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第三次オーク迎撃戦 後

 



 広坪とツヴァイが攻撃を始めたか……。

 アインも動いた様じゃし――


「いい加減ワシも動くとするか」



 オシホ様は、全周防御しながらオークを殲滅し、指揮個体の方へ移動していたが、指揮個体の方向はオークの密度が高く、未だ指揮個体へ至れず、オークを殲滅するだけになっていた。

 そこに、西の森に居た別動隊が動いた。これにはアインが迎撃に向かった。


 あまり状況が良くない。

 戦況としては全く悪くないが、勝負の具合が悪い。

 オークはそれなりに倒しているが、それだけ……。

 ハイオークもオークジェネラルも倒せていない。

 このままでは最下位も有り得る。



(大精霊である、という事より最初の勝負で最下位になれば、権利が遠退くかもしれない事が問題なのじゃ)



 オシホ様は陣形を変える。

 二重の円からただの三角形に陣形を変更し、今までとは逆の方向である北東に三角形の先端を向けて移動を開始した。

 北東方向は、砦側ではあるが、最もオークの密度が薄い方向になる。

 移動を開始すれば、今までとは違い、スイスイ進む。

 勿論オークを潰しながら。

 瞬く間にオークの包囲を破り、陣形の先端が包囲の外へ出る。

 そして、先端が包囲の外に出た瞬間、陣形の先端は左右に割れ、それぞれの方向に広がりながらオークを逆包囲しようとする。

 そして、三角形の陣形が一本の線になった時、全面攻勢が始まった。



 正確には全面攻勢とは言えないかもしれないが、100体のゴーレムが横に並び、一斉に攻撃を開始し、オークを蹂躙する姿は圧倒的だった。

 砦の防壁の上から眺めていた者達にとっても……。




 ドライも状況を理解していた。


 後ろからの圧力が減った。

 アインが別動隊の迎撃に向かった。

 オシホ様も動いた。


(勝負には負けない)


 ドライも決断した。

 ドライの標的は指揮個体。

 陣形を凸陣形に再編し、指揮個体が居る方向へ押し進む。

 後ろを最低限の防御だけにして、とにかく前方への攻撃を強化し、突破する。


 横や後ろに比べれば、前方に居るオーク達の密度は高い。

 だが、数がかなり減った事で、その密度も厚さも確実に減っており、今なら届く。

 そう判断したから指揮個体への突撃を選択した。


 結果としてその判断は正しく、ドライの部隊は再び指揮個体へ接触てきた。

 20匹に減ったハイオーク阻まれてはいるが、これさえ突破できれば、指揮個体は目の前だ。

 より一層攻勢を強める。

 今度は、半包囲だけでは無く、中央も突出させ、ハイオークを削りながら突破も図る。

 そして、戦闘用ゴーレムが正面のハイオーク3匹を同時に倒した。


(ここで決める)


 次の瞬間、ドライが指揮個体へ肉薄する。

 ドライの双剣で指揮個体の左膝部分を切り裂き、膝を着かせる。

 ドライは、さらに首と頭を狙い双剣を二度振るい、計四度斬るが、両腕で上手く防御されてしまった。

 だが、今の攻撃で、腕の防御に隙間ができ、喉が見えた。

 透かさず、喉に渾身の突きを放――


 ゴンッ!


 右から来たハイオークに殴られ、後退させられ、他のハイオークが指揮個体の前に立ち、指揮個体への道が閉ざされる。

 だが、ハイオークは無理して前に出てきたので、隙ができ、4匹を倒した。

 指揮個体へドライが肉薄した瞬間にも、戦闘用ゴーレムが2匹のハイオークを倒していたので、合計で9匹倒し、残りのハイオークは11匹だと思ったら、指揮個体の一団を半包囲していた左側の戦闘用ゴーレムを押し返す存在が出てきた。

 そこには、ハイオーク5匹とオークジェネラル。



 ……この前衛の指揮をとっていたオークジェネラル。

 けど、指揮個体に比べて、このオークジェネラルは一回り小さい……?

 指揮個体が大きい?特殊個体?



 ドライは、この指揮個体が他のオークジェネラル達に比べて一回り大きい事に気付いた。

 これまで、あまりオークジェネラルと直接接しなかったドライは、この指揮個体の特殊性に気付いていなかった。

 いや、違いは小さいので、気付きにくかったのだ。

 だが、特殊個体だとしても、殺ることには違いない。

 ドライは、陣形を整えつつ攻撃を続ける。





 別動隊の迎撃に向かったアインは、魔力供給範囲の際近くに魔具を置いた。

 これで自由に戦える。

 そして、別動隊が迫っている。

 アインは、50体の戦闘用ゴーレムで、5,000ものオークを迎撃するのだが、はっきり言って100倍の相手を完全に止めることなど出来ない。


(止められないなら、遅滞させ、勝負にも勝つ!)


