告白の結果
騎士団長さん達は、ルティリアさん達を呼びに聖堂院内に戻った。
前回、騎士団長さん達とまあり良くない別れたかたをしたが、思っていたよりも関係が悪化している様には感じなかった。
ただ、相手が女性である以上、演技をしていた場合、それを見抜くなんて真似はできない可能性が極めて高い。
慎重に対応しなければ……。
門前に陣取っていても仕方がないので、聖堂院の門から少し離れた位置に移動して待機する。
騎士団長さん達が引っ込んでからしばらくすると、門が大きく開き、中からルティリアさんの一家と完全武装した騎士団長さん以下50名ほどが出てきた。
俺はそれを見て固まり、オシホ様達は咄嗟に武器に手を置き、いつでも臨戦態勢に移行てきる様に身構える。
臨戦態勢に移行しなかったのは、騎士団長さん達が武器を構えていなかったからだ。
だが、警戒のし過ぎで、関係悪化させる様な行動をとってしまった。
聖堂院側の皆さんも、俺達の行動に身構える様子があったが、騎士団長さんが止めてくれていた。
「驚かせてすまない。我々は消火活動に出る。面会にはあの建物を使ってくれて構わない。ただ、こちらで保護している以上、護衛を付けます」
「了解しました」
俺が返事をすると、騎士団長さん達は、今も燃え続ける砦の消火活動に行った。
完全武装なのは、防壁を破られているからかもしれない。
だが、もしかしたら、俺達への警戒かもしれないので、注意は怠らない様にする。
騎士団長さんに指し示された場所は、いつもの会議室がある建物だ。
あそこぐらいしか話し合える場所は無いのだろう。
騎士団長さん達が消火活動に行ったので、残っているのは俺達とルティリアさん達、そして、完全武装した護衛が3人だけだ。
この3人は、俺達とはほぼ初対面の人達だ。
「ルティリアさんお久しぶりです。また会いに来ました。今回は大変な事になりましたが、お怪我などありませんでしたか?」
「お久しぶりです。お待ちしておりました。私達は聖堂院内に居たので大丈夫でした」
「それは良かった。いつまでもここに居てはなんですから、建物に移動しましょう」
俺達は会議室がある建物に移動して、俺はゴーレムから降りる。
オシホ様が多少渋ったが、降りなきゃ建物に入れないのだから仕形がない。
もしかしたら、俺をゴーレムから降ろすために建物に……。なんて事を考えなくも無いが、考え過ぎだろう。
警戒心が過ぎて、疑心暗鬼気味だ。気を付けよう。
俺達が建物に入ろうとすると、ルティリアさん達の護衛の人達が、俺達を止める。
「申し訳ありませんが、武器の持ち込みはご遠慮していただきたく」
前回の件の影響で何かが変化したらしい。
オシホ様達がなにかする前に止めて、従うことにした。
ルティリアさん達との話し合いはどうしても必要なのだ。
「……承知した」
俺は、ゴーレムに乗っていたので、武器を持っていないが、マジックバックをゴーレム内に残して会議室に行く。
オシホ様達は、武器を屋外に立て掛けて置き、見張りとしてドライが外で待機する事になった。
俺達は会議室に入り、ルティリアさん達との再会を改めて喜ぶ。
「改めて、ご無事で安心しました。砦からの煙を確認した時は血の気が引きました」
「オークの群れが来たときは怯えはしましたが、皆さんが冷静に行動していたので、不安はありませんでした」
「そうですか……。それなら良かったです」
冷静か……。やはり、何か奥の手が存在しているのだろう。
それより、今はルティリアさんの事が本題だ。
ルティリアさんの顔を見つめ、意を決して口を開く。
「今日は、この間の返事をいただきたく思い、面会を希望しました」
「はい」
緊張で喉が渇く。
「ルティリアさんの返答に何ら制限をかける事はありません。ですが、聖堂院側との関係が悪化しているので、面会も難しく……、いえ、今のは忘れてください。ルティリアさんの正直なお気持ちを聞かせていただければと思います」
緊張で思考が混乱し、顔が固くなる。
ルティリアさんに変なプレッシャーを与えるつもりは無かったのに、聖堂院との関係悪化など伝えてしまった。
何事も無ければ良いが……。
俺は、ルティリアさんの顔を見ている。
金髪で青い目をしており、その目に吸い込まれる様な錯覚さえしそうな覚える。
