今後の生活と魔法適性検査
俺は、腕のなかに暖かさを感じながら目を覚ます。
腕のなかに居るのは、ルティだ。
昨夜突如押し掛けてきて、食べられてしまった。
あの後、俺の理性が崩壊し、多少暴走してしまったのだが、そこで体の異常を感じた。
不調という意味では無く、好調過ぎたといった感じだ。
食べられた後に5回。以前の俺からしたら正直異常と言える。
体力が続けば、もっといっていてもおかしくないほど元気だったのだ。
これも、オシホ様と融合している影響なのだろうか……。
何にしても、俺は生まれ変わり、男になった。
素晴らしい気持ちであり、腕のなかに最高の感触を感じながらの目覚めではあるが、一つ問題がある。
それは、ルティが俺の部屋を訪れた理由だ。
確認した結果、ルティ自身の意思で来たことは間違いなく、強制された事ではなかった。
ただ、俺の情報をアリストラさんやオシホ様が流していたのだ。
今までに、根掘り葉掘り聞き出された事、俺が奥手である事や、未経験であった事をだ。
やはり、何か圧力をかけられたのでは無いかと、しつこく訊いたのだが、全てルティの意思で、アリストラさんとオシホ様の行動は、渡りに舟だったそうだ。
ただ、付き合った日に来なくても、と言ったのだが、一ヶ月待ったと言われた。
助けられ、俺に惹かれるものがあったそうだが、何事もなく護送されたので、何事もなく終わるハズだったが、俺の告白で落ちたそうだ。
それから、家族で話し合い、皆の合意を得て、次に来たときに共に行くことを決めていたそうだ。
だが、あの決裂があり、聖堂院の雰囲気も悪くなり、来ないのでは無いかという不安があったそうだ。
その間に気持ちが高ぶり、こうなってしまったらしい。
これを聞いたのが、暴走の一端でもある。
体が若返り、活力に溢れるというのも、大変だ。
昨夜は寝るのが大分遅かったので、もう少し腕のなかの感触を楽しんでいたい。
俺が抱き締めたせいか、ルティが起きる。
「コウ様、おはようございます」
「おはよう、ルティ。体は大丈夫ですか?」
「はい。多少疲れが残っていますが、心は最高に幸せです。コウ様の腕のなかで目覚められる幸せを噛み締めています」
「俺も、ルティが腕のなかに居てくれる幸せを噛み締めてます。その、暴走してしまってすみませんでした」
「いえ、とても嬉しかったです。それに、初めての女になれた気がします。ありがとうございました」
「俺もありがとう」
この状態に舞い上がっているせいか、恥ずかし気もなく、言い合える。
バカップルとは、こんな状態の事を言うのだろうか……。
しばらくの間、ルティを抱き締めて過ごしたが、時計を確認すると、8時だった。
遅くなってしまったが、起きなければ、と共に起き、風呂に入ったのだが、個別で入るべきだった。
俺達が、皆の所に行ったのは昼前になってしまう。
――――――
俺は、ルティをお姫様抱っこで、抱えながら食堂に向かった。
ルティが疲労で動けなくなったので、ポーションを用意しようとしたのだが、少し休めば大丈夫と言われ、お姫様抱っこで移動する事になった。
俺としても、密着できてうれしいので、喜んで運んだ。
「おはよう」
食堂には、既に妹さんと娘さん達、アリストラさんが来ており、俺達の事は分かっていると思うと照れ臭くなるが、可能な限り冷静に挨拶をする。
「広坪様、顔が真っ赤です」
「うっ……」
アリストラさんに指摘される。
冷静を装うのは無理だったみたいだ。
照れていると、三女のクリスティアが俺達に寄ってきて、爆弾発言をする。
「赤ちゃんできた?」
「……」
俺は、更に顔を赤くしてしまう。
この子は何を言っている?
誰がそんな事を教えたのだ?
俺は思わずマリーディアさんを見るが、マリーディアさんは、さっと顔をそらす。
おのれ!何を教えている!
