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二年目の冬の間

この話は、第一章のエピローグだったものを、少し手直ししたものです。


第一章のエピローグを別の話に差し替えたかったので、この様な処置をしました。

話自体は、変わっていません。


ご迷惑をおかけてして、申し訳ありません。



 



 俺は不当な扱いを受け、逃げてきた女性を保護している聖堂院を襲い、女性を300人拐ってきた。


 まさに外道と言うべき所業である。




 亜人種を助ける事が目的であったが、一般的には人拐いとか盗賊と変わらない様に見えるだろう。

 副団長等に、亜人種の保護を訴えたら、人質にされたりになってその場で処分、なんて事態になりかねなかったのだ。

 それに、無理矢理拐った、という事実が必要だった。拐った彼女達のためにも。


 それから、聖堂院を管理していた聖騎士団団長が困っていたので、拐う人数を多目にしたら、部下の人達も丸ごと拐えた。


 目的がバレないように、副団長に差し出す人間を選ばせたが、こちらの思惑通り、亜人全員と団長さんの部下を中心に選ばれた者達が差し出された。

 こちらが人数しか指定しなかったので、副団長の側としては、要らない者、邪魔な者を中心に選んだのだろう。

 思惑通り過ぎて、顔がニヤけそうになるのを堪えるのが大変だった。




 目的を達した俺達は、砦の鎮火のために土壁の後始末をしてから、拐った全員を陣地に連れて行き、そこから研究所へ拐った者達を移送した。


 拐った全員が陣地に驚いていたが、先に移動させていた団長さんを死んだと思って居た部下の人たちが見つけ、無事を喜んで居た。


 移送には、ソリで二度に分ける必要があり、移送が完了したのが日没前だった。

 移送完了後に戻ってきたソリに、陣地を解体をした荷物や物資を載せ、日が落ち暗い中を、最後に俺達が撤収した。




 こうして、救出は完了したが、拐ってきた皆は、未だに事情を知らなかったので、訓練所に集め、団長さんと共に全員へ事情を説明した。


 拐ってきた多くの人達が安堵し、感謝までしてくれた。


 そして、ルティとの結婚も告げると、祝福してくれた。


 彼女達は、望むなら滞在も、去ることも出来る事を伝えたが、今は冬で雪もあるので、春の雪解けまでに考えておいて欲しいと話し、その日は解散した。



 俺も色々あって疲れて居たので、眠ろうとしたが、見ることは出来ないと思っていたエルフ、ドワーフ、獣人を見ることが出来た喜びで興奮し、なかなか寝つけなかった。


 エルフは美形、ドワーフは小さく髭の生えないタイプの女性、獣人は人間に獣耳や尻尾が生えたタイプだったので、ちょっとテンションが天元突破気味だったが、あの数の女性を前にして、男一人で興奮を顕にする勇気は、俺には無かった。

 あと、獣人にモフモフを強制しなかった自分を褒めたいところだ。


 それでも、15,000のオークに、301名の護送までしたので、興奮が少し収まると、いつの間にか眠ることができた。




 そして翌日、俺は朝食を食堂で食べようとしたのだが、ちょっとした問題が発生している。


 俺の目の前には、エルフ、ドワーフ、獣人の代表だと言う者が3人と、それぞれが2人ずつ連れてきており、合計で9人が跪いている。

 問題なのは、ここが俺とルティ達専用の食堂であり、9人が侵入している事、侵入できてしまっている事、そして跪いている事だ。


 彼女達の言い分としては、それぞらが連れてきている2人は、俺への貢ぎ物だそうだ。

 ルティも、家族を守るために俺と結婚したと思っているらしい。



 ……。



 俺は側に立っているアリストラさんを見る。


「事情を説明とかしなかったんですか?というか、何故入れたんですか?別の場所でも構わなかったのでは?」


「言葉だけは、彼女達が納得しかねると思いまして、入れました。一度正式に広坪様から説明していただいた方が、彼女達も安心できると思いますし、安心させるなら早い方がよろしいかと。ここに来て数時間しか経っていないのに、人選を済ませるぐらいには話し合いをした様子です。それも徹夜で、です」


