聖堂院襲撃
第二次オーク迎撃戦から2日、アリストラ聖堂院近くまで来ている。
メンバーは、オシホ様含む遠征組だ。
今回も支援物資を持ってきており、荷は衣類と魔石のみで、ソリ一台分しかない。
オーク4000匹を殲滅した後に軽い偵察を行い、翌日も南側の偵察を行った。
偵察結果は、1000匹ではあるが、再びオークジェネラルの群れを発見してしまった。
三度目ともなれば、これからも続く可能性は高いと思っていいだろう。
この事実を聖堂院の皆様にお伝えしなければならない。
あまり良くない別れ方をしたので、再び訪れるのは危険があるかもしれないが、ルティリアさん達が居る以上、危険を知らせない訳にはいかない。
預けたのは失敗だったと思わなくもないが、ルティリアさんの家族を考えると、他に選択肢は無かっただろう。
まぁ、当たってみるしかない。
全速ではないにしても、それなりの速度で移動していたので、足下に注意してゴーレムを走らせていた。
今回は、荷物も少ないので、移動速度が速く、前回よりも早く到着できそうだ。
「広坪!」
と、思っていたら、突然オシホ様が大きな声を上げた。
何事かと、前方を見ると、黒煙が見えた。
それは煙は、まさに聖堂院がある方向から上がっており、容易になにかがあったのだど、理解することができた。
俺は、自分でも気付かぬ内に、全速力で走り出していた。
後ろから何か聞こえた気がしたが、そんなことに構ってられない。
走り出した俺の頭の中には、ルティリアさんの事しか無かった。
ルティリアさん、ルティリアさん、ルティリアさん!
俺はゴーレムを走らせながら、早く砦へ、という思いと同時に、頭の中で様々な事が駆け巡っていた。
聖堂院に何かがあった。
あの黒煙は、何かが燃えているのだ。
砦は木製の壁だった。
なら、防壁が燃えたのだ。
事故ならそれはそれで良い。
だが、違ったら……。
襲撃だ。何かの襲撃があったのだ。
モンスターか人。
オークは北上させていない。
ルティリアさんは、逃げてきた。
その敵が来た?
敵は人か?
……人殺し。
俺に出来るだろうか……。
いや、しなければルティリアさんが危ないのだ。
それでも、できるだけ殺さない様にしたい。
敵が人であるかもしれない。
この事で、俺は少しではあるが、冷静になれた。
聖堂院は、岩壁の中にある。
扉は鉄製の分厚い物だった。
そう簡単には破られはしないだろう。
だから、無事であってくれ!
砦に近付けば近付くほど、黒煙が濃くなる様子に、焦りながら、ようやくの思いで、砦の見える位置に来た。
俺が見たものは、西側半分だけが燃える砦と、燃える砦の周辺に居るオークの群れだった。
俺が予想した人では無く、北上を阻止したハズのオークが、砦の西側を襲っていた。
いや、襲っていたのだろうが、燃える砦の中から、数体のオークが飛び出していた。
オーク達の最後尾には、オークジェネラルと思われる存在があり、砦の中へ入ろうとしているのが分かった。
ただ、オーク達の回りの防壁や砦の中が燃えており、中に入れなく成っていたみたいだ。
俺は、西側半分だけが燃える砦とそこから逃げ出しているオーク達を見て、瞬間的にある程度の状況を理解した。
俺は、最後尾のオークジェネラルに向けて突撃した。
俺が突撃をしたのは、状況を理解、というよりは、予想ができたからだ。
聖堂院はオークには襲われた。そして、砦の壁が突破され、木製の壁を燃やし、オークの殲滅を図り、退避の時間を稼いだのだろう。
でなければ、西側半分だけが燃えている理由が分からない。
オーク達は魔法も火も使わない。
と、なると、この火は砦側のものが原因になるが、灯りや何かの多少の火かなら魔法で簡単に消せる。
