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アリストラ聖堂院と告白




 アリストラ聖堂院の砦の門を通過し、さらに進む。


 馬車を牽くゴーレムは、全てオシホ様の操作なので、御者席で座って見ている事しかできない。


 すると、オシホ様の乗る、先頭の馬車が左にそれた。

 ルティリアさん達の乗る馬車は直進し、俺の乗る馬車は、ルティリアさん達の乗る馬車を避ける様に、右へそれ、三台の馬車が横一列に並び、出迎えの人達の前に進んだ。




「アリストラ聖堂院へよくぞ来た!君達を歓迎しよう!」


 一際立派な鎧を着た、40代な見た目の女性が、大きな声で出迎えてくれた。


 他にも、武装した人達が居る。ミリシアさんと同じ様な格好の人は隊長なのだろう。エリスさんみたいな少し軽装な人達も居るが、一番多いのは、革鎧に部分的に金属がつけられた鎧を着た人達だ。

 全員で50人ほどだろう。無論全員が女性だ。


 彼女達は、先ほど通った防壁や門と同じ様な、木製の第二の防壁の門前に陣取っている。



 先導役の三人は、隊長が下馬して、豪華な鎧の女性へ向かい、他の二人は、隊長の馬も連れて右の道へ進んで行った。




 横を見れば、オシホ様は既に馬車から降り、ルティリアさん達も馬車から降りようとしていた。


 俺も馬車から降りて、ルティリアさん達の降車を手伝い、オシホ様の横に並ぶ。


「歓迎に感謝するのじゃ。ワシがオシホ、そっちの男が広坪じゃ。そして、この五人が今回保護を求めるアストラーデ一家になるのじゃ」


 俺とルティリアさん達が軽く頭を下げる。


「アストラーデ?この地域奪還の時に、活躍して騎士爵になった者の中に同じ名前があったが、その関係者か?」


 豪華な鎧の女性が、ルティリアさんに聞いてくる。


「はい。その一族です。私が長女のルティリア、こちらが次女のマリーディア、そして、この子達が私の娘で、レイシア、アムリス、クリスティアです」


「そうか……。事情は後で聞こう。改めて、私がこのアリストラ聖堂院を預かるアリストラ聖騎士団団長のカティリア・トラミリウスだ。聖堂院を目指す者達を保護し、護送してくれた事に感謝する。そちらの五人はしっかりと保護させてもらう。それで、早速で悪いのだが、荷物を確認したい。良いだろうか?」


「もちろんじゃ。中央のがルティリア達の馬車になるのじゃ。端の二台が我々の馬車になる。荷物を下ろした後は、馬車を持ち帰るのじゃ。馬車はどこに移動させれば良いのじゃ?」


 オシホ様の言葉に反応し、団長さんが、隣の人に目配せすると、その人が指示をしてきた。


「それでは、そちらの建物に荷下ろししやすい様にお願いします」


 指定されてのは、俺たちから見て右側の防壁沿いにある建物だった。


「分かったのじゃ。それと、これは、目録じゃ」


 了承したオシホ様が物資の目録を団長さんに渡し、馬車を移動させる。


「それでは、いつまでもこんな雪が降ってるところに居てはなんだ。こちらに席が用意してある」





 団長さんが、門を第二の門のを開けさせ、今度は第二の防壁内にある大きな建物へ案内してくれた。


 建物は二階建てで、俺達は先に一階の大きな会議室に案内された。


 団長さんやミリシアさんほか、金属鎧多目の方々は、話があると、別室に行っている。

 恐らく、ミリシアさんの報告を受けているのだろう。



 俺達は、案内された会議室の席に座って、出された紅茶を飲んでいた。

 すると、ルティリアさんが席から立ち上がり、俺達に頭を下げてきた。


「広坪様、オシホ様、ここまで連れてきてくださり、ありがとうございます。お力添えが無ければ、無事に辿り着く事は出来なかったと思います。本当にありがとうございました」