 眠れぬほどに不安だった、かもしれないのか……。

 彼女達の経緯を考えれば、少し配慮が足りなかったか。


「そうですね。分かりました」


 いつまでも床に跪かせておくのもなんなので、椅子を勧めたが、断固として辞退してきたので、命令した。

 先程の会話を聞いて、少し怯えたのかも知れない。

 失敗だった。

 仕方がないので、命令するとすぐに従ってくれたが、命令に従う様子を見て、かなり恐れられているのが分かり、少しへこんだ。



 椅子は足りたが、代表者3人だけが椅子に座り、差し出される予定の6人は、それぞれの代表者の後ろに、護衛の様に立った。


「それでは話をします。まず、俺は少し怒っています」


 俺の言葉に、9人が身を固くする。


「俺達が貴女方をここに連れてきたのは、助けるためです。それなのに、こんなことをされるとは、正直馬鹿にされた気分です。……ですが、貴女方が聖堂院で保護をされていた事を考えれば、気持ちも分かります」


 俺はここで一旦言葉を切り、強い口調で続ける。


「ただ、ルティとは、恋愛をして、結婚をしたのです。それを、脅して、無理矢理結婚させた様な言い方をされると、非情に不愉快です。二度と、言わないでいただきたい」


「「「はい!」」」


 代表者3人が顔を青くしながら、勢い良く返事をした。

 やはり、相当に恐れられているな。


 俺は深呼吸をして、心を落ち着ける。

 9人は、俺の深呼吸にも怯えを見せた。

 溜め息が出そうになるが、なんとか堪え、喋る。


「俺としては、貴女方に干渉する気はありません。貴女方を助けたのも、ルティ達の意思が大きいてすし、団長さんの願いでもありました。恩を返したいというなら、ルティ達と団長さんにお願いします。それから、生活に困った事があったら、このアリストラさんに言っていただければ、なんとかなると思うので、そうしてください。アリストラもいいですか?」


「承知しました。何かご用がありましたら、全て私が承ります。皆さんよろしくお願いします」


「「「よろしくお願いいたします」」」


 まぁ、とりあえずは、これで良いだろう。


「あ、そうだ。アリスさん、俺の部屋の移動をお願いします。今の場所だと、この人達と接触の可能性があるので、安全も考え、離れた位置に移動させてください」


「部屋替えですか?皆を移動させる事もできますが?」


「あの大移動をもう一度となると、大変です。それに、彼女達に不干渉を約束しましたし、ここの安全も疑わしいので、離れた別の場所に移りたいのです。適当な部屋が無いなら、新しく作って下さい。悪いけど、これは命令します」



 俺の部屋は、彼女達の暮らす部屋とそれなりに近い。

 物理的に距離が離れれば、干渉する可能性は大きく下がる。

 そうなれば、彼女達も安心だろう。

 それに、今の部屋は、アリスさんが決めた臨時の物をずっと使っている。

 多少の不便も出てきてきたし、いい機会なので、使いやすい部屋に移っても良いだろう。



「命令、それほどですか、承知しました。お昼までには用意します。ルティリアさん達は、どうしますか?」


「このあと、俺から話します。ルティ達が望めば、一緒に移動します」


「承知しました」


 俺は代表者達に向き直る。


「という訳で、俺は離れた場所に移ります。これで、不意の接触も無くなり、皆さんは安心して暮らせると思います。ただ、接触を完全に遮断するのも問題かもしれないので、貴女方が望めば、種族代表者と護衛を2名までなら直接会う事も許可します。これは、俺に直接ものを言いたい用なので、会いに来いとか、そういった意味はありません。深読みせず、俺に直接文句を言える権利とだけ理解しておいて下さい。分かりましたか?」


