仮拠点程度なら、簡単に作れる事を本人に確認した。


 ただ、副団長等がいつ出発するかは、正確には分からない。

 なので、秘密拠点の改良をしながら、最大で一週間ほどを目処に、秘密拠点に常駐する事にした。

 地下空間を作るのは、オシホ様がなんとかしてくださるが、細かい所は手を入れなければならないので、待機時間に作業する事にしたのだ。

 俺だけなら戻れないことも無かったが、秘密拠点の設計図など用意する時間など無いので、現地で話し合いながら作ることにしたのだ。

 夜中も作業する予定なので、安眠に問題が出るのでは、という意見もあったが、簡易シェルターなら外部の音も遮断できるので、問題にはならない。


 戦力も今夜の内に移動させたいので、準備を急ピッチで進める。

 話し合いに時間がかかってしまったので、日没まで時間が無い。

 物資運搬もしなければならないので、アリスさんと精霊トリオには、既に準備に動いてもらっている。



 会議室に残るは、俺とオシホ様、ルティに団長さんだけになる。


 後は派遣メンバーを選定するだけだ。

 俺は、何か決断しなければならないかも知れないし、秘密拠点作りの指揮もあるので、同行は決まったのだが、ルティがマリーディアさんの同行を要望してきた。

 ルティは妊娠しているので、当然待機組だし、三姉妹もルティに心配をかけすぎるので待機にするつもりだったので、マリーディアさんにも待機してもらおうと思っていただけに驚いた。

 理由を訊ねると、俺の事を心配してくれての事だと言ってくれた。


 正直、マリーディアさんは欲しい。

 弓での精密な長距離射撃の腕は、味方なら非常に有り難い。


 少し悩んだが、マリーディアさんの同行を認めた。

 すると、今度は団長さんが同行を希望してきた。

 護衛の対象が団長さんの元部下の方々なので、現地で副団長等の行動を確認できたなら、より正確に行動予測ができる。という主張だった。

 これには、俺も同意見だったので、快諾した。

 ただ、俺達はゴーレムでの移動するので、騎馬以上の速度で移動になり、馬が無い研究所では、団長さんとの移動速度の違いが問題になったのだ。

 その問題は、ルティが解決してくれた。

 ルティの搭乗型ゴーレムを団長さんに貸し出せば良いと言うのだ。

 確かに、妊娠しているルティは乗ることは無いだろうし、体格的にもなんとかなる。

 だが、搭乗型ゴーレムに乗るには、そこそこの訓練が必要なのだが、それは現地でやればいいと言われて、問題は無くなった。

 団長さんに、搭乗型ゴーレムの事を話すのを、少し躊躇したが、ルティが団長さんは信頼できると断言したので、その言葉を信じる事にした。

 女性の事は女性に聞くのが一番だし、裏切られてもなんとかのると思う。


 こうして、団長さんの同行も決まったのだが、そうなってくると、精霊トリオの一人を研究所に残しておきたい。

 アリスさんが研究所に残るとはいえ、最近不穏分子を処理したばかりの者達を、保護女性達全員のリーダーである団長さんが、研究所に居ないとなると、ルティ達に専属の護衛を付けたい。


 副団長等の退去の護衛と言っても、敵が居るかも分からないのだ。

 戦力を出すのは、状況的に敵が居そう、というだけで、万が一に備えた様なものだ。

 たとえ、敵が居たとしても、今の戦闘用ゴーレムが精霊の方々の指揮下で戦えば、前回のオーク程度なら十分に撃退できるだろう。

 なので、精霊トリオの一人を残す。

 誰を残すかだが、アインに残ってもらうことがすんなり決まった。

 今回は、護送に近い。

 敵の探索に秀でたドライと防御に秀でたツヴァイを連れていくのが妥当だ。

 ルティの護衛は、基本的にゴーレムでの防御になるので、精霊の方々なら誰でも十全に役目を果たせるので、大丈夫だ。




 こうして、日没前には出発の準備を整えた。

 ルティの妊娠が分かってからそれほど時間が経っていないのに、遠征に出る事になり非常に申し訳なかったが、ルティは理解を示してくれるだけではなく、激励もしてくれた。

 ルティみたいな、素晴らしい女性が妻になってくれた事を噛み締めながら、研究所を出発した。



 

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