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聖堂院との別れ

 



 ルティリアさん達が、荷物を取りに会議室から出ていったが、気絶している副団長等三人をどうしたものか悩んでいる。



 殺すという選択肢は無い。

 放置するのが一番楽なのだが、後々にルティリアさん達を誘拐したとか騒がれると、聖堂院との関係が最悪のものになりかねない。

 外部の人間との接触点がここしかない以上、なんとか完全敵対だけは避けたい。


 となると、聖堂院側に引き渡すのが良いか……。

 ルティリアさんの話では、騎士団長さんは俺達を信頼できると言っていたなら、多少は交渉の余地がある騎士団長さんに引き渡すのが良いか。

 オシホ様達に……あ!


「遅くなりましたが、襲われた時に助けていただき、ありがとうございました」


 今後の事に考えがいっていて、オシホ様へのお礼がまだだった。

 命の危機だったのだ。礼はしっかりしておかなければ……。


「お主が最優先護衛対象だと言ったであろう。気にするでない。それで、この者達はどうする?殺すか?」


「物騒な……。殺しはしません。騎士団長さんに引き渡そうと思います」


「広坪がそれで良いなら、そうするが良いのじゃ」


「はい。それから、外の防壁の修復を手伝いたいのですが、良いですか?」


「うん?オークに破られたあれか?何故じゃ?」


「次に襲撃されたら大変ですし、聖堂院に居る人達全員が悪い人、という訳ではありません。それに、修復を手伝えば多少は印象も良くなると思うのです。外部との接触はここだけですし、できるだけ敵対は避けたいのです」


 単なる思い付きの印象向上案ではあるが、悪くない気がする。


「ルティリア殿達はこちらに来るのならば、ここはもう必要あるまい」


「いえ、ルティリアさんは、俺の伴侶になってくれるかもしれはないので良いのですが、妹さんや娘さん達は、外に伴侶を求める必要があります。他に外部との接点が持てれば良いのですが、隣接地域は厄介な者が居ますし、北はドラゴンで封鎖されている以上、ここしか外部との接点を持てない可能性が高いのです」



 他に接触できる人里が無いというのもあるか、聖堂院は正直かなり良い立地だ。

 まず、近い。

 隣の地域ではあるが、支配している勢力とは別に独立した場所である事。

 普通の村や街と接触するよりは、情報が漏れにくく、所属する国は遠い。

 これ以上は無い。というほど、条件が良い。


 それに、ルティリアさん達の事を監禁、なんて真似はしたくないし、彼女達の逃げ場も必要だ。



「……確かにその通りじゃ。じゃが、ルティリア殿達の話では、ここもそれほど良くはあるまい。ルティリア殿達が去れば、いかに支援したところで、関係悪化は避けれまい。この者達を見れば、そう考えるのも仕方が無いじゃろう」


