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偵察結果と方針、大晦日

 



 ルティ達が部屋に戻り、俺とアリストラさんで会議室へ向かう。

 会議室には、既にオシホ様達が待機していた。


「広坪よ、元気じゃったみたいだの。それにしても、朝食も食べずにとは、元気過ぎるぞ」


「も、申し訳ありません。以後気を付けます」


 当然、オシホ様も知っていましたか。

 この件に関しては、言い訳のしょうがない。


「よい。お主の子が見れる日も近そうで、楽しみじゃ。ただ、お主には、悪いとは思うておる……」


 オシホ様は、途中から声を落とし、俺に申し訳なさそうにしていた。


「いえ、俺としは、十分な時間をいただいていますし、ルティとも出逢えました。俺に子が出来たなら、それは奇跡だと思うので、その奇跡の可能性が出ただけでも、有り難いです」


「そうか……。まぁ、これからもできるだけの事は手伝う。お主の後悔しない様にするが良い」


 オシホ様の声は、とても真剣で、俺に真摯に向き合ってくれているのが分かる。

 恩返しはできないかもしれないが、後悔はしない様にしたい。


「ありがとうございます」


 俺はオシホ様に頭を深く下げる。




「もうよい。早よう座って報告を聞くのじゃ」


「はい」


 オシホ様の言葉で、俺は頭を上げて席に着く。



 オシホ様が、俺とアリストラさんが席に着いたのを確認して、報告を開始する。


「では、偵察の結果を報告する。まずは、アインからじゃ」



「はい。南の山岳沿いの森を中心に偵察をしました。可能な限り広範囲を偵察しましたが、オークの痕跡は発見出来ませんでした」


 南部の森には、オークの影は無し。


「次、ツヴァイ」



「はい。南の平原を中心に偵察をしました。以前発見したオークを確認しましたが、数に変わりは無く、1000匹規模でした。ただ、オーク達は足とを止めており、ここから五時間ほど南下した森近くの位置に留まっていました。周囲に斥候を出している事以外は、ただ座って何もしていませんでした。それ以外は、何もありませんでした」


 先日まで北上していたオーク達が停止し、待機をしている。

 待機している以上、何かを待っているのかもしれないが、何を待っている?


「お主はどう思う?」


「……そうですね。待機したのは、迂回攻撃が失敗したから、と考えるのが自然では無いかと思います。攻撃が失敗した場合に待機するように命令されてたか、失敗を知った何者かによる命令で待機したなかはわかりませんが、撤退では無く、待機している以上、援軍を待って、再侵攻もありえると思います。その際は、大規模なものになるかも知れませんが、今は警戒を続けるしか無いと思います」


「まぁ、そうじゃな。大規模侵攻も考慮に入れながら警戒を厳にするしかないの。では、ドライ」



「はい。街道を越えて、西側の森を偵察。オークは勿論、村や人は発見できず。ただ、オークの痕跡を発見。先日の迂回攻撃したオークのものと思われる。痕跡は森の中心部近くにあり、偵察を出しながらの移動と思われ、広範囲に痕跡があった。今回の偵察では、何処から迂回したのかは分からなかった。発見するのは難しいかも。それと、兎の魔獣と思われる死体を3匹分発見、回収しました。それ以外の魔獣を含む野性動物も発見出来ませんでした。オークの侵攻の影響と思われます」


