聖堂院制圧
「独断専行してしまい、真に申し訳ありませんでした!以後この様な事が無いように善処いたしますので、何卒お許しください!」
俺は土下座をしていた。
単独で動き、自身の身を危険に晒した事、独断で動いた事、秘匿予定だった大規模魔法を使用した事等を、集団で説教されている。
否、お説教していただいている。
俺は、魔力不足で、個人シェルターを発動させて待機していたが、魔力の供給があり、活動を再開した。
ドライが来ており、俺の魔法で半壊した、指揮個体を含むオーク達を殲滅していた。
俺は、魔具の魔力も使い、全力で『アースニードル』を発動させていた。
オシホ様や精霊トリオならば、この『アースニードル』でトゲトゲになった場所を均して、オークを殲滅できると思っていたが、こうもあっさり均されると、自信というものが無くなる。
何にしても、オークを1匹残らず殲滅できた。
後は、聖堂院を、と思っていたが、陣地に強制連行され、お説教である。
「前にも似たような事を聞いた気がするが、まぁ、これくらいでよかろう。安全はシェルターで確保できていたからの。もし、シェルターを使っていなければ、この程度で済まさなかったぞ。皆もよいな」
オシホ様が、皆にも問う。
「はい。もう、これくらいで十分かと思います」
ルティが代表して答えた。
「はっ!ありがとうございます!」
俺は誠心誠意頭を下げる。
お説教が終わり、俺は立つことを許され、これからの事にについては話し合う。
と言っても、オークを殲滅した以上、聖堂院についてだ。
敵対の可能性や、救出の事もあるが、目の前で戦闘をしたのだし、説明も必要だろう。
もしかしたら、魔石の分け前を要求、なんて話もあるかも知れない。
「まずは、様子見を兼ねた事情説明が必要じゃろう。今回は、ワシと広坪で行く。アインとドライは戦闘用ゴーレムを連れて森で待機。ツヴァイとルティリア殿達は……。陣地で待機とはいかぬか」
「はい。是非聖堂院が見える位置で待機したいです」
ルティ達全員が、強く希望している様だ。
安全面を考えれば、陣地でで待機していて欲しいが、見えない位置で待つというのも不安だろうし、仕方がないな。
「分かったのじゃ。アイン達と共に、森で待機するのを許可する。あまり目立つでないぞ。それから、撤退命令には従ってもらうからの。良いな?」
「はい。ありがとうございます」
俺達は、全員で森に移動し、皆には全ての戦闘用ゴーレムと共に、聖堂院からは見えないように森の中に隠れて待機してもらった。
俺とオシホ様の武具と、オシホ様指揮下のゴーレムは、一時的にアインとドライに預けてある。
俺とオシホ様は、森の中から出て砦の門へ向かった。
盾や剣は装備しておらず、非武装をアピールしながら砦へ接近する。
まぁ、ゴーレムってだけで兵器と変わらないが。
防壁の上には、当然人影が見える。
門まで50mほどの所まで来た。
あれは……団長さんだ。
防壁の上には、団長さんの姿が見えた。
これなら、下手な事にはならないかも、なんて思っていたのだが、もう少し近付いて声を掛けようと接近すると、矢の雨が降ってきた。
思わず身構えるが、ゴーレムなので全くダメージは無く、本当に雨ぐらいにしか感じない。
そして、指示をしているのが団長さんに見える。
この事態は想定していたが、実際に起きるとなんたも言えない。
だが、魔法を撃ってこない。
これは、団長さんが本当に困った事態になっているのかも知れない。
いや、単なる怯えの可能性や、本当にアホになったか……。
俺は、オシホ様とその場に留まり、矢の雨に打たれながら意見を交わす。
「これは、本当に困ったていると思った方が良いのでしょうか?」
「まぁ、そうじゃろうな。15,000のオークを目の前で潰したのじゃ。我らがその気ならは、簡単に制圧できるのを理解したはずじゃ。それでも、話も聞かずに無意味な攻撃を仕掛けてくるなど、馬鹿がすることではあるが、魔法も撃ってこぬし、敵対すると意思表示するならは、悪くは無いな」
「そうですね。下手な従属よりは、敵対してもらって、完全制圧が楽ではありますが、これほど信頼される覚えがありません。それに、単なる怯えの可能性もあるのでは?」
「それは、無いじゃろう。怯えたなら、余計に無謀な攻撃はせぬ。信頼はルティリアに期待しているのかも知れぬの。じゃが、まぁ、今回はお主を信頼しての行動であると思うのじゃ」
「何故ですか?」
「直感じゃな!」
先程、直感で独断専行した身としては、否定出来ない言葉だ。
「そ、そうですか。では、規定通り制圧しますか?」
「うむ。合図を送るのじゃ」
俺は、森に待機している皆に合図を送る。
両手を頭の上で左右に振り、XとVを繰り返す。
森からは、俺の合図でアインとドライが戦闘用ゴーレムを率いて出てきた。
合図を止め、聖堂院を見ると、先程まで矢を射かけていた人達は居なくなったいた。
これは、奥の手パターンもあり得るか?
