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事故

 



 土倉 広坪(つちくら こうへい)30歳独身、コミュ障気味の引きニートだ。


 そして、俺は今病院のベッドに寝ている自分の肉体を見下ろしている。

 まだ肉体は生きている。

 心電図に反応があるからね。




 端的に言って俺は幽体離脱の状態にあると思われる。




 この状態になって3日ほどだが、気付いた時は混乱しかけてた。

 普通に目覚めて起き上がったら半透明だし、肉体は寝たままだし、顔を確認しようとしたら包帯でぐるぐる巻き、首は器具で固定され、さらには人工呼吸器みたいのや心電図を装備しているしで、軽く思考が停止した。


 これは……誰?


 状況からして俺なのだろうが……顔は分からないし、体もシーツみたいのがかけられており、状態不明なので、ベッドの足元の方を確認したら俺の名前が書かれており、俺の肉体だと判断した。


 それから情報集めに動いた。

 自分の記憶と、両親と医者や警察との話を聞くことが出来たので、大体の状況が分かった。


 俺は足を骨折して入院した祖父を見舞いに病院へ行こうと列車に乗り、病院の最寄り駅で降りて、駅前の横断歩道ではねられたらしい。

 病院に運び込まれた俺は、度重なる手術をして、なんとか状態が安定してきた所で幽体離脱したみたいだ。

 そして情報を集めて、今だ。


 肉体の状態はかなり悪く、全身にダメージがある。

 具体的に言うと、脳、首、背骨、骨盤、右肘、右膝、右足首、左目、左肩が悪い。

 肋骨も何本か逝っていたものの、内蔵は比較的無事だったから助かったみたいだ。

 ただ、回復したとしても言語や記憶、全身に後遺症が残るという話を聞いてしまった。



 俺としては、このまま……。



 やめよう。俺にはどうしようもない。



 俺をはねた相手だが、警察の話を聞く限りだと、俺をはねた後逃走……つまりひき逃げをして、慌てた運転手は事故現場からそう離れてない場所の電柱に突っ込んでいるところを発見された。

 さらに、飲酒運転だったらしく、即逮捕された。

 事故っていたので、一応病院には連れて行かれたが、軽傷だったみたいだった。



 トラックだったら異世界にでも行けたかな……。

 ふとそんな事を思ってしまう。



 気分が沈んでしまった俺は散歩に出ることにした。


 この体……幽体離脱したから幽体?はこの3日間動き回って色々分かった、暑さも寒さも感じず、風も感じないし、空腹も感じないが、眠気はあった。

 寒い季節なので、寒さを感じないのは助かる。

 半透明だが、一応病院の手術着みたいなのを着ていたが、これでは寒さはどうしょうもないからね。

 移動方法はホバーみたいに行きたい方向に水平移動ができた。

 他には壁抜けが出来たりする。


 ……やましい事は、誓ってしていない。


 ただ、病院のいくつかの部屋には入れなかった……。

 お札でもあったのだろうか?


 誰にも認識されず、壁をすり抜けながらの移動はなかなか面白かった。

 適当に移動してたら駅の近くまで来ていた。

 事故現場でも見ようかと少し思ったが、やめる事にした。

 見たところで、仕方がないからね。


 別の何処かへ行こうと周りを見回すと、昼過ぎだと言うのに高校生達が駅の方へ移動していた。


「あぁ、テスト期間か……」


 今は確かもう12月に入ったのか……。

 ふと、高校でも見に行こうかと思い、俺は学生達の流に逆らいながら移動していると、風を感じた。

 通常の風は感じないのに……。


 興味をひかれた俺は風が吹いてくる方へ向かった。

 少し進んでいると、この風の様なものは建物を貫通していた。

 そしてさらに移動していると、何となくだがこの風モドキの発生源のようなものを感じるようになった。

 近付くにつれて、これは風ではなく、エネルギー波のようなものなのではないかと思いだした。


 発生源と思われる場所が見える位置に来た。

 何となくだが、建物の陰にかくれながらそっと覗いた。

 高校生達の通学路から一本外れた裏道にそれはあった。


 直径一メートルほどの光の円がアスファルトの道路中央にあった。

 あれは何だ?邪悪な感じはしないが……幽体離脱して不思議存在になったから見えるようになったパワースポット的な何かか?

 それか元パワースポット的な場所なのか?