俺がなんと返答したものか悩みそうになったが、それよりも早く腕のなかのルティが答えた。
「まだですよ。もう少し待っててね」
「それって……」
ルティの言葉に思わず声が漏れる。
子供を諭すためと、単なる事実を言った場合で意味が大きく違ってくる。
ルティの顔をまじまじと見てしまう。
「あの、コウ様が良ければ、ですが……」
「凄く嬉しいよ、ルティ」
子を求められる。
これは、自分の存在を女性に全肯定される様なものに感じ、なんとも言えない喜びがある。
「ありがとうございます。頑張りますね。ですが、もう少ししたら月のものが始まるので、その後によろしくお願いします」
「俺も頑張ります」
「あの、いえ、お気持ちはこの上なく嬉しいのですが、身が持ちません。少々控え気味でお願いします」
「わ、分かった。気を付けます」
俺が原因でお姫様抱っこをしているので、気を付けますとしな言いようが無い。
「ゴホン。こちらに席をご用意しております」
俺とルティが桃色な空気を出していると、アリストラさんに席を示された。
アリストラさんが示した場所は、二人分で、俺とルティが隣合わせで食べられる様になっていた。
朝食はいつも通りだっだが、状況が状況なだけに、照れ臭く、皆の顔を見れなかった。
ただ、マリーディアさんの頬が少し赤くなっており、俺達が遅くなった理由を完全に分かった顔だった。
朝食後は、皆の今後について話し合いをするつもりだったのだが、オシホ様と精霊トリオの皆が居ないので、所在をアリストラさんに尋ねたのだが、全員が偵察に出ていた。
精霊トリオは南に、オシホ様は聖堂院の様子を見に行ったそうだ。
こちらの事は俺とアリストラさんに任せるとの事だそうで、俺達だけで話し合いをする事にした。
「さて、今後の事ですが、何かしたいこととかありますか?あるなら、できるだけ協力しますよ?」
「ここに来てからの事も事前に話し合いをしました。娘達には勉強や家事などを仕込みたいと思っていたのですが、他に何かできるなら、そちらもさせたいと思っています。勿論何かお手伝い出来ることがあるなら、積極的に手伝いたいと思っています」
なるほど、事前に話し合いをした時に、ある程度決めていたのか。
「勉強は、本とかもあるので自由に使って下さい。文字はまだ苦手ですが、俺で良ければ、算数ぐらいなら教える事も出来ます。家事は色々楽にできるのですが、そういった事ではないと思うので、その辺りはルティに任せます。料理なんかは、食材がそれなりにあるので、こちらも自由に使って下さい。後は何かあったかな?手伝いも……何か足りないことありますか?」
手伝いと言っても、ほとんどアリストラさんだけで事足りている。それでも、何か無いか、全体の管理をしているアリストラさんに訊いてみた。
「そうですね……。今は思い付きません」
「でしたら、戦闘訓練などさせてもらえないでしょうか?」
アリストラさんも何も無いみたいだったが、妹さんのマリーディアさんが、申し出て来た。
「戦闘訓練ですか?いったい何故?ここに居る限り安全を保証しますよ?」
「広坪様に助けていただいた時も、聖堂院がオークに襲われた時も何も出来ませんでした。何か出来る力が欲しいのです。お願い出来ないでしょうか?」
「すみません、この子は、昔からこうなのです。この子が小さい時に家を出たのですが、その後、父に連れられて森に入る様になり、そこで弓と風魔法の才能を発揮したのです。私達の家を興したご先祖様も、弓と風魔法を使って武功を挙げたので、父が喜び、積極的に鍛えたのです。本人も好んで鍛練をした結果、女らしい事には興味を示さず、森の中ばかりに行っては弓を使う様になってしまったのです」
「なるほど、そうですか。戦闘訓練は問題ありません。そういった施設もあるので、後でご案内します。俺も弓にも興味があるので、手解きなどしていただけるとありがたいですが、どうてしょう?」
ゴーレムに弓を使わせようとした事があった。その時は断念したが、手解きを受ければ、何かのヒントになるかもしれない。
「あの、私で良ければ、喜んで」
「よろしくお願いします」
「あの、でしたら、私も娘達に魔法の訓練をさせたいのですが、よろしいでしょうか?」
ルティも、魔法のではあるが、訓練を希望してきた。
「勿論大丈夫ですよ。俺は、土魔法に適性があり、そこそこ使えるので、多少は教える事ができます。手伝える事があったら言ってください」
「ありがとうございます。私は水が使えるので、娘達に教えているのですが、長女のレイにしか上手く教えれていません。もしかしたら、他に適性があるのかもしれないなで、よろしくお願いします」
「え?適性検査はしなかったのですか?」
「適性検査ですか?私達は一応貴族の位の家にありましたが、貴族でも上位の方々や、王都の魔法学校にでも行かないと、魔法の適性検査なんて受けられません」
それは、今まで検査を受けずに訓練をしていた?