「そうですが、他にありません。それに、ここは逃げてきた女性達の最後の砦と言えます。これまでの事は関係なく、助けられるなら助けたいです」


「そうか、それならもう止めはせぬ。じゃが魔力はどうする?現状で魔法を行使できるのはお主だけじゃぞ?魔力が足りぬ」


「それなら、考えがあります。戦闘用ゴーレムの増槽の魔力を使おうと思っています。どうでしょうか?」


「ふむ。出来なくは無いが、戦力が減るのはな……。まぁ、良いじゃろう。方法は予想できるが、規模はどうする」


「最悪は全体をカバーするつもりですが、騎士団長に相談してからが良いと思っています。聖堂院には、奥の手があるみたいなので、その邪魔になっては意味がありません」


「奥の手か……。本当にあると思うておるのか?」


「あると思っています。砦を燃やしたのもその一つだと思いますし、長年ここを維持していたのです。モンスターへの奥の手があっても不思議ではありません」


「まぁ、無いとは言えぬの……。ワシは構わぬ。好きにするが良い」


「ありがとうございます。早速ですが、ルティリアさん達が戻る前に済ませておきたいてす。この三人を連れて、騎士団長さん達に会いに行きましょう」


「うむ。では、行くか」



 オシホ様、アイン、ツヴァイが、それぞれ一人ずつ抱えて会議室を出る。


 外で待機していたドライにも状況を説明して、武器を装備し、作業用ゴーレムに、ソリの準備もさせてから、消火活動中の騎士団長さんの元へ向かう。





 騎士団長さんは、消火活動の指揮を執っていて、近付く俺達にまだ気付いていない。

 騎士団長さん達は、水魔法や土魔法を使い、消火をしていた様で、ほぼ消火が完了しつつある。



「騎士団長さん」


 あまり近付き過ぎてもいけないので、少し離れた位置から声をかける。


「あぁ、広坪ど……の?それは何の真似ですか!」


 騎士団長さんが振り返り、俺達の状況を見て腰の剣を握る。

 更に、騎士団長さんの声で、他の人達も気付き、こちらへ駆けてくる。


「この人達が剣を抜いて襲いかかって来たので、気絶させました。怪我は無いハズです」



 オシホ様達が、数歩ほど前に出て雪の上に三人を降ろし、5mほど下がる。

 俺達が三人から離れたので、騎士団長さん達が三人の安否を確認している。



「確かに無事ではありますが、何があったか訊いても?」


「はい。その三人にも、後で確認してもらえれば分かると思いますが、説明します。俺は、ルティリアさんに、結婚を視野に入れたお付き合いを申し込んでいました」


「なに?!」


 騎士団長さんが大きく驚き、他の人達も驚いている。


 そういえは、聖堂院側の人達は、俺が告白したのを知らないのだった……。


「本来なら、前回訪問した時に返事をもらう予定だったのですが、あの様な事になったので、今回、改めて返事を貰いに来たのです」


「それは、申し訳無い事をした。それで、ルティリア殿達はどこに居るのですか?」


「彼女達は、俺と共に来ることを了承してくれたので、荷物を取りに行っています」


「……そうですか」


「続けます。先程色好い返事をもらったところ、突然副団長が叫び、汚らわしい男として剣で斬り捨てられるそうになり、オシホ様達が咄嗟に動き、制圧しましたが、下手をしたらルティリアさんごと斬られていたかもしれません」


「彼女は、男性に酷い仕打ちをされた者達とよく話していたので、男性に過剰な反応を見せる事があったのだが、これほどとは思っていなかった。私の采配ミスだった。申し訳ない」


 騎士団長さんは謝罪し、頭を下げてくれている。

 表情にも申し訳なさが滲み出ているが、他の人達は懐疑的な目で見てくる。



 ルティリアさんの話は軽めに話したのかな?

 いや、4割が疑惑派でも、残りが肯定派という訳ではないか……。

 それに、状況だけを見れば、かなり疑わしい事には違いない。

 この状況で即座に斬りかかられないだけでも有り難い、と思うべきなのだろう。



「疑わしいなら、ルティリアさん達からも確認していただいて構いません」


「いや、それは……。そうだな、確認させてもらおう」


 俺が騎士団長さんではなく、他の方々を見ていたので、騎士団長さんも気付き、確認を取ることにしたみたいだ。

 いや、元々取るつもりだったろうが、密かに確認を取るつもりだったのかも知れないが、この状況なら皆で確認した方が良いと判断したのだろう。



 次は防壁の件を話そう。


「それから、こちらには土魔法で防壁を修復する事ができる。そちらが望むなら、修復したいと思うが、どうか?」


「それは……。いや、こちらにも土魔法を使える者は居る。気持ちだけ受け取ろう」


 あっさり断られた。

 取らぬ狸の皮算用だった。

 まぁ、奥の手に関わる事かも知れないので、ここは大人しく引こう。


「そうですか、分かりました。では、我々は撤収の準備に入ります。ただ、不用意に近付かないでいただきたい。これ以上不当に攻撃されれば、全力反撃しなければなりません。我々はこれ以上の関係悪化を望んではいませんが、命を差し出すつもりはありません。それでは、失礼します」




 俺は、騎士団長さん返事も聞かずにソリへ向かう。

 オシホ様達も、騎士団長さん達を警戒しながら俺の後に続く。

 ソリの元に着いたところでオシホ様が話しかけてくる。


「良かったのか?関係はできるだけ維持したいと言っておったではないか」


「そうですね。ですが、聖堂院側の人達は、あまり好意的とは言えない状態にあるみたいですし、防壁修復による印象向上も図れませんでした。下手をしたら、更なる攻撃があり、極めて険悪な関係になりかねません。それよりは、多少悪い関係程度の今が幾分マシと思ったのです」