つまり、この火は油か何かを使用して、一気に燃え上がらせたのだ。
なら、砦側の人達は、岩壁内の聖堂院に退避しており、あの分厚い門を閉じて籠城しているハズで、食料は提供したし、水も、拠点である以上確保てきるハズなので、しばらくは大丈夫だ。
(なんにしても、敵が人間ではなくて良かった)
殺すのが人では無いとう意味でも、モンスターよりも恐ろしいであろう人間では無いという意味にても……。
予想とは違ったが、ルティリアさん達と早く会うために、オークを殲滅する。
今はそれで良い。
突撃しながら見れば、オーク達は500匹ほど、最後尾のオークジェネラルの周囲にはハイオークらしきものが5匹しか居ない。
砦に倒されていなければ、1000匹規模の群れだったと予想できる。
遮蔽物の無い雪上を突撃しているので、既にオーク達は俺を認識し、迎撃の構えを見せようとしている。
冷静になったつもりだったが、ルティリアさんの事で、かなり焦っている。
もう少し冷静なら奇襲てきたかもしれないのに……。
既に見つかっているなら仕方がない。
正面からオーク達を殲滅する。
オシホ様達も後から来るだろうし、オークの数を減らしておく。
俺は、迎撃の態勢を整えられる前に、オークの群れに突っ込んだ。
左手の大剣でオークを凪ぎ払い、右手の盾でオークの頭を叩き潰していく。
あっという間に囲まれるが、通常のオークでは俺のゴーレムの防御を抜けずに、俺の振り回す大剣や盾で次々に倒されていく。
軽く100匹以上は倒した頃に、援軍が来た。
俺が置き去りにしたオシホ様達で、俺を包囲しているオーク達を、逆に押し包む形で突っ込んで来る。
部分的に、俺とオシホ様達のゴーレムに挟撃されるような形になったオーク達は、瞬く間に倒され、オシホ様と合流した俺は、そのままオーク達へ突っ込んでいく。
今度は囲まれる事無く、オーク達を押し潰し、オーク達は陣形を整えることができず、次々と倒されていった。
残ったのは、オークジェネラルとハイオーク。
ハイオークは、戦闘用ゴーレムの数の暴力で瞬殺。
オークジェネラルは、俺が盾で押さえ込み、オシホ様が後ろから首をはねた。
こうして、オーク達の殲滅は終了した。
「広坪よ、気持ちは分かるが、一人で行くでない。状況がまだ分からんから今はこれで済ますが、後で説教じゃからな。お主が最優先護衛対象であることを忘れるでないぞ」
独断専行をオシホ様に怒られるが、非常時なので軽くで済まされる。
「申し訳ありません。反省は後でしっかりします」
「うむ。では、砦に入りたいが、門は固く閉まっておる。打ち破るか?」
「いえ、俺が中から開けてきます」
「まさか、燃えているそこからか?まて、ワシが行く」
オシホ様が、門を打ち破る提案をしてきたが、俺は開放して中に入ることを提案した。
防壁は、比較的簡単になんとか出来る。だが、門は複雑だ。簡単に修復とはいかない。
内側の閂を外せば開くことが出来るだろう。
たが、それには中に入るしか無く、それには、打ち破られた防壁にから入るしか無い。
だが、そこは、いままさに燃えている場所で、その中も盛大に燃えている状態だ。
「オシホ様のメイド服が燃えては大変ですし、俺ならゴーレムで守られれいます。それに、水魔法があるので、大丈夫です」
「いや、しかしな……」
オシホ様が考え込む。
正直、俺は行けると思う。
空気は遮断てきるし、冷房もある。少しの間火の中を進むぐらいはてきる。
そこへ、ドライが割って入って来た。
「持ち上げて」
持ち上げて?
ドライが万歳をしているが……。
「おお!そうか、それならいけるじゃろう」
オシホ様はドライの発言と万歳の意味が分かったらしい。
高い高いでもすれば良いのか?
高い高い?