自分の感覚で判断していたのだろうか?
これも千年の時の影響か……。
「……そうなのですか。なら、適性検査の測定器があるので、後で検査をしましょう」
「そんな物まであるのですね。是非受けさせて下さい。これで、効率よく訓練できます」
「それでは、他に何かありますか?」
「今は、これだけでも十分です」
ルティがこれで十分と言ったが、勉強、家事、戦闘と魔法の訓練、これだけでは、息が詰まりそうだ。
何か娯楽的な物も用意しよう。
一人では、趣味に没頭していれば良かったので、特にそういった物は作っていない。
まずは、トランプやオセロなどの定番な物を作って渡そう。
「そうですか。では、訓練場に案内しますね。そこで適性検査をします。アリスさん、準備をお願いします」
「分かりました」
アリストラさんが、食堂を出ていったので、俺がルティ達を訓練場に案内する。
アリストラさんが検査用の魔具を設置していたので、測定器の説明を簡単にする。
「この玉に手を置いて魔力を流すと、属性に対応したゲージがあり、目盛が上昇します。目盛は、10段階になっており、一番適性があるものが10段階まで上がります。その他は、一番使える属性と比べて、どの程度使えるのか、その割合で示しています」
まずは、俺がやって見せる事にする。
「では、俺がやって見せます。俺場合は、ちょっと特殊な感じですが、見れば分かると思います」
魔具に手を置き、魔力を流す。
「見ての通り、俺は土に一番適性があり、次に水が8割、風が3割、火が全く使えず。光と闇が5割です」
「光と闇。それは、中級魔法の光と闇ですか?」
「いえ?光と闇は、初級のハズですよ?さぁ、皆さんもどうぞ」
少しルティの挙動がおかしいが、俺の適性の偏り具合に呆れたのかもしれない。
話題を切り替えるために、ルティ達にも検査を勧める。
適性検査の結果は、以下の通りになる。
ルティリア
一番が水
風が7割
土が3割
火は1割
光が4割
闇が6割
マリーディア
一番が風
水が6割
土が4割
火が1割
光が7割
闇が3割
レイシア
一番が水
土が7割
風が3割
火が1割
光が6割
闇が4割
アムリス
一番が土
風が6割
火が4割
水が1割
光が3割
闇が7割
クリスティア
一番が火
風が6割
土が2割
水がゼロ
光が7割
闇が3割
全体的に水と風の適性が高い。
ルティが、水の風タイプ
マリーディアさんが、風重視の水タイプ
レイシアちゃんが、水の土タイプ
アムリスちゃんが、土重視の風タイプ
クリスティアちゃんが、火の特化タイプ
という結果になった。
「凄いです。適性が分かると納得できます。アムとクリスには、水魔法の訓練は意味がありませんね。これが分かっただけでもありがたいです」
「そうですね。これで適性に合った訓練をしましょう」
もし、ルティが水魔法を無理矢理教えるタイプだったら、次女と三女は潰れていたかもしれない。
まぁ、それほど教えていなかったみたいだし、これから適性に合った訓練をすれば良い。
「私は、土が一番でした!広坪様!魔法教えて下さいね!」
次女のアムリスちゃんが、元気良く言ってくる。
「待って、私も土は二番目に良かった。私も広坪様から魔法を教わる」
「勿論、土魔法はできるだけ教えて上げますよ」
