反省会
オークジェネラル殲滅作戦に失敗した俺達は、研究所にある8割もの戦闘用ゴーレムを使い、オークジェネラルを倒した。
力業にも程があるが、オーク達を進ませる訳には行かなかった。
オークジェネラルを倒した後に、俺達は、アリストラさん、ツヴァイ、ドライと合流し、被害状況を確認をした。
被害状況としては、オークジェネラルの部隊と直接戦闘をした、ツヴァイとドライが率いた56体の戦闘用ゴーレムの内10体が中破の被害が出ていた。その内、7体がハイオークによるもので、3体がオークジェネラルによるものだったそうだ。
遠征組で近接戦闘可能なメンバーの四倍以上の戦力で、オークジェネラル直轄の部隊だけと戦ったにも関わらず、10体もの戦闘用ゴーレムが中破した。
流石にハイオークとオークジェネラルは強かったみたいだ。これに遠征可能なメンバーのみで戦いを挑んでいたら、全滅も十分にありえた。
敵を甘く見すぎていた。
最終的には、魔力供給用の魔具があったので、研究所のゴーレムを使用すれば負けることは無いと分かっては居たが、もう少し慎重に戦うべきだった。
いや、戦うべきではなかったのかもしれない。
俺達が戦った事で、オーク三分の一まで減らすことができた。が、それだけだ。研究所のゴーレム達の戦闘を見れば、3000のオークでも問題なく殲滅できただろう。現にオーク戦では被害無く900ほどのオークを瞬く間に殲滅していた。
それに、壁を発生させる魔具を使用すれば、オーク達の行動を制限することができ、十分有利に戦う事ができたはずた。
結果として、俺は、無駄に被害を出しただけの作戦実行したのだ。間抜けにも程がある。
調子に乗った。慢心した。
搭乗形ゴーレムに乗ったことで、強くなったと思い込んで居たのかもしれない。
……これ以上は止めておこう。まだやることがある。反省は研究所に戻ってからだ。
被害状況の確認した後に、ツヴァイにゴーレムの調子を聞いた。
ツヴァイは、研究所に戻り、新しいゴーレムにコアを換装して、戦場に戻って来ているので、状態の確認をしたが、問題は無さそうだ。
それからは、まだ13時過ぎだったので、アリストラにこの場を任せ、遠征可能なメンバーで陣地形成に使った魔具と魔石を回収しに向かうことにした。
簡易陣地での魔具と魔石の回収も無事に終わり、落とし穴の処理も済ませ、オークジェネラルの群れを奇襲した場所にも向かい、魔石の回収をして、薄暗くなった帰りを急ぐ。
研究所に戻ってからは、夕食と風呂を済ませてから、いつもの会議室に集合した。
「まずは、皆に謝りたい。今回の遠征可能な部隊による奇襲と迎撃の作戦は無謀なものでした。皆を必要以上に危険に晒してしまい、本当に申し訳ありませんでした」
俺は、会議室に皆が集まって居るのを確認してから謝罪し、頭を深々と下げる。
「広坪よ、その事はもう良いと言ったじゃろう」
「いえ、今回の件は深く反省して頂きたいと思います」
オシホ様が宥めようとしたが、アリストラさんが否定してきた。
「ツヴァイ様とドライ様に状況をお聞きしましたが、もし包囲されていたら、広坪様の命がが危なかったかも知れないのです。是非とも深く反省していただき、広坪様の安全に留意して下さると助かります」
「ふむ。確かに、その通りじゃな。脱出の手段も用意していたとは言え、危機的な状況になりかけたのは事実じゃ。包囲され、ハイオークどもに攻撃をされていたら危なかったかもしれぬ。ワシが軽卒じゃった。すまぬ」
「え?あ、いえ、俺が無謀な作戦を立案して実行した事で、皆様を危険に晒した責任は全て俺にあるので、オシホ様が謝る必要は無いと思います」
「広坪よ、そうでは無いのじゃ。ワシ等が危険に晒された事を問題にしているのでは無く、お主が危険に晒された事を問題にしておるのじゃ」
「その通りです。現在、我々が最も守らなければならない存在は広坪様です。なので、広坪様を危険な事態にしてしまった事を問題にしているのです。私も広坪様の作戦に賛成をしていたので、私にも責任はあります。申し訳ありません。今回の事は、事態を甘く見た全員の責任であると思います。それから、今度からは、広坪様の安全を最優先に作戦を立てて下さい」