「おお!なるほど!」
ドライの提案を受け、門の前まで来た俺は、ドライを持ち上げる。
俺のゴーレムは4mあり、手を上げれば5m近くまでいく。
防壁は6mなので、手のひらにドライを乗せて持ち上げれば、ドライは防壁より高くなる。
ドライは、防壁に手をかけ、防壁を乗り越え、姿を消す。
少しして門が開き始めたので、外側からも押して、門を開く。
第二防壁も同じ様に門を開け、中に入る。
外からは、西側全てが燃えている様に見えたが、大
第二防壁内は燃えている様子は無い。
やはり、侵入したオーク達対策として燃やして退避したみたいだ。
一応中にもオーク達が侵入したみたいなので、精霊トリオに砦内の探索を任せた。
俺とオシホ様は、作業用ゴーレムにソリを牽かせて真っ直ぐに聖堂院の扉前まで進む。
聖堂院の分厚い扉前には、オークの姿は無く、戦闘の様子も無い。
ここまでは侵入されなかったのだろう。
「広坪、中の者達に知らせよ」
「はい」
ドンドンドン
「広坪 土倉だ!外のオークは殲滅した!聞こえているか!」
俺は、扉を叩き、中の人達に呼び掛ける。
反応が無いので、もう一度叩こうとした時、反応があった。
門は固く閉じたままだったが、門の右上の壁の一部が引っ込み、そこから女性の頭が出てきた。
覗き窓みたいなものか?
ゴーレムの手を振ってみる。
顔を出していた女性が引っ込み、穴が塞がれる。
そして、少ししたら、門からゴソゴソと音がしたかと思うと、門が開き始める。
俺は、後ろに下がり、ゴーレムを座らせて盾と剣を置き、無防備状態になる。
人一人分の隙間が開き、そこから3人が出てきて、俺達を無視して散開する。
偵察に出たのか?
門から更に5人が出てきて俺達の前に並ぶ。
その中に騎士団長さんが居る。
騎士団長さんが一歩前に出てきて口を開く。
「お久しぶりです。まずは救援ありがとうございます。そして、先日は申し訳ありませんでした。皆様を侮辱するつもりは無かったのです」
「こちらこそ、皆様を威圧する様な事になってしまって申し訳ありませんでした。今回は報告と面会に来たのですが、この様な事態になっていたのは驚きました。ルティリアさんとそのご家族は無事でしょうか?」
「それは大丈夫です。頂いたポーションのお陰でこちらに死者は出ませんでした。あの、ゴーレムから降りていただいてよろしいでしょうか?」
「申し訳ありません。今回は、やむを得ない場合を除き、ゴーレムから降りる事を禁じられておりまして、御応えできません。それで、ルティリアさん達に面会はできますか?」
「そ、そうですか、残念です。只今部下に周辺を確認させてますので、安全が確認でき次第面会できます」
「了解しました。では、今回訪問した件での報告ですが、北上していた三つのオークの群れですが、一匹残らず殲滅しました。そして、更に群れを発見したので、その報告です。群れは一つで、1000匹ほどでした」
「そ、そうですか、4000匹を倒して、更に1000匹が北上中であると……」
「そうなります。それから、今回持ってきた手土産は衣服になります。数は少ないですが、お納めください」
俺が、騎士団長さんと話していると、精霊トリオが戻ってきた。
「報告、砦何内にオーク確認でず。安全と思われます」
「うむ、ご苦労。待機せよ」
精霊トリオが戦闘用ゴーレム達と共に待機する。
ちなみに、オシホ様の戦闘用ゴーレムは、各門を確保している。
いざという時に、門を打ち破って逃げる訳にはいかないからだ。
「そちらの安全確認が終わり、ルティリアさん達と面会できるまで待機する。それて、襲撃してきたオーク達について聞きたいのですがよろしいでしょうか?」
俺達は北上するオーク達を殲滅した。
なのに、聖堂院は襲撃されている。
オーク達は、西側の隣の地域を経由して襲撃したであろう事は間違いない。
だが、状況を聞いておいて損は無いだろう。
「……はい。オーク達は西の森から突然現れ、襲撃されました。弓で応戦しましたが、防壁を突破されました。油を撒いて撤退し、オークを引き込んでから火を付けました」
「そうですか……」
やはり、西からか……。
それにしても、騎士団長さんの話は、俺の予想とおなじではあるが、まだ何かありそうではある。
けど、これ以上は教えてくれないだろう。
そうこうしてる内に、聖堂院側の安全確認に出ていた3人が戻ってきた。
その際、精霊トリオを見ていた気がしたが、騎士団長さんに報告をして、聖堂院内に戻った。
「こちらの安全確認が終わったので、ルティリアさん達を呼んできます」
報告と面会、できれば関係修繕を図りたかったが、大変な事になった。
オークの襲撃を受けているとは思わなかった。
だが、これで聖堂院が安全とは言えなくなってきた。
どうしたものか……。