「はい。分かりました。お気遣いありがとうございます」


「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」


「助けていただき、ありがとうございました」


 代表者3人はそれぞれ頭を下げてきた。


「構いません。あと、直接文句を言える権利は、団長さん達にもあるので、その様に伝えておいて下さい」


「分かりました。伝えておきます」


 エルフの代表者が返事をし、9人全員が頭を下げてから食堂を出ていった。



 9人が出ていってから少しして、ルティ達が来た。

 アリスさんに止められていたみたいだ。

 全て掌の上ですか……。


 まぁ、彼女達の不安が無くなったのは良いことだったので、これはこれで良しとしよう。




 それからは、ルティ達と部屋を移り、何事もなく冬を過ごした……と言いたいが、あと一つだけ問題があった。


 団長さんこと、カティリア・トラミリウスさんの事だ。


 救出や扱いの事など、カティリアさんに感謝され、今後について話し合った時に、結婚や年齢の話になった。

 俺はカティリアさんの事を、40歳前後の女性だと思っていたが、実際は33歳であり、ふとしたきっかけで40歳前後だと思っていた事がバレた。

 その場には、ルティも居り、二人から精神的にボコボコにされた。

 俺の、女性の年齢について見る目は無いことは分かっていたが、これほどとは思わなかった。

 この際に、他の人の年齢も軽く確かめたら、2~5歳程は認識のズレがあった。

 砦に行った時に、使者として出てきたミリシアさん達がそれで、30、25、20と思っていたのが、25、23、18だったのだ。



 俺は女性の年齢について、言及しないことを、心に固く誓った。



 ただ、言い訳を一つさせてもらうと、カティリアさんは、ここに来てから、かなり若返ったというか、若々しく見える様になった。

 団長としての責任や副団長の事、聖堂院の管理、亜人達の心配など、色々と心労が溜まっていたのが、顔に出てたみたいだ。

 そのせいで、少し歳をとって見えたのだ。


 無論、こんな言い訳が彼女達に通じる訳は無いだろうから、俺は黙ってボコボコにされた。


 それからは、ルティとカティリアさんが非情に仲良くなり、夕食時に、色々と話を聞かされる様になった。

 ただ、それでも、話題が不自然に多い気がするが、少し歳上とはいえ、同世代で同姓の仲良しが出来たのは、良いことだ。

 ルティの笑顔が増えたなら、何も言うことは無い。




 あとは、細かいことが多少あったが、何事もなく過ごすことができた。

 オークの襲来も、あれ以降は無く、平和な冬となった。






 もうすぐ冬が終わる。

 こちらに来てから一年は一人だったのに、この二ヶ月で結婚して、300人以上の女性を囲う事になるとは思っていなかった。


 今回の件で、俺達の事が外部に知られてしまった。

 女性達を保護するためとはいえ、派手に動き過ぎた。

 それに、彼女達の解放もあるのだ、そうなると、機密の保持などできようはずもない。


 けど、後悔は無い。

 エルフ、ドワーフ、獣人達を見る事ができたし、ルティ達が喜んでくれたのだから。




 研究所は魔境、モンスターが支配する地域の中にある。

 隣接する地域が人の支配下にあり、人との戦闘を本格的に考えなければならい。

 多少気が重くなるが、守りたい人ができたのだ。

 どんな手段を使っても、守ってみせるつもりだ。

 そのために、この冬の間に色々準備したのだから。


 それより問題なのは、保護した女性達の解放だ。

 解放した彼女達から情報が漏れるのは仕方がないので、それはそれで良いのだが、解放の方法だ。

 彼女達のを魔境に放り出すのも無責任なので、ある程度は生き残れるだろう算段をつけなければならない。

 つまり、人の居る場所に送り出したいのだが、現状で人の住む場所は、彼女達が逃げ出した地域と、本国が亜人差別してる聖堂院だけだ。


 逃げ出してきた場所に放り出すのも、聖堂院に送り返すのも駄目となると、他に人が住む地域を探さなければならない。

 というわけで、北側の探索を強化することになったのだが、ドラゴンさんがまだ健在で、もう八方塞がりだったりします。


 正直、どうしようも無いので、皆さんとお話し合いをすることになった。




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