アイン、ドライがそれぞれソリを一台ずつ牽いて合流してきた。
一部のゴーレムは、オシホ様に指揮権が戻る。
俺達は、牽かれてきたソリに積んであった武具を受け取る。
対聖堂院を想定した作戦はある。
攻略のかのうせいがある以上、想定し無いわけにはいかない。
想定はしたが、奥の手が何かまでは予想できていない。
奥の手が分からない以上、慎重に行動するしかない。
その点は、オークよりも厄介だ。
侵入口は二つに決めてある。
以前オークに破られ、応急修理しかされてない場所と、門だ。
オークに破られた場所は、アインとドライに任せ、俺とオシホ様は門から侵入する。
以前は、俺がドライを持ち上げて、防壁を越えさせて内側から門を開かせた。
だが、今回は準備万端に整えてある。
土壁を発生させる魔具を応用した階段発生魔具を用意した。
以前から、陣地形成の時に使っていたが、今回は攻城兵器として使っている。
防壁の上まで階段で繋げれば、侵入は容易だ。
正直、この魔具は色々と不味い気がするので、できるだけ秘匿しようと思う。
オシホ様が、戦闘用ゴーレムに階段を上らせ、防壁の上を確認させる。
異常は無さそうなので、オシホ様が防壁を越えて、内側に降り立ってから、門を解放した。
門から侵入し、オシホ様が砦内に戦闘用ゴーレムを偵察に出す。
俺は、魔具を回収し、オシホ様と共に門で待機する。
奥の手を警戒して、偵察させたが、何も発見できなかったみたいだ。
第二防壁も同じ様に突破し、侵入した。そして、同じ様に偵察を出す。
やはり、何も発見てきなかった。
人も居ない以上、全員が聖堂院内に退避したのは間違いないだろう。
第二防壁内の偵察が終わる頃に、アインとドライも合流してきたので、それぞれが門に向かい、退路を確保してもらう。
一応の安全は確認したので、第二防壁内にも侵入し、聖堂院の鉄門前に立つ。
「門を叩いてみましょうか?」
「そうじゃな。ワシがゴーレムで叩かせよう」
「か、加減はしてくださいね」
「分かっておる」
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
戦闘用ゴーレムが鉄門を、大きく三度叩いた。
そして、燃えた。
何が燃えたかと言うと、防壁や建物、柵などの木製のもの全てが、燃え出したのだ。
何かの仕掛けがしてあったらしく、聖堂院がある岩壁側からの一斉に燃え広がった。
オシホ様が素早く土壁を発生させたので、オシホ様と俺は火に巻き込まれずに済んだ。
戦闘用ゴーレムは、火には強いので、特に問題は無い。
「燃えたな」
「そうですね。燃えましたね。以前も見ましたが、これが奥の手でしょうか?」
「違うじゃろう。燃やすだけでは、何にもなるまい」
「ですが、魔物や魔獣が燃えれば死にますよ?」
「それはそうじゃが、火に強いものも居る以上、奥の手や切り札とは言えぬのではないか?」
「建物も燃やしていますし、それなりの被害出る以上、それなりの理由が無ければ燃やさないのでは?」
「かも知れるの。じゃが、本拠は聖堂院内じゃ。外が全て燃え尽きても、生活に支障は出ないじゃろう」
「確かに……。生活は聖堂院内ですから、特に問題はなそうですね。モンスターの対処に苦労はしそうですが」
「それこそ何か手があるのじゃろう。それで、どうする?火は消すか?」
「俺達には効果はありませんし、聖堂院側の設備を無意味に消耗させるのも気が引けるので、消しましょう」
「消耗しようとしてるのは聖堂院側の奴等じゃがな。まぁ、良かろう。消すぞ」
「はい。お願いします」
オシホ様は、周囲の燃えている物を土壁の中に飲み込んでいく。
飲み込まれた物は、当然燃え続ける事は出来ない。
アインとドライもオシホ様の行動を確認してから、同じ様に土壁で燃えている物を飲み込んでいき、瞬く間に燃えている物全てを土壁の中に飲み込んだ。
周囲に燃えるものは無い。
まだ空気が多少熱い。いずれ冷えるだろう。
「それで、どうする?こちらに被害は無いが、あちらは敵対する気じゃぞ」
「仕方がありません。突入して制圧しましょう。プランBでお願いします」
「それは良いが、何故一つしか無い突入案が、第二案であるプランBなのじゃ?」
「そういうものだとしか言えません」
「そうか……。まぁ、良い。突入準備をするのじゃ」
「はい」
アインとドライも合流し、突入準備する。
プランは簡単だ。