なんだかおかしな事になってしまった。
俺の無謀だった作戦の事を謝罪していたのに、オシホ様とアリストラさんまでが謝っている。
「あー、その、俺の立てる作戦は、無謀な感じなので、皆さんに任せようかと思っていたのです」
「そんな事はありません。結果だけ見れば無謀な物だったかも知れませんが、あの戦力で2000以上のオークを倒し、ハイオークも倒しています。戦力が少なすぎた事以外は素晴らしかったと思います。ですので、今後は、広坪様の安全性を高めた作戦を立案していただけたらよろしいかと思います」
「そうじゃな。作戦は悪くは無かったのじゃ。試作段階のゴーレムてあれだけできたなら、完成型のゴーレムならばもう少しはいけたハズじゃし、これからも広坪の作戦を中心に考えて良いじゃろう」
「そうですね。今回で良い戦闘記録が沢山集まったので、完成させることができるかも知れません。それに、作戦立案には、私共も協力しますので、ご安心下さい。同じ轍は踏みません」
「その、ありがとうございます。安全を優先した作戦立案をするように心がけます」
俺の作戦が評価され、これからも作戦立案をすることになってしまっている。
オシホ様とアリストラさんにこれだけ言われたら断れない。だが下手の横好きは避けたいので、皆の意見を取りまとめる形で作戦立案をしていこう。
オシホ様もアリストラさんも俺にかなり甘い。それに、二人ともが、大きな戦いに詳しくない事を知っている。
アリストラさんは、多少の魔物狩りの経験があるだけで、人同士の戦争は勿論、魔物の大規模な戦闘も聞いた事がある程度らしいし、オシホ様も同じ程度だと以前に聞いた事がある。
これらの事を考えると、二人の言葉はかなり過大評価してくれているものだろう。
調子に乗らない様にしなければ……。
「ですが、今回の件は、オシホ様、アイン、ツヴァイ、ドライを必要以上に危険に晒したのは変わりません。改めて謝罪します。申し訳ありませんでした」
皆、コアが破壊されても問題は無いが、それでも、今回は無駄に危険に晒したのは間違いない。しっかり謝っておかなければならない。
「うむ。分かったのじゃ。これからに期待する」
オシホ様は問題なく許してくれた。
「全損しても問題無いのに、律儀だと思いますが、分かりました。広坪様の作戦に少しくらい問題があっても大丈夫な様に、もっと敵を斬れるようになります!」
アインも許してはくれたが、たまに戦闘狂な気が出るので、心配だ。
「私がハイオークに上手く対応出来ていれば、問題はありませんでした。申し訳ありません。次はどんな敵が来ても対応して見せます」
ツヴァイは、作戦失敗を自分の責任だと思っているみたいだ。後でフォローが必要だろう。
「問題ない」
ドライも許してくれた。相変わらず口数が少ない。必要以上は滅多に喋らないな。
皆が許してくれたが、今後も戦うなら、それなりの覚悟が必要だ。
それにしても、今回の被害は大破2、中破13ななった。ゴーレムだったから良かったものの、もし、人間だったら、死亡2、重症13だ。しかも、重症は片腕の欠損になる。
そう考えると、とてつもない被害だ。とてもじゃないが、責任を負えない。
俺以外がゴーレムで良かったと、心の底から思う。
それからは、本格的に反省会に入った。
まずは、戦果の確認の為に、魔石を数えた。
奇襲場所では482個、簡易陣地では914個、殲滅場所で924個の魔石が確認された。
最初に倒した、前衛部隊の701個を会わせると、合計で3021個の魔石を回収できた。
オークジェネラルが1、ハイオークが10、オークリーダー10、オーク3000という結果だが、あまりに数が揃っているというか、きっちりし過ぎていると思う。
それから、オークジェネラル等の魔石は、通常のオークと比べると大きく、オークリーダーが五割増し、ハイオークで二倍、オークジェネラルに至っては四倍近くあった。