 ドライだけでは、戦闘用ゴーレムを連れているとはいえ、西の森の一部しか偵察は出来ていないだろう。

 ただ、オークの痕跡を発見できたのは良かった。

 痕跡からは、周囲を警戒しながら移動していたのを考えると、日常的にその森で行動している可能性は低い。

 つまり、警戒さえしておけば、今回の様な事は防げる。


 たが、研究所前だけたならまだしも、西側の森までとなると、範囲が広すぎる。

 遠征可能な戦力を西側の森に全て偵察に投入したとしても、カバーはしきれない。

 今回の偵察でも、完全には偵察出来ていない以上、別動隊がまだ存在していても不思議ではない。


 南の警戒を怠れない状況で、西の森の偵察も必要か……。

 手が足りない。


「あ、兎の魔核ですが、俺が実験に使いたいのですが、良いですか?」


「それは、構わぬが、魔核ならそれなりのがあるぞ?兎の魔核となると、かなり小さいぞ?」


「魔獣の魔核が欲しいのです。それに、実験ですか、小さくて問題ありません」


「まぁ、お主がそれで良いなら、三つとも後で届けさせよう」


「ありがとうございます」



 全く関係ないが、以前から魔獣の魔核を使用して、ある実験がしたかった。

 魔核の魔核は、ブラックベアーのがあったが、俺の実験には危なすぎて使えない。

 その点、兎の魔獣の魔核なら手頃で、ちょうど良い。


 それにしても、西の森なら、魔獣が居るのか……。今度狩りに行きたいな。



「では、最後にワシから報告じゃ。聖堂院側に見つかるのはまずいじゃろうから、遠目からの偵察になる。聖堂院は、昨日とほとんど変化は無かった。オーク破られた箇所は板で塞がれておったが、あれでは簡単に破られるな。ある程度観察したが、防壁の確認をする者は出てきたが、それ以上の動きは無かったのじゃ。中で何かしていたかも知れぬが、外からでは、それ以上の事は分からぬ。周囲の偵察では、西側にオークの痕跡を発見したが、ドライの報告と変わらぬ。以上じゃ」


「聖堂院の防壁は、板で塞ぐだけの簡易的な修理しかされていなかったのですか?」


「そうじゃ。見た限りでは、モンスターが入れないようにはなっていたが、小さな隙間もあり、中を覗くこと可能じゃろう。ただ、板の厚さはそこそこしか無く、オークならば簡単に破れそうじゃったな」


「補修できると言っていたので引いたが、その程度の補修なら、無理にでも補修してくれば良かった……」



 俺なら、5分で穴を塞げ、30分あれば西側の防壁を強化できた。

 いや、切り札のために、簡単な修復しかしてない可能もあるし、修復の下準備なのかもしれない。

 ここはもう少し様子を見よう。



「あちらが断った以上、無理にはできなかったのじゃ。仕方があるまい」


「そうですね。断った以上、修復には目処が立っていたのでしょう」


 こればかりは、仕方が無い。




「それより、これからですが、正直手が足りません。南の警戒、西の森の探索、聖堂院の警護、北へのルート選定もあります」


「そうじゃな。だが、全てはできぬ。北へのルート選定は、最悪、街道沿いにすれば良いじゃろう」


「そうですね。多少距離は延びますが、使い勝手は悪くないかも知れません。ですが、山岳沿いや森の中を通るルートも検討しておきたいですね。こちらの方が緊急時に役立ちそうではあるので……」


「現状では仕方があるまい。余裕ができたら、探索をしてみよう」


「ありがとうございます。それでお願いします。それから、西の森の探索を強化したいと思います。南は警戒を怠れないので、聖堂院の警護を一時取り止めて、西の森の探索に力を入れたいのですが、良いでしょうか?」