 ルティリアさんの言葉に合わせて、五人が深々と頭を下げてきた。


「ワシは、広坪の意に従ったまでじゃ。じゃが、感謝は受け取ろう」


「俺は、ルティリアさん達を見捨てられなかっただけですし、多少下心もありました」


「下心ですか?まさか、娘を?」


「いえいえ!ルティリアさんに良い格好を見せたかっただけです」


「私に、ですか?」


 ルティリアさんが、俺の言葉に驚いている。そして、俺自身も驚いていた。

 半ば告白に聞こえる発言をしたのだから。


 この時、俺はどこかおかしかったのだろう。普段なら、絶対しないような言動をとっていた。


 考えれば、もうすぐお別れだ。モンスターの居る世界でもう一度会えるかなんて、分からない。

 ブラックベアーみたいのが居るのだから……。


 俺は、自分で思っていた以上にルティリアさんに惹かれていたのだろう。改めて、ルティリアさんとの別れを意識すると、胸が締め付けられる気持ちになる。


 ここは、勢いに任せて、当たって砕けよう。



「はい。ルティリアさん、貴女に、です。まぁ、実際はオシホ様達に任せきりになってしまいましたが……」


「そんなことありません!広坪様が、私達を助けてくれたのです。その後も大変に気を使ってくださり、とても嬉しかったです。それに、広坪様の視線を感じましたが、嫌では、ありませんでした。もし、広坪様が私をお望みなら、全てを差し出します」


 ルティリアさんが、強い意思を持った目で俺を見てくる。


 とても好みの女性に、感謝され、全てを差し出すと言われた。

 ……なんと言うか、彼女を無性に抱き締めたい。そんな気持ちが、心の奥底から湧いてくる。


 彼女は感謝の印に全てを差し出すと言ってきたのだ。とても魅力的な提案だ。ルティリアさんなら欲しい。ルティリアさんが欲しい。


 まさか、こんな気持ちになるなんて……。思っても見なかった。


 けど、俺が欲しいのは、これじゃない。もっと贅沢なものだ。


 俺は、意を決して、ルティリアさんに答える。



「ルティリアさんの言葉はとても嬉しいです。正直、とても欲しいです。ですが、俺はもっと特別なモノが欲しいです。なので、ルティリアさんを口説かせて下さい。勿論無理に従わせる様な事はしませんし、断っても、ルティリアさん達に不利益になるような事もしません。どうでしょうか?」


「あの、それは……」


「はい。貴女に結婚も視野に入れた、お付き合いを申し込みたいのです。娘さん達の事が気がかりなら、一人立ちするまで、待っても構いません。返事は今すぐでなくても良いので、考えてみてください」


「その、本気、ですか?少なくとも下の娘の成人まで5年はあるのですよ?その頃には私は……」


 ルティリアさんは、俺の言葉に顔を赤くし、とても動揺している。


「俺は本気です。それでも、俺は貴女が良いのです」


 ここで、一気に畳み掛けるべく、真剣な目でルティリアさんを見つめる。


「あの、はい。考えてみます」


 ルティリアの言葉に表情が緩んでしまう。

 ルティリアさんの反応からして、悪い感触ではないと思う。だが、女性の心は分からない。可能性があるかも程度に思っておこう。


「よろしくお願いします」


 表情を引き締めて、お願いしておく。



「広坪よ、なにもこのタイミングで告白をせんでも良かったのではないか?」


 オシホ様が呆れ気味に言ってくる。


「自分でも、ここで言うつもりは無かったですし、むしろ、告白をするつもりさえ無かったのです」


「ほう。では、何故告白をしたんじゃ?」


「その、別れを意識したら、こうなってました。それに、もし、思いを告げるなら、送り届けた後に、と思っていたので、そのせいかもしれません」


「もう少し奥手かと思うておったが、なかなか良かったぞ」


 照れ臭くなり、頭をかきながら、軽く頭を下げるだけにした。




 そうこうしてる内に、カティリアさん達が会議室に入って来た。





 この会議室に居るのは、オシホ様、俺、ルティリアさん一家に、アリストラ聖堂院の団長さんや第二小隊のミリシアさん以下10名の、合計17人が会議室に居る。



 メイド服を着ていない給仕が紅茶を配り終え、団長さんが、話し出す。


「遅くなってすまない。色々と報告を受けていた」


「理解しておる」


「それでは、改めて確認したい。そちらの5名は、こちらで保護をする。そして、持ち込まれた物資についてだが、正直に聞く。対価は何が欲しい?」


「そうじゃの……。広坪、答えよ」


 オシホ様が俺に振ってくる。


「俺がですか?」


「そうじゃ、お主の意思で連れてきたし、運んで来たのじゃ。お主の好きにせよ」


「分かりました。俺がお答えします。保護は、彼女達の意思なので、よろしくお願いいたします。それから、物資は、基本的に寄付になります。ですが、てきれば、ルティリアさん達に少し気を配っていただけると有り難いです」