眉が少し太く、優しさに溢れるどこかの大天使の様なお方だ。
ルティリアさんが、喋り出すまでの間が永遠に感じそうな時が流れ、とうとうルティリアさんが口を開く。
「娘達や妹と話し合って、既に気持ちは決めてあります」
鼓動の音が煩い。
緊張で喉が鳴る。
「広坪様の申し込みをお受けしたく思います」
「……。あの、それは、結婚を視野に入れてお付き合いしていただけるという事でしょうか?」
「はい。こんな私で良ければ、ですが」
俺は、ルティリアさんの言葉を理解した瞬間、心の奥底から何かが沸き起こり、叫びたい衝動に駆られたが、踏み留まる。
「あ、ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
目の前に居る女性が、俺の彼女で、結婚も視野に入れてくれている。
その事実に声が震える。
「私こそ、よろしくお願いいたします」
返事と共に笑顔になるルティリアさん。
堪らなく愛おしい。
「あの、抱き締めさせて欲しいのですが、良いですか?」
愛おしいと感じると、彼女を、ルティリアさんを抱き締めたいという衝動が湧いたので、お願いしてみる。
断られたらどうしようとは思ったが、どうしても抱き締めたい。
「えっと、あの、はい、どうぞ」
ルティリアさんは、俺のお願いを了承してくれて、一歩前に踏み出し、両手を下に軽く広げてくれた。
俺は、ルティリアさんに近付く。
「失礼します」
ルティリアさんに一言断ってから、軽く抱き締める。
ルティリアさんは、細く繊細で、強く抱き締めたら壊れてしまいそうな儚さがあり、暖かく、良い匂いがしており、ずっと抱き締めていたくなった。
ルティリアさんも抱き締め返してくれる。
幸せとは、これか……と噛み締めていた。
どのぐらい抱き締めていたか分からないが、ルティリアさんの護衛として付いてきていた3人内の一人が大きな声を上げる。
「な、何をしているのですか!ここはアリストラ聖堂院!その人達は我々が保護している!今すぐ離れなさい!」
「……え?」
突然の大声に驚き、抱き締めていたルティリアさんから、声を上げた人物に目が行く。
その人は、赤髪赤目のキツそうな印象を受ける人物で、騎士団長さん並の装備をしており、他の二人の装備に比べても、頭一つ二つは上の装備に見えた。
恐らく、隊長格以上の責任者だと思われる。
「何か問題なのですか?」
俺は、何か悪い事をしたのかと、質問してみた。
「貴様は我々が保護している女性を脅し、無理矢理連れ去ろうとしているだろうが!貴様の様な奴にその者達が靡く訳がない!脅したに決まっている!大量の支援物資も、我々を欺くための欺瞞工作だったのだ!副団長である私、バレミア・ベルナシオンの目は誤魔化せないぞ!」
バレミア・ベルナシオンさんが剣に手を置きながら、叫ぶようにして、捲し立てる。
この人は副団長さんらしい。
そして、俺がルティリアさんを脅して連れ去ろうとしていると、言っている。
脅したつもりは無いが、連れ去ろうとは思っているので、反応しずらい。
それに、副団長さんの言いたい事も少しは分かる。ルティリアさんみたいな美人が、俺みたいなのと結婚を視野に入れて付き合ってくれる、なんて奇跡が起こる可能は極めて低いと思っていた。
だから、贈り物や支援物資と称して賄賂を送りまくったりして、ルティリアさんの印象を良くしようと、心の奥底で思っていた可能性を否定できない。
俺は、副団長の物言いに、なんて反応しようか迷っていると、背中の方から圧力を感じた。
オシホ様達が圧力を発したのは分かったが、思わず腕に力が入り、ルティリアさんを強く抱き締めてしまう。
「きゃっ」
「貴様ぁ!」
ルティリアが、びっくりして、声を出したのに反応して、副団長が剣を抜き放つ。
それに反応して、オシホ様達が俺とルティリアさん達を守ろうと、副団長達との間に入る。
その行動で、護衛のあと二人も剣を抜く。
まさに一触即発な状態になってしまった。
なんとかこの場を収めなければ……。
「待て!落ち着いてください!」
オシホ様達と副団長達に声をかけるが、両方とも構えを解かない。
「貴様に指図される謂れは無い!汚らわしい男など、私が切り捨ててくれる!」