 アインは、ゴーレムを3体一組にし、間隔を大きく開けて二列に並べる。

 前列に9組、後列に8組の計17組を並べ、アインも前列中央の1組入り、先頭に立つ。

 薄い魚鱗陣の様なものを形成した。

 そして、アインは別動隊へ突撃をか開始する。


 別動隊のオークとゴーレム達がぶつかる。

 だが、3体一組のゴーレム達では、大挙して押し寄せてくるオーク達に斬り込む事はできなかった。

 ぶつかった瞬間に、接敵したオーク達を倒せたが、突撃の勢いは完全に止まり、その場に留まるのが精一杯だった。

 アインの組もそれは同じで、アインが先頭で大剣を振るい、オークを薙ぎ倒してはいるが、次々に来るオークによって前に進めずにいた。


 そして、間隔を大きく開けていたので、組と組の間から大半が抜けていった。

 だが、その先には、二列目の組が待ち受けており、隊列の乱れたオーク達を狩っていく。

 結果として、アイン達を抜けたオーク達は、勢いは落ち、数も半数を下回るほど大きく減らし、隊列もバラバラになった。


 別動隊がアインの部隊を通過した後、アインは反転し即時追撃を開始する。

 オークの数を大きく減らず事はできたが、オークジェネラルもハイオークも1匹も狩れなかったからだ。





 俺達は、オークの外に脱出してきたオシホ様と連携するために、少し北側に移動して、東から西へ攻める形にしていた。


 オシホ様との連携もあって、本隊であった群れは、2,000ほどまで討ち減らされていた。

 このまま押し潰せるかと思っていたが、アインを突破した別動隊が合流してきた。

 これで、4,000と少しになった。

 逆に、4,000と少ししか居ない。既に10,000以上を倒した事になる。

 それに、西からはアインが、北東にはオシホ様、東には俺達が居るので、軽く包囲した状態になっている。

 ど真ん中にはドライも居るし、このまま包囲殲滅ができるかも知れない。



 そんな事を考えて居ると、状況が急変した。



 オーク達が、五つの集団に別れ、それぞれが別々に動いたのだ。

 一つはオシホ様へ。

 一つはアインへ。

 一つはドライへ。

 一つは俺達へ。

 最後の一つは、真っ直ぐ南へ、来た道を引き返していく。


 状況は分かった。

 撤退に入ったんだ。

 そして、残っているのは殿なのだ。

 何が正しいのかは、分からない。


 南下してる集団を逃がすのは不味い。


 直感でそう思った。

 なので、俺は命令を発した。


「全員!個人シェルターを発動して待機せよ!ツヴァイは接近中の集団を迎撃!」


 俺はそれだけ言って、走り出す。

 南下する集団の前に回り込める様に。



 走りながら思う。

 急な命令だったが、聞いてくれただろうか?