「……それだけか?」


「それで十分です」


「目録を確認した。部下に荷物を確認させたし、私も確認をした。大量の食糧に、衣服、液体石鹸などは、非常にりがたいが、普通の物だ。だが、あの大量の魔法道具とポーションはなんだ?あれだけでも相当な価値になるぞ?」



 え?大量の魔法道具にポーション?

 俺も物資や目録は確認をした。一般的な物を、そこそこの数を持ってきたつもりだが、そんなに大量と言うほどじゃない。


 俺は疑問に思い、オシホ様に顔を向けるが、反応は無い。


 ここは、誤魔化そう。



「彼女達は、俺にとって特別な存在でして、特にルティリアさんは大切なので、気配りをお願いさたく思います」


 嘘では無い。むしろ、事実だ。


 彼女達の立場を強化するために持ってきた様なものだし、思ったより価値があったなら、それはそれで問題ないだろう。


「それは、彼女達を特別扱いしろ。と言いたいのかい?」


「ある意味では、そうです。彼女達のが望まない限りは、普通に扱ってほとは思っています。特別扱いをして、他の方々と軋轢が生まれるのは望んでいません。ですが、問題が発生しないように、多少気配りをしていただきたいと思っています。あと、これはらの要求は、俺の独断によるものです」


「……分かった。今回持ち込まれた物資は、正直かなり助かる。ありがたく受け取ろう。ただ、それほど特別扱いはできないが、気は配っておこう」


 微妙に納得はしてない様だが、本当に困っていてのだろう。無事に受け取ってくれるみたいだ。


「ありがとうございます。それで、見学は大丈夫ですか?」


「その件だが、砦内なら問題は無いが、聖堂院内は男子禁制だ。外から眺めるぐらいしかできない」


「それて構いません。是非お願いします」


「分かった。後で案内させよう。それから、ゴブリンの魔石の件だが――」


「あぁ、魔石は全てそちらにお渡しします。オシホ様、それで良いですよね?」


「そうじゃな。それが良かろう」


 団長さんの言葉を遮り、俺がした発言に、オシホ様も同意してくれる。


「なに?かなりの数の魔石になるぞ?」


「戦いの様子を見た感じてすと、そちらだけで問題なく撃退できたでしょうし、介入はこちらの都合てしたので、問題はありません」


「そうじゃの。それに、見学をしたあと、すぐ帰還予定じゃ、時間もあまりないからの」


「何?今からでは一番近い村でも、半分の距離も進まぬ内に日暮れになってしまうぞ?今夜は砦に泊まって行ってはいかがか?」


「申し出はありがたいのじゃが、帰りを急ぐのじゃ」


 団長さんの申し出を断る。活動限界があるのだから長居はできない。まぁ、それを言うつもりは無い。


「そうか、残念だ。次来たときは、改めて礼がしたい。今回の襲撃は、確かに我々だけで撃退できただろう。だが、貴方達の救援で、我々の怪我人が少く済み、殲滅までできた。これは非常に助かったのだ。ありがとう」