副団長等3人が一斉に攻撃してくる。
オシホ様とアイン、ツヴァイがそれぞれ対応する。
こうなっては仕形がない。
ルティリアさん達を怪我させる訳にはいかないので、ルティリアさんを娘さん達の元に送り、ルティリアさん達の前に立って、盾になるつもりで身構える。
だが、身構えたは良いが、副団長等3人は、既にオシホ様達によって剣を折られ、気絶させられていた。
なんとも、締まらない格好になってしまった。
こちらもに怪我は無いし、副団長等も怪我は無いみたいだ。
最悪の事態にはならなかったが、剣で斬りかかられ、それを武力で制圧してしまった。
「どうしたものか……」
「今のは仕形がないと思います」
思わず出てしまった言葉に、ルティリアさんが慰めのかけてくれる。
「しかし、この微妙な時期に、副団長達3人を武力制圧してしまったのは、かなり不味いです。あの聖堂院では、俺達の評価など、どんな風になってましたか?」
副団長の反応は過剰というか、異常だ。最初の頃に比べ、かなり扱いが違う。
やはり、前回の一件で何らかの変化があったのは間違いない。
聖堂院内に居たルティリアさん達なら、何か感じた事もあるだろうと、訊いてみた。
「評価、ですか……。最初の頃は、良い人という感じが強かったみたいです。食糧や暖房に余裕が出たので、心にも余裕が出来て、聖堂院内が明るくなったと言っていました」
支援物資で、俺達の評価は悪くなかったみたいだ。
「ですが、前回の訪問で、オークの群れへの不安、過剰な支援物資、そして完全自立型ゴーレムの事で疑いが生まれました。以前から多少の疑いがありました。何か企んで居るのではないか……と。団長さんは信頼できると言っていましたが、そこに居る副団長さん達を中心に疑惑派が急激に増えて、全体の4割ほどが、疑惑派になっていました」
なるほど、この副団長を中心に疑惑派と呼ばれる人達が居たのか……。
全体の4割となると、多くはあるが、過半数は行ってなかったのか、それはある意味で驚きだ。
「副団長さんも悪い人では無いのです。その、男性に酷い仕打ちをされた人達に、とても献身的でしたし、私達にも優しく声をかけくれていました。ただ、男性が相当に嫌いだったみたいです。そのせいでこんな事になってしまったのかもしれません」
男性嫌いか……。
今回はわざわざ出てきたのは、俺を見極めるためか?
最初っから敵対するための可能性もあるか。
分からないが、これ以上副団長等に何かするわけにもいかないし、放置するしかない。
副団長等を制圧してしまった以上、どんな対処をしても、疑惑派が過半数を越えるだろう。
距離を置くしかないか……。
「ルティリアさん、ご家族全員で俺と一緒に来てくれませんか?ここの安全性に疑問ですし、会いに来るのが難しくなるかもしれません。できれは一緒に居たいのですが、どうでしょうか?」
「あの、それも事前に話し合っていたのです。言いにくいのですが、聖堂院内で少し風当たりが悪くなっていまして、できれば、ご一緒にと思っていました。喜んで、行かせていただきます」
「ありがとうございます。ですが、風当たりが悪くなっていましたか……。すみません。俺のせいです。辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
ルティリアさん達が、俺の関係者であることで辛い思いをしていたみたいだ。
非常に申し訳無く、謝って、頭を下げる。
「いえ!多少接し方がぎこちなくなっただけですし、気にしないでください」
「そうですか、それなら良いのですが……。では、これから、俺達と共に聖堂院から去る、という事で良いですか?」
「はい。ご一緒します」
「新しいお父さん!」
「一緒にお風呂入ろーね!」
「これからよろしくお願いします」
「姉さん共々よろしく!」
年齢が低い順に認められたのだが、一緒にお風呂は流石に不味いと思う。
「状況が悪いので、できれば今すぐに準備していただきたいのですが、大丈夫ですかね?」
「荷物は部屋にまとめてあるので、大丈夫です」
「なら、取ってきて下さい。ただ、ソリが一台しか無いので、荷物は最少限にしてください」
「分かりました」
こうして、俺に初めての彼女ができて、一緒に住むことになった。