 きっとツヴァイは聞いて、理解してくれたハズだ。

 最悪でも、ツヴァイがルティ達の魔具を発動してくれるだろう。



 俺のゴーレムは足が速い。

 オーク達がいくらも進まぬ内に回り込めた。

 それでも、魔力供給範囲から少し出てしまっている。

 だが、この程度ならそれぞれに配備されている魔力供給用の魔具で、十分に足りる程度だ。


 俺は撤退するオークの進路上に立つ。

 俺のゴーレムがどれ程優秀でも、単体であの集団を止めるのは無理だ。

 だが、俺が乗っている。

 直前まで魔力供給範囲に居たので、魔力もフルにある。

 これな、なんとかなる。


 俺は盾を構え、指揮個体目掛けて突撃する。

 指揮個体までもう少し、という所で、俺は大きさも範囲も最大にして魔法を使う。


「アースニードル!」


 俺を中心に半径100mの範囲に高さ2mのトゲが無数に生える。

 オークを多数貫いていたが、指揮個体であるオークジェネラル?一回り大きいな。

 それに、怪我をしている?それ故か、一回り大きいオークジェネラルは、ハイオークによって守られ、貫けていなかった。

 だが、閉じ込める事には成功した。

 無事なオークやハイオークがトゲを破壊して、俺を攻撃しようとしている。

 魔力を、最大限に使って発動させた『アースニードル』だ。そう簡単に壊せはしない。

 だが、魔力の9割を使ってしまっている。

 対処できなくもないが、ここは守りに入ろう。


「個人シェルター起動」


 俺は、ゴーレムを立たせたまま個人シェルターを起動させて、4m級の岩塊の様になっているハズだ。

 こうなっては、オークは俺を無視するかも知れない。

 だが、脱出は難しいだろうから、オークを殲滅した誰かが追撃に来るだろう。

 今のツヴァイでは出来ないが、俺が発動した『アースニードル』は、オシホ様やアイン、ドライならば、簡単に解除できるので、問題にはならない。

 そうなれば、指揮個体は終わりだ。


 後は、待機してるだけだが、それまで暇だ。

 シェルター内に出ることもできるが、ゴーレムを囲っているだけなので、何も無く、出る意味が無い。

 非常食でも食べて、待っていよう。





 オシホ様、アイン、ドライもオークが撤退に入ったのを理解し、各個撃破すべく動いた。

 だが、一際大きなゴーレムが、撤退するオークの進路上に回り込むのを見て、動きを変えた。

 オシホ様は全力攻撃。

 アインは離脱。

 ドライは突破。

 それぞれが、土倉 広坪の元へ向かうべく、最善手と思える手段をとった。


 オシホ様は、一番遠い場所に居り、さらには、広坪との間にオークが居るので、目の前に居るオークを殲滅した方が早く向かうことができると判断し、全力攻撃に転じた。


 アインは、目の前の足止めを無視し、多少迂回する事になっても、すぐに移動を開始した。


 ドライは、数は減ったとは言え、包囲下にあった。

 だが、当初に比べ、その数は少なく、突破が容易だと判断し、一直線に動いた。




 ツヴァイは、命令通り迎撃を続けていた。

 五人は、当初シェルターの使用を嫌がる素振りを見せたが、なんとか従ってもらった。

 広坪の元に向かいたいという思いはあったが、迎撃の命令を優先した。

 シェルター状態の五人を護衛のためか、このオーク達を引き付けておくのが目的なのかは分からないが、それでも、迎撃を命じられたのだ。


 広坪の離脱、ルティ達のシェルター待機で、戦力は減ったものの、動きやすくなっていた。

 と言っても、とれる手段は多くない。

 なにで、シェルター状態の五人を壁にしつつ、防御態勢に移行し、オークの迎撃し続けた。



 そして、目撃した。



 広坪が向かった先で、大規模な魔法が発動し、撤退していたオーク達が、巨大な岩のトゲに飲み込まれて行くのを……。


 あれは、広坪様の魔力のほとんどを使わないと出来ない規模だ。

 となると……、やはりシェルターを発動させましたね。

 ですが、あまり魔力のほとんどを使ったのでしょうし、それほど長くは放置できません。

 オシホ様、アイン、ドライ、急いで下さい。


 そう思いながら、ツヴァイは自分のすべき事に専念する。




 オシホ様は、猛攻を仕掛け、瞬く間にオーク倒し、最後にオークジェネラルを討ち、足止めに来た集団を殲滅した。

 そして、ツヴァイと同じ様に目撃し、同じ様に理解した。


「ふむ。どう動くべきか……。まぁ、広坪の意思に従うかの」


 オシホ様は、広坪の意図が、オークを撤退させず殲滅する事にあると察し、その意思を実現させるために動く。

 まずは、ドライに突破され、置き去りにされた足止めの集団を滅ぼす事にする。

 指揮下のゴーレムを三つに分けて、二つを左右から回り込ませて、包囲殲滅する。

 既に半数ほどにに討ち減らされていたので、瞬く間に倒した。

 次は、ツヴァイの援護に行く。


 広坪の側は、アインとドライで十分そうじゃし、ルティリア達の保護ついでに、包囲殲滅じゃ。




 アインは、足止め集団を振り切り、広坪の元へ向かっていると、魔法の発動を見た。

 そこで、広坪の行動の理由を理解した。


 なるほど、1匹も逃がさないおつもりですか。

 なら、逃がすわけには行きませんね。


 アインは突如反転し、今まで逃げていた集団に対し突撃した。

 アインもたま、広坪の意図に気付き、意に沿うべく殲滅に動いたのだ。

 1匹も逃さない様に殲滅する。


 オークとぶつかる直前に、ドライとすれ違った。




 ドライはオークを突破し、先行するアインを追いかけたが、魔法を目撃し、理解した。

 だが、ドライは足を止めなかった。

 置き去りにしたオークは、オシホ様に任せ、アインも自分の足止め集団の殲滅に向かったのを確認したので、そのまま広坪の救援に向かった。

 勿論、オークを1匹も逃す気は無いが、ついでに指揮個体も討ちたかった。

 なので、直進した。


 魔力の供給範囲は、アインが近くに要るので、アインの部隊を配備された魔具によって、範囲は延びている。

 そして、ドライが近付いた事で、広坪にも魔力が伝わり、シェルターが解除されるのを確認した。


 ドライは、広坪の魔法でトゲトゲになった地面を元に戻しながら、指揮個体へ突撃した。

 指揮個体へ肉薄したドライは、渾身の一撃を放ち、今度こそ指揮個体であった、一回り大きなオークジェネラルを撃ち取った。




 それから少しして、全てのオークが倒され、殲滅が完了した。




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