 しかし、あんなピンポイントじゃなくても良いだろうに……。


「ん?」


 少し観察していると、光が少し強くなってきてきた。

 何故?と不思議に思っていると、道の向こうから四人組が光の円に向かっていた。

 男二人に女二人で、雰囲気から二組のカップルに見えた。

 雑誌やテレビでもなかなかみれないんじゃないかってぐらい美男美女のカップルだ。


 光の円は、四人組が近付くにつれてさらに光を強めていた。

 ちょっと心配になった俺は、幽体の俺では意味は無いと思いながらも、警告することにした。


 建物の陰から出て四人組に声をかけようとしたが、コミュ障な俺は認識されないだろうと思っていても躊躇してしまい、四人組が光の円まであと五メートルって時に声をかけた。


「お、おーい!その先危ないかもしれないぞー!」


 驚いた事に、女の子の一人が反応したのだ、歩くのを止め俺の方を向いたが、見えてはいないのか、首を傾げるだけだった。

 他の三人は、反応した女の子が止まったので、女の子の方を振り返っている。


椿姫(つばき)どうかしたのか?」

「なんだか声が聞こえた気がして……」


 聞こえた?!

 もう一度!


「その先は危ないかもしれないから引き返せ!」


 緊張で声が上ずった。


「え?危ない?何が?」


 女の子が再び反応したが、そこで光の円に変化が起きた。

 直径一メートルほどだった光の円が四人組の方へ広がった。


「逃げろ!」


 慌てて俺は叫んだが、四人組は光の円の中に収まったかと思うと、光の円は魔方陣の様になっていき、強い光を放ち始めた。

 その段階になってから四人組も魔方陣に気付いたらしく、騒ぎだした。

 だが、魔方陣の光はさらに強くなり、目が眩むような眩しさになったかと思うと四人組と共に魔方陣は消えて無くなった。


 俺はそれを呆然と眺める事しかできなかった。

 放心していたが、まだ光の円があることに気付いた。

 直径三十センチメートルほどになり、光はかなり弱くなっているが、確かに存在していた。

 そこで、やっと頭が動き出した。


 あれは何なんだ?

 魔方陣、消えた四人組まるで勇者召喚的な……。

 勇者召喚!

 あれは異世界にでも繋がってるのか?


 光の円の近くまで慎重にそーっと近付くにいて、光の円を覗きこんでみた。

 特に異常は無いかな?

 いや、存在自体が異常か……。


 指先でつついてみたら、触った感触があり驚いて手を引いた。

 本当に何だこれ?


 光の円を凝視していると再び変化があった。

 光が少し強くなってきたのだ、俺は少し離れてみた。

 すると光の円から何か生えた。

 光の紐?いや、動いてるし、光の触手的な何かだ……。


 辺りをキョロキョロしていたそれは俺の方を向き止まった。

 俺もそれを見つめ止まった。


 数秒間ほど見つめあっていたが、突然触手が伸び、俺の腹を突き刺してきた。


 驚いて声も出なかった。

 痛みは無いが、触手が貫通してる感触はあるし、先端が体の中にあるのが見えちゃったりもする。

 そして、体(霊体)が動かない。

 まずい……かな?


 動けずにいると触手の先端から毛が生えた?かと思うと、俺の体に根をはるように体を侵食してきた。

 何もできないので、眺めているしかできなかったが、尋常ではなく気持ち悪い。

 あっという間に首まで来たと思ったら、首から触手が生えた感覚があった。

 予想外な展開に驚きよりも疑問に思った。

 やはり何もできないので、首から生えた触手に集中していると、猛然と触手が伸びだし、何処かへ向かって行った。

 その間も侵食は続き、両手足は完全に侵食され、後は頭のみ、頭にもゆっくりと侵食が……。

 と思っていると、首から伸びた触手が何かに刺さった。

 てか、触手の感覚がある。

 触手に集中すると、何となくだがそれが何か分かった。

 分かってしまった。

 俺の肉体だ。

 すると触手が強烈に光りだした。


「お?おぉ?お……へめ○ぺかッ――」


 俺は四人組みたいに消えると思い、この世界で最期の言葉を言おうとし、途中で世界から肉体ごと消えた。

 意味は無い。




 次の瞬間的俺は何かの流れの中に居た。

 首から伸びた触手の感覚もあり、後方に肉体があり、段々と近づいてるのが分かる。

 辺りは黄色……よりは黄金?に光る土管?の中を流に逆らいながら触手に引っ張られていた。

 なんだとてもキレイな流れで、その中を逆らって移動する感覚はとても不思議なものだった。

 そして、土管ってよりは血管って感じだと分かった。

 引っ張られていると、合流して段々と太くなっていく。


 しばらく引っ張られていると別の血管に移動している気がした。

 時々流れに逆らわないルートを何度か通ったからだ。

 どのぐらいの時間が経ったか分からないが、最初の頃に居た血管とは比べ物にならないぐらい大きな血管の中を進み、肉体がすぐ後ろまで来た時変化があった。

 前方から黄色い大きな光が来てる、てか向かってる。

 何だか質量もありそうな感じだ。


 触手が絡まってる様にも見えるのだが?


「あ、これはぶつかるな……」


 俺はその光と正面衝突&肉体による玉突き事故に遇った。




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