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陣地作り

 



 オークの大規模侵攻を確認してから、三日目の朝だ。

 今日の昼には、オーク達が聖堂院への攻撃を始めるだろう。



 俺は今、研究所の入り口前で、今回出撃するメンバーが整列している前に立っている。

 急に出撃前の挨拶をするようにアリストラさんに言われ、皆の前に立って、何を言うか考えているのだが、何故こんな事になっているかは、俺にも分からない。


 いつもの様に、適当に出発すると思っていたのだが、台まで用意されて挨拶をさせられるとは思わなかった。改めて皆に注目のされると、かなり改善しつつあるコミュ障ではあるが、手足の震えと発汗が止まらない。

 簡単な挨拶なのだ。落ち着いて、手早く済ませよう。


 俺は何度か深呼吸してから、口を開く。



「おはようございます。本日は、大規模侵攻してきたオークを攻撃に向かいます。聖堂院の事も気がかりではありますが、まずはオークの殲滅か撃退を優先します。現状、用意できた戦力で、十分に実行可能とは思いますが、不測の事態も起こり得ます。なので、安全を最優先でお願いします。オークの対処が終わったてから、聖堂院に向かいますが、どうなるか全く分かりません。最悪、戦闘となるかもしれないので、聖堂院側への注意もお願いします」



 俺は、挨拶を終えて、ルティを見る。


 ルティは、俺の前に立っていて、アストラーデ一家全員が出撃メンバーとして整列している。

 ルティ達は、搭乗型ゴーレムに乗って参戦する。


 俺には止められなかったのです。




 二日前、オークの大規模侵攻を知った翌日の昼前には、ルティ達の搭乗型ゴーレムがある程度形になり、個人に合わせた調整が行われた。



 ちなみに、ルティ達の乗る搭乗型ゴーレムは、俺の新型テスト機とは違い、旧型の改良機になる。

 旧型にしたのは、俺のゴーレムの実戦で、それなりにゴーレムの操縦性を向上させる事ができる様になり、旧型でもそれなりの操縦をできる様になった事と、魔力供給範囲内でなら旧型の方が高性能で、安全性を確保できるからだ。


 俺が今までと同じで、新型のテスト機のままなのは、不測の事態に備えて、魔力供給範囲外での活動に最適化されているゴーレムだからだ。



 ルティ達のゴーレム調整が終わってから、すぐに搭乗してもらい、動作確認をしてから、室内テストを兼ねた操縦訓練をしてもらった。

 ゴーレムができるまでの午前中に、俺のゴーレムを使ってレクチャーをし、同期型ゴーレムも体験してもらっていたので、特に混乱する事無く操縦できていた。

 というか、三姉妹は早々に使いこなしていた。

 マリーディアさんもそれなりに使いこなしていたが、ルティがなんとか、といった感じで操縦していた。


 ある程度操縦ができる様になったら、すぐに訓練に移行した。

 たった二日、実質一日半しかないので、である程度戦える様にしたいが、時間が無さすぎる。

 なので、動ける様にする訓練を優先した。


 戦闘が順調に推移すれは、今のままでも問題は無いが、もしもが有った場合、走って逃走する必要が出てくる。

 なので、逃走に必要な走る訓練と、回避の訓練、転んでから起き上がる訓練、そして、武器の訓練もした。


 一日半で、問題なくある程度は動ける様にはなった。

 ただ、心の問題がある。

 簡単に言うと、ビビっては力が出せない。最悪の場合は、動けなくなってしまう。

 これは、正直どうしようも無い。

 マリーディアさんは、狩りをしていたそうなので大丈夫そうだし、ルティも実戦はあるそうだ。

 ただ、三姉妹は実戦経験は無く、聖堂院を目指していた時の旅で、マリーディアさんの戦闘を見たことと、俺とブラックベアーの戦闘を見ただけで、実際に戦えるかは分からない。

 いや、戦えないだろう。12、11、10歳の女の子なのだから……。


 作戦の最終確認の時に、心の問題を挙げて、反対してみたのだが、ルティ達とオシホ様によって参加をが決まった。

 俺には何もできず、単なる悪足掻きで終わってしまった。


 何にしても、こうしてルティ達の参戦は決まった。





 できるだけルティ達の安全対策は講じた。

 オーク15,000と聖堂院を同時に相手にしても、全く問題ない、というぐらいには対策をしたつもりだし、非常手段も用意してある。

 今回は、なんとかなると思う。



 今回の出撃する陣容は以下の通りだ。


 俺とルティ達が、搭乗型ゴーレムで、オシホ様、アイン、ドライが魔力供給範囲用の戦闘用メイドゴーレムで、ツヴァイはいつもの遠征用だ。


 そして、研究所の魔力供給範囲内用の戦闘用ゴーレム200体と、作業用ゴーレム30体、遠征用の戦闘用ゴーレム12体(オシホ様2、アイン1、ドライ1の4体分がプラスされている)と、作業用ゴーレム6体で出撃する。



