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聖堂院再訪

 



 雪が降る中、アリストラ聖堂院が見えた来た。



 俺達は、ルティリアさん達を護送したルートを通り、アリストラ聖堂院に向かっている。


 編成は、遠征メンバーで来ていが、雪に覆われているので、荷物を運ぶために、ソリで来ている。

 ソリには、新鮮な野菜を中心に、追加の食料、オークの魔石、日用品などの消耗品を満載してきた。

 ただ、荷物を満載したソリを作業用ゴーレム2体で牽いていては速度が遅く、戦闘用ゴーレムもソリを牽くのを手伝っている。


 ソリは三台あり、先頭のソリには全体の先導を兼ねて、オシホ様が乗り、オシホ様指揮下の戦闘用ゴーレム2体がソリを牽くのを手伝っている。二台目のソリにアイン、三台目のソリにはドライが乗り、御者の様な事をしながら、それぞれの指揮下の戦闘用ゴーレムにソリを牽くのを手伝わせている。

 そして、最後尾に、俺とツヴァイが歩いて一行についていっている。


 今回は、事前にモンスターが居ないことが分かっているので、移動速度を優先した陣形で移動し、研究所を出発して3時間ほどで到着した。




 二度目の訪問だが、いきなり接近しては攻撃されてしまうかもしれない。ソリを離れた場所で待機させ、俺とツヴァイが使者役として砦の門へ向かった。


 砦に近付いたのだが何の反応も無い。とりあえず声をかけてみる。


「おーい!誰かいないかー!」


 すると、防壁上に3人の人が出てきて、返答があった。


「こんな時期に何者だ!なんの用で来た!」


 4m級のゴーレムが他に居るとは思わえないのだが……。前回は居なかった人なのかもしれないな。


「先日こちらに女性5人を護送してきた者だ!ルティリアさん達に会いに来た!」


「広坪様、目的が違います」


 ん?あ、そうか、報告がメインだった。


「報告したい事もある!騎士団長に面会を求める!」


「確認をとる!待っていろ!」


 返答があった後、防壁上から一人居なくなる。報告へ行ったのだろう。

 俺達は大人しく待つことにする。



 しばらく待っていると、門が内側へ開き、砦の中から人が3人出てきて、こちらに徒歩で近付いてくる。


 良く見ると、その人は前回も出てきた人で、確か……第二小隊の……み、み、み、め?


「ミリシアさんです」


 俺が名前を思い出せずに居ると、ツヴァイが教えてくれた。俺が名前を覚えるのが苦手なのを覚えていて、助けてくれたみたいだ。


「ありがとう、助かりました」


 ツヴァイにお礼を言って、ミリシアさん達を出迎える。


「ミリシアさんお久し振りです」


「お久し振りです。ツヴァイさんと、広坪さん……でしたよね?こんな時期にわざわざどうしたんですか?」


「名前を覚えていてくださったのですね。ありがとうございます。今回は報告したい事があって来ました。騎士団長さんに面会できますかね?」


「それは大丈夫だと思いますが、あのソリは?」


「ああ、あれは、多少ですが支援として、追加で食料等を持ってきました。納めていただけますかね?」


「前回もかなりの量を頂きましたのに、ありがとうございます。一応規則ですので、確認だけさせてもらってもよろしいですか?」


「問題ありません、案内します」


「お願いします。エリス、報告に行きなさい」


「分かりました!」


 前回同様、一番年下そうなエリスさんが報告に走って行った。



 俺は、砦に来た道をなぞりながら、雪を踏み固めてオシホ様の元に戻り、ツヴァイやミリシアさん達も俺の歩いた後を歩いてくる。


「オシホ様、お二人を荷物確認のためにお連れしました」


「規則なので、一通り簡単に確認させていただきます」


「了解したのじゃ。よし、カバーを取るのじゃ」


 オシホ様の号令で、ソリの荷物に被せてあった、防水処理してあった布を取っ払い、ミリシアさん達が荷物を確認していく。


 全ての荷を確認し終える頃に、砦から一人走ってくる。報告に戻ったエリスさんだ。


「荷物に問題が無ければ、食料の受け入れと面会は問題無いそうです」


「了解した。荷物は問題無いみたいなので、砦の中へお願いします」


「分かったのじゃ。すぐに向かう」




 防水布を簡単に張り直し、ソリを進めて砦の中に入る。

 騎士団長さん達に出迎えられ、前回同様にソリを近くの倉庫へ移動させてから、俺達は会議室へ案内された。



「皆さんお久し振りです。今回も大量に食料を持ってきてくださったそうでありがとうございます。ですが、何故支援をしてくださるのかが分かりかねます」


 今回も大量の食料を持ち込んでいる。支援は助かるだろうが、対価次第では迷惑にしかならない。警戒して当然の事だ。


「何か対価を要求するつもりは無いのじゃ。強いて挙げれば、やはりルティリア達じゃな」


「しかし、前回いただいた食糧や魔具などでも十分すぎるほとでした。これ以上はいくらなんでも貰いすぎです」


「そうかも知れぬが、今回持ち込んだ食料はあまり日持ちしない物を中心にしてある。保存の効く物ばかりでは飽きも来るじゃろうし、力をつけてもらいたかったからしゃ。これが目録になる」