長女のレイシアちゃんも俺に魔法を教わりたいといって来た。
ルティとの結婚、というのを考えると、娘さん達に好かれるのは、喜ばしい事だ。
もう一人の三女は何処だろうと見回すと、落ち込んでいるクリスティアちゃんが居た。
「元気が無いけど、どうかしたの?」
「……お母さんよ水も、広坪様の土も使えない」
クリスティアちゃんは、火の特化タイプなので、水がほとんど使えず、土もあまりよろしくない。
お母さんにも俺にも魔法を教えてもらえないと思っている。
これは、事実だ。というか、この研究所に火魔法を教えれる人間が居ない。
俺は火魔法が使えず、ルティとマリーディアさんと火魔法は駄目だ。アリストラさんも風の土タイプだったそうで、火は教えられない。
これには、正直困ってしまうが、なんとか慰めないといけないだろう。
「クリスティアちゃん、クリスティアちゃんは、俺と同じ特化タイプです」
「広坪様と同じ?」
「そうです。特化タイプは、とても得意な魔法が一つある代わりに、使えない魔法があります。俺は火魔法が使えません。けど、得意な土魔法なら……。見ていて下さい」
俺はクリスティアちゃんから離れれ、土魔法を使う。
「ロックジャベリン!」
俺は、大城な岩の槍を三つ作り、訓練場の標的に向かって放つ。
岩の槍は、標的に命中し、土煙をあげる。
「俺の魔法はどうですか?」
「凄かった!……私もできる?」
「クリスティアちゃんは火魔法が得意なので、フレイムジャベリンが使える様になると思います。それに、クリスティアちゃんは、特化タイプなので、もっと凄い魔法が使える様になるかも知れません」
「本当?」
「ええ、本当ですよ。クリスティアちゃんは、光の属性も得意なので、皆の中で一番の魔法使いになるかもしれません」
「一番……。私、頑張る!」
「はい。頑張ってください」
俺は、自然とクリスティアちゃんの頭を撫でていた。
なんとか、クリスティアちゃんの元気が出てくれた。
俺は、適当な嘘を言ったつもりは無い。
光の適性が高いので、本当に強力な魔法使いになる可能性がある。
将来が楽しみだ。
その後、皆で少し魔法を使った後、少々早いが、訓練場から引き揚げる事になった。今日の夕食を、ルティ達が作ってくれるそうだ。
俺は、食堂で席に座って待機している。
調理場からは、ルティ達の楽しげな声が聞こえてくる。
出された料理は、特製ドレッシングのかかったサラダと、少し焦げたステーキに、少し濃い野菜スープだった。
ルティの手料理、というだけで、非常に嬉しかったが、とても美味しかった。世界一だ!
「ごちそうさま、凄く美味しかったよ。ありがとう」
俺の反応を見て、皆嬉しそうだった。
夕食後に、ルティが俺に近寄ってきた。
「あの、今夜もお相手をしましょうか?」
夜のお誘いだった。
「非常にありがたいのですが、ここに来たばかりですから、今夜は子供達と一緒に居てあげて下さい。明日か明後日お願い出来ますか?」
断るだけではなんなので、次の約束をとりつける。
「分かりました。では、また明日に」
ルティは、妹と娘さん達と共に部屋へ戻った。
今度は、アリストラさんが近寄ってきてきた。
「広坪様、オシホ様達が戻りました。会議室へどうぞ」
「分かった」
オシホ様達の報告か、問題が無ければ良いが……。