 ツヴァイが遠征用のゴーレムなのは、俺とルティ達の撤退時に、魔力供給範囲を通らずに撤退しなければならない事があるかも知れないので、その対策として範囲外でも活動できる遠征用になっている。

 なので、ツヴァイと遠征用のゴーレム達は、俺とルティ達専属の護衛になっていて、俺達だけで一つの部隊扱いで、後方部隊となっている。


 他は、アインとドライが戦闘用ゴーレムを50体ずつ、残り全てがオシホ様の指揮下にあり、オシホ様が本隊、アインが右翼部隊、ドライが左翼部隊、オシホ様は本隊として中央部隊になっている。



 はぁ……。ルティ達に何かあったらと思うと、気が気ではない。

 戦闘に集中できるだろうか?





 俺の出撃前の挨拶が終わったのを確認して、オシホ様が数歩前に出た。


「よし、広坪の言っていた通り、安全第一で行く。時間的には余裕があるが、早目に移動して待機する。移動中は、我々が護衛するが、いつ敵襲があっても良いように、心構えだけは忘れない様に。それでは、出撃する!」



 整列状態から、移動用の陣形に移行してから出発した。


 移動用の陣形は、俺とルティ達を何重にも囲んだ陣形だ。

 前後左右は勿論の事、対空警戒もしているし、土の精霊様方と一緒なので、地中も警戒できいる。

 この陣形に死角は無い!



 三時間弱で目的地に到着した。現在は、午前10時ぐらいだ。

 到着したのは、聖堂院からは見えない少し離れた位置だ。

 ここに陣地を設置する。

 この陣地は、連れてきた作業用ゴーレムの待機場所や物資の保管所にもするが、俺達の臨時避難場所でもある、更に聖堂院が壊滅した場合の避難誘導先にもなっている。




 オシホ様は、早速陣地形成のための作業に入った。

 土壁を発生させる魔具を設置するので、まずは外周部の雪を排除するのかと思っていたが、オシホ様が魔法を使い、陣地予定地内とその周辺の地面を波打たせて、雪を全て排除してあっという間に地面を露出させていた。

 この陣地は、多数の人を収用するかも知れないので、直径200m程を予定しており、その全てと周辺を含めて直径300mほどを一気に魔法で地面を露出させるとは、流石は土の大精霊様だと再確認する。

 ルティ達もオシホ様の魔法を見て、表情は分からなかったが、驚きの声を上げでいた。

 あれで制限されているってんだがら、まさに規格外だ。


 広い地面が露出したので、俺とツヴァイで、魔力供給用の魔具を設置する。

 森からできるだけ離したいが、魔力供給用の魔具は、森の境に設置されている。防衛上視界の悪い森からはできるだけ離すために、予備で持ってきた魔力供給用の魔具を設置すれば、最大で800mも離せる。