 オシホ様の言葉を受けて、今回持ち込んだ物資の目録をツヴァイが相手側に渡す。


「これは……」


 目録に目を通した騎士団長さんが驚いている。

 騎士団長さんが驚くのも当然だ。目録には、春や夏、保存の効かない物などの、冬には食べることが出来ない様な物を中心に持ってきていたからだ。



 今回持ち込んだ食料は、研究所の中で生産された物になる。

 研究所の中なので、当然地下なのだが、広大な空間で人工栽培が可能になっていて、いつでもとは言えないが、冬でも冬以外の新鮮な野菜や果物が食べられる様になっている。

 当然、この地方以外の物なども栽培できる。


 千年前からしていた事らしいのだが、封印処理した時に全て停止されていたので、夏頃から試験的に再開されたのだが、土の大精霊様が居たこともあり、かなりの大豊作になってしまっていたのだ。

 保管庫にはかなりの余裕があるが、味もとても良かったので今回持ち込んだ。

 それに、もうすぐ新年なので、ちょっとしたプレゼントのつもりだ。



「これらはどうやって……」


「それは秘密じゃ。話せぬ事もあるが、我々で作った物じゃ」


 と、ここで会議室の扉を開けて飛び込んで来た者が居る。


「だ、団長!これ!」


 飛び込んで来た者の手には、ちょうど今話題になっていた物があった。

 ただ、葉物野菜などもあったハズだが、彼女の手にはキレイに切り分けられた果物ばかりだ。

 パイナップル、イチジク、マンゴー、バナナ、桃的な物達だ。

 名称は多少違ったが、味はどれも美味しかった。ただ、バナナは種ありだ。


「これは……。本当にあるのだな。味見はしたか?」


「いえ、あの、はい。いくつかは……」


「して、どうだった?」


「非常に美味しかったです」


「そうか、ならば食べてみよう」


 そう言って騎士団長さんは、桃を一切れ取って食べた。


「本当に旨いな。これほどの物は滅多に食べれない。皆も食べてみてくれ」


 騎士団長さんが会議室で同席している者達にも勧め、皆が思い思いに食べ、感嘆の声を漏らす。

 やはり女性は甘いものが好きなのだろ。とても嬉しそうな顔で食べている。


「これほどの物本当に良いのか?」


「良い。先程も言ったが、皆に力をつけて欲しかったのじゃ、それら以外にも新鮮な野菜や、前回話した熊の肉も持ってきて居る」


「あのブラックベアーか、それにしても、力をつけて欲しいとは何故だ?我々は貴殿方の食糧支援のお陰で、現状でも十分に力を発揮できる状態だ」


「今回の本題にも関係している。ここに脅威が迫っているのて、追加支援じゃ」


「脅威?またゴブリンが来ているのか?」


「いや、オークじゃ、オークジェネラルが率いた群れが複数確認された」


「オークジェネラルだと?!何処で確認したのですか!規模は!」


 オシホ様の言葉に騎士団長さんは驚き、詳細情報を求めてくる。


「落ち着くのじゃ。場所はここから真南になるが、まだ距離はある。今確認できている群れは三つある。それぞれの群れにオークジェネラルが確認され、規模は1000が二つと2000が一つじゃ」


「すなぬ。オークジェネラルの群れが三つか……。一つの群れにでも攻められるだけでも相当に不味い。だが、こちらに来る可能性はそれほどでも無いのてはないか?」


「いや、既に群れの一つが北上していたので、こちらで殲滅した。数は3021匹じゃった。今回の荷物の中にそれらの魔石がある」


「3000……。その規模の群れを殲滅したのか。目録には……確かにあるな。誰か確認に走れ、魔石を持ってくるのだ」


「了解しました!」


 先ほど果物を持ってきた者が走って行った。


「貴殿方が殲滅した群れについて聞きたい。これだけの群れが存在するなら、オークキングの事も視野に入れなければならない。是非とも聞かせて欲しい」


「勿論じゃ、この事を知らせるために、今回来たのじゃからな」




 それから、俺達が殲滅したオークジェネラルの群れの事を話した。

 全てを話した訳では無いが、オークジェネラルやハイオークについて話をし、俺達の予想も話した。


「ハイオークまで居たとは……。だが、確かにゴブリン達はオークから逃げていた可能性が高いな。それにしても、オークキングが領域支配者になっていた場合は、ここの放棄も見当しなければならないな」