「単純に信用ができない。という事かの……」


「騎士団長さんはある程度は信用しています。ですが、他の方々が暴発しないとは限らないのです。俺も自分の命は惜しいですから」


「我等だけでも護る事はできるが、その時はお主の心が心配じゃな。襲ってきた全員を殺さずに、とは無理じゃろうからの」


「……それは、そうかもしれません。その様な事態は是が非でも避けたいです」


「そうじゃな。その様な事態にならないと良いが……」


「兎に角、撤収の準備を進めましょう。気絶させた三人が起きたらまた面倒な事になりかねません」


「そうじゃな、と言ってもほぼ終わっておるがの。後はお主がゴーレムに乗り込めば、ルティリア殿を待つだけじゃ。……ん?噂をすれば、じゃな」


 俺とオシホ様が話していると、ルティリアさん達が荷物を持って聖堂院から出てきた。

 ルティリアさん達以外にも何人なついてきている。

 武装した様子は無いが、オシホ様達が警戒している。


「お待たせしました。少し引き留められてしまい遅くなりました」


「いえ、丁度こちらの準備もできましたので、大丈夫です。それで、そちらの方々は?」


「聖堂院で仲良くしていただいた方々です。見送りに出てきてくれました」



 見送りに出てきたという人達は、10名で、当然皆が女性だ。

 好奇の目で見られるが、そこに悪い感情は感じられない。ルティリアさん達を心配して見送りに出てきたのが分かる。

 折角だし挨拶ぐらいはした方が良いだろう……。苦手だか。



「初めまして、俺は広坪 土倉です。ルティリアさんと結婚を視野に入れてお付き合いをさせていただく事になりました。精一杯大切にして、結婚していただける様に努力するつもりです」


「広坪様……」


 ルティリアさんが顔を真っ赤にしている。

 照れているルティリアを見ると、とても愛おしく感じる。

 リア充爆発しろと思っていたが、こうして彼女ができると、暴走気味になってしまっている。

 彼女ができて舞い上がっているのが分かる。自重し、気を引き締めないと、顔が緩む。


「お熱い事で。その様子を見ると、脅されているという事は無さそうですね。悪い噂を聞いていたので心配しましたが、これなら安心して見送れます」


「そう言っていだだけると嬉しく思います。ルティリアさん、騎士団長さん達にも説明をお願いします。こちらから話しはしましたが、信用が足りないみたいなので」


「カティリア様がですか?カティリア様は広坪様の事を高く評価なさっていましたが……」


 騎士団長さんの名前はカティリアさんでしたね。完全に忘れてました。


「騎士団長さんが、というよりも、その部下の方達全員に、と言った方が正しいですね。かなり懐疑的な目で見られましたから」


「それは……。分かりました説明してきます」


「荷物はそのソリにお願いします。馬車ではないので、多少寒いかもしれませんが、我慢していただくしかありません」


「大丈夫です。厚着しましたし、外套も用意してあります」


「それなら良かったです。それでは、荷物を積んだら騎士団長さんの元に向かいましょう。昼食も、簡単ではありますが用意してあるので、説明が終わったら、そのまま出発します。」


「はい」




 ルティリアさん達の少ない手荷物をソリへ積み、俺もゴーレムへ乗り込んで騎士団長さんの元へ向かう。

 見送りに来た人達も、一緒に来るが、俺がゴーレムに乗り込んだのを見てかなり驚いていた。



 騎士団長さんの元へ着いたが、副団長等三人が起きており、何やら騒いで居る。

 面倒な事になっていそうで、話しかけたく無いが、気力を振り絞り話しかける。


「ルティリアさん達を連れてきた。説明をしてもらうが大丈夫か?」


「貴様ぁ!よくもやってくれたな!そんなゴーレムに我々は屈しない!」


 副団長さんは元気そうにしており、騎士団長さんに渡した武器もそのまま副団長さんが持っていて、元気よく抜き放った。

 部下二人も剣を抜き、こちらに剣を向ける。


 この状態でルティリアさん達を向かわせる訳にはいかない。

 騎士団長さんも動きそうにないので、精霊トリオに頼むことにする。


「アイン、ツヴァイ、ドライ、制圧してきてください」


「「「了解!」」」


 精霊トリオが一斉に駆け出し、一瞬で距離を詰めて三人を気絶させる。

 騎士団長さん達が驚くが、気にしない。


 精霊トリオは俺達の側に戻り、ルティリアさん達を説明に送り出す。

 見送りの人達も、ルティリアさん達と一緒に騎士団長さん達の元に行く。

 俺達が一緒では、脅されていると思われかねないので、離れて待機する。



 離れているので、ルティリアさん達の会話は聞こえないが、少し揉めている様子だ。

 いつでも動けるように注視していたが、ルティリアさん達と見送り人達が戻ってくる。


「どうでしたか?」


「カティリアさんは理解してくれて、お祝いの言葉をいただきました。部下の方々は渋々ですが分かってくれたと思います」


「それなら、良かったです。では、出発しましょうか」


「はい」


 その後、見送りの人達と別れの言葉を交わし、涙が見えたりしたが、お別れを済ませて、ソリに乗り込んでもらった。


 砦を出る際に、騎士団長さんに改めて謝罪と感謝の言葉をもらって、砦を後にした。



 オークの襲撃を警戒しながら、研究所への帰途へ着く。




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