 まぁ、今回は、600m離して、簡易陣地の周辺200mは活動できる様にしてある。




 設置が完了した後、陣地形成の作業に入るが、ツヴァイが数体の遠征用ゴーレムを引き連れて陣地予定地を離れる。

 今回は精霊トリオの中で、魔力供給範囲外で活動できるのが、ツヴァイしか居ないので、偵察に出たのだ。

 俺達の護衛は、オシホ様達が居るので、全く問題が無い。今も戦闘用ゴーレム達が簡易陣地を囲むように、全周に配置されている。



 オシホ様達が作業用ゴーレムも使って陣地を瞬く間に形成していく。

 俺達は簡易シェルターを設置して、その中で待機する事になっていたが、その前にルティ達を集めて話をする。


「集まってもらったのは、緊急装備のテストのだめです。訓練で使える様にはなったと思いますが、もう一度お願いします。まずは、自分で発動させて下さい」


 俺の言葉を受けて、ルティ達が緊急装備を発動させる。

 すると、立った状態のゴーレムが、シェルターに覆われる。

 無事に発動したのを確認したので、俺が外部から全員の簡易シェルター個人仕様を解除する。


「では、二人組になって、相手の個人シェルターを発動と解除をしてください」


 ルティがレイシアと、マリーディアさんがアムリスちゃんと、俺がクリスティアちゃんと組む。

 こちらも何の問題も無く発動と解除ができた。



 今確認したのは、ルティ達のために作られた、改良型の簡易シェルターだ。


 今までの簡易シェルターは、発動させてから、ゴーレムを降りて入らなければならなかったので、安全な所でしか使えなかった。

 まぁ、他の人の保護や休憩等の目的も含まれていたので、仕方がない事ではあった。


 だが、この改良型は、ゴーレムに乗ったまま発動すれば、ゴーレムごと覆い、安全を確保てきる。

 これは、ルティ達の誰かが動けなくなり、救出が困難な場合に発動させて、時間を稼ぐ物だ。

 今回のルティ達のために、臨時で作ってもらったので、覆う以外の機能が無い。

 更に、ゴーレムを覆うという特性上、個人で使うものになってしまった。


 そして、搭乗者が意識を失った場合に備えて、他の者が発動と解除をできる様にした。

 勿論、俺達以外には操作できないようにしてある。

 方法としては、個人シェルター魔具を経由しないと発動と解除ができないようにした。

 つまり、個人シェルター魔具を持っている俺達しか操作できないのだ。



 緊急装備のテストが終わったので、通常の簡易シェルターを設置する。

 簡易シェルターの設置場所は陣地の中央になり、魔力供給用の魔具も近くにある。

 俺達の待機場所を中心に、重要な物を集めて、中央区画にする予定になっている。

 簡易シェルターを設置すると、作業用ゴーレムが一台のソリを牽いてきた。

 ソリの荷は、俺達用の物資だったので、俺達はゴーレムから降りて、ソリからいくつか荷物を卸してから、簡易シェルターに入った。


「装備に問題はありませんでした。ここまでゴーレムに乗りっぱなしでしたし、戦闘までゆっくり休んで下さい。お茶やお菓子を飲み食いしても良いですが、トイレには注意してください」


「分かりました」


 デリカシーには欠けるが、我慢をさせたりするよりは良いだろ。


「では、俺は少しオシホ様の所に行ってきます」


「あ、外は寒いので、お気をつけて」


「了解です。行ってきます」


 密室ですからね、俺が居ては何かと気まずそうなので、席を外してオシホ様の元に向かう。



 少し中に入っていただけだが、作業はかなり進んでいる

 既に、陣地の外周を囲む土壁の魔具の設置は終わっており、東西南北の出入り口周辺を中心に作業しているみたいだ。


 オシホ様は……居た。西の出入り口に居たので、近付いて話しかける。


「順調そうですね」


「ん?広坪か、お主も休んでおれ」


「いえ、トイレ休憩のために、少し席を外しているのです」


「あぁ、そうか、そうじゃったな。悪いの。やはり、お主用にもう一つ簡易シェルターを設置するか?」


「やはりそうしましょうかね?前の簡易シェルターはありますか?」


「あるぞ、一応の予備として持ってきてあるからな、すぐに設置させよう。今ある簡易シェルターの隣で良いな?」


「はい。それでお願いします。もしかしたら、全員でそちらに移るかもしれないので、何かあったら、そちらにお願いします」


「前の方が収容人数は多いからな、承知した」



 この後、トイレの無いタイプの簡易シェルターが設置され、そちらにに皆で移り、休憩した。




 俺達が休んでいる間に陣地は完成した。


 最終的には、直径200mの陣地が形成され、中は四つの区画に分けられている。

 中央区画、保護区画、物資集積所、待機所の四つだ。


 まずは中央区画、中には俺達の簡易シェルターや魔力供給用の魔具があり、特に重要な物資が置かれている。

 中央区画は、陣地内だが土壁で囲われていて、他とは区切られている。出入り口は北と東にしか無い。

 さらに、東門へは、土壁によって直結通路が形成されている。

 万が一の時の脱出のためだ。


 次に物資集積所だ。物資集積所は北東の区画になる。

 ここは文字通り、物資の集積所で、今回運んできたほとんどの物資がここに置かれている。


 保護区画は、南東に設けられており、聖堂院で保護した人達を保護するための場所になる。

 使われないかもしれないので、シェルターなどは設置せず、簡易シェルターの魔具ををソリに積んだ状態で置いてあるだけだ。

 南東なのは、陣地を放棄して脱出するときに、南門が使いやすい様にするためだ。

 ただ、ここに保護した者達も、敵になり得るので、中央区画とは切り離している。


 最後に待機所。待機所は、ゴーレム達の待機場所なだけで、西側半分が割り当てられている。


 そして、東西南北の各門は、土壁を発生させる魔具によって二重に閉じれる様になっている。



 陣地は、上から見たらGの様な形になっていて、とても立派な物になっている。

 ただ、この陣地は、基本的に休憩所役割しか予定していない。

 俺達の攻撃でオーク達を無事に殲滅できる予定で、聖堂院の亜人種の救出は、可能性でしかないからだ。


 なら、何故この陣地を作ったのかは、『過保護』ただこの一言に尽きる。

 オシホ様達の俺への過保護と、俺のルティ達への過保護故だ!



 完成した陣地を眺めて、これでなんとかなるだろうと思っていると、偵察に出ていたツヴァイが戻ってきた。




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