それから、作戦の過程と状況を説明し、修正案や改善案を提示していった。
螺旋構造や、壁同士の幅の事、落とし穴の運用方法、可部の使い方など、思い付いたものを皆で共有した。
意見を重ね、ツヴァイのフォローなどもしながら、話し合いをした。
だが、結局は、戦力が足りない。という根本的な結論に至った。
遠征可能な戦力の増強は以前も検討された事がある。
今後の事を考えると、遠征可能な戦力を増やすことは重要だろうとなったのだが、俺が却下していた。
理由としては、増槽として使っている、魔核を錬成して作った玉のコストの問題だ。魔核を大量に消費して今の遠征戦力を作ったのだ。
人工魔核の増産はしているが、この半月で、新たに生産された魔核を使っても、2、3体しか戦闘用ゴーレムを増やすことができない。だが、同じ量の魔核で、魔力供給用の魔具を20は作れた。
この魔力供給用魔具で、大量の戦力を投入でか、オーク達を殲滅する事ができた。
つまり、低コストで大量の戦力を運用できるようになったのだ。
問題点としては、設置型なので、範囲制限があるし、地面に設置しなければならず、それに、研究所からの供給なので、繋げる必要がある。
今回の場合だと、魔具の効果範囲は半径500mなので、研究所の魔力供給可能な範囲ギリギリに魔具を設置して、そこから半径500m延長し、さらに、その範囲内に魔具を設置して、500m延長、と、繰り返していった。
断線なども考慮して、網の目の様に設置して、戦闘区域をカバーしていた。
今回は魔力供給用の魔具にリソースを振り分けた事が功を奏した結果になる。
話し合いは続き、遠征戦力の増強という問題は、質を向上させることで対応することになった。
話にも少し出たが、遠征に使っているゴーレムは、まだ試作段階の物だ。性能テスト中にルティリアさん達を保護する事になり、そのまま遠征戦力として運用してきたが、今回の事で、脆さが露呈した。
試作段階のゴーレムは、調整がしやすい様に土のゴーレムだ。勿論可能な限り頑丈にしてあるし、魔力による防御もあり、見た目的には完成したゴーレムと見分けはつかないが、完成させた石や鉄のゴーレムに比べると格段に脆い。
なので、今回の戦闘記録を参考にして、完成させる事にして、1体1体の戦闘力を高める事で、戦力を増強させる事になった。
それか、魔力供給用の魔具については、これからも増産されることになった。
聖堂院を今回の様な脅威が襲った場合に対応する方法は、魔具の設置による魔力供給によって、大量の戦力を送れる様にする事しか無いからだ。
今後の方針としては、遠征用のゴーレムの完成、魔力供給用魔具の増産と設置となった。
魔力供給用魔具の設置する場所の話し合われた。
街道沿い、森の中、山岳沿いの三つの候補が挙げられた。
街道沿いが救援に動きやすいと提案があったが、俺達は、秘密の存在とは言わないまでも、大っぴらに活動したいわけでもないので、今回は街道沿いは避けて、山岳沿いを範囲に納めた森の中に設置することになった。
森の中なら比較的に静かに行動ができ、緊急の事態となれば、山岳沿いを走り、急行することもてきるからだ。
方針は決まり、アリストラさんとオシホ様は遠征ゴーレムの完成させるために研究室に籠り、精霊トリオは周辺探索をする事になった。
俺は俺で、魔具の作成や訓練に励んだ。
三日ほどの時間をかけて、アリストラ聖堂院までの範囲を偵察し、オークの脅威が無い事を確認してから、南の再偵察に出た。
結果としては、オークジェネラルの群れを再び発見した。それも三つ。
群れの規模は、1000が二つと2000が一つだった。
この結果から、今後もオークの襲撃は続くと判断し、聖堂院にこの事態を知らせる事にした。
予定では一ヶ月を目処に再訪問する予定だったが、一週間ほど早まってしまった。
ゴーレムはまだ完成していないが、遠征組でソリに物資を満載して、聖堂院へと向かった。