「ここの放棄、ですか?」


「ああ、貴殿方の予想通りなら、この地域自体が危険だ」


「しかし、ここは聖地ではないのですか?貴女方にとって非常に重要な場所と認識しているのですが……」


 俺は騎士団長さんの放棄という言葉に反応し、質問する。宗教団体にとって、聖地と呼ばれる場所は大切なハズだ。こんなに簡単に放棄の可能性を示唆するとは思えない。

 たとえ、それで全滅するとしても……。


「言いたいことは分かります。聖地をそう簡単放棄を考えるのが不思議なのでしょう。込み入った話になりますし、恥ずかしい話にですが、簡単に説明すると、本国はここをそれほど重要視していないのです」


 騎士団長さんは、ため息をして、言葉を続ける。


「全くしていない事は無いのですが、ここの事より権力争いが忙しいらしく、こちらの維持が疎かになっているのです。不作の影響で食糧不足になった件も、本国の支援が十分なら問題にはならなかったハズですし、防衛施設の拡充もできたのですが、現状維持が精一杯なのです」


 腐敗か……。ここを取り戻してからそこそこ時間が経っているみたいだし、ある得る事か。


「ここに居る騎士団員は全員志願者なので、高い規律を維持していますが、本国の聖騎士達は金で地位を買った者ばかりで、最早形だけの騎士団になっている事も多いのです。そんな現状では、到底ここの防衛は不可能です。私の首は飛ぶでしょうが、皆を無駄死にさせる訳にはいきません。ここには400名以上の非戦闘員が居るのですから」


 騎士団長さんの目には強い決意の意思が見て取れた。


「広坪」


 オシホ様が声をかけてきた。


「出来るだけ力になりたいです。せめて、冬が終わるまでは……」


「だ、そうじゃ。こちらとしては、出来るだけオークを殲滅するつもりじゃが、良いかの?」


「願ってもない話です。是非ともお願いしたいです」


「分かったのじゃ。砦前での戦闘もありえる。許可を貰いたい」


「勿論です」


 ここで、会議室の扉がノックされ、フルーツを持ってきた人が再び来た。手には袋を持っている。


「魔石を持ってきました」


 持ってこられたのは、小さい袋で、あの袋にはオークジェネラルとハイオーク、オークリーダーの魔石が入っていたハズだ。


「確認する」


 騎士団長は袋を受け取り、中の魔石を確認する。


「この大きさは……確かにオークジェネラルの物だ。こちらもハイオーク、これがオークリーダーか」


 騎士団長さんは、魔石を他の人達にも見せる。


「オークの物と思われる魔石も多数あり、3000個近くあると思われます」


「そうか、御苦労だった。戻っていい」


「はっ!失礼します」


 フルーツの人が会議室から退室していった。


「魔石も確認しました。オークジェネラルの脅威が迫っている。改めて、危機を知らせていただき、感謝します。さらに、多数の支援物資に、既にオークジェネラルの群れの殲滅までしていただき、ありがとうございます」


「良い。ここにはルティリア達がおるでな。それから、我々の事はあまり探らないでもらえると助かる。出来れば敵対はしたくないのでな」


「承知しました。我々も3000匹規模のオークを殲滅出来る貴殿方とは敵対したくありません。皆にも注意しておきます」


「助かるのじゃ」


「そろそろお昼です。食事を用意しますが、5人分で良かったですか?」


「ん?いや、一人分で良いそ。広坪しか食わぬでな」


「え?いや、しかし、皆さんお食事も用意出来ますよ?」


「……あ!」


「どうした広坪」


「もしかして、ですが、オシホ様達がゴーレムだと気付いていないのでは……」


「「「「え?!」」」」


 騎士団長さん始め、砦側の人達が驚きの声を上げる。


「完全自律ゴーレム……なのですか?」


 騎士団長さんが、やっとの思いで声を絞り出している。


「まぁ、そうなりますね」


「で、でも、以前完全自律ゴーレムは居ないと……」


 第二小隊隊長のミリシアさんが驚きながら聞いてきた。


「いえ、俺の搭乗型ゴーレムを完全自律では無いと言っただけですよ」


「そ、それじぁ、食事が一人分って事は、四人がゴーレムだったり?」


「はい、その通りです」


「「「「……」」」」


 皆さんが絶句した。



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