「構わぬ。しかし、聖堂院を手薄にして良いのか?」


「オークの影は見えませんし、しばらくは大丈夫だと思います。なので、この間に西の森の探索を進めおきたいのです」


「分かった。明日からは、西の森の探索に力を入れよう。一応探索の行きと帰りに聖堂院の確認だけはしおく、これだけならば、それほど時間はかからぬだろうからな」


「では、それでお願いします。それから、アリスさんは、引き続き魔具の製作もお願いしたいのですが――」


「分かっています。ルティリアさん達の事はお任せ下さい」


「頼りにしています。ただ、あまり変なプレッシャーはかけないでくださいね」


「勿論です。昨日の件は、両者が想い合っているのを確信したので、行動したのです。確信が無い限り、下手な事はしません。ご安心下さい」


「いや、確信があっても、一言相談が欲しかったですよ……」




 偵察の報告受け、今後の方針は決まった。

 南は、現状維持。

 西は、探索を強化。

 聖堂院は、しばらく放置。


 俺は、ルティ達の事と、訓練と研究だ。



 兎の魔獣、確認をしたが、角が生えていた。名をホーンラビット。

 そのままだが、異世界では定番だ。

 2羽は角が折れていたが、1羽だけ完全な状態だった。

 魔核と角、毛皮を回収したが、肉は駄目だった。

 死んでから時間が経っており、血抜きがされておらず、クサミガあり、アリストラさんによって破棄された。


 何にしても、これで実験ができると喜んだのだが、俺の実験道具は、ごちゃ混ぜにされて研究室に移動させられ、今も整理されずに放置されているのを思い出した。

 ……。就寝までに少しでも片付けようと、研究室へ向かうことにした。




 ――――――




 ルティ達が来てから一週間が経った。


 あれからは、何事もなかった。

 防壁の修理も、オーク達の行動も、何も無かった。

 ただ一つ変化があったとするなら、西の森に動物達が戻ってきたぐらいだ。

 といっても、小動物が確認できただけだが……。




 そるよりも、今日は大晦日、もうすぐ新年だ。


 今は今年最後の食事を、食堂のテーブルで待っている。

 料理をしているのはルティ達で、年越し用の料理を作っている。


 年越しの風習は、各地で違うので、確認をした。

 日本は、家族と過ごすことが普通だが、ヨーロッパ等では、他の人達と大勢で過ごすのか普通らしい。

 ルティ達にも確認をしたのだが、こちらでは家族で過ごし、特別な料理を家族で食べるとの事なので、日本と同じ様な風習、という印象を持った。



「お待たせしました。これがエンデルパイてす」


 ルティ達が三つのパイを持ってきた。

 中身は色々と違うらしいが、全部エンデルパイと呼ぶらしい。

 この三種類のパイを切り分け、一つずつ食べるそうで、一つのパイを家族で切り分けて食べる事に意味があるらしい。



 ルティが俺の隣に座り、包丁を差し出してくる。


「それては、コウ様、切り分けて配って下さい」


 事前に言われていたので、なんの疑問も無くルティから包丁を受け取り、パイを六等分に切って皆に配る。

 俺が渡す時に、皆が『ありがとうございます』と一言言ってから受け取っていく。


「コウ様、この年越しのパイは、家族の家長が切り分けて配る事になっているのです」


 それは、つまり……。


「皆さんは、俺で良かったのですか?」


 家長の役目が俺で良かったのか、皆に確認する。


「勿論です。コウ様が良かったのです。これからずっと切り分けていただけると嬉しいです」


「ルティ……」


 俺は、ルティの『これからもずっと』という部分に嬉しさが沸き上がり、隣のルティの事を見つめ、ルティも俺を見つめ返してくれる。


「んんっ。私も広坪様で良かったと思います。皆をこれからもよろしくお願いいたします」


 ピンク色の空気を全開にする前に、マリーディアさんが発言する。


「私も構いません。母さんが普通に笑うようになって嬉しいですし、最近キレイになったので、私はそれだけでも嬉しいです」


 長女のレイシアちゃんが続いた。


「レイ……。ありがとう」


 ルティは、何か思う事があったのか、レイシアちゃんを見つめ、お礼を言っている。


「私もずっと切り分けて欲しいです!よろしくお願いしますね!」


 次女のアムリスちゃんは、凄い笑顔で言ってくれたが、何か含む所がありそうな気がした。


「私は早く赤ちゃんな見たいです」


 三女のクリスティアちゃんは、また赤ちゃん発言だった。

 末っ子なので、妹か弟が欲しいらしい。


「ははは、皆ありがとう。これからもよろしくお願いします」


 この後、皆でパイを食べた。

 鶏肉のパイ、豚肉のパイ、野菜のパイになっていて、それぞれが美味しかった。

 個人的には、鶏肉のパイが一番美味しかったが、豚肉のパイはパイで、中が豚!といった感じで、肉肉しくて美味しく、野菜のパイは、キッシュみたいだった。

 スープもあったが、こちらは普通だった。



 夕食後は、オシホ様達を加えて、皆でトランプ大会になった。


 トランプを作ってから大富豪を教えたら、娘さん達の間で大ブームになり、四六時中していたりしたのだが、ルティの怒りに触れ、寝る前の時間のみプレイ可能となった。

 今回は人数が多いので二組に分かれ、大富豪を夜遅くまで続けた。


 三女のクリスティアちゃんが眠たそうにしたので、そろそろ解散することにした。


「それでは、そろそろお開きにしましょう」


「そうですね。それては、コウ様行きましょうか」


「え?いや、ルティは始まっているのでしょう?」


 ルティは昨日から月のものが始まっていて、出来ないと言われていたのに、俺の腕をとって移動さようとした。


「え……?あ、違います。パイを一緒に食べた家族は、その日は一緒に寝るのです。私達の部屋に準備してあるので、皆一緒に寝ます」


「それは……。大丈夫なんですか?」


「一緒に寝るだけですし、大丈夫です。娘達も楽しみにしていました」


「……分かりました。ご一緒します」



 その後、ルティ達の部屋へ吊れていかれ、連結されたベットに寝た。

 並びとしては、左からルティ、次女、俺、三女、長女、マリーディアさんという順番だった。


 次女と三女に抱きつかれ、寝にくかったが、なんとか眠る事ができた。




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