「こちらの都合もあったと言ったじゃろうに……。分かったのじゃ。感謝は受け取ろう」


「そうか、助かる。では、時間が無いのなら早速案内させるが、どうする?」


「うむ。頼むのじゃ」





 俺達の言葉で、砦を案内されることになった。ルティリアさん達も一緒に案内されることになった。



 防壁は二枚あり、一番外側の防壁が第一防壁、内側にあるのは第二防壁と呼ばれるそうだ。


 第一と第二防壁の間は、南側が俺達が入って来た門と、兵の詰所と簡易的な倉庫があり、西が歩兵や騎馬、東は弓や魔法等の遠距離用の練兵場になっていた。


 第二防壁内は、南側に俺達が話し合いをした建物と武器庫があり、西は厩舎、東は鍛冶場になっていた。


 鍛冶場に興味を惹かれたが、火が落ちていて、休業状態だった。



 そして、最後にアリストラ聖堂院へ案内された。


 入り口は、鉄の扉で閉じられていた。事前の情報通り、崖にあり、入り口前には柵が設置されていて、門からは真っ直ぐに突っ込めない様になっていた。


 俺達は柵の内側に入り、鉄の扉を開けてもらい、中を見た。


 大きな空間があっだが、薄暗く、詳細は分からなかったが、左右と奥に通路があることが分かった。



 以上で見学は終了となった。




 そして、ルティリアさん達とはここで別れる事になっていた。


 俺達はここで帰る事になるが、ルティリアさん達はそのまま中を案内されることになる。



「では、ルティリアさん、ここでお別れですね。次会う時までお元気で」


「はい。広坪様もお元気で。オシホ様もありがとうございました」


「「「「ありがとうございました」」」」


 ルティリアさんの言葉に、他の四人も合わせた。


「うむ。皆も元気でな」


 一応、別れの挨拶は済んだが、マリーディアさんが近付いて来た。


「今度は私が守れる様に、頂いた弓を使いかなしてみせます!」


 マリーディアさんには、弓が壊れていたので、武器庫に眠る普通の弓を、少し改造してから渡してある。改造と言っても、弓に魔法の発動媒体をくっ付けただけだ。弓の強度や使い勝手を考慮して、魔法の発動を少し補助する程度の効果しかない。


「はい、頑張って下さい」


 続いて、ルティリアさんの娘さん達も近付いて来て、一番下のクリスティアちゃん(10歳)が元気に話しかけてきた。


「広坪様が新しいお父さんになる?」


「え?あ、いや、なれたらいいなぁ。と思っています」


「そっか、ならお父さんになったら、よろしくね!」


「あ、はいその時はよろしくお願いいたします」


 クリスティアちゃんの突然の発言になんとか答えた。急だったので、敬語になってしまった。


 たが、これだけでは終わらなかった。次に話しかけてきたのは、次女のアムリスちゃん(11歳)だった。


「お母さんが駄目だったら、私がお嫁さんになって、沢山赤ちゃん生んであげるからね!」


「え?えぇ?いや、あの、お気持ちは嬉しいのですが、俺はルティリアさんが良いのです」


「お母さんが駄目だった時だよ!考えておいてね!」


「あ、はい」


 アムリスちゃんの赤ちゃん発言での混乱と勢いに負けて、つい返事をしてしまった。しかし、女の子の成長は早いな……。

 と言うか、30のおっさんに12の女の子が赤ちゃん発言とか、事案では?非常にまずい気が?


 最後にレイシアさん(12歳)が話しかけてきた。


「お母さん泣かせたら承知しないです」


「はい。そうならないように、善処します」


 レイシアさんはこれだけだった。

 だが、よく考えると、娘さん全員が俺とルティリアさんの交際に前向きな発言に聞こえた。


 思ったより良い状況なのかな?


 ルティリアさんを見ると、顔を赤くして俯いていた。


 俺はルティリアさんに向き直る。


「ルティリアさん、俺は冬の間にもう一度ここに来ます。その時返事を貰えると嬉しいです。よろしくお願いいたします」


「……はい。お待ちしています」




 こうして、ルティリアさん達と別れ、馬車へと向かった。



 馬車の所には団長さんが居て、俺達を見送りに来ていた。


 団長さんに見送られて、砦を無事に出て、外で待機していた精霊トリオと合流した。


「待たせたな。無事に全て終わったのじゃ」


「それは良かったです。聖堂院はどうでしたか?」


 ツヴァイが代表して聞いてくる。


「想定内の範囲だったが、……広坪よ気付いたか?」


「はい。人数がかなり少なかったです」


「そうじゃの。恐らく、我らを怖れて、聖堂院の奥で防御に回していたのじゃろうな」


「俺も、そう思います。でも、積極的に敵対されなくて良かったです」


「そうじゃの。まぁ、目的は達したのじゃ。さっさと帰るぞ」


「了解です」


 ゴーレムに乗り、帰途に着いた。





 こうして、護送は無事に完了した。




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