鉄門を戦闘用ゴーレムでノックし、門に注目したであろうタイミングで、門から左右にそれぞれ10mほど離れた場所に穴を二つ空けて突入する。
これなら、修復も容易だし、意表も突ける。
そして、右が俺とオシホ様、左がアインとドライになる。
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
反応は何も無い。
間を空けてもう一度三回叩いたら、突入だ。
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
三回目を叩いた瞬間に、オシホ様が魔法を発動させて、俺のゴーレムでも通れるほどの穴を空。
壁には、当然魔法で防御されていたが、大精霊と精霊であるオシホ様達の方が上手なので、突破できる。
そして、戦闘用ゴーレム達を先頭にオシホ様が突入する。
俺も行きたいが、奥の手がまだある可能性を排除しきれない以上、俺の突入は慎重さが要求されてしまう。
「抵抗は無駄じゃ!投降せよ!」
オシホ様の声が聞こえ、戦闘音が少ししたものの、すぐに静かになった。
「広坪よ、大丈夫じゃ。入っても良いぞ」
オシホ様の許可が出たので、中に入る。
そこには、武器を捨てて、一ヶ所に集められた100人以上の防具を着けた女性達が居り、それを戦闘用ゴーレムが囲んでいた。
そして、団長さんと副団長など、指揮官級と思われる人達が別で10人が囲われていた。
さらに、通路が三つあり、その通路も戦闘用ゴーレムが封鎖していた。
団長さんと3人程が覚悟を決めた目をしており、残りは怯えた目だ。
100以上が囲われている場所の人達も、同じ程度の割合で、覚悟をしている目に見える。
「それで、どうするのじゃ?殺すか?」
オシホ様が、この場に居る全員に聞こえる様に話す。
「そうですね……。まだ殺さないで下さい。美人も居ますし、使い道はあると思いますから」
「貴様!やはり女達が目当てだったのだな!だからこんなゴミ共を信用するなと言ったのだ!」
「心外ですね。我々は敵対する意思は無かったのに、そちらが一方的に攻撃してきたので、対応したまでですよ。そして、こちらの被害の損害を補填しようとしてるだけですよ」
副団長が叫んできたので、軽い調子で言い返す。
元気だな、この副団長は……。捕まっているのだぞ?
「それで、団長さん、なんでこんな馬鹿な真似をしたのですか?」
「……」
団長さんは答えない。
俺は、団長さんを少し強めにゴーレム手で掴む。
「ぐぅ」
団長さんが呻く。
「仕方がないですね。オシホ様、団長さんは連れていきます。少し待ってて下さい」
「了解した」
俺は、団長さんを掴んだまま外に向かう。
「どこに連れていく!」「団長!」
他に捕まっている者達が声を上げるが、それを無視して、俺は団長さんを掴んだまま、突入口から外に出る。
俺は、団長さんを第二防壁まで連れて行き、軽く話してから盾で第二防壁を殴ってから聖堂院内に戻った。
盾は防壁に立て掛けて置いた。
「今戻りました。交渉は副団長とします。それで、ここには何人ぐらいの人が居ますか?」
「待て!団長はどうした!」
副団長が叫ぶ。
「え?あぁ、団長さんなら俺達を攻撃して疲れていたみたいなので、休んでもらいました。それで、何人ぐらいここに居るのですか?お疲れでしたら、貴女には休んでもらって他の人と交渉しますよ?」
俺の言葉を聞いて誤解しているだろう。
団長さんは第二防壁で、本当に休んでもらっているが、副団長達には、別の意味で聞こえたハズだ。
「ぐっ……」
「何人居るんですか?」
「607……団長を除いて606名だ。聖騎士団関係者が199名、民間人が407名になる」
「でしたら、半分の303名と言いたいですが、おまけして300名を引き渡して下さい。それで、我々は引きましょう」
「馬鹿な!そんな人数引き渡せるものか!」
俺の要求に驚き、指揮官級の中の一人が叫ぶ。
「貴女方に拒否権は無い。ミリシアさんは気に入っているので、こちらに引き渡してもらいますが、それ以外の人選はそちらに任せます」
俺の言葉に黙り、ミリシアさんが注目される。
「……分かりました。こちらで人選します」
「我々は外で待機する。武器も自由にして良い。ただし、引き渡しは日没前までに済ませろ。遅れたり、再び武器を向けたら、容赦しない」
それだけ言って、俺達は外に出る。
それからしばらくして、要求した300名が引き渡され、事が上手く運んだ事を確認した。




